目次

  1. 1. 遺産相続手続きの方法は?
  2. 2. 遺産相続の手続き全体の流れ【一覧表・チェックリスト】
  3. 3. 相続発生後7日~14日以内に行う手続き
    1. 3-1. 【すみやかに】死亡診断書や死体検案書の受け取り
    2. 3-2. 【7日以内】死亡届、火葬許可申請書の提出
    3. 3-3. 【10日または14日以内】国民年金、厚生年金の受給停止手続き
    4. 3-4. 【14日以内】健康保険の資格喪失の手続き
    5. 3-5. 【14日以内】介護保険の資格喪失の手続き
    6. 3-6. 【14日以内】世帯主変更届の提出
  4. 4. 期限はないが、なるべく早めに行う手続き
    1. 4-1. 【なるべく早く】遺言書の有無の確認、検認手続き
    2. 4-2. 【なるべく早く】相続人と相続財産の確定
    3. 4-3. 【なるべく早く】遺産分割協議
    4. 4-4. 【なるべく早く】相続財産の名義変更など
    5. 4-5. 【すみやかに】公共料金などの名義変更、解約手続き
  5. 5. 相続発生後3カ月~4カ月以内に行う手続き
    1. 5-1. 【3カ月以内】相続放棄や限定承認の申述
    2. 5-2. 【4カ月以内】所得税の準確定申告
  6. 6. 相続発生後10カ月~1年以内に行う手続き
    1. 6-1. 【10カ月以内】相続税の申告と納付
    2. 6-2. 【1年以内】遺留分侵害額請求
  7. 7. 相続発生後2年以内に行う手続き
    1. 7-1. 【2年以内】葬祭費や埋葬料の請求
    2. 7-2. 【2年以内】高額療養費の還付申請
    3. 7-3. 【2年以内】国民年金の死亡一時金請求
  8. 8. 相続発生後3年以内に行う手続き
    1. 8-1. 【3年以内】相続登記の申請
    2. 8-2. 【3年以内】生命保険の死亡保険金請求
  9. 9. 相続発生後5年以内に行う手続き
    1. 9-1. 【5年以内】遺族年金や寡婦年金、未支給年金の請求
  10. 10. 相続手続きの主な必要書類と取得場所は?
  11. 11. 相続手続きは自分でできる? 専門家に依頼するメリット
  12. 12. 相続手続きに関してよくある質問
  13. 13. まとめ 遺産相続の手続きに不安がある場合は弁護士に相談を

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遺産相続の手続きは、被相続人(亡くなった人)の遺言書の有無によって大きく2つに分かれます。

遺産相続の手続きの流れの図解。遺言書の有無によって大きく2つに分かれる
遺産相続の手続きの流れの図解。遺言書の有無によって大きく2つに分かれる

遺言書がある場合は、遺言書の内容に従って手続きを進めます。遺言書には主に自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があり、いずれも法的に有効であれば、効力は基本的に同じです。遺言書が複数残っている場合は、新しい日付のものが優先されます。

一方、遺言書がない場合は、法定相続人全員で話し合って遺産の分け方を決めます。これを「遺産分割協議」と言います。なお、遺言書があっても分割方法が指定されていない遺産がある場合や、遺言書が無効の場合も、同様に遺産分割協議が必要です。

遺産分割協議で合意が成立した場合、遺産の分け方を明記した「遺産分割協議書」を相続人全員で作成し、これに基づいて遺産の名義変更などの手続きを進めます。

遺産分割協議で合意が成立しない場合は、家庭裁判所での遺産分割調停に移行します。遺産分割調停とは、遺産の分け方について、家庭裁判所の調停委員と裁判官からなる調停委員会が相続人同士の話し合いを仲介し、合意をめざす手続きです。

遺産分割調停で合意が成立した場合、家庭裁判所が合意した内容を記載した「調停調書」を作成し、これに基づいて手続きを進めます。

遺産分割調停でも合意が成立しない場合は、遺産分割審判に移行します。遺産分割審判とは、裁判官が一切の事情を考慮して遺産の分け方を判断する手続きです。この場合は家庭裁判所が「審判書」を作成し、これに基づいて手続きを進めます。

