目次

  1. 1. 相続放棄後の請求に支払い義務はない
  2. 2. 相続放棄をした後に債権者から請求が来た場合の対処法
    1. 2-1. 相続放棄が認められたことを伝える
    2. 2-2. 相続放棄申述受理通知書を提出する
    3. 2-3. 取り立てが続く場合は弁護士に相談する
  3. 3. 相続放棄をする前に請求がきた場合の対処法
  4. 4. 相続放棄をしても借金を返済する必要があるケース
    1. 4-1 亡くなった人の借金の連帯保証人になっていた
    2. 4-2. 正式な手続きをしていない場合
    3. 4-3. 相続放棄が無効な場合
    4. 4-4. 民事訴訟を起こされ裁判で負けた場合
  5. 5. 相続放棄が正しく行われたか確認する方法
  6. 6.相続放棄後の請求でよくある質問
  7. 7. まとめ 相続放棄は弁護士に相談を

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民法では、相続人は自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に、相続について単純承認、限定承認、相続放棄のいずれかをしなければならないと定められています。

単純承認とは被相続人(亡くなった人)の財産を無条件で全て相続することであり、限定承認とは相続によって得たプラスの財産の範囲内でマイナスの財産も引き継ぐことを言います。

これに対し、相続放棄をすると、相続人は初めから相続人とならなかったものとみなされ、被相続人の権利や義務を一切受け継がないことになります。そのため、相続放棄をした人は、その後に、亡くなった人の借金について債権者から請求を受けたとしても支払う義務はありません。

まずは「相続放棄をしたのに借金の請求が来た場合」の対処法を紹介します。

家庭裁判所で相続放棄の申述を行い、受理されたとしても、被相続人の債権者に通知が行くわけではありません。そのため、債権者はあなたが相続放棄をしたことを知らない可能性があります。

そんなときは慌てずに、債権者に対して相続放棄を行っている旨を伝えましょう。相続放棄をしたことを伝えれば、債権者も基本的にはそれ以上の請求はしてこないでしょう。

債権者の中には「相続放棄をしているなら、その証拠を提出して欲しい」と主張してくる人がいるかもしれません。そのような場合には「相続放棄受理通知書」を債権者に示すことで、相続放棄が行われていることを理解してもらえます。

もし手元に、相続受理通知書がない場合でも、相続放棄の申述をした家庭裁判所に申請することで、相続放棄が受理された旨の証明書を交付してもらうことが可能です。

亡くなった人の借入先がすでに分かっていて「いつか連絡が来るかもしれない」という状態が嫌だという場合には、あらかじめ相続放棄をしたことを、これらの書類を添えて通知しておくことで事前に対処することもできます。

相続放棄をしたことを伝え、証明書を提示しても取り立てが続くような場合には、弁護士に相談し、法的に支払う義務がないことを明示してもらいましょう。弁護士に依頼し、債権者との連絡を弁護士に任せることで、債権者と直接やりとりする必要がなくなり、精神的な負担も軽減できます。

また、万が一、借金を返済する必要があるかもしれないケースだったとしても、早めに相談することで今後の対策が立てやすくなります。

相続は突然発生するものなので、亡くなった人にどんな財産や債務があるか、相続人が把握していない場合も多いです。債権者からの請求によって、遺産に借金が含まれているのを知ることもよくあります。

自分が相続人になった場合には、亡くなった人にどんな財産があるかだけでなく、どんな債務があるかについても、よく調べておくようにしましょう。亡くなった人宛の郵便物や、預金通帳の取引履歴などから、債務の手がかりを見つけることができるケースもあります。

なお、相続放棄をする前に、債権者から請求を受けた場合であっても、相続放棄をすることは可能です。ただし、相続放棄は「被相続人が亡くなったことと、自分が相続人であることを知ったときから3ヶ月以内」にしなければなりませんので、この期間には十分注意しましょう。

相続放棄をしても、借金を返済しなければいけないケースもありますので、注意しましょう。

相続人が、亡くなった人の借金の連帯保証人になっていた場合には、相続放棄をしたとしても借金を返済する必要があります。

なぜならば、相続人自身が亡くなった人の連帯保証人となっている場合には、自己の連帯保証債務として借金を支払う義務を負うからです。この場合には、相続放棄をしたとしても、連帯保証人としての返済義務を免れることはできません。

相続放棄をするためには、被相続人が亡くなった後、亡くなった人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に相続放棄の申述をしなければなりません。

中には「他の相続人に、相続放棄をする、と伝えたので相続放棄をしたものだと思っていた」「兄弟で、兄が遺産を取得し、弟である自分は何ももらわないということで、話はついているので、相続放棄をしていると思っていた」などというケースもあります。しかし、相続人同士で話し合っただけでは、正式な相続放棄とは認められません。

