どんな相続で税理士選びが必要か

相続が発生したからといって、必ずしも税理士に依頼が必要というわけではありません。一般的には以下のような事例において、税理士へ相談するケースが多くなります。

■争いがなく、話し合いのついている相続

相続に関して税理士が行える手続きは、相続税額のシミュレーションや節税提案、遺産分割に基づく相続税申告などです。遺産分割協議がまとまらない、いわゆる“争族”の中に介入することは「非弁行為」として弁護士法により禁止されています。

特定の相続人に肩を持つような行為は税理士法でも禁じられています。基本的に税理士へ依頼するのは、遺産分割がきちんとまとまりそうなケースです。

■「正味の遺産総額>基礎控除額」のとき

そもそも相続による正味の遺産総額(被相続人のプラスの財産から、負債などのマイナスの財産を控除した残額)が基礎控除額を下回っている場合には、相続税はゼロとなり、相続税の申告義務がありません。正味の遺産総額が基礎控除額よりも大きく、相続税の申告義務が生ずる場合に税理士へ依頼することが一般的です。

■小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減を適用するとき

申告義務の例外もあります。「小規模宅地等の特例」や「配偶者の税額軽減」の適用を受ける場合には、仮に納税額がゼロだったとしても相続税を申告しなければなりません。したがって、これらの特例や控除の適用などを受ける場合には、相続税申告を税理士へ依頼することが多いです。

■評価に専門知識が必要なとき

正味の遺産総額が基礎控除額を下回る場合には相続税の申告義務はありませんが、そもそも遺産総額の価値算定が複雑な事例も存在します。

たとえば相続財産に土地や自社株があるケースでは、専門的知識がないと、これらの評価額を算定することは困難です。そのような場合には申告義務の有無を判断するために税理士へ依頼する事例もあります。相続発生時だけでなく、生前にシミュレーションを行うケースも少なくありません。

相続で税理士に頼むメリット

次に相続を税理士に頼むメリットについて見ていきます。

■申告作業で時間や手間をかけずに済む

自分で相続税を申告する場合には、税金計算の流れを理解し、申告書の作成方法を調べながら作業を進めることとなります。仕事や育児などで忙しい場合には、それらの時間を確保することが難しくなるでしょう。このような場合、税理士へ依頼することにより、労力や時間的なコストを大幅に削減できます。

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■適切に節税してもらえる

先述した「小規模宅地等の特例」や「配偶者の税額軽減」をはじめ、相続税申告において特例や控除の適用を見落としてしまうと、納税額が大幅に増加するリスクがあります。

また、どの相続人が財産を承継するかによって、特例の適用可否が変わってしまうケースもあります。専門知識がないと、それらの適用要件を正確に判断することは容易ではありません。

税理士が申告手続きを行う場合には、適用可能な特例や控除など適切な提案ができるため、過度な相続税負担を避けることができます。

■申告ミスを防げる

特例や控除だけでなく、相続税を計算する上で必要となる財産評価の作業は複雑です。手続きが複雑な事例ほど、税理士へ依頼することによって、申告手続きにおけるミスや漏れを防ぐことができるでしょう。

■税務署からのお尋ねや税務調査にも立ち会ってもらえる

相続税申告の完了後、税務調査に入られることも珍しくありません。納税者自ら税務調査官に対応することは簡単ではないので、税理士に立ち会ってもらったほうがよいでしょう。すでに、申告手続きを依頼していた税理士であればスムーズな対応が可能です。

■二次相続などの相談にも乗ってもらえる

将来発生する二次相続を考慮せず、目の前にある相続税を安くすることばかりに執着してしまうことで、結果的にトータルでの納税額は増加してしまうケースが多々あります。税理士に相談することで、今回の相続だけでなく、将来の二次相続も踏まえた最適のプランを検討することができるでしょう。

相続に強い税理士のポイント

内科医や外科医など専門領域がある医師と同様に、すべての税理士が相続に詳しいとは限りません。したがって相続手続きを依頼する際には、以下のポイントに注意しながら「相続に強い税理士」を選ぶとよいでしょう。

■「相続税専門」を打ち出しているか

相続税申告を扱う税理士事務所は多数存在しますが、相続税を専門とする事務所とそれ以外の事務所では扱う案件数に差があり、当然、前者のほうが経験豊富であると想定されます。相続に強い税理士を探す際には、相続税専門の事務所を選んでみてください。

