目次

  1. 1. 不動産の相続を弁護士に依頼するメリット
    1. 1-1. 状況に合った分割方法のアドバイスを受けられる
    2. 1-2. 不動産の価値を適切に評価してもらえる
    3. 1-3. 相続人間でもめた際に調整してもらえる
    4. 1-4. 遺産分割調停や審判の対応が可能となる
    5. 1-5. ほかの士業や不動産業者の紹介を受けられる
  2. 2. 不動産の相続についてよくあるトラブル
    1. 2-1. 分割方法についてもめてしまう
    2. 2-2. 不動産の価値評価について意見が分かれてしまう
    3. 2-3. 希望していない不動産を相続してしまう
  3. 3. 不動産相続の弁護士費用|着手金や報酬金
    1. 3-1. 着手金や報酬金
    2. 3-2. 不動産相続の弁護士費用の具体例
  4. 4. 弁護士に依頼する際のポイント
    1. 4-1. 不動産相続に関する経験豊富であること
    2. 4-2. 実際に会った際の相性が良さそうかどうか
    3. 4-3. ほかの士業や不動産業者との連携がとれているか
    4. 4-4. 弁護士費用を比較する
  5. 5. まとめ

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不動産の相続を弁護士に依頼することには、以下のようなメリットがあります。

  • 状況に合った分割方法のアドバイスを受けられる
  • 不動産の価値を適切に評価してもらえる
  • 相続人間でもめた際に調整してもらえる
  • 遺産分割調停や審判の対応が可能となる
  • 不動産業者など等の紹介を受けられる

不動産を相続した場合、不動産を分割する方法として、現物分割、代償分割、換価分割、共有分割の方法があります。

現物分割
一つの土地を相続人の数に応じて物理的に分割して分ける方法です。

代償分割
法定相続分を超える価値を有する不動産を、相続人の一人が相続する代わりに、法定相続分を超える金銭などをほかの相続人に支払う方法です。

換価分割
相続財産である不動産を売却して、売却代金を法定相続分に応じて相続人間で分配する方法です。

共有分割
遺産を複数の相続人の共有名義とする方法です。

相続人の置かれた状況によって、不動産をどの分割方法とするのが適切かは異なります。弁護士に相談することで、最も適切な分割方法について、具体的なアドバイスを求めることが可能となります。

たとえば、長男が不動産を取得することを希望するのであれば、代償分割を選択してほかの相続人にはそのほかの財産を譲る、または金銭的な補償をする場合の金額等の目安や算定方法のアドバイスをもらうことができます。

遺産分割の4つの方法
遺産分割の4つの方法を図解。相続人の置かれた状況によって、不動産をどの分割方法とするのが適切かは異なります

不動産の価値を評価する方法は複数存在します。具体的には、固定資産税、路線価や実勢価格といった算出方法があり、いずれの方法で算出するかによって、不動産の金額は異なってきます。

また、収益物件の場合には、収益力から価格を逆算する方法もあり、その金額の算定はなかなか困難です。どの方法により不動産の金額を算出するかにより遺産分割の結果に大きな影響を及ぼすこととなります。不動産や相続に精通した弁護士であれば、どの方法で金額を算出するのが適切であるかも含めて、相談に応じることが可能です。

相続は家族の問題ですから、まずは家族でよく話し合うことが一番です。しかし、私の経験上、一度意見が割れてしまうと、身近な相手だけに解決が困難になります。身近な相手方と厳しく意見を戦わせることは、長年の人間関係があるがゆえに困難であることも多いです。

そのような場合には、弁護士に依頼することで、相続人間の連絡や調整を弁護士が行い、これまで感情的なやりとりから解放されます。万一激しい対立が生じて紛争になってしまった場合でも、弁護士を間に挟むことで相手方と調整を行うことができ、遺産分割をまとめることが可能となる場合もあるでしょう。

