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使い込みが起きるパターンとは

  • 前回は、相続人が見つからなかったり、不仲な状態で話し合いが進まなかったりする事例を解説しました。このほかに、どんなトラブルが起こりえると思いますか。

    ソーゾク博士
  • すぐには思い浮かばないなあ。

    長男・太郎
  • 財産のありかが分からないと、お互いに疑心暗鬼を招きそう。不仲だったらなおさらだ。

    父親・一郎
  • 親と同居しているきょうだいがいると、「もしかして、隠している財産があるんじゃないか?」と疑ってしまう人もいるかもしれませんね。

    博士
  • 相続が始まって、思ったよりも親の遺産が少なかったら、使い込みを疑うかもしれないな。

    一郎
  • 相続人が遺産を使い込む事例としては、亡くなった人の預貯金を勝手に出金する、亡くなった人の自宅にある現金を勝手に使う、亡くなった人の不動産収入を黙って受け取って隠す、というケースがよく見られます。

    博士
  • 隠れて使い込まれてしまうと、それを確認するのも難しそうだ。

    太郎
  • 遺産を隠されてしまうと、遺産分割の対象財産を正しく確定できず、公平な遺産分割ができなくなってしまいます。「遺産が少ない」と感じて開示を求めても、遺産を管理する相続人が応じるとは限りません。

    博士
  • じゃあ、どうやったら遺産を把握できるんですか。

    太郎
  • 一つの方法は、金融機関に取引履歴の開示を求めることです。ただ、亡くなった被相続人が取引していた金融機関を探して、それぞれで手続きを行う必要があります。このため、突き止めるためには、多大な労力がかかるかもしれません。

    博士
  • 一人じゃできなさそうだ。

    一郎
  • こういった事態を防ぐためにも、被相続人になる人は、元気なうちに、利用している金融機関をリストアップして、子どもたちに伝えることも考えてみてください。なお弁護士に依頼すると、「弁護士会照会」によって預貯金口座を探すことができるので、困ったら弁護士に相談しましょう。

    博士
  • 使い込みが分かったら、次はどんなアクションに移るのでしょう。

    一郎

使い込みが判明した際の対処法

  • まずは、お金を戻すよう話し合ってみてください。この際、使い込んだ金額や返還すべき金額を記録しておきましょう。返還に応じない場合には、遺産分割調停や審判とは別に、不当利得の返還を求めて民事訴訟を提起します。

    博士
  • たかが相続、されど相続だ。

    一郎
  • 不当利得返還請求権には時効があるので注意してください。遺産の使い込みを知った時から5年、または遺産が使い込まれた時から10年のいずれかが経過すると、不当利得の返還を請求できなくなります。

    博士
  • 訴訟になったら根気が必要になりそうですね。

    一郎
  • 訴訟では、使い込みの事実を立証できるかどうかがポイントの一つです。そのためには、しっかりとした証拠集めをしておかなければなりません。とは言っても、自分一人で進めるのはとても難しいでしょう。まずは、相続人同士でもめてしまった場合には、相続に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。

    博士

今回のソーゾク博士=ゆら総合法律事務所・弁護士阿部由羅さん、構成=相続会議編集部

■遺産隠しを疑ったら
・相続人同士で話し合う
・返還に応じないと訴訟も
・遺産の返還を求める際には時効に注意

(記事は朝日新聞土曜別刷り紙面「be」に掲載した内容を基に掲載しています。2023年3月1日時点での情報に基づきます)

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