また、「生前に遺留分を放棄する旨の手続きを裁判所に対して行っているので、相続放棄は行わなくてもいいのではないですか」という質問をお受けすることもありますが、遺留分の放棄の許可と相続放棄の申述は全く別の手続きです。遺留分放棄の許可は、亡くなった人の生存中に、亡くなった人の住所地の家庭裁判所に対して申立てをすることで、あらかじめ遺留分を放棄することができる制度のことです。

従って、仮に、遺言によって全財産が他の相続人に相続されることになったとしても、遺留分放棄者である法定相続人は、亡くなった人の負債を相続することになります。そのため、遺留分放棄の許可を受けている相続人であっても、亡くなった人の死後に、改めて相続放棄の申述を行う必要があります。

家庭裁判所に相続放棄の申述を行って受理された場合でも、実際には相続放棄の要件を満たしていなかったという場合には、相続放棄が無効だと判断される場合があります。

下記のようなケースでは遺産を相続したと見なされます。

  • 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき
  • 相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に限定承認又は相続放棄をしなかったとき
  • 相続人が、限定承認又は相続放棄後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録に記載しなかったとき

そのため、相続放棄をする前に、亡くなった人の財産を処分してしまっていた場合には、相続について単純承認をしていたと判断される可能性があります。相続放棄をした後に、亡くなった人の財産を隠匿したり、自分のために消費してしまっていたりというような場合でも同様です。

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債権者が相続放棄を無効だと考える場合には、相続放棄をした相続人に対して「亡くなった人の債務を支払え」という民事訴訟を提起してくる可能性があります。

この場合には、その民事訴訟手続きの中で、相続放棄が有効か無効かが判断されます。相続放棄が無効であると判断され、債権者の請求が認められた場合には、相続人は亡くなった人の債務を相続したとして、債権者に対して借金を支払わなければなりません。

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相続放棄が行われると、相続放棄した相続人は、法律上、初めから相続人ではなかったものとみなされるので、次順位の相続人が、法定相続人としての地位を取得することになります。

例えば、亡くなった人に子どもがいる場合、子どもが相続放棄をすると、亡くなった人の親が法的相続人になり、親も相続放棄をすると、亡くなった人の兄弟が法定相続人になります。

次順位の相続人が先順位の相続人と連絡が取れない状態にあるような場合、相続放棄の手続きが行われているかどうか分からないという状況になる可能性もあります。このような場合には、第二順位以降の相続人は、相続放棄の申述が行われているかどうかについて、亡くなった人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に照会することによって確認することができます。

Q. 相続放棄されると債権者は泣き寝入り?

相続放棄が有効な場合には、債権者は相続放棄をした相続人に対して、請求を行うことができません。ただし、その場合には、次順位の相続人が法定相続人になるため、次順位の相続人に対して、被相続人の借金の返済を請求することができます。

Q. 遺産の一部を相続したら返済の義務はどうなる?

遺産分割協議を行って、遺産の一部を相続するなど相続人が相続放棄を行わなかった場合には、亡くなった人の債務についても返済義務を負うことになります。その場合、借金のような債務については、法定相続割合に応じて、各相続人に分割されます。

例えば、相続人が2人いて、そのうちの1人が、亡くなった人の財産も債務も全て相続するというような遺産分割の合意を行ったとしても、債権者に対しては、それぞれが法定相続割合に応じて借金の返済義務を負うことになります。

Q. 返済してしまったお金は相続放棄後に返してもらえる?

相続放棄をした後に、債権者に支払ってしまったお金は原則、返してもらうことは難しいでしょう。民法では第三者弁済として、債務の弁済を債務者以外の第三者が行うことも認められているからです。

ただし、例えば、その弁済が他の相続人の意思に反しているような場合で、かつそれを債権者も知っているような場合など、第三者弁済が無効となる場合には、支払ったお金を返してもらえる可能性があります。また、債権者に騙されたり、暴行や脅迫によって支払を強制されたりした場合には、弁済を取り消して返金を請求することが可能です。

相続放棄をすれば、亡くなった人の借金の返済はしなくてよくなります。相続放棄をしたのに債権者から請求が来る場合「相続放棄をしたこと」をまず伝えましょう。「相続放棄の証拠を見せろ」と言われた場合には、家庭裁判所から発行される書類を提出するのも有効です。一方で、亡くなった人の連帯保証人になっていたり、相続放棄の手続きがきちんとできていなかったり、相続放棄が無効になったりしたケースでは、借金の返済を引き継がなくてはいけないので注意しましょう。

相続放棄の期限は「自分が相続人だと知ってから3ヶ月以内」です。悩みがある人は急いで弁護士に相談しましょう。

(記事は2024年4月1日時点の情報に基づいています)

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