目次

  1. 1. 法テラスとは
  2. 2. 法テラスで利用できるサービス
    1. 2-1. 無料法律相談
    2. 2-2. 民事法律扶助(依頼費用の立替払い)
  3. 3. 法テラスを利用するための要件
    1. 3-1. 収入と資産の要件
    2. 3-2. 紛争解決の見込みがないとは言えないこと
    3. 3-3. 民事法律扶助の趣旨に適すること
  4. 4. 相続について法テラスで相談できること
    1. 4-1. 遺産分割について
    2. 4-2. 遺言書作成
    3. 4-3. 遺言書についての争い
    4. 4-4. 遺留分トラブル
    5. 4-5. 相続放棄、限定承認
  5. 5. 法テラスを利用する際の注意点
    1. 5-1. 自分で弁護士を選びたい場合は、先に弁護士へ相談を
    2. 5-2. 弁護士費用の立替金は返済が必要
  6. 6. 法テラスに相談する際に準備すべきもの
  7. 7. まとめ

「法テラス」とは、市民と法律の専門家(弁護士や司法書士)との距離を縮めるため、2006年に業務を開始した公的機関です。経済的に余裕のない人へ向けて、弁護士や司法書士による無料法律相談や報酬の立替払いを実施しています。

収入や資産が一定以下の人が法テラスを利用すると、無料で弁護士や司法書士に相談できたり、弁護士費用や司法書士費用を立て替えてもらえたりします。

法テラスの正式名称は「日本司法支援センター」です。各都道府県に設置されており、相続を含めたさまざまな法律問題について相談を受け付けています。

法テラスでは「無料法律相談」と「民事法律扶助(報酬の立替払い)」の2種類のサービスを利用できます。それぞれの概要を見てみましょう。

相続やその他の法律問題について、弁護士(または司法書士)に無料で相談できるサービスです。相談時間は1回あたり30分間程度で、同じトラブルの場合、3回までの相談が上限となります。

弁護士(または司法書士)に相続をはじめとする問題の解決を依頼することになった場合に、依頼費用を立て替えてもらえるサービスです。法テラスが着手金や実費などの費用を立て替えてくれるので、依頼者は直接弁護士などにお金を払う必要がありません。立て替えてもらったお金は月々1万円程度ずつ法テラスへ返済していきます。

以上のように法テラスでは無料法律相談や費用の立替サービスを利用できるので、手元に資金がない場合でも弁護士や司法書士などの専門家へアクセスできます。お金のことが心配で弁護士への依頼が難しい人は、法テラスの利用を検討すると良いでしょう。

法テラスはお金がない人のための制度なので、誰でも利用できるわけではありません。

以下で法テラスを利用するための3つの要件をご紹介します。

まずは収入と資産の要件を満たさねば法テラスを利用できません。つまり収入や資産が一定以下でないといけないのです。

たとえば、4人家族の場合、手取り月収額の基準は、東京や大阪などの大都市では32万円8900円以下、そのほかの地域では29万9000円以下と基準があります。資産についても同様に4人家族の場合、資産300万円以下であることが条件になります。それぞれの要件は以下の表のとおりです。

法テラスを利用する際の収入の要件
法テラスを利用する際の収入の要件の一覧。家族が5人以上になる場合、同居家族が1名増えるごとに基準額に3万円(3万3000円)を加算します

なお、申込者や生計を同一にする家族が家賃や住宅ローンを負担している場合、その金額のうち一定額を加算することができます。

法テラスを利用する際の資産の要件
法テラスを利用する際の資産の要件の一覧。世帯人数が2人の場合、資産合計額の基準は250万円以下となります

なお、訴訟における争いの対象となっている係争物件は「資産」に含めずカウントするので、取得できる予定の遺産が高額な場合でも、今資産がなければ法テラスを利用できる可能性があります。

収入と資産の要件を満たさず、相続に不安やトラブルを抱えている方は、通常の弁護士事務所への相談を検討してください。初回無料の事務所もあります。

協議や調停、審判、訴訟などによって紛争解決の見込みがないとは言えないことが必要です。ただし、この基準は緩やかに判断されるので、実際に問題になることはあまりありません。

