目次

  1. 1. 実家を相続する際の選択肢は?
    1. 1-1. 自分や親族が住む
    2. 1-2. 売却または賃貸に出す
    3. 1-3. 更地にして活用する
    4. 1-4. 相続放棄または限定承認する
  2. 2. 実家を相続するのに必要な手続きと覚えておくべき3つの期限
    1. 2-1. まずは財産状況調査と遺言書確認
    2. 2-2. 相続放棄や限定承認は3カ月以内
    3. 2-3. 準確定申告は4カ月以内
    4. 2-4. 相続税の申告と納付は10カ月以内
    5. 2-5. 遺産分割協議書や名義変更も早めに
  3. 3. 実家を相続したときにかかる税金
    1. 3-1. 相続税
    2. 3-2. 登録免許税
  4. 4. 実家を相続するとき考慮すべき相続税の節税方法
    1. 4‐1. 小規模宅地等の特例
    2. 4‐2. 配偶者の相続税額の軽減
    3. 4‐3. 相続空き家の3000万円特別控除
    4. 4‐4. 相続財産譲渡時の取得費の特例
  5. 5. 実家を相続する際の注意点
    1. 5-1. 共有はトラブルになりがち
    2. 5-2. 放置して空き家にしない
    3. 5-3. 相続財産をいかに平等に分けるか 
  6. 6. まとめ

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「実家の相続が発生した」ということは、つまり、親が亡くなったケースがほとんどだと思います。実家を相続することになった場合、以下のような選択肢が考えられます。

  • 自分や親族が住む
  • 売却または賃貸に出す
  • 更地にして活用する
  • 相続放棄または限定承認する

それぞれについて解説します。

実家を自分や親族が相続して住む場合は、固定資産税等の保有税が毎年かかってくることと、老朽化が進んでいる場合は、修繕が必要になることなどが注意点として挙げられます。

売却や賃貸を検討するなら、複数の不動産業者に相談してみるとよいでしょう。近隣の相場を確認して、どうするかを検討すべきです。立地条件がよく、借り手がすぐに見つかるような物件であれば、リフォームをして賃貸に出すというのも有効かもしれません。また、相続した空き家を売却する場合には、利益(譲渡所得)から最高3000万円を差し引く特例(税制優遇)もあります。

実家の建物を取り壊して更地にして土地活用を考える場合は、駐車場、アパート、ロードサイド店舗など、さまざまな活用方法が考えられます。その土地の広さや立地に合った活用方法を検討するとよいでしょう。ただし、建物の取り壊し費用が最低でも100万円前後かかることや、更地のままで放置しておくと固定資産税が最大6倍に跳ね上がる点には注意が必要です。

実家を相続したくないという場合、相続放棄は選択肢の一つですが、自宅だけ引き継がないということはできず、すべての相続財産を放棄することになるので注意が必要です。ただし、受取人になっている生命保険金などは受け取れます。

限定承認は、亡くなった人の借金などマイナス財産について、相続財産の中のプラス財産の限度で相続人が責任を負うというものです。ただ、手続きが非常に複雑なため、実際に利用する人は少ないというのが実情です。

相続放棄、限定承認ともに、手続きの期限は相続開始から3カ月以内です。

実家の相続を考える前提として、まず知っておくべきなのが、相続発生を知った時から、一定の期限までに行わなければいけない手続きが、いくつも発生するということです。

覚えておくべき期限は、3カ月、4カ月、10カ月です。

相続が発生してすぐにやるべきなのが、亡くなった人名義の財産状況を細かく調べることです。亡くなった人が契約していた金融機関(銀行、証券会社、保険会社など)にもすぐに連絡しましょう。特に、家族に内緒の借金がある場合などのように、調べるのに時間がかかる可能性もあります。

遺言書やエンディングノートがあるかどうかも、早めに確認しておくとよいでしょう。遺産分割そのものに期限はありませんが、スムーズに行うためにも、それらの有無は重要になります。自筆の遺言書があった場合は、すみやかに家庭裁判所に提出して「検認」の請求をしなければなりません。

