目次

  1. 1. 異父母きょうだいの相続権
  2. 2. 戸籍や住民票を確認してまずは手紙で連絡を
  3. 3. 相続人の廃除手続き法律要件が厳格
  4. 4. 見ず知らずの第三者との遺産分割はトラブルが生じやすい

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父親や母親が再婚する前に子どもがいた場合、異父・異母きょうだいが離婚を機に長年親と別居していたとしても、法律上、その子どもも相続人となります。そして、法定相続分は再婚後の子どもと等しい割合と決められています。同じ「子ども」という立場である以上、優劣がつけられないというのが法律の建前です。

一方、再婚相手の配偶者には相続権があります。では再婚相手との間の子どもはどうでしょうか。父親や母親の再婚相手との間に生まれた子どもには相続権がありますが、再婚相手の連れ子は直ちに相続権が認められるわけではありません。

再婚相手の連れ子の場合、父親や母親と連れ子が養子縁組をしない限り、相続権が認められません。さらに、亡くなった方に遺言書がない場合、法定相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。もっとも、遺産分割協議において全員と合意ができるのであれば、必ずしも法定相続分によって遺産を分割しなければならないというわけではありません。

そのため、異父・異母きょうだいがいる場合、遺産分割協議を行うため、異父・異母きょうだいと連絡を取る必要があります。異父・異母きょうだいがいるかどうか分からない場合、先妻、先夫の子どもを探す方法としては、親の戸籍や住民票を取得することが考えられます。
戸籍を収集して相続人の居場所が判明したら、まずは手紙などで相続が発生したことや、相続人となっていることなどをお伝えし、その後、具体的な分割のお話し合いを行うことになります。

異父母きょうだいとの遺産分割協議は、あまり前向きになれない方もいると思います。しかし、遺産分割協議は不可避です。弁護士を代理人にすることを考えてみてください。

戸籍や住民票で異父・異母きょうだいの居場所が判明し、そこに連絡した場合でも、そのきょうだいが連絡に応じてくれるかどうか、という問題は残ります。現実に、お手紙をお送りしても何も反応がない場合は少なくありません。また、引っ越しをして役所に届け出ていない場合には実際に居住している場所と戸籍や住民票など公的書類の場所が異なることもあります。そうした場合には、お話し合いでの遺産分割協議をすることができません。そのため、このような場合には家庭裁判所に対して遺産分割調停の申し立てを行い、裁判所の手続のなかで遺産分割協議を進めていくことになります。

被相続人が遺言を残していた場合でも、その遺言を実行する遺言執行者には、相続人に対して遺言の内容などを通知しなければならないとされています。そのため、いずれにせよ相続人である異父・異母きょうだいには連絡をすることになります。そのため、離婚した親の子どもに相続させないようにするには、遺産分割協議のお話し合いの中で財産は一切相続しないという合意をしてもらうか、その子どもに自発的に相続放棄をしてもらうほかありません。

このような相続人間でのやりとりの煩雑さを回避するため、被相続人ご自身が生前になにかできることはあるのでしょうか。対策の1つとして、生前贈与を思いつく方もいらっしゃるかもしれません。生前贈与のメリットは、被相続人ご自身が生きている間にご自身の意向に従って財産を移すことができることです。しかし、生前贈与のデメリットとして、生前贈与の金額が遺留分権利者の遺留分を侵害する場合、ご自身の死後に相続人同士で遺留分減殺請求に関する紛争が発生してしまうことです。そのため、生前贈与を行うとしても、その金額等については慎重な検討が必要です。

相続人の廃除という手続きによって前妻の子どもを相続人から除外してしまうという方法もありますが、廃除の手続は法律上要件が厳格で、例えば相続人が被相続人を虐待していたなどの事情がある場合などに限定されています。

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先妻との子が死亡していた場合、その相続権はさらにその子へと代襲相続されます。代襲相続は、兄弟姉妹の相続人以外の相続人に認められているためです。

この記事をご覧の方のなかには、異母・異父きょうだいから急に相続について連絡がきて戸惑っている、財産はいらないからかかわりたくない、という方もおられるかもしれません。そのような場合には、相続放棄を行うことで、その後の相続手続に関与する必要がなくなります。相続放棄は、原則的に、相続を知ったときから3カ月以内に家庭裁判所に申し立てが必要とされています。

単なる親と子、兄弟姉妹での遺産分割の場合と異なり、異父・異母きょうだいという見ず知らずの第三者との遺産分割はトラブルが生じやすいといえます。また、今まで何も知らなかった財産につき急に連絡を受けたところで、その内容が本当に正しいのかどうかという判断は容易ではありません。異母・異父きょうだいと連絡を取らなければならないという場面であっても、戸籍の収集は複数回役所に郵送を行うなど手間がかかります。さらに戸籍取得後に、まったく面識のない異父・異母きょうだいと連絡をとることに心理的な負担を感じる方もおられるでしょう。

複雑な戸籍の収集手続や異父・異母きょうだいとの連絡や交渉、裁判手続などを専門家に依頼することで、手続き上のミスも少なくなりますし、結果的に解決までの時間が短くなることも多いです。まずは弁護士などにご相談いただくことをおすすめします。

(記事は2020年9月1日現在の情報に基づきます)

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