不当な目的による法テラスの利用は認められません。たとえば報復する目的や宣伝目的の場合、権利濫用的な訴訟の場合などの場合には法テラスを利用できないと考えましょう。

一般的な相続問題のトラブルであれば問題になることはまずありません。

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相続については、法テラスで以下のような相談ができます。

遺産分割協議書の作成、遺産分割トラブルになった場合の調停や審判、協議の代理などを、法テラスを通じて弁護士に相談や依頼ができます。

遺言書を作成してもらいたい場合の相談や費用立て替えサービスも利用できます。

遺言書が無効ではないかが争いになった場合などにも、法テラスを通じて弁護士へ相談や依頼ができます。

遺留分を巡ってトラブルになった場合にも法テラスを利用できます。遺留分とは法定相続人に最低限保障される遺産取得分で​​、この権利は遺言書によっても奪うことはできません​​。ただし、故人のきょうだいは相続人であっても遺留分は認められていません。

関連記事:遺留分とは 相続で最低もらえる遺産 請求できる相続人の範囲・割合・計算方法を解説

相続放棄や限定承認の手続きを依頼する際の費用も援助してもらえます。

法テラスを通じて弁護士に依頼する場合、以下のような点に注意しましょう。

法テラスでは弁護士を選べるとは限りません。特に法テラスの事務所で相談すると、法テラス側が弁護士を割り当てるため、自分で弁護士を選べません。自分で弁護士を選びたい場合には、「法テラスの契約弁護士」を探しましょう。契約弁護士であれば、相談した弁護士を通じて法テラスの利用を申し込んでもらえます。担当者はその弁護士になります。

たとえばホームページ検索などで気に入った弁護士を探し、その弁護士が法テラスと契約していたらその弁護士に法テラスを通じて依頼できるのです。

弁護士を選びたい場合には法テラスの窓口へ行くのではなく、契約弁護士を探して相談しましょう。

法テラスの相談は無料ですが、民事法律扶助は無料ではありません。あくまでも「立替サービス」なので、援助された費用は返還する必要があります(ただし生活保護者の場合、償還、つまり返却が無期限に猶予されます)。

立替金の償還方法は、事件進行中は毎月1万円または5000円ずつ、事件終了後は原則3年以内に分割返済することになっています。遺産分割などによって遺産を取得した場合には、得られたお金から一気任意整理し法テラスへ返済します。

繰り返しになりますが、民事法律扶助は「無料になるサービス」ではないので注意しましょう。償還が遅れると取り立てを受ける場合もあります。

法テラスに相談するときには、以下のようなものをご準備ください。

・相談内容に関する資料
遺産の内容がわかる資料(遺産目録など)、相続関係説明図、時系列にまとめたメモ、相談したい内容をまとめたメモなどがあると良いでしょう。

・収入や資産の状況がわかる資料
給与明細書や源泉徴収票、確定申告書の控えなどを用意しましょう。

・本人確認書類
免許証や保険証などを用意してください。

なお、相談内容に関する資料については「できるだけ充実している」ほうが良いですが、必ず全部そろえなければならないわけではありません。準備できずに相談が遅れるくらいなら、早めに相談に行ったほうが良いケースもあります。どこまで何をそろえたら良いかは、相談前に弁護士に確認すると良いでしょう。

相続問題について、弁護士に相談や依頼する費用が用意できない場合は、法テラスの利用を検討しましょう。自分で弁護士を選びたい場合には、法テラスへ行く前に契約弁護士を探して相談するのが得策です。契約弁護士には法テラスを使って無料で相談できるので、まずはホームページなどで法テラスの契約弁護士を探して相談を申し込んでみてください。

ただし、すでに述べたとおり、法テラスを利用するには収入や資産が一定以下である必要があります。収入と資産の要件を満たさない場合は、「相続会議」の弁護士検索サービスをぜひご活用ください。無料相談対応事務所も多数掲載​​しています。​​

(記事は2023年1月1日時点の情報に基づいています)