正式な遺言書があれば、それをもとに分割するのが基本です。エンディングノートは法的な効力はありませんが、亡くなった親の意向を確認するのには役立つはずです。

親が亡くなってバタバタしている間に、あっという間にやってくる「3カ月」。これは、相続放棄や限定承認をする期限です。原則として、相続が開始したことを知った日から3カ月以内に、家庭裁判所に申述しなければなりません。

特に、亡くなった人が多額の借金をしていた場合に、相続放棄か限定承認を検討する必要があります。亡くなった人名義の財産に、プラスの財産だけでなく、マイナスの財産(借金など)があって、プラスよりもマイナスのほうが多ければ、3カ月以内に相続の相続放棄または限定承認をしないと、相続人が残った借金などを返済しなければならないからです。もし実家の相続を拒む場合は、急いで考える必要があります。

相続放棄は1人(単独)でもできますが、限定承認は相続人全員で行う必要があります。どちらにもメリットとデメリットがありますので、検討する際は相続に詳しい弁護士や司法書士などに相談すべきです。また、3カ月の期限を過ぎてしまうと、原則として単純承認となり、プラスとマイナスの財産すべてを相続することになります。

そして次の期限が「4カ月」。これは、亡くなった親の「準確定申告」の期限です。亡くなった年の1月1日から亡くなる日までの年金等の収入に対する所得税の確定申告です。

ただし、その年の年金収入が400万円以下で、その他の所得が20万円以内であれば、確定申告は不要です。なので、不動産所得などもあって所得が多い人や、医療費控除などで所得税の還付が受けられる人以外は、この準確定申告はあまり気にする必要はないかもしれません。

最後が「10カ月」。これは相続税の申告と納付の期限です。しかし、これも亡くなった人名義の財産が、「相続税の基礎控除」の範囲内であれば相続税はかかりませんし、申告の必要もありません。相続税の基礎控除は、「3000万円+法定相続人の人数×600万円」となっています。

相続税が本当にかからないのか、申告しなくていいのかは、きちんと調べる必要があります。不安な人は、相続税に詳しい税理士や税務署に相談するようにしましょう。

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相続税の申告のような期限はないものの、遺言書がなかった場合の遺産分割協議は、早めに進めておいたほうがよいでしょう。相続人が複数いる場合、それぞれが負担する相続税額にも影響してくるからです。

相続税がかからない場合でも、銀行や証券会社の口座を引き継いだり、実家の名義変更(相続登記)をしたりする際には、必ず遺産分割協議書や相続人全員の戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)、印鑑証明などが必要になります。早めに協議を始めるべきでしょう。協議書の作成については、相続に詳しい弁護士や司法書士、行政書士などに依頼できます。

また、遺産分割によって自分が実家を相続することが決まったら、まず相続登記することで、自分で住むだけでなく、売却や賃貸など、自由に処分できるようになります。なお、相続登記はこれまで義務ではありませんでしたが、2024年4月から義務化される予定です。3年以内に相続登記をしないと10万円以内の過料を科される可能性があります。

【関連記事】相続登記の費用の目安 登録免許税や司法書士の報酬を解説

実家を相続した際には、相続税と登録免許税がかかります。

亡くなった人名義の財産額を計算する際、現金や株式などの金融商品は基本的に時価でカウントしますが、実家を含め、土地や建物などの不動産の場合、建物は固定資産税評価額で算出されます。土地は相続税路線価による路線価方式か、固定資産税評価額をもとにした倍率方式のどちらかで計算される相続税評価額によってカウントされます。

登録免許税とは、登記手続きにかかる税金です。相続登記の場合は、不動産の固定資産税評価額の0.4%の税率が課されます。税率0.4%は、売買や贈与による所有権移転登記の際の登録免許税の税率2%と比べて、5分の1と低くなっています。

【関連記事】相続した不動産にかかる費用は?名義変更・登記から売却まで整理

実家を相続したときに使える節税方法としては、まず、小規模宅地等の特例があります。この特例は、通常、亡くなった人と同居していた配偶者などが受けられるもので、特定居住用宅地等に該当する土地は、330平方メートルまで80%評価額を減額してくれる制度です。