遺産相続の全体的な手続きの内容と手続きまでの期限、主な手続き場所については、以下の表を参考にしてください。

【遺産相続に関する手続き一覧】
期限 手続きの内容  主な手続き場所
7日以内または14日以内 死亡診断書、死体検案書の受け取り
死亡届、火葬許可申請書の提出 市区町村役場
国民年金、厚生年金の受給停止手続き 年金事務所など
健康保険の資格喪失の手続き 市区町村役場
介護保険の資格喪失の手続き 市区町村役場
世帯主変更届の提出 市区町村役場
期限はないが、なるべく早めに 遺言書の有無の確認、検認手続き 公証役場、
家庭裁判所など
相続人と相続財産の確定 市区町村役場、
金融機関など
遺産分割協議
相続財産の名義変更など 金融機関など
公共料金などの名義変更、解約手続き 電力会社など
相続発生後3カ月~4カ月以内 相続放棄、限定承認の申述 家庭裁判所
所得税の準確定申告 税務署
相続発生後10カ月~1年以内 相続税の申告と納付 税務署
遺留分侵害額請求
相続発生後2年以内 葬祭費や埋葬料の請求 市区町村役場など
高額医療費の還付申請 市区町村役場など
死亡一時金の請求 年金事務所など
相続発生後3年以内 相続登記の申請 法務局
生命保険の死亡保険金請求 保険会社
相続発生後5年以内 遺族年金、寡婦年金、未支給年金の請求 年金事務所など

相続発生から7日以内、あるいは14日以内に行うべき手続きとしては以下があります。

死亡診断書と死体検案書は、人の死亡を医学的かつ法律的に証明するために医師が交付する文書です。いずれも記載される内容は同じで、効力に違いはありません。

死亡診断書は医師が生前に診療していた傷病に関連して死亡したと認める場合に発行されます。死体検案書はそれ以外の場合、たとえば死亡した状態で発見されて死因が不明な場合などに発行されます。

死亡診断書や死体検案書は、保険金の請求などさまざまな場面で提出を求められます。市区町村役場に提出する前に、必ず多めにコピーを取っておきましょう

死亡届とは、死亡の事実を市区町村役場に届け出る手続きです。亡くなった事実を知った日から7日以内に提出しなければなりません

死亡届は死亡診断書や死体検案書と一緒に医師から渡されるのが一般的で、A3サイズの紙の左半分が死亡届、右半分が死亡診断書または死体検案書になっています。必要事項を記入して、下記のいずれかの市区町村役場に提出しましょう。

  • 被相続人の死亡地
  • 被相続人の本籍地
  • 届出をする人の所在地

火葬許可申請書は、遺体を火葬するために必要な「火葬許可証」を受け取るための書類です。市区町村役場の窓口などで入手でき、死亡届と一緒に市区町村役場に提出します。

死亡届や火葬許可申請書の提出については、葬儀社が代行してくれるケースも多いため、葬儀社に確認するとよいでしょう。

被相続人が年金を受給していた場合、国民年金は14日以内、厚生年金は10日以内に受給停止の手続きをする必要があります。「受給権者死亡届(報告書)」を年金事務所または年金相談センターに提出しましょう。

受給権者死亡届(報告書)は、日本年金機構の公式ホームページからダウンロードするか、近くの年金事務所または年金相談センターの窓口で入手できます。

なお、日本年金機構に故人のマイナンバーが登録されている場合は、手続きは不要です。

健康保険の被保険者が亡くなった場合、加入していた保険に応じて、健康保険の資格喪失届を提出します。

国民健康保険や後期高齢者医療の場合は、死亡後14日以内に資格喪失届を被相続人の住所地の市区町村役場に提出します。国民健康保険以外の健康保険の場合は勤務先に連絡し、資格喪失届を提出してもらいます。

