お近くの相続対応可能な弁護士を探す
北海道・
東北
関東
甲信越・
北陸
東海
関西
中国・
四国
九州・
沖縄
1. 法定相続分とは| 遺産分割の目安となる割合
法定相続分とは、民法によって定められた遺産分割の割合のことで、「法定相続割合」とも呼ばれます。相続人が複数いる場合、遺産分割協議の際に誰がどのくらいの割合で遺産を相続するのかを考える「目安」として利用されることが多いです。それぞれの法定相続人の法定相続分は、亡くなった人(被相続人)との続柄によって決まります。
ただし、相続人全員で話し合って合意すれば、必ずしも法定相続分どおりに遺産を分ける必要はありません。
また、被相続人が有効な遺言書を残している場合は、原則として遺言書の内容が法定相続分より優先されます。
遺言もなく、相続人間の話し合いも決裂して家庭裁判所の「調停」や「審判」に持ち込まれた場合、特別受益や寄与分を考慮した具体的相続分に基づいて分けられることになります。なお、2023年4月の民法改正により、相続開始から10年を経過した後は、原則として法定相続分(または指定相続分)が基準になります(民法904条の3)。
2. 法定相続人にあたる人とは? 範囲と順位のルール
法定相続人になるのは、被相続人の配偶者や子、父母、兄弟姉妹などですが、全員が相続人になるわけではなく、民法で定められた「相続順位」に応じて、誰が相続人になるのかが決まります。
以下ではどういった人が具体的に法定相続人にあたるのか、法定相続人がどのように決まるのかみてみましょう。
2-1. 配偶者は常に法定相続人となる
亡くなった人に配偶者がいる場合、配偶者は必ず相続人となります。ただし相続人になれるのは「法律婚の配偶者」のみであり、事実婚の配偶者には相続権が認められません。
2-2. 配偶者以外の相続人には相続の順位がある
配偶者以外の家族(子ども、親、兄弟姉妹など)には、以下のように「優先順位(第1位〜第3位)」が決められています。配偶者がいる場合、配偶者と「最も順位が高い人」が相続人になります。
第1順位:子ども
第2順位:親
第3順位:兄弟姉妹
子どもは第1順位の法定相続人です。最も優先して相続人になるので、亡くなった人に子どもがいる場合は、子どもが必ず相続人となります。なお、子が被相続人が死亡した時点ですでに死亡している場合には、孫が代襲相続人として相続人になります。子どもがいない場合は、第2順位の親などの直系尊属が相続人になります。子どもなどの直系卑属も親などの直系尊属もいない場合、第3順位である兄弟姉妹が相続人になります。
法定相続人になる可能性のある人が複数いる場合、実際に相続人になれるのは子(第1順位)、親などの直系尊属(第2順位)、兄弟姉妹(第3順位)のうち最上位者のみです。たとえば子どもがいるなら親は相続人になりませんし、親がいるなら兄弟姉妹には相続権が認められません。同順位の相続人が複数いる場合は、全員が相続人になります。
相続順位の家系図の図解。配偶者は常に法定相続人となり、子どもは第1順位の法定相続人となります
2-3. すでに子どもや兄弟姉妹が亡くなっている場合は? 代襲相続のルール
代襲相続とは、相続人である子どもや兄弟姉妹が、被相続人より先に亡くなっている場合などに、その子ども(被相続人から見ると孫または甥・姪)が代わって相続する制度です。代襲相続人は、本来相続人になるはずだった人の相続分を引き継ぎます。
また、相続欠格や相続廃除によって相続権を失った場合も、相続権を失った人の子どもが「代襲相続」によって相続人になります。相続欠格とは、遺言書を偽造したり、被相続人を殺害したりするなど、民法891条に定められた事由にあたる行為をした人が、当然に相続権を失う制度です。相続廃除とは、被相続人に対する虐待や重大な侮辱などがあった場合に、被相続人の請求または遺言に基づき、家庭裁判所の審判によって推定相続人の相続権を失わせる制度です。
代襲相続人である孫も被相続人より先に死亡していた場合は、その子どもであるひ孫が代襲相続します。これを再代襲相続といいます。
なお、兄弟姉妹の場合、代襲相続は一代限りなので再代襲相続は起こりません。
また、相続放棄が行われても代襲相続は発生しません。子どもが相続放棄したら孫は代襲相続人にならず、ほかに子どもや孫がいなければ後順位の親や兄弟姉妹へ相続権が移ります。
3. 法定相続人にあたらない人の例
以下では法定相続人にあたらず、相続権がない人の例をご紹介します。
