数次相続とは? 代襲相続との違いと数次相続における遺産分割協議書の書き方を解説
父が死亡してすぐに母も死亡してしまったら、2人分の遺産分割協議をしなければなりません。このように立て続けに複数の相続が起こる場合を「数次相続(すうじそうぞく)」といいます。この記事では、数次相続の基本知識の他、数次相続における遺産分割協議書の書き方、手続きや相続税について解説します。
父が死亡してすぐに母も死亡してしまったら、2人分の遺産分割協議をしなければなりません。このように立て続けに複数の相続が起こる場合を「数次相続(すうじそうぞく)」といいます。この記事では、数次相続の基本知識の他、数次相続における遺産分割協議書の書き方、手続きや相続税について解説します。
目次
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「数次相続(すうじそうぞく)」とは、複数の相続が近接して立て続けに発生し、遺産相続が終わらないうちに次の相続が始まるケースをいいます。たとえば以下のような場合が数次相続の典型例です。
数次相続が発生すると、相続人調査や相続財産調査が非常に複雑になるケースが多いので注意が必要です。
たとえば夫が亡くなると遺産分割協議を開始します。その後、遺産分割協議が終わらないうちに夫の妻が死亡。さらに夫と妻は再婚で、夫には前妻との子どもがいるとします。
夫が死亡したら、まずは妻と前妻の子どもが相続人となります。その後に妻が死亡したら、妻の親が相続人になります。結果的に、夫の前妻の子どもと妻の親が遺産分割協議を行わなければなりません。
このように数次相続が発生すると、1人分の相続とは異なる相続人同士で遺産分割協議をしなければならないケースもあるので、より慎重に対応しなくてはいけません。
「数次相続」と「代襲相続」や「再転相続」の違いについて解説します。
代襲相続とは
代襲相続とは、相続人が被相続人より先に死亡しているときに、相続人の子どもが相続することです。代襲相続は相続が連続して起こったわけではありませんので、「遺産分割前に次の相続が連続した起こった」数次相続とは根本的に内容が異なります。
再転相続とは
再転相続とは、1回目の相続の「熟慮期間」が経過する前に2回目の相続が発生することです。熟慮期間とは、相続放棄や限定承認できる期間です。具体的には「自分のために相続があったことを知ってから3か月」となりますこの期間中に次の相続が連続して起こるのが再転相続です。
数次相続は1回目の相続の「遺産分割」が終わる前に2回目の相続が発生することなので、両者の意味は異なります。
代襲相続や再転相続について、詳しくは次の記事をご参照ください。
数次相続が起こると、相続人は1次相続の被相続人の遺産と2次相続の被相続人の遺産の両方を承継します。これらのうち片方だけを相続放棄できるのでしょうか?
たとえば子どもが父親と祖父の遺産を相続し、父親や祖父に借金があるケースを考えてみましょう。
まず、子どもは父親の2次相続のみを承認して祖父の1次相続を放棄できます。
一方、父親の2次相続を放棄して祖父の1次相続のみ承認することはできません。父親の相続を放棄した時点で祖父の相続権を失っているからです。
相続放棄は「熟慮期間」内に行う必要があります。熟慮期間は、「自分のために相続があったことを知った日」から3カ月です。基本的には「相続開始日から3カ月」と考えましょう。ただし相続が開始しても知らなかった場合、実際に知った日が起算点となります。
数次相続の場合、1次相続についても「2次相続について自分のために相続の開始があったことを知ったとき」から起算できます。
つまり1次相続の相続放棄についても、2次相続の熟慮期間内であればできるのです。1次相続の熟慮期間が過ぎていても相続放棄できる可能性があるので、期限が迫っていたら早めに手続きしましょう。
数次相続の場合、遺産分割協議の進め方や書き方にも注意が必要です。以下では留意すべきポイントを解説します。
数次相続の遺産分割協議では、まず相続人を確定させなくてはいけません。亡くなった方の戸籍謄本を取得して、法定相続人を確定させる手続きも通常の相続手続きと比較して非常に複雑になるケースもあります。
遺産分割協議を被相続人ごとに別々に行っても、同時にまとめて行っても、どちらでもかまいません。相続人が共通であれば、1回でまとめて行うのが簡便でしょう。一方、相続人が重複しない場合、分けて行ったほうが良いケースもあります。状況に応じて対応することをおすすめします。
数次相続の場合、あとで亡くなった「被相続人」は当初に亡くなった人の「相続人」の立場になります。そして、2番目に亡くなった被相続人は「相続人兼被相続人」と表記します。
また、相続人についても、1人分の相続人の立場の人と2人分の相続人の立場の人が発生する可能性があります。1人分の相続人の場合には単に「相続人」と表記すれば良いのですが、2人分の相続人の場合には「相続人兼○○○○の相続人」というように表記します。
以下に数次相続の遺産分割協議書の書式を示します。
数次相続があると、手続きが複雑になる可能性があります。迷ったり不安に思ったりした場合は、1人で決断するのではなく弁護士に相談してみてください。
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相続の相談が出来る弁護士を探す不動産を相続したら、相続登記(名義変更)」をしなければなりません。数次相続の場合、「中間省略登記」が認められる可能性があるので知っておきましょう。
中間省略登記とは、複数の権利移転があったときに中間の登記を省略し、当初の名義人からいきなり最後の名義人に変更することです。不動産登記においては「順番どおりに登記しなければならない」ので、中間省略登記は原則として認められていません。
ただし、数次相続の場合、以下の要件を満たせば例外的に中間省略登記が認められます。
中間省略登記が認められるのが下記の2ケースです。
1. 中間の相続人が1人
たとえば子どものいない夫婦で、夫が死亡、その後妻が死亡し、妻のきょうだいが相続する場合のように、中間の相続人が1人だけ(この場合では妻のみ)であれば中間省略登記が認められる可能性があります。
2. 中間の相続人が複数いるが、そのうち1名が単独で相続する
中間の相続人が複数いても、遺産分割協議や相続放棄などによって結果的に単独相続となった場合には中間省略登記が認められます。
なお、単独相続が要求されるのは「中間の相続」についてであり、最後の相続については共同相続であってもかまいません。
中間省略登記をすると、下記で説明するように、「手間がかからない」「登録免許税を節約できる」というメリットがあります。
1. 手間がかからない
最終的には最後の相続人へ登記名義を移すことが決まっているのに、わざわざ「すでに死亡した中間の相続人への移転登記」を経由しなければならないのは面倒です。たとえば夫から妻へ、その後妻の兄弟へ不動産が相続されたとき、「夫から妻、さらにきょうだいへ」登記すると二度手間となるでしょう。
中間省略登記が認められたら当初の名義人から最後の名義人へ1回で名義移転の登記ができるので、手間を省けるメリットがあります。
2. 登録免許税を節約できる
不動産の名義変更登記には費用がかかります。最低限、法務局で登録免許税を払わなければなりませんし、司法書士に依頼したら司法書士費用も発生するでしょう。
中間省略登記ができれば登録免許税や司法書士報酬も1回分で済むので、費用の節約になります。
数次相続が発生すると、相続人調査も複雑になりますし、遺産分割協議書の作成方法や相続登記の対応もわかりにくくなります。
自己判断で間違った対応をすると登記を受け付けてもらえない可能性もあります。迷ったときには早めに弁護士などの専門家に相談して正しい方法で遺産分割を進めましょう。
(記事は2022年9月1日時点の情報に基づいています)
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