遺留分に配慮した遺言 もめ事を避けるためには
財産を相続する際、配偶者や子といった方には、法律で保証された「遺留分」があります。どういったものなのでしょう。遺留分に配慮した遺言の考え方とともに説明します。
財産を相続する際、配偶者や子といった方には、法律で保証された「遺留分」があります。どういったものなのでしょう。遺留分に配慮した遺言の考え方とともに説明します。
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遺留分とは、生前贈与や遺言の中で意思を示し、特定の人に財産を遺しても、ほかの相続人が最低限の遺産を確保できるようにするための制度です。例えば、兄弟姉妹以外の相続人は、相続財産の一定の割合を取得できる権利が保障されています。
なぜこのような制度ができたのでしょうか。具体例をみながら説明していきます。
遺言者である夫40歳、妻35歳、長男15歳、長女13歳の家族がいたとします。夫は遺言書を作成して、恋愛感情のある女性に全財産を譲る内容の遺言書を書いて、もしも亡くなってしまった場合、遺された妻や未成年の子供たちは、全く財産がなく、生活に困窮してしまいます・・・・。
こういった困った状態を防ぐために、亡くなった方と関係の近い親族に遺留分を保障する制度を設け、生活に困らないようにしたのです。
遺留分の権利があるのは、配偶者と子、父や母といった直系尊属です。
相続分を計算するには、相続財産の価額に法定相続分をかけて計算します。相続人が遺言者の父、母だけの場合は、3分の1で、それ以外の場合は、2分の1となります。
「それ以外」とは、相続人が配偶者だけの場合、配偶者と子の場合、子だけの場合、配偶者と親の場合が該当することになります。
先程、お伝えした通り、遺言者の兄弟姉妹には遺留分の権利はありません。
それでは、わかりやすくするために具体的な金額で一部考えてみましょう。例としまして、亡くなった方の相続財産は、6000万円にします。
相続人が配偶者だけの場合、遺留分は、相続財産6000万円のうちの2分の1が遺留分です。法が保障する配偶者の最低限相続できる額は3000万円となります。
次に、相続人が配偶者と子2人の場合です。配偶者の遺留分から解説していきます。まずは、相続財産6000万円のうち、法定相続分は2分の1なので、3000万円です。遺留分は、その2分の1なので1500万円です。
一方、子1人あたりの遺留分を計算する際にも、まずは法定相続分から考えます。この場合は、相続財産6000万円のうち、法定相続分が4分の1にあたる1500万円です。さらに、子ども2人の頭数で割って1500万円の2分の1が遺留分となるので、750万円です。
相続人が母親だけの場合、相続財産6000万円の3分の1が遺留分となり、2000万円となります。
遺言書は、遺言者の最終の意思を尊重するものです。
ですから、その意思を尊重して、遺言書の内容通りに財産を譲ることが理想にかなうと思います。ですが、法はその理想より、相続人の最低限相続する権利(遺留分権)を優先しています。つまり、遺言者が望んだ通りに財産を譲れない場合があることに注意が必要です。
遺留分を侵害されたら、相続人は侵害額請求権をもとに、遺留分を主張することができます。つまり、財産を多くもらった人から、自分がもらえる遺留分を取り戻す権利を主張することです。その一方、権利を主張せず、そのままにしてしまう選択肢もあります。
遺留分の請求方法は、裁判上の訴えでなくても可能です。
口頭で「遺留分を侵害しているので、○○万円を支払ってください。」と言っても大丈夫です。しかし、そうすると、後日に「言った、言わない」の水掛け論になる可能性があります。なので、配達記録証明付きの内容証明郵便でその旨を伝える方が良いでしょう。
遺留分を侵害された相続人が、その権利を主張できる期間は「相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間、または、知っていることを問わず相続開始の時から10年を経過したとき」とされています。この期間が過ぎた場合は、権利が消滅します。
もしも、遺留分侵害額請求をしても、侵害している相続人が払ってくれなかったり、払うつもりはあっても、その払う金額がどうしても折り合わなかったりする場合は、裁判所への申立てをして解決することになります。
実際には、支払う金額の計算方法が難しいので、なかなか話がまとまらないケースが多いと思います。そういう場合は、弁護士に相談していただき、解決に導いてもらう方が良いでしょう。
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相続の相談が出来る弁護士を探すこれまでに説明した通り、遺留分の権利を行使するか、しないかは遺留分権利者の判断によります。なかなか、もめごとにならないように考えることは難しいですが、対策もあります。遺言書を作成する際、相続人にあらかじめ遺留分に見合う財産を生前贈与して、家庭裁判所への遺留分の放棄という手続きをお願いする方法です。そうすれば、遺留分の権利はなくなることになります。
一番良い方法は、遺言書作成の時、遺留分の額に気をつけて、侵害しないような分配方法を示しておくことです。
それでも、ある相続人に遺留分を侵害するような多くの財産を遺したい場合、法的な効力はありませんが、「付言事項」を利用する方法があります。遺言書の最後の方にメッセージとして、どうしてこういう遺言書を書いたのか、また遺留分を侵害している相続人に侵害額請求はしないようにお願いすることです。
私が遺言書の作成をお願いされた場合は、侵害するような分配方法をご希望の人には、丁寧に遺留分や侵害額請求について説明しています。それでも、お気持ちが変わらない際には、ご希望通りに遺言書を作成しています。
説明する時、遺留分を侵害されてしまう方の経済状況、性格など聞き取りをして、さらに説明を加えることもしています。
最終的には、遺言者の意思を尊重するようにしています。
(記事は2020年5月1日時点の情報に基づいています)
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