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相続は弁護士と司法書士 どっちに相談すべき? 依頼できる業務範囲の違いと選び方
相続の相談をする場合に、弁護士と司法書士のどちらに依頼すべきでしょうか。それぞれ対応できる業務について弁護士が解説します。(c)Getty Images
相続について相談できる専門家としては、主に弁護士と司法書士が挙げられます。
弁護士と司法書士は業務範囲に違いがあるため、あなたが抱える悩みに対応できる方を相談先に選ぶことが重要です。たとえば、遺産の分け方を巡って相続人間で意見が割れているのであれば、司法書士は対応できないため、弁護士に依頼する必要があります。
今回は、遺産相続について弁護士と司法書士ができること・できないこと、さらに状況に応じて、弁護士と司法書士のどちらに依頼すべきかを弁護士がまとめました。
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1. 【一覧表】遺産相続は弁護士と司法書士、どっちに相談、依頼すべき?
遺産分割の話し合いがまとまらない場合や、トラブルを未然に防ぐ遺言書を作成したい場合など、トラブルの解決や回避に関することは弁護士に相談、依頼しましょう。相続人間のトラブル対応は弁護士のみが取り扱える業務です。
一方で、相続人間の関係性がきわめて円満であり、かつ相続財産の構成もシンプルで、トラブルの可能性がないと言える状況であれば、司法書士への依頼も有力な選択肢となります。
相続人・相続財産の調査や預貯金の解約払戻しなど、弁護士と司法書士のどちらに依頼してもよい業務もあります。相続トラブルの可能性が少しでもあれば弁護士、そうでなければ司法書士と決めて、すべての相続手続きを任せてしまうのがよいでしょう。
相続について、弁護士と司法書士が対応できる業務について一覧表にまとめましたので参考にして下さい。
相続で弁護士・司法書士が対応できる業務一覧表。相続間の紛争が起こっている場合は弁護士に相談するのがよい
なお、遺産分割協議書の作成や相続放棄の手続きについては、司法書士の業務範囲に制限がかかってる手続きもあります。これらの手続きを専門家に一任したい場合には、弁護士への依頼がお勧めです。
2. 遺産相続について弁護士に依頼できる業務、メリット・デメリット
弁護士は、相続に関する業務をほとんどすべて取り扱うことができます。依頼者の代理人として、書類作成や他の相続人との交渉、裁判所での手続きなど幅広い対応が可能です。特に、相続人同士の紛争が発生している場合には、司法書士では対応できないので、弁護士への依頼をお勧めします。
2-1. 遺産相続について弁護士ができること
弁護士は、法律事務を制限なく取り扱うことができます。実際の相続手続き・生前の相続対策のいずれについても、幅広い対応が可能です。
遺産相続について、弁護士が取り扱っている主な業務は以下の通りです。
- 相続人の調査
- 相続財産の調査
- 相続放棄の申立て
- 遺言検認の申立て
- 遺産分割協議の調整
- 遺産分割調停・審判の代理
- 遺産分割協議書の作成
- 遺留分侵害額請求
- 相続放棄の代理・サポート
- 遺言書の作成サポート
- 遺言執行者への就任 など
特に相続トラブルが起こりそうな場合や、すでに起こっている場合は、弁護士への相談が有効です。相続人間の紛争解決(遺産分割協議・調停・審判、遺留分侵害額請求など)を取り扱える点や、相続放棄の手続きを代理で行える点は、弁護士の強みと言えるでしょう。
2-2. 遺産相続について弁護士ができないこと
遺産相続に関する業務のうち、不動産の名義変更(相続登記)については、法的には弁護士も取り扱うことができますが、登記業務を専門としている司法書士に任せるケースが多いです。
相続税申告は税理士業務に属しているため、弁護士が取り扱うには、国税局長に対する通知を行う必要があります(税理士法51条1項)。国税局長への通知を行い、税理士業務を取り扱える弁護士は多数存在します。
しかし実際には、相続税申告を弁護士自身で担当するケースは少なく、税務の専門家である税理士を紹介することが多いです。そのため、遺産が多額で相続税申告が必要になりそうな場合は、税理士と連携している弁護士を探すとよいでしょう。
2-3. 遺産相続を弁護士に依頼するメリット
遺産相続を弁護士に依頼すると、主に以下のようなメリットがあります。
- 遺産分割の話し合いがスムーズに進みやすい
- 弁護士が窓口となるため、他の相続人と直接話す必要がなくなる
- 裁判手続きになった場合は、書類の作成・収集や交渉を任せられる
- 相続放棄や遺留分侵害額請求をすべきか判断してもらえる