不動産の分割方法について、相続人間でまとまらない場合には、家庭裁判所に調停を起こして、解決を求めることが必要となってきます。調停は、もめている相続人と交互に入れ替わる形で、調停委員2名を間に挟んで、不動産の分割方法等について話し会いを行うことになります。

調停は、あくまでも相続人間の話し合いになります。そのため、相続人間で不動産をどう分割するか合意できれば、合意のとおり解決できますが、相続人間で合意できなければ、審判に移行することとなります。審判は、裁判と同じようなもので、当事者の主張や証拠に基づいて、裁判官が遺産の分け方を強制的に判断します。

調停や審判になれば、寄与分や特別受益、さらには不動産や株価の評価などといった複雑な法律問題が発生します。このような対応を弁護士に依頼することで、適切な主張立証を行うことが可能となります。

不動産の分割方法が決まったとしても、不動産を相続しているため、相続登記を行う必要が出てきます。不動産の相続登記を行うには、不動産登記の専門家である司法書士の協力が必要となります。

また、相続税の申告を行う必要もありますので、相続税の申告のため、税理士に依頼をすることもあります。ほかにも、相続不動産を売却することとなれば、不動産業者に仲介を依頼することになるでしょう。また、多額の遺産がある場合には、税理士に依頼して相続税の申告などをする必要があります。

相続案件に強い税理士や、信頼できる不動産業者を選任することは、最終的な遺産の手取金額に大きな差を生むことがありますが、こういった士業や不動産会社を自ら探すことは一般的に困難です。

しかし、相続に精通した司法書士や税理士といった他士業や、不動産業者と連携している弁護士であれば、不動産の分割後の手続きもスムーズに行うことができます。そのため、不動産の分割方法が決まったあとも、自分で新たな専門家などを探す必要はありません。

不動産の相続に関しては、下記のようなトラブルがよく生じます。

不動産は一般的に高額であることが多く、遺産の大部分を不動産が占めることもあります。ただ、不動産は現物を全員で分けるという解決が困難で、誰か一人が相続してほかの者は代償金の支払いを受けることになりがちです。

しかも、不動産には明確な値札がついていませんから、いったいいくらの価値があるのかが評価の問題になります。そのため、相続人同士で誰が不動産を取得するか、その場合にいくらの代償金の支払いを受けるのかをめぐって争いになり、トラブルに発展することも多いです。

また、相続人の中に相続財産である不動産に居住している場合には、分割方法についてもめて、トラブルになることが予想されます。そのためにも、分割方法の協議を行うものとして、弁護士に依頼をして、分割方法の協議を行ったほうが良いでしょう。

不動産の価値を算定する方法が複数あることから、不動産の取得を希望する相続人は、不動産の価格を低く見積もり、代償金の支払い額を抑えようとします。

他方、不動産の取得を希望しない相続人は、不動産の価値を高く見積もり、自身が得られる代償金を高く求めることとなります。

不動産には明確な値段がなく、不動産の評価額が相続人間で意見が分かれることが不動産の絡む相続で紛争になってしまう大きな原因になっています。弁護士に依頼することで、ほかの相続人が主張する不動産の価格が適正妥当であるのかを適切に判断してもらうことができ、ほかの相続人との間で、不動産の価格について調整を図ることが可能となります。

過疎地に土地があるときなど、相続人の誰もが取得を希望しない土地を相続することもあります。

このような土地であっても、弁護士と提携している不動産業者に売却を依頼することで、不動産を処分することができることもあります。

また、令和5年4月27日に開始される相続土地国庫帰属制度により、土地を国に引き取ってもらうことも可能な場合があります。もっとも、同制度が利用できるか要件を検討する必要がありますので、この制度が利用できるかも、弁護士に依頼をして適切に判断してもらうと良いでしょう。

【関連】相続土地国庫帰属法とは  相続した土地を国に引き取ってもらう条件や手続きを解説

弁護士に遺産分割交渉や調停を依頼する場合には、着手金や報酬金が発生することが多いかと思います。着手金は、遺産分割を交渉するにあたり、弁護士に依頼することで発生する費用になります。報酬金は実際に遺産分割がまとまった場合などに、得られた相続財産の額に応じて報酬として支払われるものです。

