エンディングノートを書いてみよう(1/4) 税理士の私が、はじめて妻と相続について話をしました
死について考えるタイミングは人それぞれです。私は初夏になると若くして亡くなった友人のことを思い出します。公認会計士・税理士として、日頃、相続の相談を受ける立場ですが、今回はじめてエンディングノートを購入して、妻と死後のことについて語らいました。そこで感じた感謝と嬉しさ、そしてちょっとした気恥ずかしさについて書いてみたいと思います。
死について考えるタイミングは人それぞれです。私は初夏になると若くして亡くなった友人のことを思い出します。公認会計士・税理士として、日頃、相続の相談を受ける立場ですが、今回はじめてエンディングノートを購入して、妻と死後のことについて語らいました。そこで感じた感謝と嬉しさ、そしてちょっとした気恥ずかしさについて書いてみたいと思います。
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9歳で祖父が亡くなり、初めて葬儀に出席しました。そのころ、大人は自分とは異なる存在と認識していて、いずれ自分が高齢者になって死ぬとは思っていませんでした。
最初に自らの死を意識したのは、大学の卒業旅行でインドに行ったときです。死が身近にあり、「いつか自分も死ぬ」と自然に思うようになりました。
強く意識するようになったのは、社会人2年目のとき。
日差しがまぶしい、初夏の午前中でした。当時、埼玉県で新聞記者をしていた私は、市長選に出馬する候補者の取材をしていました。その途中、マナーモードにしていた携帯電話が何度も震えます。話を聞き洩らしてはいけないので取材に集中していたのですが、あまりに着信とメールが多いので、「重大事件発生の緊急連絡かもしれない」と思い、携帯の画面に目を落としました。
確認すると、「田中君(仮名)が亡くなったらしいよ」という文字が飛び込んできました。共通の友人からでした。
「本当なのか、間違いじゃないのか」と取材中にも関わらずメールを返しました。友人は私と同い年。私はその前日に、メールで仕事の愚痴をやり取りしたばかりでした。時間をおかず、他の友人からも彼の死が知らせるメールが届きます。
その後の話は耳に入りませんでした。
翌日、火葬に立ち会うため、仕事を休んで新幹線で山形へ行きました。棺で眠る友人の姿を見て、人生が有限であること、そして自分の死を強く意識しました。初夏の匂いを感じると、「国会議員になって苦しむ人の力になりたい」と、安酒を手に熱く語っていた彼を思い出します。
今年も夏が近づいてきました。
相続の相談を日常的に受けるようになっても、思うことは変わりません。あのとき感じた死のイメージに、少しずつ近づいているような気がします。悔いのない日々を送りたいという思いが、年々強くなります。
以前の記事でも書いたように、私が死んだ後のことは妻とよく相談しています。そうはいっても、話しているのは財産の処理方法や、相談先の専門家のことが多いです。妻や子に伝えたいことや、葬祭の希望などについては、あまり話してきませんでした。良い機会なので、エンディングノートを書いてみることにしました。
購入したのは、『エンディングノート「もしもの時に役立つノート」』(コクヨ)です。
主な記載内容は、銀行口座、保険、クレジットカード、電子マネー、口座自動引き落とし、重要な連絡先、ペット、医療・介護、葬儀、相続、有価証券、不動産、借入金、年金など。自由に記述できるページもたくさんあります。どの商品も、亡くなった場合に使う情報を記載する欄があるでしょうから、必要に応じて欄を追加するとよいでしょう。
ノートを書く前に、家族と死後のことについて話してみることをお勧めします。相続の相談で、「突然亡くなったので何も準備していない」という声をよく聞きます。
銀行口座や不動産など、財産に関することは残された資料から調べられますが、故人の意思は遺言などが残されていなければわかりません。「もっと話しておけばよかった」という言葉を聞くと、私も少し悲しい気持ちになります。
自らの死について家族と話すことは、互いに感謝を伝える機会にもなるでしょう。
私も妻とじっくり話をしてみました。
妻は2人の子を育てながら、私の事務所を手伝ってくれています。私は新しいことにチャレンジするのが好きで、子ども食堂の運営を手伝ったり、ワイン店の経営を共同で行ったり、ラーメン店を出すための研究をしたりしています。そのたびに妻を振り回していて、妻は「またなの?」とほんの少しだけ嫌な顔をしますが、献身的に手伝ってくれます。
公私にわたって支えられることが多く、感謝しかありません。
気恥ずかしい思いもありましたが、改めて気持ちを伝えると妻も嬉しそうでした。もし私がもうすぐ死んだとしても、きっと妻は話したことを覚えていてくれるでしょう。
そう思うと、私も少し嬉しくなりました。
(記事は2020年6月1日現在の情報に基づきます)
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