3-1. 離婚した元配偶者
死亡した時点で婚姻関係のない元配偶者は法定相続人になりません。ただし、元配偶者との間に生まれた「子ども」は、離婚後も変わらず第1順位の法定相続人となります。
3-2. 事実婚(内縁)の相手
法律婚の配偶者は法定相続人になりますが、事実婚(内縁)の相手は法定相続人ではありません。内縁の一方が死亡して内縁関係が解消した場合には、財産分与の規定を類推適用もできないと判断されているので、内縁の配偶者は相続人としての遺産相続はできないと言えます(最高裁平成12年3月10日決定)。
ただし、特別縁故者として遺産の一部または全部を受け取れる余地はあります。
3-3. 介護をしてくれた子どもの配偶者など
「息子や娘の配偶者(義理の息子や娘)が介護してくれた」といったケースであっても、子どもの配偶者には相続権が認められません。子どもの配偶者という関係だけでは、被相続人の法定相続人にはならないためです。
ただし、献身的に介護を行って遺産の維持形成に貢献した場合、介護した親族は相続人へ「特別寄与料」というお金を請求できる可能性があります(民法1050条)。
3-4. 再婚相手の子(連れ子)
再婚相手の子(連れ子)にも基本的に相続権がありません。
ただし、連れ子と養子縁組をしている場合、連れ子は「子ども」としての地位を取得するので、子どもとしての相続権が認められます。
3-5. 孫(代襲相続人である場合を除く)
孫は、法定相続人にあたらないのが原則です。ただし、子どもが親より先に死亡したり相続欠格や相続廃除によって相続権を失ったりした場合は、代襲相続によって孫が法定相続人になります。
また、孫を養子にすると、親子関係ができるので孫も相続人になります。
4. 【パターン別】誰がどの割合でもらえる?法定相続分の計算方法
法定相続分は相続人の組み合わせによって以下のように変わります。
| 相続人の組み合わせ |
配偶者の割合 |
配偶者以外の割合 |
| 配偶者 と 子ども(第1順位) |
2分の1 |
2分の1(全員で均等に分ける) |
| 配偶者 と 親(第2順位) |
3分の2 |
3分の1(全員で均等に分ける) |
| 配偶者 と 兄弟姉妹(第3順位) |
4分の3 |
4分の1(全員で均等に分ける) |
4-1. 配偶者と子どもが相続人の場合(第1順位)
遺産は配偶者と子どもたちで半分ずつ分けます。
【法定相続分の割合】
配偶者:2分の1
子ども:2分の1(子どもが複数いる場合は2分の1を全員で均等に分ける)
たとえば、配偶者と2人の子どもが相続人になる場合の法定相続分は、配偶者が2分の1、子どもがそれぞれ4分の1ずつです。
4-2. 配偶者と親(直系尊属)が相続人の場合(第2順位)
被相続人に子どもや代襲相続人である孫がおらず、両親(または祖父母)が存命している場合のパターンです。この場合、配偶者の取り分が少し大きくなります。
【法定相続分の割合】
配偶者:3分の2
親(直系尊属):3分の1(両親ともに健在な場合は、3分の1を2人で均等に分ける)
4-3. 配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合(第3順位)
被相続人に子ども(孫)がおらず、両親や祖父母もすでに他界しており、兄弟姉妹が相続人になるパターンです。この場合、配偶者の取り分がさらに大きくなります。
【法定相続分の割合】
配偶者:4分の3
兄弟姉妹:4分の1(兄弟姉妹が複数いる場合は、4分の1を全員で均等に分ける。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の2分の1)
4-4. 配偶者がいない場合
被相続人に配偶者がいない場合は、最も順位の高い相続人が遺産を相続します。
子どものみが相続人であれば、子どもが遺産のすべてを相続します。子どもが複数いる場合は均等に分けます。子どもがおらず親のみが相続人であれば、親が遺産のすべてを相続します。父母ともに存命の場合は、それぞれ2分の1ずつ相続します。
子どもや親がおらず、兄弟姉妹のみが相続人であれば、兄弟姉妹が遺産のすべてを相続します。兄弟姉妹が複数いる場合は均等に分けます。
5. 法定相続分と遺留分の違い
法定相続分と混同しやすいものに「遺留分」があります。法定相続分は遺産分割の目安となる割合であるのに対し、遺留分は一定の相続人に法律上保障された最低限の取り分です。両者は性質や役割が異なるので、違いを押さえておきましょう。
