再転相続とは? 相続が重なった場合の注意点や最新判例も紹介
相続が二重に発生したときの相続放棄は、どのようにすれば良いのでしょうか? たとえば叔父が亡くなって父親が相続し、その父親が相続放棄する前に亡くなって子どもが相続した場合などです。叔父が借金していたら、子どもとしては叔父の借金のみ相続放棄して父親の遺産は相続したいでしょう。このように熟慮期間が経過する前の連続した相続を「再転相続」といいます。再転相続における相続放棄の熟慮期間の数え方について、最新判例も交えて解説します。
相続が二重に発生したときの相続放棄は、どのようにすれば良いのでしょうか? たとえば叔父が亡くなって父親が相続し、その父親が相続放棄する前に亡くなって子どもが相続した場合などです。叔父が借金していたら、子どもとしては叔父の借金のみ相続放棄して父親の遺産は相続したいでしょう。このように熟慮期間が経過する前の連続した相続を「再転相続」といいます。再転相続における相続放棄の熟慮期間の数え方について、最新判例も交えて解説します。
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「再転相続」とは、当初の相続における相続人が熟慮期間中に相続放棄や単純承認をする前に死亡し、次の相続人が相続したケースをいいます。1回目の相続を一次相続、2回目の相続を二次相続といいます。
わかりやすく理解するために、「1回目の相続の熟慮期間内に2回目の相続が発生したケース」と考えましょう。
【再転相続の具体例】
再転相続の具体例は以下のようなケースです。
● 祖父が亡くなって父親が相続し、父親が相続放棄するかどうか決める前に死亡して、子どもが相続した。
→ この場合、祖父が一次被相続人、父親が一次相続人(二次被相続人)、子どもが二次相続人です。祖父の死亡が一次相続、父親の死亡が二次相続となります。
● 叔父が亡くなって母親が相続し、母親が相続放棄するかどうか決める前に死亡して、子どもが相続した。
→ この場合、叔父が一次被相続人、母親が一次相続人(二次被相続人)、子どもが二次相続人です。叔父の死亡が一次相続、母親の死亡が二次相続となります。
再転相続が起こった場合、最終の相続人(二次相続人)は1人目の被相続人(1次相続の被相続人)と2人目の被相続人(二次相続の被相続人)の両方について、相続放棄するかどうかを決めなければなりません。
ただし1人目と2人目のそれぞれについて、必ずしも自由に放棄と相続を選べるわけではないので注意が必要です。
以下では「祖父が亡くなって父親が相続し、子どもが再転相続したケース」を例として、一次相続と二次相続についての相続放棄の可否を示します。
一次相続と二次相続のどちらも単純承認、一次相続と二次相続のどちらも相続放棄という対応は、問題なくできます。たとえば子どもが祖父の再転相続人、父親の相続人となった場合、祖父と父親をどちらも相続、あるいは両方とも相続放棄することは可能です。
次に二次相続のみ承認、一次相続は放棄のパターンも認められます。たとえば父親のみ相続し、祖父は相続しないで放棄することができます。
一方で、再転相続人が二次相続を放棄し、一次相続のみ承認する方法は認められません。たとえば子どもが父親の遺産を相続放棄して祖父の遺産のみ受け取ろうとしても、それは不可能です。
二次相続を放棄したら一次相続の相続人としての地位もなくなるので、一次相続を承認できなくなるからです。たとえば父親に負債がある場合、父親の借金は相続せず祖父の遺産のみ受け取りたいかもしれません。しかし、二次相続を放棄すると、そういった対応は認められないので注意しましょう。
再転相続が生じると、「いつまで相続放棄できるのか」も問題となります。相続放棄には「熟慮期間」という期間制限があるからです。
熟慮期間は基本的に「自分のために相続があったことを知ってから3カ月」と規定されています。自分のために相続があったことを知ってから3カ月、というのは、通常「相続開始を知ってから3カ月」を意味します。
この期間内に家庭裁判所で相続放棄の申述をしないと、放棄したいと思っても受け付けてもらえなくなってしまいます。借金が遺されている場合にもすべて相続しなければなりません。相続放棄したいなら急ぐ必要があるといえるでしょう。
【再転相続の熟慮期間の起算点】
再転相続の場合、熟慮期間はどうやって計算するのでしょうか?
まず二次相続については、「二次被相続人の死亡を知ってから3カ月」とカウントして問題ありません。一方、一次相続については、「二次被相続人の死亡を知ってから3カ月」とするのか「一次被相続人の死亡を知ってから3カ月」とするのかが問題となります。
従来の通説では、「二次被相続人の死亡を知ってから3カ月」とすべきと考えられていました。この考え方によると、たとえば叔父が亡くなって父親が相続人となり、父親も死亡して子どもが再転相続人となったとき、父親が死亡して3カ月が経過した時点で子どもは叔父の相続放棄もできなくなってしまいます。
しかし、子どもと叔父に関わりがなかった場合、子どもは叔父に死亡の事実や自分が叔父の再転相続人となったことを知らないケースも多いでしょう。そのような場合にまで「父親の死亡後3カ月以内に叔父の相続放棄もしなければならない」とするのは不合理です。
そこで最高裁は、再転相続の場合において「一次相続の相続人となったことを知ってから3カ月」以内であれば、一次被相続人の相続に関して相続放棄できると判断しました。最高裁令和元年8月9日の事例です。
つまり、二次相続については二次被相続人の死亡を知ったときから3カ月、一次相続については一次被相続人の死亡を知ったときから3カ月でカウントします。その結果、一次相続と二次相続の熟慮期間は異なる可能性が発生します。二次被相続人の相続放棄はできなくなっていても、一次被相続人の相続放棄は認められるケースがあることを覚えておきましょう。
もしも再転相続人となっていて相続放棄をしたい状況になったら、早めに弁護士に相談して相続放棄の申述をしてもらうようおすすめします。
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相続の相談が出来る弁護士を探す再転相続が起こった場合の相続放棄の考え方は、非常に複雑でわかりにくい一面があります。自己判断で行動すると、借金などの希望しない遺産を引き継いでしまうリスクも心配となるでしょう。
そんなときには相続の専門家である弁護士のアドバイスを受けてみてください。
負債を相続したくない人、生前かかわりのなかった一次被相続人の相続をしたくない人などは、早めに弁護士に相談しながら対応を進めましょう。
(記事は2021年5月1日時点の情報に基づいています)
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