- 遺言書の作成など、適切な生前対策を講じられる
お金が絡む相続では、たとえ仲のよい家族であっても、感情的になりトラブルに発展するケースは珍しくありません。弁護士が代理人として介入することで、法的な観点から公平な遺産分割を実現でき、話し合いがスムーズに進む可能性があります。
また、生前に弁護士に相談することで、遺言書の作成など将来のトラブルを見据えた相続対策を行うことができます。
2-4. 遺産相続を弁護士に依頼するデメリット
司法書士と比較した場合、弁護士は依頼費用が若干高くなりがちです。たとえば相続放棄であれば、弁護士に依頼する場合は10万円程度、司法書士の場合は5万円程度が標準的と思われます。
依頼費用の体系は個々の弁護士・司法書士が決めているので、一概に「弁護士だから高い」「司法書士だから安い」とは言えません。そのため、複数の弁護士・司法書士から見積もりを取って、比較しながら依頼先を決めることをお勧めします。
また、弁護士費用の方が司法書士費用よりも高いとしても、それは対応できる業務の範囲の違いを反映しているケースが多いです。たとえば相続放棄の場合、司法書士は家庭裁判所に提出する書類の作成までしかできないので、家庭裁判所とのやりとりは本人が行う必要があります。これに対して、弁護士に依頼すれば家庭裁判所とのやりとりまで代行してもらえます。
弁護士しか対応できないことを任せたいなら、費用が多少高くても弁護士に相談しましょう。
3. 遺産相続について司法書士に依頼できる業務、メリット・デメリット
紛争性のない相続であれば、司法書士に依頼するのも一つの選択肢です。ただし、途中で紛争が発生した場合には、弁護士への切り替えが必要となる点にご留意ください。
3-1. 遺産相続について司法書士ができること
司法書士は、紛争性のないものに限り、遺産相続に関する様々な業務を取り扱うことができます。
遺産相続について、司法書士が取り扱っている主な業務は、以下のとおりです。
- 相続人の調査
- 相続財産の調査
- 不動産の名義変更(相続登記)
- 遺言書の作成サポート
- 遺言執行者への就任 など
司法書士は登記業務を専門的に取り扱っているため、不動産の名義変更(相続登記)については大きな強みを持っています。
3-2. 遺産相続について司法書士ができないこと
司法書士は弁護士に比べると、遺産相続に関する対応業務の範囲が制限されています。相続において司法書士に依頼できないのは、主に以下のような業務です。
- 相続人間の紛争解決や交渉の代理
- 登記業務に関連しない遺産分割協議書の作成
※行政書士資格を併有している場合は対応可
- 相続放棄の代理申請
- 相続税申告 など
遺産分割協議書の作成については、司法書士は不動産が関係する相続に限って対応可能です。ただし、行政書士資格も持っている司法書士の場合は、登記業務に関連していなくても対応できます。なお、行政書士資格の有無にかかわらず、遺産分割の内容については司法書士はアドバイスや代理交渉ができないため、相続人同士で話し合って決めなければなりません。
また、相続人同士の紛争が発生した場合、司法書士は相談を含めて、一切の業務を取り扱うことができません(請求額140万円以下の遺留分侵害額請求等を除きます)。
相続放棄については書類作成のサポートは可能ですが、家庭裁判所への申述手続きを代理することはできません。したがって、相続放棄の申述書などは、相続人本人が家庭裁判所に提出する必要があります。
3-3. 遺産相続を司法書士に依頼するメリット
司法書士費用は弁護士費用よりも安い傾向にあるため、円満に相続手続きを終えることができれば、コストを削減できる可能性があります。
また、司法書士は登記業務をメインに取り扱っているため、不動産の件数が多い場合や、権利関係が複雑な場合でもスムーズに相続登記の手続きを進めてもらえるでしょう。
3-4. 遺産相続を司法書士に依頼するデメリット
司法書士に遺産相続を依頼する際、もっとも注意すべきポイントは、相続トラブルへの対応を依頼できない点です。
万が一、依頼の途中で相続トラブルが生じた際には、弁護士への依頼に切り替える必要があります。少しでも相続トラブルに発展する可能性がある場合には、当初から弁護士に依頼する方が、二度手間を防ぐことができるのでお勧めです。
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4. 弁護士と司法書士以外に相続手続きを依頼できる専門家|税理士・行政書士
弁護士と司法書士以外に、税理士や行政書士にも相続に関する手続きを依頼できます。