5-1. 遺言書は法定相続分より優先されるが、遺留分を侵害すると金銭請求を受ける可能性がある
遺留分は、被相続人の兄弟姉妹以外の法定相続人が相続できる遺産の最低保障割合です。遺留分は法定相続分とは異なり、遺言書によっても奪えません。
遺留分の割合は、誰が法定相続人なのかによって異なります。たとえば、配偶者と子どもが相続人の場合、遺留分は配偶者が4分の1、子どもは4分の1(子どもが複数いる場合は、その人数で等分する)です。
遺言などで遺留分を侵害された相続人は、その侵害額に相当する金額の支払いを請求できます。これを「遺留分侵害額請求」と言います。なお、故人の兄弟姉妹には遺留分はありません。
遺留分侵害額請求の具体例を図解。長男が遺言によって父親の全財産を相続した場合、長女と次男は遺留分侵害額請求をすることができる
5-2. 法定相続分と遺留分では「生前贈与(特別受益)」の扱いも異なる
遺留分と遺産分割の際の特別受益では、生前贈与の取り扱いも異なります。
遺留分の場合、遺留分侵害額請求の対象になる生前贈与には期間の制限があります。相続人に対する贈与は相続開始前の10年間にされたもの、相続人以外の第三者に対する贈与は相続開始前の1年間にされたものが対象です(民法1044条)。ただし、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をした場合には、この期間より前の贈与も対象になります。
一方、特別受益の場合には、原則として、贈与時期そのものによる一律の対象期間の制限はありません。死亡前20年に行われた生前贈与などであっても特別受益の持戻計算が行われます。
ただし、相続が始まってから10年が経過した後の遺産分割では、そもそも特別受益の持ち戻しを主張できなくなります。この点は次項で解説します。
6. 法定相続分で注意が必要なケース
6-1. 相続人の中に「養子」や「前妻・前夫の子」がいる場合
前妻・前夫との間に子がいる場合、親が離婚しても「親子」の血縁関係は切れないため、実子とまったく同じ割合の相続権(第1順位)を持ちます。
また、養子がいる場合、法律上の「子ども」となるため、実子とまったく同じ割合の相続権(第1順位)を持ちます。
6-2. 相続人の1人が「相続放棄」をした場合
相続放棄をする人がいると、全体の割合が変化します。相続放棄をした人は、法律上「最初から相続人ではなかった」ものとして扱われます。
たとえば、相続人が配偶者と子ども2人のケースで、子ども1人が相続放棄した場合、相続人は配偶者と残った子ども1人の2人だけになります。この場合、配偶者が2分の1、残った子どもが2分の1を相続します。
相続放棄した人に子どもがいても、その子どもは代襲相続人になりません。
6-3. 婚姻関係のない相手との間に生まれた子がいる場合
婚姻関係にない相手との間に生まれた子であっても、法律上の親子関係が認められれば、法律婚の配偶者との間の子どもと同じく第1順位の法定相続人となり、法定相続分も同じです。
たとえば、被相続人に法律婚の配偶者と子ども2人がおり、さらに法律上の親子関係が認められている子が1人いる場合、配偶者が2分の1、子ども3人がそれぞれ6分の1ずつ相続します。
一方、父親との親子関係が法律上認められていない場合、その子どもには相続権がありません。ただし、認知請求によって親子関係が認められれば、相続権を取得できる可能性があります(民法787条)。
6-4. 相続人が誰もいない場合
身寄りがない人の遺産は、最終的に国庫(国の財産)に帰属します。
ただし、生前に身の回りの世話をしていた人や、特別な絆があった人が家庭裁判所に申し立てをすることで、遺産の一部(または全部)を受け取れる仕組みがあります。
6-5. 相続開始から10年を経過している場合
2023年4月の民法改正により、相続開始から10年を経過した後の遺産分割では、原則として特別受益や寄与分を考慮した具体的相続分ではなく、法定相続分(または指定相続分)が基準となります。
注意したいのは、この改正は「遺産分割協議の期限が10年になった」という意味ではないという点です。10年を過ぎても遺産分割協議そのものはできます。変わるのは、分け方の基準が具体的相続分から法定相続分に切り替わるという点です。
なお、10年が経過した後でも、次の場合は具体的相続分による遺産分割が可能です。
- 10年が経過する前に、相続人が家庭裁判所へ遺産分割の請求(調停や審判の申し立て)をしていた場合