被相続人の被扶養者として健康保険に加入していた人は、新たに国民健康保険などへの加入手続きが必要です。

介護保険の被保険者が亡くなった場合は、死亡後14日以内に被相続人の住所地の市区町村役場に介護保険の資格喪失届を提出します。

なお、死亡届を提出したり被保険者証を返却したりするだけで手続きが完了する市区町村役場もありますので、事前に確認しましょう。

世帯主が亡くなった場合には、新しい世帯主へと登録変更するため、世帯主が亡くなった日から14日以内に「世帯主変更届(住民異動届)」を現居住地の市区町村役場に提出する必要があります。期限を過ぎると5万円以下の過料が科される可能性があるため注意してください。

なお、残る世帯員が1名の場合など、新しい世帯主が明確な場合は届出不要です

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期限はないものの、可能な限り早めに済ませておくべき手続きを紹介します。

遺言書があるかないかで相続手続きの方法が異なるため、なるべく早めに遺言書を探してください。自宅や貸金庫など、被相続人が大切なものを保管していそうな場所を探してみましょう。

また、遺言書が1989年1月1日以降に作成された公正証書遺言である場合は、相続人が最寄りの公証役場に出向いて遺言検索の申出をすれば、遺言の有無を確認できます。その際の必要書類は下記のとおりです。

  • 除籍謄本など、遺言者が死亡した事実を証明する書類
  • 遺言者の相続人であることを証明する戸籍謄本
  • マイナンバーカードなど、申出人の本人確認用の書類

遺言検索の結果、遺言書を保管している公証役場が明らかになれば、その公証役場に対して公正証書遺言の謄本を請求できます。

そのほか、2020年7月にスタートした「自筆証書遺言保管制度」によって、法務局に自筆証書遺言が保管されている可能性もあります。相続人などの請求権者が遺言書保管所(法務局)に「遺言書保管事実証明書」の交付請求をすれば、遺言書の保管の有無を確認できます。また、遺言書の写しである遺言者情報証明書の交付請求もできます。詳細は法務局の公式ホームページで確認してください。

なお、見つかった遺言書が自筆証書遺言で、自筆証書遺言保管制度を利用していない場合は、家庭裁判所で「検認」という手続きが必要です。検認とは、相続人に対して遺言の存在と内容を知らせるとともに、遺言書の形状や状態、日付、署名など、検認の日現在における遺言書の内容を明確にして、遺言書の偽造や変造を防止する手続きです。

検認手続きを怠ったり勝手に遺言書を開封したりした場合は、5万円以下の過料が科される可能性があります。遺言書は開封せず、すみやかに家庭裁判所に検認申立てをしてください。申立てに必要な書類は下記のとおりです。

  • 申立書
  • 遺言者の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本

なお、遺言者の配偶者や子ども以外が相続人になる場合は、追加で書類が必要となるため注意してください。

相続手続きを進めるにあたって、誰が相続人になるか、どのような相続があるかを明確にする必要があります。相続人と財産の調査方法は以下のとおりです。

【相続人の調査方法】
特に遺言書がない場合、相続手続きを進めるには相続人全員の協力が必要になるため、相続人の確定は必須です。

相続人を確定するには、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本や相続人の戸籍謄本を集めます。誰が相続人になるかは民法で定められています。被相続人の配偶者は常に相続人となり、それ以外の相続人は次の順位で決まります。

・第1順位:子および代襲相続人(孫など)
・第2順位:直系尊属(父母や祖父母など)
・第3順位:兄弟姉妹および代襲相続人(甥や姪)

先順位の相続人が一人でもいる場合、後順位の人は相続人になりません。たとえば、被相続人に子がいる場合は子が相続人となり、直系尊属(第2順位)や兄弟姉妹(第3順位)は相続人になりません。被相続人の子がすでに亡くなっている場合でも、その子の子(被相続人から見た孫)がいれば、孫が相続人になります。これを「代襲相続」と言います。

被相続人の配偶者や子ども以外が相続人となる場合は、さらに追加で戸籍謄本が必要になります。

なお、2024年3月1日に「戸籍の広域交付制度」が始まりました。従来は本籍地の市町村役場でしか戸籍謄本は取得できませんでしたが、この制度によって全国の市町村役場で自分や親、祖父母、子、孫など直系の親族の戸籍謄本を取得できるようになりました。

