家族へのラストレター「付言事項」を遺言に記載すると、納得につながる? 実例交えて解説
相続での家族間のトラブルを無くすため「終活弁護士」として活動する伊勢田篤史弁護士が、目の前のPCやスマホからでも始められる、相続の一歩目をわかりやすく解説します。
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こんにちは、終活弁護士の伊勢田篤史です。
今回は、遺言に関連する「付言事項」のトラブルについてお話したいと思います。
付言事項とは、遺言書の本文の補足として、付け足しで記載される文言(付言)です。法的に意味のある(法的な効果の発生を目的とする)遺言書の「本文」とは異なり、法的に意味のない(法的な効果が生じない)文言となります。手紙でいうところの「追伸」をイメージして頂くと分かりやすいでしょう。
例えば、以下のような形で書かれます。
付言事項には、一般的に遺言書を書く動機、財産分けの理由、家族への思い等を記載するケースが多いようです。もちろん、記載される内容については、多種多様ですが、そもそも「付言事項」の存在を知らず、記載されないことも多いといえます。
私自身が遺言書作成を依頼頂く場合には、付言事項を記載することをお勧めしています。
遺言書は、自分自身の財産をどう分割するか、という点がメインとなるケースが多いですが、「財産をどう分けるか」だけが遺言書に記載されていても、家族にとっては淡泊で味気ないものとなってしまいます。
法定相続分(法律上で定められた相続の割合)どおりに、1円単位まで財産をきっちりと分ける内容の遺言書であれば、分割方法だけが書いてあってもよいかもしれません。しかし、遺言者が不動産等を所有している等、法定相続分どおりに財産をきっちりと分けることが難しい場合で家族間の配分に大きな差がある場合には、家族間で不公平感が生じ、トラブルに発展してしまうケースがあります。
そこで、財産の分割方法の理由やそれに至る家族への想い等を遺言書に付言事項として表現することで、家族間の不公平感を少しでも和らげましょうとお伝えしています。
配偶者や子どもたち一人一人への配慮ある理由付けを説明すれば、多少の差異があっても、家族は納得してくれる可能性が高まるはずです。
こんな付言事項のケースがありました(なお、プライバシー保護のため、必要な限度で実際の事例を一部変更しています)。
これは、自身のご子息に、熟年再婚したことを最後まで伝えることができなかった男性が残した遺言書の付言事項です。遺言書の本文においては、再婚相手にほとんどの財産を渡すということが書かれていました。
想像に難くないと思いますが、ご子息は、遺言書を見て激怒し、泥沼のトラブルに発展しました。当然ながら、再婚相手もご子息も幸せな結末とは程遠い状態となってしまいました。
付言事項も万能ではありません。男性は、息子とのコミュニケーションを恐れて、付言事項に「逃げた」だけと言えます。もちろん、再婚自体は当事者の自由ではありますが、相続が発生した場合には、兄弟間の相続以上に泥沼のトラブルに発展するリスクがあります。
付言事項に逃げることなく、生前からしっかりとコミュニケーションをとるべき事案だったといえるでしょう。
前妻との間に子がいる場合での熟年再婚の場合には、相続が絡むこともあり、注意が必要です。特に、子が小さいころに再婚して家族を形成していく、いわゆるステップファミリーのような形態ではなく、子が独立した後に再婚をされる場合には、相続のことも考えて、しっかりとしたコミュニケーションをとってほしいと思います。
コミュニケーションを恐れて、放置してしまっては、大切なパートナーも子も大きく傷つけてしまうことになりかねません。
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相続の相談が出来る弁護士を探す最後に、上記のように、自分だけが悪者になって(責任を取ったつもりで)、「自分だけが悪いから、パートナーは悪くない」から、「パートナーを責めないでくれ」という遺言を見ることがありますが、火に油を注ぐだけで、ほとんど意味がありません。
付言事項に逃げることなく、生前からしっかりとコミュニケーションをとっていただきたいと思います。
ちなみに前回は「遺影も連絡先も入ってる… 親のPCやスマホへのアクセスから始める相続」です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
引き続き、どうぞよろしくお願い致します。
(記事は2020年2月1日時点の情報に基づいています)