- 10年の期間満了前6カ月以内にやむを得ない事由で遺産分割の請求ができず、その事由がなくなってから6カ月以内に家庭裁判所へ請求した場合
- 相続人全員が具体的相続分による遺産分割をすることに合意した場合
この改正は、施行日より前に相続が始まっていた場合にも適用されます。ただし経過措置が設けられており、施行日から一定の猶予期間が確保されています。過去に相続が発生していて遺産分割が済んでいない場合は、早めに弁護士へ相談することをおすすめします。
7. 法定相続人でない人に財産を残す方法
遺産分割の際、相続人全員の合意があれば法定相続分に従う必要はありません。しかし、遺産分割協議だけで、相続人ではない人に遺産を相続させることはできません。遺産分割協議は相続人を中心に行うため、法定相続人しか相続できないのが原則です。
法定相続人以外の人へ財産を受け渡すには、以下のような手段をとりましょう。
7-1. 遺言書
遺言書によって法定相続人以外の人へ遺贈すれば、相手へ財産を受け継がせられます。相続の優先順番としては、遺言書、遺産分割協議、法定相続分の順となっており、遺産相続においては「遺言者の意思」が最優先されるのが原則です。
7-2. 生前贈与
生前贈与してしまえばその時点で財産が移転するので、法定相続人以外の人へも財産を受け継がせられます。なお、法定相続人以外への生前贈与は特別受益にはあたりませんが、遺留分を算定するための財産に算入され、遺留分侵害額請求の対象になる場合があります。
7-3. 家族信託
家族信託では、信託契約の内容を工夫することで、法定相続人以外の人に財産を承継させる仕組みを設けることもできます。たとえば、委託者の死亡後に受益権を取得する人や、信託終了時に残った財産を受け取る人を定めておく方法があります。
家族信託は家族内で「委託者=財産を預ける人」「受託者=財産を預かる人」「受益者=財産から利益を得る人」に分けることで、認知症対策や生前の相続対策として、幅広く活用できる仕組みです。
家族信託の仕組みの図解。「委託者=財産を預ける人」「受託者=財産を預かる人」「受益者=財産から利益を得る人」と考えると、覚えやすいでしょう
8. 法定相続分に関して、よくある質問
Q. 法定相続分通りに分けなかった場合、ペナルティーはある?
ペナルティーはありません。法定相続分はあくまで分け方の目安であり、相続人全員が合意すれば、1人の相続人にすべての遺産を集中させることも可能です。ただし、相続人のうち1人でも合意しなければ遺産分割は成立しません。
Q. 実家(不動産)しか遺産がない場合、法定相続分でどう分ければいい?
主な分割方法は、次の3つです。
●代償分割:1人が不動産を取得し、ほかの相続人に相続分に応じた金銭を支払う
●換価分割:売却して代金を分ける
●現物分割(共有):法定相続分どおりに共有する
ただし、共有は将来の売却や管理で全員の同意が必要になり、次の相続でさらに権利者が増えるため、慎重な検討が必要です。
Q. 借金などの「マイナスの財産」も、法定相続分で引き継がれる?
引き継がれます。借入金などの可分な金銭債務は、遺産分割を待たずに相続開始と同時に法定相続分に応じて各相続人へ承継されます。相続人間で「長男がすべての借金を負担する」と合意しても、その合意を債権者に主張することはできません。債務を引き継ぎたくない場合は、相続放棄や限定承認を検討することになります。
Q. ネット上にある「法定相続分の自動計算ツール」は使っても大丈夫?
おおよその割合を知る目安としては使えます。ただし、養子や代襲相続がある場合は入力の前提を誤りやすく、特別受益や寄与分を反映した実際の取り分までは算出できません。目安として活用しつつ、個別の事情がある場合は専門家に相談することをおすすめします。
9. まとめ
遺産分割の際には法定相続人が法定相続分に従って遺産を分け合うのが基本です。まずは法定相続人の範囲や順位、法定相続分を正しく理解することが大切です。
また、遺産分割協議や調停などで相続人同士がもめてしまうケースも多数あります。2024年4月からは相続登記も義務化され、遺産分割を先延ばしにするデメリットは大きくなっています。スムーズに遺産分割を行うためにも、早い段階で弁護士に相談しましょう。
(記事は2026年8月1日時点の情報に基づいています)
お近くの相続対応可能な弁護士を探す
北海道・
東北
関東
甲信越・
北陸
東海
関西
中国・
四国
九州・
沖縄