目次

  1. 1. おひとりさまの老後リスクとは
    1. 1-1. 生前のリスク
    2. 1-2. 死後のリスク
  2. 2. 終活を始めたらやるべき7つのこと
    1. 2-1. エンディングノートを書いてみる
    2. 2-2. かかりつけ医・かかりつけ薬局を作る
    3. 2-3. 入院セットを準備しておく
    4. 2-4. 身元保証人や身元引受人を決めておく
    5. 2-5. 荷物の整理
    6. 2-6. お金の流れと資産を確認する
    7. 2-7. 死後の手続きの準備
  3. 3. 死後の手続きを他人に頼む場合には
    1. 3-1. 財産管理等委任契約
    2. 3-2. 任意後見契約
    3. 3-3. 死後事務委任契約
    4. 3-4. 遺言作成
    5. 3-5. その他

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おひとりさまの定義は色々ありますが、ここでは、一緒に暮らす配偶者やパートナー、子やきょうだいなどがいない人とします。また、こうした人がいたとしても、高齢や認知症、障がい、海外在住、交流がないなどのために頼れる人がいないという人も当てはまります。

若いときには気軽な一人暮らしを楽しむことができたとしても、老後は心身の衰えにより、多くの困りごとが起こります。高齢になると病気やけがのリスクも高まります。自分に何かあったときに誰かに気づいてもらえないということは、生前死後を含めて大きなリスクと言えます。このほか、下記のようなリスクが考えられます。

病気やけがで入院・手術することになったときや、高齢や認知症などによって自分ひとりで生活することが難しくなったときのことを考えてみましょう。

入院や手術をするときには、身元保証人や手術の同意をする人が必要です。身元保証人に求められる役割は、治療費などの支払いの保障と、転院が必要になったときや死亡したときのサポートや引き取りです。入院時に必要な保険証やお金、着替えなどの身の回りのものなどは、あらかじめわかっていれば準備ができますが、緊急入院時には、誰かに持ってきてもらうことになります。お金がないと治療費の支払いや売店などでの買い物もできません。また保険証がないと保険治療ができず治療費が高額になってしまうこともあります。

さらに体力や気力の低下、認知症の発症などにより、ひとりでの生活が難しくなることも考えられます。十分な食事ができないことによって健康状態が悪化したり、洗濯や掃除などの家事ができずに不衛生な環境で生活したりすることは避けたいものです。また、一人暮らしでは、詐欺や犯罪に合うリスクも高まります。

人が亡くなった後にはさまざまな処理や処分、手続きが必要です。しかし、亡くなった後のことは、どんな人でも自分ではできません。もっとも急を要するのは遺体の火葬および遺骨の処理です。せっかくお墓を準備していても、誰かに伝えておかないと、そこに入れてもらうことはできません。契約はしたものの、亡くなっていることが気づかれずそのままになっているお墓(永代供養簿や納骨堂など)が、一定数存在しているかもしれません。

それ以外の死後の手続きとしては、①死亡届や社会保険関係(公的年金、公的医療保険、公的介護保険など)の届出、②賃貸契約や公共料金、電話等の解約手続き、③亡くなった人の準確定申告、④相続手続き(自宅や金融資産などの処分)、そして、⑤家財道具などの遺品の処分、などがあります。これらを誰がやるのか、誰に頼むのか考えてみましょう。相続人となる人がいるのであれば、その人が手続きを行うことになりますが、何年も連絡を取っていない親族に頼めるでしょうか。

おひとりさまの老後リスクに備えるため、次のことを行いましょう。

エンディングノートは、終活の入り口であり、何をやったらいいかの手引きでもあります。一般的なエンディングノートには、下図のような内容を書く欄があります。書いてみることで自分の過去を振り返り、これからの生活を考えるきっかけになります。課題も見えてくるでしょう。これから5年後、10年後にどんな暮らしをしたいか、どのように最期を迎えたいか、縁起が悪いと言わずに将来の自分と向き合ってみることが大切です。またノートに書いておくことで、書いた内容(自分自身の情報や希望)を、万一のときに頼ることになる人に伝えることができます。