なお、被相続人の兄弟姉妹など直系ではない親族の戸籍類やコンピューター化されていない戸籍類は請求できません。また、郵送や代理人による請求はできません。

【相続財産の調査方法】
相続人の確定に並行して、相続財産の確定も進める必要があります。不動産や預金、株式などのプラスの財産だけではなく、借金などのマイナスの財産についても漏れなく調査しましょう。

被相続人の自宅を中心に、通帳や郵便物などを探すのが一般的な方法です。遺産の種類の一例は下記のとおりです。

  • 不動産
  • 現金
  • 預貯金
  • 有価証券
  • 自動車
  • 借入金
  • ローン
  • 保証債務

相続財産を調査した結果、借金を含む相当額の負債が見つかり、相続放棄や限定承認(プラスの遺産の範囲内で借金などマイナスの遺産を引き継ぐ手続き)をする可能性がある場合は、遺産分割協議や相続財産の名義変更はしないようにしましょう。このような相続財産の処分に該当する行為をしてしまうと、相続する意思があるとみなされて相続放棄や限定承認ができなくなります。これを「法定単純承認」と言います。

遺言書がない場合や、遺言書があっても分割方法が指定されていない遺産がある場合などには、法定相続人全員による遺産分割協議が必要です。遺産分割協議がまとまったら、「遺産分割協議書」という書面を作成します。

遺産分割協議書は相続税申告の手続きで必要となります。相続税の申告期限は「被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10カ月以内」なので、この期限までに協議を済ませておくのが望ましいです。

当事者間で協議がまとまらない場合やほかの相続人に連絡をとりたくない場合などは、弁護士に遺産分割協議の代理人を依頼できます。それでも協議がまとまらない場合は、家庭裁判所での遺産分割調停や審判に移行します。

遺産分割協議が成立して遺産の分け方が決まったら、それに従って相続財産の名義変更などをします。主な手続きを紹介します。

【預貯金の相続手続き】
まずは金融機関に電話などで死亡の連絡をします。そのあとは、金融機関が手続きの案内書類を郵送してくれるケースが多いので、その書類に従って手続きを進めていきます。主な必要書類は下記のとおりです。

  • 相続手続依頼書
  • 法定相続人の確認ができる戸籍謄本
  • 法定相続人全員の印鑑証明書

【株式などの相続手続き】
証券会社などに死亡の連絡を入れ、手続きの案内書類を取り寄せましょう。なお、被相続人の株式や投資信託を相続人の口座に移す際には、相続人もその証券会社での口座開設を求められるケースが多いです。主な必要書類は預貯金の相続手続きと同様です。

水道、ガス、電気などのライフラインや携帯電話、クレジットカード、サブスクリプションなどの名義変更や解約手続きを行いましょう。

相続発生から3カ月から4カ月以内に済ませるべき手続きについて紹介します。

被相続人が亡くなって相続が開始した場合、相続人は次の3つのうちいずれかを選択できます。

【単純承認】
「単純承認」とは、相続人が被相続人の不動産や預貯金などのプラスの財産や借金などのマイナスの財産をすべて受け継ぐことです。

【相続放棄】
「相続放棄」とは、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も一切受け継がないことです。自己のために相続の開始があったことを知ったとき(主に故人の死亡を知ったとき)から3カ月以内に、家庭裁判所で手続きを行う必要があります。

【限定承認】
「限定承認」とは、相続人が相続によって得たプラスの財産の限度で、借金などマイナスの財産の負担を受け継ぐことです。相続人全員が共同して家庭裁判所で手続きを行う必要があります。期限は相続放棄と同様、自己のために相続の開始があったことを知ったとき(主に故人の死亡を知ったとき)から3カ月以内です。

被相続人のマイナスの財産がプラスの財産よりも大きい場合は、相続放棄を検討すべきと言えます。

限定承認は被相続人の債務がどの程度あるか不明であり、財産が残る可能性もある場合などには選択肢の一つになります。ただし、相続人全員で手続きを行う必要がある、手続きが煩雑であるなどのデメリットがあるため、限定承認を選択する人は少数派です。

