目次

  1. 1. 不在者財産管理人とは
    1. 1-1. 不在者財産管理人の仕事
    2. 1-2. 不在者財産管理人を選任できる条件は?
    3. 1-3. 不在者財産管理人を選任すべきケース
    4. 1-4. 失踪宣告との違い
  2. 2. 不在者財産管理人の選任方法
    1. 2-1. 選任方法
    2. 2-2. 不在者財産管理人に選ばれるのは誰?
  3. 3. 不在者財産管理人を選任するときの注意点
    1. 3-1. 不在者に不利な遺産分割協議はできない
    2. 3-2. 選任されると負担が生じる
    3. 3-3. 報酬が発生する可能性がある
    4. 3-4. 遺産分割が終わっても職務が終了しない
  4. 4. まとめ:自己判断の対応は不利益を受ける可能性も

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不在者財産管理人とは、行方不明になっている人の財産を適切に管理する職務を負う人のこと。裁判所によって選任されます。

相続人が行方不明で遺産分割協議できないときにも、不在者財産管理人を選任すれば代わりに遺産分割協議に参加してもらって相続手続きを進められます。ただし、不在者財産管理人は裁判所の監督下におかれますし、報酬が発生する可能性もあるので注意が必要です。

不在者財産管理人は、居場所がわからない本人のために適切な方法で本人名義の財産を管理します。また、不在者の財産について目録や収支報告書を作成し、定期的に裁判所へ報告すべき義務を負います。本人の利益にならない方法で勝手に財産を使うことは許されません。

不在者財産管理人を選任できるのは、本人が行方不明で「不在者」といえる場合のみです。「まったく連絡がとれず、どこにいるのかもわからず、当面は帰ってくる見込みが一切ない状態」が必要と考えましょう。

住民票上の住所に存在しないことはもちろん、他に連絡をとる方法が一切ない状態が数年継続しているような場合です。連絡はとれないけれど居場所がわかっていたら不在とは認識されません。

  • 不在者が遺産分割の対象となっているとき
  • 不在者との共有物件を処分したいとき
  • 不在者が高額な財産を所有しており、適切に管理する必要があるとき

不在者財産管理人の場合、本人は死亡したことになりません。失踪宣告(普通失踪)なら本人は死亡したことになります。
また、失踪宣告を申し立てるには「7年以上行方不明」である必要がありますが、不在者財産管理人の場合にはこういった期間制限はありません。

連絡がつかない相続人が行方不明になってから7年が経過しているなら、失踪宣告を申し立てることによっても遺産相続手続きを進められる可能性があります。

不在者財産管理人は「不在者の従前の住所地または居所地の家庭裁判所」へ申立をして選任してもらいます。申立権者は配偶者や相続人、債権者などの利害関係人、検察官です。

【選任時の必要書類】

  • 申立書(裁判所の定める書式に従って申立人が作成します)
  • 不在者の戸籍謄本(全部事項証明書)
  • 不在者の戸籍附票
  • 財産管理人候補者の住民票または戸籍附票
  • 不在であることがわかる資料
  • 不在者の財産に関する資料(不動産登記事項証明書、預貯金や有価証券の残高がわかる書類など)
  • 相続人による申立ての場合には戸籍謄本(全部事項証明書)などの相続関係がわかる資料

【手数料】

  • 800円分の収入印紙
  • 連絡用の郵便切手

上記の他、財産管理に必要な費用の予納を要求されるケースもあります。

利害関係のない人であれば、候補に立てることができます。候補者がいない場合には弁護士や司法書士などの専門家から選任されるケースが多数です。

不在者財産管理人は、不在者本人のために財産管理を行います。そこで本人に不利な財産処分はできません。たとえば遺産分割協議の際には、最低限「法定相続分」は取得させる必要があります。相続分を割り込む内容の遺産分割協議は裁判所によって許可されないと考えましょう。

不在者財産管理人になったら、適切に財産管理をして定期的に裁判所へ報告しなければなりません。特に親族が選任されると負担が重いと感じるデメリットがあるので、候補者を立てるときには注意が必要です。

専門家が不在者財産管理人に選任されると、基本的に報酬が発生します。金額相場は月額2~6万程度となるケースが多いようです。不在者の財産から支出されますが、後に本人が現れたり、連絡がとれたときに納得せずトラブルになる可能性もあります。

不在者財産管理人の業務は、遺産分割が終わっても続きます。任務が終了するのは以下の3種類のいずれかに当てはまる場合です。

  • 不在者が現れたとき
  • 不在者の死亡が確認されたとき
  • 不在者の失踪宣告が行われたとき

たとえば親族が選任されたときには不在者が帰ってくるか死亡が確認されるか失踪宣告するまで負担が継続します。また、専門家が選任されたときには費用がかかり続けてしまうでしょう。

遺産分割手続きが終わっても、もとの状態に戻るわけではないので注意してください。

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遺産分割の際、行方不明の相続人がいたらまずは所在調査を進めるべきです。それでもどうしても居場所がわからなければ不在者財産管理人の選任や失踪宣告を検討しましょう。

自己判断で対応すると思わぬ不利益を受ける可能性もあります。困ったことがあれば、まずは専門家に相談してから対応を進めましょう。

(記事は2021年3月1日時点の情報に基づいています)

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