高齢のおひとりさまにとって、健康は何より大切です。自分の健康状態を把握してくれて、体調について相談できる「かかりつけ医」を作っておきましょう。持病などで複数の病院に通院している場合には、「かかりつけ薬局」も重要です。処方薬のダブりによる過剰摂取や飲み合わせについて、アドバイスをもらうことができます。

突然の入院に備えて、入院時に必要なものをバッグなどにまとめて、わかりやすい場所においておきましょう。健康保険証や少額の現金、自宅のスペアキー、お薬手帳、入院中の着替え、洗面用具、親戚や友人・知人などの連絡先などを入れておくと便利です。20~30万円程度を入金した万一に備えた専用口座を作っておき、そのキャッシュカードを入れておくのも一つの方法です。信頼のおける人に代わりにお金を引き出してもらって、病院の支払いなどに充てることができます。他の銀行口座とは異なる暗証番号にしておけば、悪用されることも避けられます。

ほとんどの病院や高齢者施設等では、入院や入所の際には身元保証人や身元引受人が求められます。相続人となる人や親族など頼れる人がいる場合には、早めにお願いしておきましょう。入院費用や入居費用の支払いなどお金が絡むことなので、遺言や生命保険加入等により、その人にお金が残せるようにしておくといいでしょう。頼れる人がいない場合には、専門家や事業者などに頼む必要があります。信頼できる専門家などを探すのは時間がかかるので、情報収集は早めに始めましょう。

長い人生を過ごしたあとでは持ち物が増えるのは当然のことかもしれません。しかし、家の中に物があふれていると、室内での転倒リスクが高まりますし、遺品整理も大変です。老後に向けて、できるだけ物を減らしてすっきり暮らすようにすることをおすすめします。

おひとりさまの老後の暮らしでは、お金の管理も重要です。お金の流れ(収入と支出)と、資産の全体像(不動産、預貯金、有価証券、借金など)を把握しておきましょう。今後の暮らしを考えるときや、財産管理を他人に頼むときにも役立ちます。きっちりと家計簿を付けることができなくても、預金通帳を確認すれば、収入(振り込まれる金額)と支出(口座振替された金額と引き出した金額)を、調べることができます。年金は毎月ではなく、2か月に1回の振り込みなので、お金の流れは年単位で調べるといいでしょう。資産については、一覧表を作成しておきます。

火葬や納骨をどうするか、死後の手続きは誰に頼むか、財産は誰に残すか、遺品をどのように処分してもらうか、といったことを考えます。その上で、各種の情報や希望をエンディングノートに書いておく、必要に応じて遺言を作成する、専門家などと契約を結ぶ、といった具体的な対応を行っておきます。

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前述の1~7の準備が終わり、財産管理や死後の手続きを他人に頼む場合には、次のような契約を結んでおきます。

高齢などにより財産管理が難しくなったときにサポートしてもらう契約です。当事者同士の契約とは別に、金融機関での代理人登録が求められる場合があります。

認知症になったときに、本人に代わって契約や財産管理を行ってもらう人を前もって決めておく契約です。

死後のさまざまな手続きを行ってもらうための手続きです。賃貸契約の解除や遺品処分など遺言の執行者が行う手続きと重なる部分もあるので、調整が必要です。

以上の①~③をまとめて契約することもできます。終末期から死後整理まで、途切れることなくサポートが受けられるメリットがあります。

遺言にはおもに誰に遺産を引き継いでもらうかを書いておきます。法定相続人以外の人に財産を残したり、特定の相続人に財産を多く残したりすることができます。遺言内容を実現する遺言執行者を決めておくと、相続手続きがスムーズにすすみます。

納骨場所(永代供養墓、共同墓、散骨など)や、ペットの引き取り先について、あらかじめ契約しておくこともできます。

やるべきことや考えることがたくさんあって大変と感じるかもしれません。でも最後まで「自分らしく」を実現するためには必要なことです。すぐにできることから、ひとつずつ始めてみてはどうでしょうか。

(記事は2021年3月1日現在の情報に基づきます)

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