目次

  1. 1. 相続で覚えるべき三つの「期限」
  2. 2. 放棄や限定承認は3カ月以内
    1. 2-1. 故人の財産状況調査が必要に
  3. 3. 準確定申告は4カ月以内
  4. 4. 相続税の申告と納付は10カ月以内
    1. 4-1. 土地や建物の相続税評価方法
  5. 5. 実家の名義変更に必要な書類は
    1. 5-1. 遺産分割の法定相続分
  6. 6. 所有、売却、共有の注意点は
    1. 6-1. 空き家は放置せずに相談を

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「実家の相続が発生した」ということは、つまり、親が亡くなったケースがほとんどだと思います。実家の相続を考える前提として、まず知っておくべきなのが、相続発生を知った時から、期限までに行わなければいけない手続きが、いくつも発生するということです。

覚えておくべき期限は、「3カ月」、「4カ月」、「10カ月」です。

意外と早いのが「3カ月」。親が亡くなってバタバタしている間に、あっという間にやってきます。

これは、相続の「放棄」または「限定承認」をする期限です。原則として、相続が開始したことを知った日(=自分が相続人であることを知った日)から「3カ月以内」に、家庭裁判所に申述しなければなりません。

特に、亡くなった人が多額の借金をしていた場合に、「放棄」か「限定承認」を検討する必要があります。亡くなった人名義の財産に、プラスの財産だけでなく、マイナスの財産(借金など)があって、プラスよりもマイナスのほうが多ければ、3カ月以内に相続の「放棄」または「限定承認」をしないと、相続人が残った借金などを返済しなければならないからです。もし実家の相続を拒む場合は、急いで考える必要があります。

「放棄」は1人(単独)でもできますが、「限定承認」は相続人全員で行う必要があります。どちらにもメリットとデメリットがありますので、検討する際は相続に詳しい弁護士や司法書士などに相談すべきです。

したがって、相続が発生してすぐにやるべきなのが、亡くなった人名義の財産状況を細かく調べることです。亡くなった人が契約していた金融機関(銀行、証券会社、保険会社など)にもすぐに連絡しましょう。特に、家族に内緒の借金がある場合などのように、調べるのに時間がかかる可能性もあります。3カ月の期限を過ぎてしまうと、原則として「単純承認」となり、プラスとマイナスの財産すべてを相続することになります。

遺言書やエンディングノートがあるかどうかも、早めに確認しておくとよいでしょう。遺産分割そのものに期限はありませんが、スムーズに行うためにも、それらの有無は重要になります。自筆の遺言書があった場合は、すみやかに家庭裁判所に提出して「検認」の請求をしなければなりません。

正式な遺言書があれば、それをもとに分割するのが基本です。エンディングノートは法的な効力はありませんが、亡くなった親の意向を確認するのには役立つはずです。

そして次の期限が「4カ月」。これは、亡くなった親の「準確定申告」の期限です。亡くなった年の1月1日から亡くなる日までの年金等の収入に対する所得税の確定申告です。

ただし、その年の年金収入が400万円以下で、その他の所得が20万円以内であれば、確定申告は不要です。なので、不動産所得などもあって所得が多い人や、医療費控除などで所得税の還付が受けられる人以外は、この準確定申告はあまり気にする必要はないかもしれません。

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最後が「10カ月」。これは、「相続税の申告と納付」の期限です。しかし、これも亡くなった人名義の財産が、「相続税の基礎控除」の範囲内であれば相続税はかかりませんし、申告の必要もありません。

相続税の基礎控除は、2015年以降は「3000万円+(法定相続人の人数×600万円)」となっています。

例えば、「父親、母親、長男、次男」といった4人家族の父親が亡くなった場合の相続税の基礎控除は、3000万円+(3人×600万円)=4800万円 となります。父親名義の財産が4800万円以内であれば相続税はかかりませんし、申告の必要もありません。

国税庁が発表した相続税申告実績(2018年分)を見ても、1年間で亡くなった人が約136万人で、そのうち相続税の課税対象となったのは12万人弱でした。割合でいうと約8.5%。つまり、亡くなった人100人のうち、相続税を負担しなければならない人は8~9人といったところなのです。9割以上の人は、相続税とは無縁だと言えます。

