目次

  1. 1. 土地や建物を含む相続手続き全体の流れ
    1. 1-1. 相続人と相続財産の調査
    2. 1-2. 遺言書の有無を確認
    3. 1-3. 遺産分割協議で分割方法を話し合う
    4. 1-4. 相続登記が必要 書類をそろえて法務局で手続き
    5. 1-5. 相続税の申告と納付は10カ月以内に税務署で行う
  2. 2. 土地や建物の遺産分割方法
    1. 2-1. 現物分割
    2. 2-2. 代償分割
    3. 2-3. 換価分割
    4. 2-4. 共有分割
  3. 3. 相続税を軽減する主な特例
    1. 3-1. 配偶者に対する相続税額の軽減
    2. 3-2. 小規模宅地等の特例
  4. 4. 相続した土地や建物を売却する手順
    1. 4-1. 不動産仲介業者に相談
    2. 4-2. 売却先の選定と価格交渉
    3. 4-3. 相続登記を完了する
    4. 4-4. 売買契約の締結と引渡し
  5. 5. 土地や建物の相続に関する主な相談先
    1. 5-1. 弁護士
    2. 5-2. 司法書士
    3. 5-3. 税理士
    4. 5-4. 不動産仲介業者
  6. 6. まとめ

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土地の相続手続きは、次のような流れで進みます。

  1. 相続人と相続財産の調査
  2. 遺言の有無を確認
  3. 遺産分割協議で分割方法を話し合う
  4. 相続登記
  5. 相続税申告
土地や建物を含む相続手続きの流れ
土地や建物を含む相続手続きの流れを図解。相続税は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10カ月以内に、亡くなった人の住所地の税務署に申告して納税します

遺産相続を適正かつ円滑に行うには、まずは「誰が相続人なのか」、「何が相続財産となるのか」を確定しなければならず、そのために相続人と相続財産の調査が必要となります。

被相続人(以下「亡くなった人」)の相続人が誰かは明らかだと思われるかもしれません。しかし、調べてみると婚外子など思わぬ相続人が出てくることも実際にありますので、調査が必要です。

相続人の調査をするためには、亡くなった人の出生から死亡までの戸籍謄本を調べます。戸籍謄本は、亡くなった人の本籍地である市町村役場で取得でき、郵送でも申請が可能です。

相続財産の調査をするためには、遺品などから亡くなった人名義の預金通帳や自動車、株式などの動産がないか調べていきます。自宅に届く証券会社や保険会社、金融機関からの郵便物も手掛かりになります。主だった銀行には、相続人であることを戸籍で証明して、口座の有無などを調べることもできます。

土地や建物については、固定資産税の課税通知書の有無や、土地や建物の所在地である市区町村役場で名寄帳の申請を行うことでも調べられます。なお、相続財産の調査では、借金などの負債についても把握することが重要で、これは信用情報機関に信用情報を紹介することでかなりの部分を調べられます。

遺言書がある場合には、原則としてその内容どおりに遺産分割が行われるため、遺言書がないか確認します。自筆証書遺言の場合には、自宅や遺品を隈なく探すことに加え、遺言書保管所(法務局)に請求することによって保管されている遺言がないかを確認できます。公正証書遺言の場合には、遺言検索システムによって確認することができます。遺言検索システムの利用請求は、全国どこでも最寄りの公証役場で可能です。

遺言書によって取得者が指定されていない遺産がある場合やそもそも遺言書がない場合には、相続人全員による遺産分割協議によって分割方法を決めます。遺産分割協議は、相続人全員が同じ場所に集まって行う必要はありませんが、遺産分割協議書には相続人全員の同意が必要となります。

遺産分割協議では、土地や建物といった不動産もほかの遺産と併せて分割方法を決めます。具体的な分割方法である「現物分割」「代償分割」「換価分割」「共有分割」については、後ほど解説していきます。

土地や建物を相続することになった場合、法務局で相続登記を行います。相続登記では、一般的には下記の書類が必要となります。

【①法定相続分どおりに相続する場合】

  • 亡くなった人の出生から死亡までの戸籍謄本
  • 亡くなった人の住民票の除票
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 相続人全員の住民票
  • 土地や建物の評価証明書