税理士は税務の専門家です。遺産が多く相続税申告が必要な場合には、税理士のサポートが不可欠です。税理士に依頼すれば、財産の調査・評価や相続税の計算、相続税申告書の作成などを一任できます。また、生前に相談すれば、遺言書や贈与などを活用した節税対策についてアドバイスを受けられます。
行政書士には相続人や相続財産の調査、預貯金の解約払戻し、有価証券や車の名義変更などを依頼できます。遺産の中に不動産がなく相続税申告も不要で、トラブルが生じていない場合は、行政書士に依頼すれば費用を抑えられる可能性があります。ただし、トラブルが起こった場合は弁護士、相続税申告が必要な場合は税理士、不動産の相続登記が必要な場合は司法書士への依頼が必要になります。
5. 相続に詳しい専門家の探し方・選び方
弁護士や司法書士などの専門家でも、全員が相続案件に詳しいとは限りません。以下のポイントに留意して、依頼先を選びましょう。
- 相続業務の知識や経験が豊富か
- 説明が丁寧で分かりやすいか
- 費用が明確で合理的か
- 他士業と連携しているか
- 無料相談を活用し自分の目で確かめる
5-1. 相続業務の知識や経験が豊富か
相続に関する対応は、相続業務の知識と経験が豊富な専門家を選んで依頼するのが安心です。ホームページやポータルサイトなどに掲載されている相続案件の実績や解説記事の内容は、依頼先を選定するにあたって参考となります。
5-2. 説明が丁寧で分かりやすいか
自分自身が納得できる形で相続手続きを進めるには、難しい事柄でも丁寧に分かりやすく説明してくれる専門家に依頼すべきです。無料相談などの際に、専門家と話をする中で信頼できるかどうかを見極めましょう。
5-3. 費用が明確で合理的か
専門家への依頼費用は、事務所によって異なります。依頼費用が不明確な場合や安すぎる場合は、高額な追加料金が発生したり、必要な対応を行ってもらえなかったりする可能性があるため注意が必要です。
信頼できそうな弁護士または司法書士を見つけたら、相見積もりを取得したうえで、明確かつ合理的な費用を提示したところに依頼するとよいでしょう。
5-4. 他士業と連携しているか
相続手続きは多岐にわたり、専門家ごとに対応できない業務も存在します。たとえば、司法書士に相続トラブルの相談をしても適切なアドバイスはもらえません。
相続トラブルは弁護士、相続登記は司法書士、相続税申告は税理士に依頼すべきですが、それぞれの専門家を自分で探して依頼するのは手間がかかります。
他士業と連携している専門家に相談すれば、対応できない業務があっても連携先の専門家に引き継いでもらえます。あらゆる手続きをワンストップで進めてもらえるため、手間を軽減できます。初回相談のときに連携状況を確認してみてください。
5-5. 無料相談を活用し自分の目で確かめる
上記で紹介したポイントを念頭に、実際に弁護士や司法書士に会って会話をすることで、信頼できるかどうか自分の目で確かめることが大切です。初回相談を無料で対応している事務所も多いため、気軽に足を運んでみるとよいでしょう。複数の事務所に相談して、比較することも有益です。
なお、インターネット上の口コミなどは参考程度にとどめましょう。口コミは投稿者の主観に過ぎず、事実に基づいたものかどうかも不明なためです。ネット上の情報だけでなく、実際に相談して相性などを確認しましょう。
6. 相続の相談先について関連して、よくある質問
Q. 相続について何もわからず、とりあえず相談したい場合、どこに相談すればよい?
業務範囲が最も広い弁護士に相談することをお勧めします。弁護士の中でも、相続に関する経験が豊かな人に相談するのが安心です。「相続会議」などのポータルサイトを参照して、相続の経験が豊富な弁護士を探してみましょう。
Q. 相続で司法書士にできて弁護士にできないことは何?
法律上認められた業務の範囲に関しては、司法書士にできて弁護士にできないことはありません。ただし実際には、不動産の相続登記を弁護士自ら取り扱うケースは少なく、司法書士に任せることが多いと思われます。
7. まとめ|お悩みの内容に応じて、弁護士と司法書士を使い分けよう
遺産相続については、各家庭の状況によって、弁護士と司法書士のどちらに依頼すべきかが異なります。依頼したい業務内容に応じて使い分けるのがよいでしょう。
弁護士・司法書士のいずれであっても、相続案件の実績が豊富で、かつ費用が合理的な専門家に依頼するのがもっとも安心です。また、あらゆる相続手続きをまとめて依頼したい場合は、他士業と連携している専門家を選べばワンストップで対応してもらえます。
実際に会って信頼性を確かめるため、まずは気軽に弁護士・司法書士の無料相談を利用してみましょう。
(記事は2025年10月1日時点の情報に基づいています)
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