「縁起でもない」話はやっぱり気が引ける

相続の相談をしていると、「縁起でもない」という言葉をよく使います。
高齢の男性が死亡して、相続登記と相続税申告の依頼に妻と子が訪れたとき、妻が死亡した場合についても説明をしています。
「縁起でもないお話ですが、奥様が亡くなった場合には…」などと前置きをして話を始めるのですが、目の前にいる人が死んだ後のことを話すのは、やはり気が引けます。

職業柄、私は親が死んだ場合にやることを、親とよく話します。
妻とは私が死んだ際の手続きや資産状況について、日常的に相談しています。
私より10歳年下なので、ないと信じたいのですが、妻が死んだときにやるべきことも、概ね決まっています。

相続の手続きに訪れる人から、「何も準備していなかったのでどうすればよいかわからない」ということを言われることがあります。
私のような人は少数派かもしれません。ですが、遺言が残っていない場合、事前に相談していなければ、故人の遺志は想像するほかなくなります。
遺族間のトラブルに発展する可能性もありますので、定期的に話をすることを勧めます。
今回は、相続人の間で不満が高まっている事例を考えてみます。

相続はいつも円満とは限らない

事例3
埼玉県で80代の女性が死亡
家族は50代の長男、二男、長女、二女
長男は女性と同居していた
相続財産は普通預金約3000万円、時価約1億円の有価証券、自宅の土地建物、複数の収益物件
遺言はない
きょうだいは互いに関係が悪い
使い込んだ母親名義の預金返済を求める旨の内容証明が二男より長男宛に届いている

相続はいつも円満とは限りません。
一般的に、相続財産が少なければ争いになりにくいと言えるでしょう。
争うには時間と費用がかかるため、取得できる財産が少なければメリットが乏しいからです。

相続財産が多額で、当事者の数が多く、関係が良好でない場合は、トラブルに発展する可能性は高いかもしれません。

被相続人が死亡し、遺産分割について相続人の間での話し合いがうまくいかない場合、家庭裁判所の遺産分割調停または審判の手続を利用することができます。調停手続は、相続人のうちの1人もしくは複数が、他の相続人全員を相手方として申し立てます。

調停手続きは裁判所が主導します。当事者から事情を聞き、必要に応じて資料の提出を求めたり、遺産について鑑定を行ったりするなどして、合意を目指した話合いを進めます。

調停手続きにおいては、代理人を選任することができます。
代理人は、原則として弁護士以外は就任できません。

弁護士法72条は以下のとおり規定しています。

第七十二条 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

税理士や行政書士は、法的紛争において代理権がない

原則として、報酬を得て弁護士業務を行うことは弁護士しかできません。
別段の定めとして、司法書士は司法書士法の規定により、法務大臣の認定を受けた場合は、簡易裁判所の管轄に属する民事紛争については代理権があります。
簡易裁判所で取り扱う事件は、訴訟の目的の価額が140万円までと規定されていますので、その金額を超える紛争については、司法書士は代理人になれません。
遺産分割調停を含む家事事件について、司法書士は書類作成を行うことはできますが、代理人になることはできません。

税理士や行政書士は、法的紛争において代理権がありません。

このように、相続人の間でのトラブルが顕在化している場合は、原則として弁護士以外が代理人として紛争手続きに関与することはできません。
紛争が明らかな場合は、弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

(記事は2020年6月1日現在の情報に基づきます)