目次

  1. 1. 借金で気づいた、基本のキ
  2. 2. 考えておきたい「死の質」
  3. 3. 生島家の相続「お金のことはオープンに」
  4. 4. 楽しみながら次世代にバトンを

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――生島さんはマネープラン設計に関する講演も盛んに行っています。お金の問題に関心を持ったのは、なぜだったのでしょうか。

今は返済しましたが、多額の借金を背負ったのが大きかった。バブルが崩壊し、僕も不動産・金融投資で10億円を損しました。友人に乗せられて、金融商品でだまされた経験もあります。順風満帆だった仕事も、ある時期を境にテレビ出演が減っていき、独立して立ち上げた事務所内の数字管理もずさんでした。会社としても個人としても、お金に対する基本のキから取り組まないと、大変なことになると思ったのです。

その頃、経済系の番組を持っていました。ただ、マクロ経済と比べ、自分のお金をどう回すかというミクロ経済がフォーカスされることは少なかった。財務省で国家予算を扱うような人でも、自分の家計のことはからっきしというパターンもありました。2000年を迎えて金融ビッグバンが叫ばれ、自分のお金は自分で守る時代が来ると強く感じました。

――02年にファイナンシャル・プランナー(FP)の資格を取得しました。

50歳を過ぎて覚える力は衰えていましたが、最後の1カ月は猛勉強しました。合格した時はうれしかったですね。FPの勉強をすれば、不動産、預貯金、投資、保険などが全般的にカバーできる。借金の繰り上げ返済や保険の見直しなどで、自分自身の生活パターンがリセットでき、事務所の経営も立て直せました。

FPでプロとして稼ぐのは大変ですが、自分のマネープランを見直すために、一般の方でも資格は取った方がいいと感じています。

インタビューに応じる生島ヒロシさん=山本倫子撮影

――相続の大切さを意識し始めた理由は何だったのでしょうか。

60歳くらいになって、周りの友人が相続トラブルに遭うようになりました。遺留分を巡ってきょうだいが争い、口もきかない関係になってしまったことがありました。あるファミリーはもめにもめて、少額の銀行振込手数料をどっちが払うかでもまとまらない。坊主憎けりゃ袈裟まで憎いとなってしまうんですね。

「うちの子に限ってそんなことはない」と言う方もいるかもしれません。でも、子どもも結婚や子育てや独立でお金がかかるようになれば、少しでも遺産が入った方がありがたいと思ってしまうわけです。

――トラブルを避けるためには、どうすればいいのでしょうか。

僕は、相続とはお金ではなく家族の幸せを考えることだと思っています。親にいくら資産があるかは、子どもの方からは言いにくいし、言うと「俺が死ぬのを待っているのか」というデリケートな問題になる。

まずは親が家族会議を開いて、自分自身の意向を伝えることが重要です。自分が持つプラスとマイナスの資産を確かめ、弁護士や税理士などに相談する。そして、意思を遺言書にまとめておくことです。今後は介護の問題もあるので、遺言書の付言事項をきちんと書くのが大切です。

――付言事項が大切とはよく言われていますね。

40~50代の子どもは子育てと介護を同時に抱える可能性もあります。例えば、自身の介護に備えて、延命治療の可否も含めた治療法まで遺言書に書いて、事前に伝えておいた方がいい。クオリティー・オブ・デス(死の質)というのを考えるべきではないでしょうか。

――生島さんは、長男の勇輝さん、次男の翔さんが俳優として活動中です。ご自身の相続については、どんな準備をしていますか。

我が家は生前贈与をしています。毎年110万円までの贈与は非課税ですが、それより少し余分に渡して、贈与税も納めています。課税記録を残す方が、後々もめないと考えています。

以前に多額の借金を背負ったことも含めて、お金に関しては息子にもオープンに話しています。人生100年時代を考えれば、息子たちの人生はあと60年以上あります。「生前贈与のお金だけで一生遊んで暮らせるわけではない。役者が好きなら、本業で食べていけるように頑張りなさい」と伝えています。

僕が亡くなった後の相続のことは、妻が心配しています。基本的なことは伝えてありますが、「早く遺言書をまとめて」とお願いされています。僕は20年12月で70歳になります。遺言書をまとめて、相続に必要なものがどこにあるかを整理するとスッキリすると思っています。20年中には書き上げたいですね。

11年の東日本大震災では、妹夫婦を津波で亡くしました。僕もちょうど仙台市で講演をしていて大変な思いをして東京にたどり着いた。もしかすると今日が最後かもしれないという覚悟は持っておかないといけません。

――生島さんは芸能界の第一線で活躍しています。父として先輩として、息子さんに引き継ぎたい想いはありますか。

僕はどん底に落ちたこともあるけど、周りの人に恵まれました。僕の事務所に所属するタレントの優木まおみ、モデルの朝比奈彩も、ここまで有名になるとは思いませんでした。芸能界は運と縁とタイミングがあるので、ヒットの方程式がないのが難しいところです。

「財産残して銅メダル、思い出残して銀メダル、生き方残して金メダル」という言葉が心に響いています。息子たちも頑張っていますが、役者の世界は競争が激しい。息子も僕の本は読んでいて、普通の家庭よりは親の生き様に触れています。「好きなことをやって、お金を稼いで、家庭を養って世の中から評価されるのが理想だよ」というのは再三伝えています。

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――相続に関して何から手を付けていいか分からない方も多いと思います。「相続会議」の読者に向けたメッセージをお願いします。

「自分たちはお金がないから」と考える人が多いですが、相続で裁判になるケースは、遺産総額が少ない家庭の方が多いのが現実です(編集部注:2018年度の司法統計によると、遺産分割裁判における遺産総額は、5千万円以下が7割超、うち1千万円以下が3割超)。

多額の遺産を持つ家族がもめないのは、それだけ相続の準備をしているからです。残された家族がお金でもめて、口もきかないというのは、親としても悲しいことです。相続について語り合うのは、家族のあり方を考えるきっかけになるのではないでしょうか。

一緒に旅行をしたり、ばかなことを言い合ったりした僕の仲間が最近、相次いで鬼籍に入りました。僕も人生のラストスパートですが、生涯現役で走り抜けたい。ラジオパーソナリティーの先輩である森本毅郎さんは80歳ですが、舌鋒が鋭くて頭はクリア。目標とする人がその年まで頑張っていますから。

ライザップのCMで体を鍛えましたが、トレーニングは今も続けていますよ(笑)。貯金と筋肉の「貯筋」を果たして、仲間と楽しみながら、いい形で次世代にバトンを渡そうと思います。

【生島ヒロシさんプロフィール】

1950年、宮城県気仙沼市生まれ。TBSアナウンサーとして活躍後に独立。「アッコにおまかせ!」「ミュージックステーション」などの司会を務める。現在はTBS系のラジオ番組「生島ヒロシのおはよう定食・おはよう一直線」のパーソナリティーで人気を博す。ファイナンシャル・プランナー、防災士などの資格も取得し、講演も盛んに行う。相続に関する著作は「この1冊で相続のことがまるごとわかる本」(大和書房)などがある。

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