相続放棄と限定承認の手続きは相続に関する期限のなかでも特に短いので、迅速に相続財産を調査することが大切です。期限内に調査が間に合いそうにない場合は、家庭裁判所に期間を延ばしてもらいたい旨を申し立てる「相続の承認または放棄の期間の伸長の申立て」を検討しましょう。この手続きも、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3カ月以内にしなければなりません。

なお、相続放棄や限定承認を検討していても、相続財産である預貯金を引き出して自分のために使うなど相続財産の処分に該当する行為をすると、相続する意思があるとみなされて相続放棄や限定承認ができなくなるので注意が必要です。

被相続人が事業者だった場合などには、被相続人が生前に得ていた収入について、相続人が代わりに確定申告をする必要があります。これを「準確定申告」と言います。

相続人は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から4カ月以内に準確定申告と納税をしなければなりません。申告の対象となるのは、被相続人が亡くなった年の1月1日から死亡日までの所得です。

準確定申告の要否や手続きについては、税理士に相談するのがお勧めです。

【関連】準確定申告とは? やり方から期限、注意点、不要なケースまで解説 必要書類も紹介

相続発生後、10カ月から1年以内に行うべき手続きとしては以下があります。

相続税の申告は、原則として、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10カ月以内に行わなければなりません。期限を過ぎてしまうと無申告加算税や延滞税などのペナルティーが課されるため注意が必要です。

相続税の申告を専門家に依頼したい場合は、早めに税理士に相談しましょう。

「遺留分」とは、被相続人の兄弟姉妹を除き、配偶者や子ども、親などの法定相続人に最低限保障される遺産取得分を指します。遺留分を侵害された相続人は、遺言によって財産を取得した人などに対して、遺留分に相当する金銭の支払いを請求できます。これを「遺留分侵害額請求」と言います。

たとえば、被相続人の長男と長女、次男が法定相続人となるケースで、遺言に「すべての遺産を長男に相続させる」と書かれたとします。このような場合、長女や次男は長男に対して遺留分侵害額請求をすることで、最低限の遺産を受け取ることができます。

遺留分侵害額請求権の図解。最低限保障される遺留分を侵害された相続人は、遺言によって財産を取得した人に対して、遺留分に相当する金銭の支払いを請求できる
遺留分侵害額請求権の図解。最低限保障される遺留分を侵害された相続人は、遺言によって財産を取得した人に対して、遺留分に相当する金銭の支払いを請求できる

遺留分侵害額請求権は、相続の開始および遺留分を侵害する遺贈や贈与があったことを知ってから1年以内に行使しないと、時効により消滅します。また、これらの事実を知っていなかったとしても、相続開始から10年が経過すると請求できなくなります。

時効で権利が消滅しないように、遺言によって財産を取得した人などに対して、配達証明付内容証明郵便などで遺留分侵害額請求をする旨を通知するようにしましょう。

遺留分侵害額請求について専門家に依頼したい場合は、弁護士に相談してください。

【関連】遺留分とは? 最低限もらえる遺産の取得分! 請求できる人・計算方法・時効をわかりやすく解説

相続発生から2年以内に行うべき手続きとしては以下が挙げられます。

被相続人が国民健康保険や後期高齢者医療制度に加入していた場合は、葬儀を行った喪主などに対して葬祭費が支給されます。被相続人の住所地である市区町村役場に請求しましょう。

また、会社員などで健康保険に加入していた場合は、葬儀を行った喪主などに対して埋葬料や埋葬費が支給されます。手続きの詳細は被相続人の勤務先の管轄協会けんぽまたは健康保険組合に確認しましょう。

なお、早いケースでは被相続人が亡くなった日の翌日から2年を経過すると時効によりこれらの権利が消滅するため、早めに手続きをするようにしましょう。

高額療養費とは、国民健康保険、後期高齢者医療制度、健康保険の加入者が病院などで支払った金額が一定額を超えた場合に、超えた分の払戻しを請求できる制度です。本人の死亡後でも請求できるため、被相続人が自己負担した医療費が高額だった場合は申請しましょう。