とはいえ、相続税が本当にかからないのか、申告しなくていいのかは、きちんと調べる必要があります。不安な人は、相続税に詳しい税理士や税務署に相談するようにしましょう。

亡くなった人名義の財産額を計算する際、現金や預金、債券、株式、投資信託などの金融商品は基本的に時価でカウントします。死亡保険金や死亡退職金は、みなし相続財産として非課税枠(500万円×法定相続人の人数)を超えた部分がカウントされます。

実家を含め、土地や建物などの不動産の場合、建物は固定資産税評価額で算出されます。土地は相続税路線価による路線価方式か、固定資産税評価額による倍率方式のどちらかで計算される相続税評価額によってカウントされます。

相続税の申告のような期限はないものの、遺言書がなかった場合の遺産分割協議は、早めに進めておいたほうがよいでしょう。相続人が複数いる場合、それぞれが負担する相続税額にも影響してくるからです。

相続税がかからない場合でも、銀行や証券会社の口座を引き継いだり、実家の名義変更をしたりする際には、必ず遺産分割協議書や相続人全員の戸籍謄本、印鑑証明などが必要になります。早めに協議を始めるべきでしょう。協議書の作成については、相続に詳しい弁護士や司法書士、行政書士などに依頼できます。

なお、遺産分割の割合は、民法で法定相続分というものが決められています。

  • 配偶者と子が相続人なら、配偶者が1/2、子が1/2
  • 配偶者と親が相続人(子がいない場合)なら、配偶者が2/3、親が1/3
  • 配偶者と兄弟姉妹が相続人(子も親もいない場合)なら、配偶者が3/4、兄弟姉妹が1/4

※人数が複数いる場合は、人数で割ります。

したがって、4人家族(父親、母親、長男、次男)の父親が亡くなった場合の法定相続分は、母親が1/2、長男が1/4、次男が1/4となります。また、父親が先に亡くなっていて、今回、母親が亡くなったという場合の法定相続分は、長男が1/2、次男が1/2となります。

ただし、この法定相続分はあくまで目安なので、必ずしもこの割合で遺産を分割しなければならないわけではありません。相続人全員が納得できる分割割合であれば、どのような割合でも大丈夫です。実家の相続についても、分割協議で話し合う重要なテーマになります。もし、話し合いがまとまりそうもない場合は、早めに弁護士などに相談するとよいでしょう。

ここからは実家の相続を行う際のポイントを解説します。遺産分割によって自分が実家を相続することが決まったら、まず所有権移転登記をします。そうすることで自分で住むだけでなく、売却や賃貸など自由に処分できるようになります。

相続した実家に自分が住む場合の注意点としては、固定資産税等の保有税が毎年かかってくることと、老朽化が進んでいる場合は、修繕が必要になることなどが挙げられます。

売却や賃貸を検討するなら、複数の不動産業者に相談してみるとよいでしょう。近隣の相場を確認して、どうするかを検討すべきです。立地条件がよく、借り手がすぐに見つかるような物件であれば、リフォームをして賃貸に出すというのも有効かもしれません。

なお、実家の土地建物を複数人で共有するようにしてしまうと、将来トラブルになる可能性もありますので、土地建物はあまり細かく分割しないほうが得策です。例えば、実家の不動産の持ち分を長男1/2、次男1/2としてしまうと、売却や賃貸に出すときの手間が増えますし、将来の長男や次男の相続の発生も考えると、親戚間のトラブルにも発展しかねないからです。

近年、空き家問題が深刻化し、2015年2月には「空き家対策特別措置法」が全面施行されました。相続した実家を空き家のままにして放置するのは、税負担が重くなったり、行政から費用負担を請求されたり、近隣から損害賠償請求を受ける可能性があったりと、多くのデメリットがあります。

相続した空き家を売却する場合には、譲渡所得から最高3000万円を差し引く特例もありますので、詳しくは税理士や税務署に問い合わせるようにしましょう。とにかく、相続した実家を空き家として放置するのは得策ではありません。複数の専門家に相談して、その物件の状況に適した方法を選択するようにしましょう。

(記事は2020年5月1日現在の情報に基づきます)

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