■相続の申告件数がどれくらいあるか

実務経験が豊富であるほどノウハウが蓄積されると考えられるため、税理士選びの際には相続税の申告実績を確認しましょう。税理士事務所の規模にもよりますが、年間で50件程度あれば安心です。

また担当となる職員が決まっているならば、その職員の税理士資格の有無や申告実績もヒアリングすることをおすすめします。税理士事務所によっては、「書面添付制度」を適用することで税務調査リスクの削減に取り組んでいます。

「書面添付制度」とは、詳細な計算や財産調査の内容を記した書類を申告時に添付することで、税務署によるチェックを円滑にする仕組みです。この制度を採用すると、税務調査が行われそうになったとき、申告手続きを行った税理士が意見を述べられるようになります。その結果、税務調査が行われないこともありえます。このような取り組みを行っているかどうかも判断基準のひとつとなるでしょう。

■相続の中で特化している分野があるか

相続では、国外に財産や相続人が存在する「国際相続」や農家の「農地相続」など、相続の中でもさらに専門分野に特化した税理士も存在します。特殊な内容を含む相続の場合には、その経験が豊富な事務所かどうか確認してみましょう。

■相続人の不安に寄り添えるかどうか

いざ相続が発生すると、財産の洗い出しや遺産分割、納税額など、相続人はさまざまな不安を抱えることになるでしょう。専門家は単に申告手続きを行うだけでなく、相続人に寄り添って不安を軽減する役割も担っています。相続の経験や実績だけでなく、気軽に相談できる税理士かどうかも重視するようにしてください。

相続に強い税理士の探し方

ここでは、相続に強い税理士の探し方について見ていきましょう。

■インターネットのウェブサイトやSNSを確認する

インターネット環境の普及に伴い、多くの税理士事務所はホームページを用意し、近年ではブログやSNSで情報発信を行う税理士も増えています。これらの媒体を通じて、事務所の特色や税理士の経歴、口コミなどを参考にするのもよいでしょう。

第三者から紹介を受けるケースも多いです。しかし、「知人からの紹介」という安心感がある一方で、万が一相性が合わなかった場合に断りづらいというデメリットもあります。紹介を受ける場合においても、事前にホームページなどを通じて情報収集を行うと安心です。

■いくつか面談して相性や信頼性を確認する

情報収集して候補が見つかったら、税理士事務所と面談を行います。面談の際には、実績や料金設定だけでなく、担当者が質問しやすく信頼できる人かも確認してみてください。また面談については1件のみで契約するのではなく、複数の事務所と面談を行い、じっくりと比較検討した上で選ぶことをおすすめします。

相続で税理士を選ぶときの注意点

最後に、相続で税理士を選ぶときの注意点についても見ておきましょう。

■注意点

相続人が中小企業の経営者や個人事業主の場合には、自らの顧問税理士に相続手続きを依頼するケースも多くなります。しかし税理士にも専門領域があり、特に法人税や所得税がメインの場合には、相続税申告は年に1~2件という事務所も珍しくないため、顧問税理士が相続に精通しているとは限りません。

また、誤解が多い点なのですが、「無料相談を受け付けている=親身な税理士」とは限りません。実績が少ないからこそ門戸を広げているケースも多く、反対に有料相談のみの事務所のほうが知識や経験が豊富で、門戸を狭めても充分な集客ができている可能性もあります。有料・無料問わず、選択肢を広げて税理士を探してみてください。

なお税理士選びの際には、料金設定についても入念に確認しましょう。事務所によっては基本料金に加え、さまざまな追加料金が加算されるケースもあります。ホームページに掲載されている料金ではなく、自身の相続手続きにかかる費用を確認し、税務調査や修正申告など、どのような場合に追加料金が発生するのか、必ず確認しておきましょう。

■必ず会って自分の目と耳で判断しよう

近年ではオンラインサービスやSNSを利用することで、直接会わずに契約することも可能ですが、相続の場合には手続きが複雑なだけでなく、財産状況や家族の関係性など、極めてプライベートな部分を共有することとなります。スキルや実績だけでなく、その税理士事務所や担当者の信頼性や相性も重要な要素。できる限り直接会って判断することをおすすめします。

(記事は2021年9月1日時点の情報に基づいています)