なお、原則として診療月の翌月1日から2年が経過すると時効により請求の権利が消滅するため、早めに手続きをするようにしましょう。

死亡一時金は、死亡日の前日において、国民年金第1号被保険者の保険料納付済期間が36カ月以上ある人が死亡したときに遺族が受給できます。

ただし、死亡した人が老齢基礎年金などを受け取っていたとき、または遺族基礎年金を受け取る方がいる場合には、死亡一時金は受けられません。

なお、死亡一時金を受ける権利は、原則として被相続人が亡くなった日の翌日から2年を経過すると消滅するため、早めに手続きをしてください。

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相続発生から3年以内に行うべき手続きには以下があります。

不動産を相続した場合は、所有者の名義を変更する「相続登記」の手続きが必要です。2024年4月1日から相続登記が義務化され、下記の期間内に相続登記の申請をしなければならなくなりました。

  • 相続や遺言によって不動産を取得した相続人は、その所有権の取得を知った日から3年以内
  • 遺産分割が成立し、これによって不動産を取得した相続人は、遺産分割が成立した日から3年以内

いずれのケースでも、正当な理由なく義務に違反した場合は10万円以下の過料が科される可能性があります。2024年3月31日までに相続が開始している場合も、3年の猶予期間はあるものの、義務化の対象です。

不動産の相続登記は、法務局への申請が必要です。相続登記を専門家に依頼したい場合は司法書士に相談しましょう。

なお、遺産分割協議がまとまらないなどの理由で期限に間に合わない場合は「相続人申告登記」制度の利用が考えられます。

「相続人申告登記」とは、亡くなった人が所有していた不動産について、相続人が法務局に対して自分が相続人である旨を申告し、登記官が申し出た相続人の個人情報を登記記録に登記する手続きです。これによって相続登記の義務を履行したとみなされ、10万円以下の過料を回避できます。

被相続人が生命保険の被保険者になっていた場合、受取人に指定された人は死亡保険金を受け取ることができます。

保険証券などを参考に加入先の保険会社に問い合わせをして、請求手続きを行いましょう。加入先の保険会社が不明な場合は、一般社団法人生命保険協会の「生命保険契約照会制度」を利用すれば、同協会に加盟する全生命保険会社に対して一括で契約の有無を照会できます。

なお、生命保険金の請求権は、原則として故人が亡くなった日の翌日から3年を経過すると時効により消滅するため、早めの手続きをお勧めします。

相続発生から5年以内に行うべき手続きもあります。

「遺族年金」は、被相続人に生計を支えられていた遺族が受け取れる可能性がある年金です。また、遺族年金を受け取れない場合でも、被相続人に生計を支えられていた妻は、60歳から65歳になるまでの間は「寡婦年金」を受け取れる可能性があります。「未支給年金」は、被相続人と生計を同じくしていた遺族が受け取れる可能性がある年金です。

それぞれの受給要件は細かく決まっているため、日本年金機構の公式ホームページを確認してください。年金の種類によって手続きをする場所は異なるものの、市区町村役場や年金事務所、年金相談センターが主な手続き場所となります。

なお、原則として、遺族年金や寡婦年金を受ける権利は被相続人が亡くなった日の翌日から5年、未支給年金を受ける権利は被相続人の年金の支払日の翌月の初日から5年を経過すると時効により消滅するため、早めに手続きをすることが大切です。

相続手続きに際して必要な主な書類と取得場所は、以下の表を参考にしてください。

【相続手続きに必要な主な書類と取得場所】
書類名 取得場所
被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで) 本籍地の市区町村役場または最寄りの役所(広域交付制度を利用できる場合)
相続人全員の戸籍謄本  本籍地の市区町村役場または最寄りの役所(広域交付制度を利用できる場合)
被相続人の住民票の除票  被相続人の最後の住所地の市区町村役場
相続人全員の住民票  各相続人の住所地の市区町村役場
相続人全員の印鑑登録証明書  各相続人の住所地の市区町村役場
登記事項証明書(登記簿謄本)  全国の法務局
固定資産評価証明書  不動産所在地の税事務所や市区町村役場
遺言書の検認済証明書  被相続人の最後の住所地の家庭裁判所
残高証明書  各金融機関、各証券会社など