仮に1億円の評価額の土地だったとしても、80%減額されて2000万円で評価してもらえるのです。かなりの優遇だと言えます。ただし、この制度を、亡くなった人と同居していなかった子が使うためには、亡くなった人に配偶者がいないことや、マイホームを持っていないことなどの要件を満たす必要があります。

配偶者には、その婚姻期間の長短にかかわらず、相続税について大きな優遇が用意されています。それが、配偶者の相続税の税額軽減です。この制度があることで、配偶者は、相続した財産の金額が1億6000万円か、法定相続分相当額の、どちらか多い金額まで相続税は全くかかりません。

つまり、配偶者と子が相続人の場合、配偶者の法定相続分は2分の1になりますので、相続財産の評価額の合計が100億円だったとしても、配偶者は50億円までの相続なら、相続税は1円もかからないのです。

実家の相続の場合も、亡くなった人(例えば、父親)の配偶者(母親)が健在なのであれば、この配偶者の税額軽減を上手に使うことで、トータルの相続税を減らすことが可能でしょう。ただし、配偶者の税額軽減は、納税額がゼロでも確定申告が必要です。また、将来的に配偶者(母親など)が亡くなったときの相続(二次相続)の対策も必要になる可能性がある点には注意が必要です。

相続した実家が空き家の場合、一定の要件を満たすと、その空き家を売却(譲渡)したときに譲渡益から3000万円を差し引くことができる特別控除の制度があります。つまり、空き家を売ったことによる利益が3000万円以内なら、所得税がかからないということです。
主な要件としては、以下が挙げられます。

  • 昭和56年5月31日以前に建築された住宅であること
  • 相続開始直前に亡くなった人以外に住んでいた人がいないこと
  • 令和5年12月31日までの売却であること
  • 売却代金が1億円以下であること

相続した実家などの財産を一定期間内(相続税の申告期限から3年以内)に売却(譲渡)した場合に、相続税額の一部を取得費に加算できる制度があります。それが、相続財産譲渡時の取得費の特例です。

通常、譲渡益を計算する際には、売却代金から取得費や譲渡費用を差し引いて計算します。相続した財産の取得費は、原則として被相続人の取得費を引き継ぎます。このとき、この特例を使えば、相続税額の一部を取得費に加算して、譲渡益を少しでも減らせるわけです。なお、この取得費の特例は、相続空き家の3000万円特別控除と併用することはできません。

実家の土地建物を複数人で共有するようにしてしまうと、将来トラブルになる可能性もありますので、土地建物はあまり細かく分割しないほうが得策です。例えば、実家の不動産の持ち分を長男1/2、次男1/2としてしまうと、売却や賃貸に出すときの手間が増えますし、将来の長男や次男の相続の発生も考えると、親戚間のトラブルにも発展しかねないからです。

近年、空き家問題が深刻化し、2015年2月には「空き家対策特別措置法」が全面施行されました。相続した実家を空き家のままにして放置するのは、税負担が重くなったり、行政から費用負担を請求されたり、近隣から損害賠償請求を受ける可能性があったりと、多くのデメリットがあります。複数の専門家に相談して、その物件の状況に適した方法を選択するようにしましょう。

相続人にきょうだいがいる場合、実家を相続する人とそれ以外の人と相続財産を平等に分けることが難しい場合があります。現金などほかに相続財産があればいいですが、そうでない場合はトラブルになることがあります。相続した人が他の相続人に代償金を支払うことによって清算する「代償分割」も一つの選択肢となります。

相続では、短期間にさまざまな手続きをすませる必要があります。実家を相続する際には、実家に住むのか、売るのかなど、どう使うのかによって、その後の手続きや税金も変わってきます。迷うことがあれば、司法書士や弁護士、税理士などの専門家に早めに相談すると安心です。

(記事は2023年6月1日時点の情報に基づいています)

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