異母きょうだいにも相続の権利は発生。礼節をもって遺産分割協議を
相続での家族間のトラブルを無くすため「終活弁護士」として活動する伊勢田篤史弁護士が、目の前のPCやスマホからでも始められる、相続の一歩目をわかりやすく解説します。
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今回は、亡くなったお父さんに別の子がいた・・・というケースの対応策について話します。まず、どうやったら、亡くなったお父さんに別の子がいることがわかるのかについてです。
生前に「実は、お母さんとは再婚で、前妻との間に子どもがいる」という話を聞いている場合もあるでしょう(何かしらのきっかけで、知ってしまったというケースも多いかと思います)。
しかし、どのような状況であれ、父親の相続手続の際には、預金口座の相続手続や不動産の相続登記手続の関係で、父親が生まれてから亡くなるまでの戸籍をすべて取り寄せることとなります。そのため、離婚歴の有無や、前妻や子の名前まで分かってしまいます。
諸々の事情により、自分の子どもには再婚のことは伏せておきたいという方も多くいらっしゃいますが、上記のとおり、相続手続きの中で判明してしまうのです。
できるかぎり、エンディングノート等を利用し、前妻との間に子がいることとともに、連絡先(電話番号等)を知っているのであれば、あわせて死後に伝えられるようにしておきましょう。
なお、父親に異母きょうだいがいることが発覚したものの、前妻の子の連絡先が分からない場合には、戸籍の附票や住民票等を確認する形が一般的です。弁護士等に相談するとスムーズです。
なぜ、異母きょうだいや異父きょうだいに相続の連絡をしなければならないのか、と疑問に思う方もいるかもしれません。
しかし、異母きょうだいであっても、亡くなった人(この場合は父親)の遺産を相続する権利があります(両親の離婚の有無は、相続には関係ありません)。そのため、亡くなった人が遺言を残していない限り、異母きょうだいと遺産分割協議を行う必要があります。
法的な建前はそうであっても、異母きょうだいにバレないうちに、遺産分割協議をしてしまえばよいのではないか?と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、預貯金における相続手続や不動産の登記手続においては、法的に有効な遺産分割協議が行われているかを確認するため、銀行や法務局から、故人の出生から死亡までの戸籍謄本の提出を要求されます。そのため、異母きょうだいを除いて遺産分割協議を行っても、これらの相続手続を行うことができないようになっています。
相続時に異母きょうだいがいた―。こういったケースでは、たとえ顔見知りじゃなくても、声をかけないといけません。とは言っても、連絡しにくいのが現実ではないでしょうか。代理人を立ててやりとりするのも、一つの方法です。そんな時には、弁護士に依頼してみてください。
全く面識のない異母きょうだいに対して、父が亡くなったこと、そして相続の協議をしなければならないというのは、心理的な負担が大きいでしょう。そのため、もしも異母きょうだいの存在が発覚した場合には、身近な弁護士に依頼されるとよいでしょう。
こういったケースでは、よくご依頼者から「前妻の子には、できる限り支払いたくはない」というご相談を受けます。また、ご依頼者の方が、亡父の介護を行っているケースでは、「一銭も支払いたくはない」と強く要請されることもしばしばです。
もちろん、面識もない異母きょうだいに父親の財産を持って行かれるのはしゃくだ、という気持ちは想像できますし、亡父の介護等をしていた場合には、余計にこういった思いは強くなるでしょう。
しかし、前妻の子の方も、幼少期に両親が離婚し、これまで大変な思いをしてきた可能性もあります。そして、間近で父親からの愛情を受けられなかった心の穴埋めとして、相続を受けたいという気持ちを持たれることも多いように思います。
そのため、ご依頼者には、いきなり「相続を放棄せよ」等と一方的に迫るのではなく、「まずは、相手の話を聞いてみませんか」とご提案しています。もちろんケースバイケースですが、解決を急いで強硬姿勢で交渉を行うよりも、協調的に交渉を行う方が、早期に解決することができる印象があります。
特に、亡父の遺産の中に不動産がある場合には、相続人間でこじれてしまうと、不動産を手放さざるをえない状況に陥ってしまう可能性もあります。
お互いの面識がない、他人同士の相続トラブルこそ、礼節をもって、実は信頼関係を築いていくことが重要です。本来は、きょうだい同士の相続も同様なのですが・・・
最後までお読みいただき、ありがとうございました。次回も、すぐにできる相続対策についてお話したいと思います。引き続き、どうぞよろしくお願い致します。
(記事は2020年2月1日時点の情報に基づいています)
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