目次

  1. 1. きょうだいがいないから「相続では揉めない」?
  2. 2. 異母きょうだいがいるケース
  3. 3. 親が、「一人っ子」自身が、相続発生前にできること
    1. 3-1. 親が考えるべきこと:連絡先の共有など
    2. 3-2. 「一人っ子」がすべきこと:戸籍謄本の取り寄せ
  4. 4. 異母きょうだいがいた場合の注意点

こんにちは、終活弁護士の伊勢田篤史です。
さて、今回は、「一人っ子の相続」についてお話します。

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皆さんは、「一人っ子」に対して、どのような印象をお持ちでしょうか。

「わがまま」「マイペース」「自己中心的」「気が利かない」・・・等々

図らずも、一人っ子は、ネガティブのイメージを持たれることが多いようです。
実は、私も「一人っ子」として、上記のような、いわれのない誹り(?)を受けた記憶が多々あります。昔の会社の同僚には、「お前は、俺が抱いている『一人っ子』像をすべて持っている!」等と言われたこともあります。

そんなネガティブなイメージを持たれることがある一人っ子ですが、「一人っ子」には、兄弟姉妹がいないからこそ享受できるメリットもたくさんあります。そんな中でも、「相続トラブルとは無縁である」ということは大きなメリットでしょう。争う相続人(きょうだい)がいないため、遺産分割協議で揉めようにも、揉めようがありません。

そのため、「一人っ子」の皆さんは、特に「親からの遺産相続」にあまり関心がない方も多いようです。しかし、「一人っ子」であっても、実は、相続トラブルに巻き込まれてしまうケースがあります。今回は、一見「相続トラブルとは無縁」と思われる一人っ子でも注意すべき、相続のポイントについて解説します。

世の中には、「一人っ子なのに、きょうだいがいる」ケースが存在します。
一見矛盾するような言い方ですが、「一人っ子なのに、(異母)きょうだいがいる」ケースと表現すると理解しやすいかと思います。(以下、便宜的に異母・異父きょうだいを「異母きょうだい」と総称して表記します。)

過去の記事(「異母きょうだいにも相続の権利は発生。礼節をもって遺産分割協議を」)でも紹介していますが、父親が再婚者で、前妻との間に子どもがいた場合、父親が亡くなったときの法定相続人は、現在の妻とその子(一人っ子)だけではなく、その異母きょうだい(前妻の子)も相続人となります。

父親が再婚者で、前妻との間に子どもがいた場合、父親が亡くなったときの法定相続人は、現在の妻とその子(一人っ子)だけではなく、その異母きょうだい(前妻の子)も相続人となる。
亡父が再婚者で、前妻との間に子どもがいた場合、現在の妻とその子だけではなく、その異母きょうだいも相続人です

上記のようなケースの場合、「争う相続人」となりうる「(異母)兄弟姉妹」が存在するため、一人っ子でも「相続トラブル」に巻き込まれる可能性があります。

上に示したケースにおいては、親の立場、子の立場として、以下のとおり対応されるとよいでしょう。

まず、各自の法定相続人が誰になるのかをしっかりと把握する必要があります。
上記のとおり、前妻との間の子も、「子」の1人として、「相続人」となります。配偶者同士であれば、過去の離婚歴も理解しているケースが多いかと思いますので、初婚同士でない限りは、「子」の存在について確認をするとよいでしょう。

次に、現在の家族以外に、異母きょうだいといった法定相続人がいる場合には、以下の事項について夫婦の間で検討しておく必要があります。

(1)他の法定相続人の存在を子(一人っ子)に、いつ伝えるか
できる限り早く、自分が元気なうちに伝える形が望ましいでしょう。死後にエンディングノート等で伝える方法もあります。なお、一般的な相続手続のプロセスにおいて、他の法定相続人の存在は判明するため、何も伝えないというのは避けましょう。

(2)死亡時、他の法定相続人へは、どのように連絡を取るか
生前に、遺言書等の相続対策をとらない限りは、法定相続人全員による遺産分割協議を行う必要があり、他の法定相続人への連絡は必須となります。そのため、他の法定相続人の連絡先を知っている場合には、自身の死後に連絡することができるよう、連絡先を共有する等の対応をしておく必要があります。

(3)死亡時、相続については、どのように対処すべきか
(2)と同じく事前の対策をとらない限り、法定相続人全員による遺産分割協議を行う必要があり、自身の家族を相続紛争に巻き込んでしまう可能性があります。そのため、自身の遺産をどのように相続してほしいのかを考え、対策を講じる必要があります。
なお、「遺産はいらない」等という異母きょうだいからの対応を期待する方もいるかもしれませんが、「今まで、父親として何もしてもらえなかったのだから、せめて相続は法律で認められる範囲でしっかりともらいたい」といって、相続を主張されるケースが多いように思います。

「一人っ子だから相続トラブルなんて関係ない」と考える方も多いかと思いますが、上記のようなケースでは、見知らぬ相続人が突然現れて、相続を主張してくる等、相続トラブルに巻き込まれてしまう可能性があります。

「法定相続人を今のうちから押さえておきたい」という方は、両親に直接確認するのが一番手っ取り早い方法といえますが、なかなか聞きにくい内容かと思います。

一方で、両親に確認することなく、自分自身で確認をする方法があります。それは、両親の戸籍謄本を取り寄せる方法です。
なお、戸籍謄本については、将来の相続手続でも必要となりますので、生前から取り寄せておくと相続手続の際の負担を軽減することが可能です。
例えば東京練馬区では、自分の戸籍謄本など親子関係を示せる書類があれば、親の戸籍謄本を取り寄せることができるようです。

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以上、一人っ子が親の相続の際に相続トラブルに巻き込まれてしまう可能性とその対策方法について解説しました。実際に、死後に他の法定相続人の存在が発覚した場合には、こちらの記事(「異母きょうだいにも相続の権利は発生。礼節をもって遺産分割協議を」)も参考にしていただきながら、ご対応いただけたらと思います。

なお、異母きょうだいがいる「一人っ子」の方は、将来、自分自身の相続の場合にも、異母きょうだいが自分自身の相続人となる場合があり、注意が必要です。詳しいお話は、次回に解説したいと思います。

前回は、飼い主が将来自分にもしもがあった後も愛するペットの世話を第三者に託すための手段について解説しました。
こちらのコラムでは引き続き、もめない相続のために必要な知識や対策をわかりやすく読み解いていきます。

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(記事は202071日時点の情報に基づいています)