【②遺産分割協議によって相続する場合】
上記①の書類に加えて、以下の書類が必要となります。

  • 土地や建物を取得する相続人の住民票(土地や建物を取得しない相続人の住民票は必要ありません)
  • 遺産分割協議書
  • 相続人全員の印鑑証明書

【③遺言書に基づき相続する場合】
上記①の書類に加えて、以下の書類が必要となります。

  • 土地や建物を取得する相続人の住民票(土地や建物を取得しない相続人の住民票は必要ありません)
  • 遺言書

また、相続登記では、登録免許税の納付も行わなければなりません。登録免許税は、不動産価格×税率0.4%で計算され、100円未満を切り捨てることで算出できます。

登記手続きについては、主として司法書士が行いますが、弁護士に相続手続を依頼すれば、連携している司法書士の紹介を受けることができ解決までスムーズに進むことが多いです。まずは、登記手続を含めて弁護士に相談するのが良いでしょう。

【関連】相続登記の必要書類を一覧表で紹介! 有効期限は? 古い戸籍謄本や印鑑証明は使える?

なお、相続登記は2024年4月1日から改正不動産登記法の施行により、「相続の開始および所有権を取得した日から3年以内」に相続登記をしなければなりません。正当な理由なしに3年以内に相続登記をしなかった場合には、10万円以下の過料となる可能性があります。また、施行日前の相続についても登記義務が課されるため、早めに手続きを進めましょう。

【関連】相続登記の申請義務化が決定 2024年までに施行される制度を解説

相続税は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10カ月以内に、亡くなった人の住所地の税務署に申告して納税します。期限までに遺産分割が間に合わない場合には、概算額を、法定相続分に従って申告・納付します。

実際よりも多く申告・納付した場合も、更正の請求によって払い過ぎた相続税の還付が受けられるので、必ず期限までに申告・納付を行いましょう。

土地や建物の分割には、4つの方法があります。いずれの方法についてもメリットとデメリットがあるため、それぞれの事情によって適切な分割方法を弁護士などと選択しましょう。

現物分割とは、遺産を物理的に分ける方法です。土地は、分筆によって現物分割することが可能です。メリットは、代償分割と異なり土地を取得した相続人がほかの相続人に代償金を支払う必要がないことです。デメリットとしては、分け方が非常に難しく、相続人間で不満が生じやすいこと、測量などで多くの出費と手間がかかる点が挙げられます。

代償分割とは、相続人の一部のみが土地や建物を相続し、その代わりに相続する者はほかの相続人に対して代償金を支払う方法です。メリットは、建物など分割困難なものでも分割可能であること、先祖代々の土地などをそのまま承継していけることです。デメリットとしては、土地や建物を相続する者は代償金を負担しなければならないため、流動資産の乏しい相続の場合にはこの方法をとることが困難となること挙げられます。

換価分割とは、相続財産である土地や建物を売却することで現金に変え、その現金を相続人全員で分ける方法です。メリットは、現金となるため目に見える数字で分割でき、相続人間で不満が生じにくいことです。デメリットは、土地や建物を売却するため、土地や建物を現状のまま維持することはできないことです。

共有分割とは、土地や建物を相続人の共有名義とする方法です。メリットとしては、当面現状維持のような形で分割できることです。デメリットは、共有状態では対象となる土地や建物の売買の際に共有者全員の同意が必要となるなど、将来的に多くのトラブルが発生してしまう恐れがあることから、問題の先送りに過ぎないこと、共有状態のままさらに相続が発生すると問題がさらに複雑化することが挙げられます。

【関連】実家を共有名義で相続するとトラブルも 解決策を解説

遺産分割の4つの方法
遺産分割の4つの方法には「現物分割」「代償分割」「換価分割」「共有分割」があります。それぞれにメリットとデメリットが存在するので、十分な検討が必要です。