具体的には、着手金や報酬金の算出方法は以下になるケースが多いです。

不動産相続の弁護士費用の目安
不動産相続の弁護士費用の目安の一覧。ほかにも、遺産分割協議や調停を行うにあたり、相続人調査を行うため戸籍の取得費用などの諸費用が発生します

たとえば、遺産総額8000万円で、自分の法定相続分が2分の1とした場合で、実際に得られた金額が3500万円となった場合、着手金や報酬金を上記の計算式に基づいて算出すると、以下のとおりとなります。(*着手金は、遺産の分け方の目安となる「法定相続分」、報奨金の場合は実際に遺産分割して得た金額に基づいて計算されるケースが多いです)

  • 着手金:4000万円×3%+69万円=189万円
  • 報酬金:3500万円×6%+138万円=348万円

上記の着手金や報酬金は、旧日本弁護士連合会報酬等基準となり、現在は、この基準に拘束されることはないため、具体的な事件に応じて上記の基準よりも多少抑えめの着手金や報酬金額とする事務所も多くあります。具体的な事件に応じて上記の基準の基準とおりの金額となることもありますので、具体的な金額は相談の際にしっかりと確認することが重要です。

このほかにも、遺産分割協議や調停を行うにあたり、相続人調査を行うため戸籍の取得費用や、裁判所に納める印紙代などの諸費用が発生します。弁護士に依頼する段階で、諸経費をあらかじめ支払う必要があることが多いかと思いますので、この点も確認をする必要があります。

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弁護士に不動産の相続を依頼し、手続きを円滑に進めるためには、以下の4つのポイントに注目しましょう。

弁護士により専門分野が異なるため、不動産が関わる相続問題について全員が精通しているとは限りません。不動産が絡んだ相続問題は、不動産に関する深い知識がないと適切な解決ができない場合があり、不動産相続に関する経験が豊富な弁護士に依頼したほうが、スムーズに適切な解決ができる可能性が高まります。

依頼しようとしている弁護士が不動産相続の経験が豊富かどうか、不動産相続に関する解決事例がどの程度あるか、得意分野として掲げているかなどの情報を、ホームページなどを見て事前に確認すると良いでしょう。また、実際に依頼するにあたっては、弁護士と直接面談をして、質問をして実績などを確認することも重要です。

遺産分割に関する手続きは数年に及ぶことが珍しくなく、長期間にわたって弁護士と関わっていくことになります。そのため、自身で弁護士に依頼する際、実際に会って弁護士の対応などをもとに、弁護士との相性が良さそうかどうかをふまえて依頼することが大切です。

先に述べたとおり、不動産を相続した場合、司法書士、税理士や不動産業者のサポートが必要となります。依頼する弁護士が、他士業や不動産業者と連携を図れている場合には、スムーズに手続きを進めることができるので、このような弁護士に依頼すると良いでしょう。

弁護士費用である着手金や報酬金の算出方法については、旧日本弁護士連合会報酬基準に従って算出する事務所もありますが、独自の基準により金額を算出する事務所もあります。依頼したあとに発生する金額がどの程度になるか、事務所により異なりますので、弁護士に依頼する際は、実際にかかる費用を明確に教えてもらいましょう。

不動産が絡んだ相続では、複数のトラブルが潜在的に存在していることから、弁護士に依頼することで、トラブルを回避することができるだけなく、円滑に手続きを進められることも可能となります。

そのため、不動産を相続した場合には、弁護士に依頼することで、状況に合った分割方法のアドバイスを受けられる、不動産の価値を適切に評価してもらえるなど、多数のメリットがありますので、早めに弁護士に相談したり依頼したりすることをお勧めします。

(記事は2023年4月1日時点の情報に基づいています)

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