相続手続きは自分でも行えます。しかし、戸籍謄本の収集や相続財産の調査、遺産分割協議書の作成、預貯金の解約や不動産の相続登記、相続税申告など、さまざまな手続きを行うにはかなりの時間や労力を要します。

相続放棄や相続税申告など期限のある手続きも多く、仕事が忙しいなどの理由で後回しにすると不利益を被る可能性があります。また、被相続人を亡くしたばかりの状況で、期限に気をつけながら手続きを行うのは大きな負担を伴います。

専門家に依頼すれば、さまざまな手続きを一任できるため時間や手間を大きく削減できます。専門家に任せている安心感から、精神的な負担も軽減されるでしょう。

筆者も弁護士として相続手続きの依頼を数多く受けますが、「どのように手続きを進めたらよいのか不安だったので、サポートしてもらえて助かった」と言っていただけるケースが多いです。

相続手続きを自分で進めることに少しでも不安を感じた場合は、弁護士などの専門家への相談をお勧めします。

相続を依頼できる専門家は、主に弁護士、司法書士、税理士、行政書士です。専門家によって対応できる手続きが異なるため、相談内容に応じて専門家を選びましょう。

相続において各専門家が対応できる業務。対応できる業務は弁護士が最も多い
相続において各専門家が対応できる業務。対応できる業務は弁護士が最も多い

なお、相続に強い専門家に依頼すれば、他士業と連携してワンストップで対応してくれる場合や、連携先の士業を紹介してもらえることが多いです。筆者も相続手続きの依頼を受ける場合は、必要に応じて司法書士や税理士などを紹介しています。

Q. 相続放棄の手続きを弁護士や司法書士に代行してもらう場合の費用は?

相続放棄をする人1人につき、弁護士費用は5万円から10万円程度、司法書士費用は3万円から5万円程度が相場です。複数人でまとめて依頼する場合は、弁護士費用、司法書士費用のいずれにおいても減額してくれるケースがあります。

弁護士費用は司法書士費用より高くなる傾向にありますが、弁護士に依頼すれば相続放棄申述書の作成だけでなく、裁判所とのやりとりなど代理人としての対応も一任できます。

Q. 相続手続きをしなかったらどうなる?

一部の相続手続きについては、期限が経過すると不利益を被るおそれがあります。たとえば、相続放棄の期限が過ぎると、相続したものとみなされ、被相続人の借金をすべて背負わなければならなくなる可能性があります。

また、相続税申告の期限が過ぎると、無申告加算税や延滞税などが課されます。

期限がある手続きについては、早めに対応するように心がけてください。

Q. 相続手続きにかかる費用は誰が支払う?

市区町村役場への申請者や専門家への依頼者が負担するのが原則です。ただし、1人が申請や依頼をする場合でも、相続人同士の話し合いで合意できれば、遺産から支払うなどして相続人同士で分担して負担するケースもあります

遺産相続の際は、遺言書があればその内容に従って手続きを進め、遺言書がない場合は相続人同士で話し合って遺産の分け方を決めます。

遺産相続を進めるにあたっては、多くの手続きに対応しなければなりません。死亡届や火葬許可申請書の提出、世帯主変更届の提出など行政の手続きだけでなく、遺産の名義変更や相続税申告などの手続きもあります。必要書類を集めて期限内に手続きを終わらせるのは多大な時間と労力が必要になるため、専門家への依頼も検討しましょう。

弁護士や司法書士などに依頼すれば、大幅に時間と労力を削減でき、精神的な負担も軽減されます。自分で相続手続きを進めるのに不安がある場合は、早い段階で専門家への相談をお勧めします。

(記事は2026年9月1日時点の情報に基づいています)

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