土地や建物の相続では、相続税が高額となるケースも少なくありません。そこで、相続税を軽減し得る特例として、配偶者に対する相続税額の軽減と小規模宅地等の特例を紹介します。

配偶者に対する相続税額の軽減とは、配偶者が相続した遺産については、「1億6000万円」もしくは「法定相続分相当額」のいずれか多い金額までは非課税になるというものです。

いずれか多い金額とは、難しい表現ですが、まずは1億6000万円までは非課税であり、1億6000万円を超えても法定相続分の範囲内であれば非課税であるということです。

この配偶者に対する相続税額の軽減を受けるためには、①法律上の配偶者であること、②相続税の申告書を提出すること、③遺産分割を終えていることが必要となります。

配偶者にかかる相続税の有無
配偶者にかかる相続税の有無を図解。1億6000万円までは非課税であり、1億6000万円を超えても法定相続分の範囲内であれば非課税であると認識しておきましょう

小規模宅地等の特例とは、相続した土地(建物は含まれません)の評価額を最大80%減額できるものです。

小規模宅地等の特例
小規模宅地等の特例を図解。小規模宅地等の特例の適用を受けることができれば、相続税が大幅に軽減されたり、ゼロになったりすることもあります

小規模宅地等の特例を利用するためには、「特定居住用宅地等」「特定事業用宅地等」「貸付事業用宅地等」に該当することが必要となります。どの類型に該当するかによって、限度面積、減額率が異なるため、相続する土地が小規模宅地等の特例を利用できるか、専門家に相談してしっかりと確認しましょう。

【関連】小規模宅地等の特例 評価額を引き下げ相続税節税 適用条件を解説​​

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相続した土地や建物を最終的に売却したいケースも考えられます。ここでは、相続した土地や建物を売却する一般的な手順を紹介していきます。

相続した土地や建物を売却する手順
相続した土地や建物を売却する手順。土地や建物を売却したい場合には、不動産仲介業者に依頼することが一般的です

土地や建物を売却したい場合には、不動産仲介業者に依頼することが一般的です。不動産仲介業者であれば、売却先の選定から、売買契約の締結や引渡しまで代行してもらうこともでき、大きな手間がかかりません。相続手続きを依頼している弁護士から不動産仲介業者の紹介を受けることもできるので、売却を検討している場合は弁護士に併せて相談してみてください。

不動産仲介業者宛に問い合わせのあった買主候補者との間で、売却価格や引渡し時期などの交渉を行っていきます。不動産仲介業者に依頼している場合は、不動産仲介業者を通して価格などの交渉を行うため、直接買主と交渉することはありません。

土地や建物を売却するにあたっては、売主が所有権登記(相続登記)を完了していなければなりません。一度も相続した土地や建物を使用・利用していない場合でも必須となるので、事前に相続登記をしっかりと行いましょう。

買主が決定したら、売買契約を締結します。売買契約に定められた実行日に代金の決済や引渡しを行い、同日付で買主への所有権移転登記手続きを行います。

トラブルが発生しやすい土地や建物の相続では、弁護士の総合的なサポートを受けるのが安心です。遺産分割協議や境界紛争などについても対応を一任できるほか、各種隣接士業の紹介を受けることも可能です。まずは弁護士に相談するのが良いでしょう。

登記手続きについては、主に司法書士が担当します。登記手続きのみの依頼の場合には、司法書士に依頼することも考えられます。

相続税については、税の専門家である税理士に相談するのがお勧めです。法律・紛争問題について弁護士に相談しつつ、税金については税理士と相談すると万全でしょう。弁護士に相談した場合には、相続税に精通した税理士の紹介を受けることが可能な場合も多いので、併せて相談すると良いです。

土地や建物の売却については、不動産仲介業者に相談するとスムーズです。弁護士経由で紹介を受けることも可能ですし、自分で査定を依頼することもできます。

土地や建物を相続する際には、遺産分割、相続登記、相続税申告など多くの手続きを経る必要があります。トラブルなく円滑に相続手続を終えるためにも、まずは弁護士を含む専門家へご相談ください。

(記事は2023年2月1日時点の情報に基づいています)

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