「親の資産がわからない」は50代でも過半数

親の資産がどうなっているのかわからない、という人は少なくありません。
明治安田総合研究所が行った「2019年 親の財産管理と金融リテラシーに関するシニア世代の意識と実態」の調査結果によると、50代後半で「親の預貯金額を把握している人」は男性が37.6%、女性が40.1%と、半数以下となっています。年代が上がるにつれて把握している人の割合は増えますが、親の“万一”はいつ起こるかわかりません。できれば、早めに知っておきたいところです。

親の資産は預貯金だけではありません。株や投資信託などを保有しているケースもあるでしょうし、自宅以外の不動産、例えば賃貸アパートや駐車場などを持っているかもしれません。生命保険に加入している人は多いはずです。

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こうした親の資産状況を知らない状態で万一のことが起こったらどうなるでしょうか。
親が急に倒れて入院した時、入院費を払いたくても親の預金口座のある金融機関が不明ではお金を引き出せません。加入している生命保険会社がわからず、入院給付金を請求できないということも起こりえます。

特に困るのが、相続が起こった時です。
親が亡くなったら、その財産は遺産分割を行って配偶者や子など、法律で定められた相続人(法定相続人)で分けることになります。また、遺産の額が一定以上の場合、相続した人には相続税の負担が生じることがあり、その場合は、故人が亡くなってから10か月以内に相続税の申告と納税をする必要があります。

したがって、親が亡くなったらすみやかに、保有していた資産を洗い出して分割方法を決めなければなりません。しかし、亡くなった直後は葬儀などで忙しく、その後も仕事や家事がある中で、預金通帳や保険証券などを探したり、不動産の所在地を調べたりするのは大変です。

生前にお金の話をするなら、やはり「盆暮れ」

ですから、親の資産状況はできるだけ生前に把握しておくことが大切です。遺産の分け方についても、親の考えを聞いておいたり家族で話し合ったりしておけば、遺産分割をめぐって争いになるのを避けられます。

とはいえ、特に離れて住んでいる場合、親自身から聞かなければ資産の状況を知るのは難しいので、夏休みやお正月など、帰省したときに聞いたり話し合ったりするのが望ましいといえます。

把握しておくべき事柄を一覧にまとめる

親の資産の全体像を把握するために最もよいのは、資産の一覧表を作ることです。親自身が書いてくれれば一番いいのですが、親から聞き取ったことを子が書いてもかまいません。確認しておくのは次のような項目です。

● 預貯金
口座のある金融機関と支店名はぜひ知っておきたいところです。相続以外に、入院したときや介護施設に入所するときにも必要だからです。残高もわかったほうがよいのですが、ムリに聞き出さなくてもOKです。親が言いたがらないことも多いし、将来的に変動するからです。一覧表に残高を書くと、家族以外の人に見られるリスクもあります。

● 株式・投資信託など
預貯金以外の金融資産があるかどうか、あるとすればどこの証券会社と取引しているかも確認項目です。特に、ネット証券会社を利用していると、亡くなったときに遺族が口座の存在に気づかない可能性があります。

● 貸金庫
貸金庫は本人でないと開けられず、親が亡くなると開けるための手続きが必要です。通帳や不動産の登記済証などを貸金庫に入れていることを知らせないまま親が亡くなると、遺産分割や不動産の名義書き換えなどに支障をきたします。

● 生命保険
生命保険の保険金や給付金は、保険会社に請求しないと受け取れません。保険会社と加入している保険の種類は要チェックです。保険会社だけでもわかっていれば、万一のときに保険会社に連絡して保障内容を確認できます。

● 自宅以外の不動産
自宅以外に賃貸アパートや駐車場を保有していると、相続税がかかる可能性が高いといえます。できれば、年1回送られてくる固定資産税課税明細書を見せてもらって、所在地と固定資産税評価額を確認しておきましょう。

● 借入金
借入金などのマイナスの資産も相続の対象となります。遺産分割をしたあとに借入金のあることがわかったりすると困るので、これはぜひとも確認しておきたいところです。

親子で話し合いのうえ作っておきたい「資産一覧表」の例。
親子で話し合いのうえ作っておきたい「資産一覧表」の例。

切り出せないときは「エンディングノート」で

親の資産の状況を知りたくても、必ずしもすんなり書いたり話したりしてくれるとは限りません。「資産一覧表を作ってほしい」「資産の状況を教えてほしい」と切り出すのにためらいを感じる人も多いでしょう。
かといって「こうすれば教えてもらえる」といった決定的な方法はありません。親の性格や、親子の関係、自分ときょうだいの関係など応じて、以下のようないろいろな方法を考えましょう。

● エンディングノートを利用する
エンディングノートは“終活”の一環として、自分自身のことを書き込むノートです。市販されているほか、金融機関が無料で配布していることもあります。体裁や内容はいろいろですが、記入する項目としては、自身の生い立ちや家系図、親戚・知人・友人などの連絡先、介護や葬儀・墓に関する希望、金融資産・生命保険・所有する不動産のリストなどが一般的です。

例えば、自分でエンディングノートを用意して、帰省したときに「こういうのがあるから書いてみたら」と渡す、あるいはさりげなくテーブルの上に置いておく、などが考えられます。自分自身がエンディングノートの資産一覧表に書き込んで、それを親に見せることでお互いに情報を共有するようにもっていくのもよいかもしれません。

特に今年はコロナウイルスの感染拡大で帰省が難しい方がたくさんいらっしゃると思います。直接会いに行けなければ「この前、銀行でこんなのをもらったので、お父さんも書いてみたらどうかと思って」と郵送するのも一案です。

● 身近な例で話を切り出す
いきなり資産状況を聞いたら、親は不快に思ったり警戒したりするかもしれません。
そこで、なんのために知りたいのかを説明して納得してもらいましょう。例えば「認知症になると銀行からお金が引き出せなくなるから」とか、今なら「もしコロナに感染したときに困らないように」などといった具合です。

親の財産状況がわからなくて困った人の話をしてみるのもよいでしょう。「ご近所の〇〇さんは、亡くなったお父さんの預金口座がわからなくて家族が苦労したらしい」とか「会社の同僚は、亡くなった親が不動産をたくさん持っていたので、相続税をかなり払ったそうだ」など、身近な例を挙げて、「うちも万一に備えて、教えておいてもらうと助かるんだけど」と話してみてはどうでしょうか。

● 少しずつ聞き出す
資産状況を一度にすべて聞き出そうとしても、親自身が資産状況を把握していないということは十分にありえます。そこで「どこの銀行に口座があるか教えておいて」、「取引している証券会社はあるの?」「〇〇のアパートって今どうなってるの?」、「今度帰ったときに固定資産税の明細書見せて」といった形で、少しずつ情報を聞き出していくのが現実的です。

少なくとも財産の所在だけは

資産の一覧表を作っても預金の残高などは変動するので、可能であれば、毎年確認したいところですが、残高が正確にわからなくても、口座のある金融機関・証券会社や不動産の所在地など、財産がどこにあるかさえ押さえておけば、万一のときの手間は十分に減らすことができます。

ただし、親の住まいが地価の高いところにある場合や、自宅以外に不動産がある場合、相続税の基礎控除(法定相続人数×600万円+3000万円)を超える金融資産がありそうな場合は、相続に詳しい税理士などに依頼して、どの程度の相続税がかかりそうか見積もってもらっておくと安心です。

前回の記事は、「リースバック」の活用法について解説しました。今後も「相続会議」で読者の方が気になる相続や終活の問題を解説していきます。

(記事は2020年8月1日時点の情報に基づいています)