遺産分割協議で相続放棄を検討する 借金など負の遺産を抱えずに済むが、トラブルの可能性も
朝日さん一家は、遺産相続の手続きの流れを学んでいます。今回は相続財産調査の後に考える相続放棄について、ソーゾク博士に聞きました。今回記事を監修してくれる「ソーゾク博士」は、川崎相続遺言法律事務所の弁護士勝本広太さんです。
朝日さん一家は、遺産相続の手続きの流れを学んでいます。今回は相続財産調査の後に考える相続放棄について、ソーゾク博士に聞きました。今回記事を監修してくれる「ソーゾク博士」は、川崎相続遺言法律事務所の弁護士勝本広太さんです。
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相続人が誰かを確認する相続人調査をして、相続する財産もわかったら、いよいよみんなで財産を分ける話し合いね。
花子さん、相続財産には預貯金や不動産などプラスになる財産だけとは限りません。借り入れも相続する財産になるんですよ。
自分が借りたわけでもない借金を背負うのは嫌だなぁ。相続放棄することも考えないとね。
そうですね。借り入れなど、マイナスの財産の方が多い場合には、故人の財産を一切相続しない相続放棄も検討しましょう。注意したいのは、相続放棄ができるのは、原則として故人が亡くなったことを知った翌日から3カ月以内と期限があることです。
四十九日を終えてから相続放棄について考え始めるとしたら、決断するまでに1カ月ちょっとしかない!
その通りです。相続放棄をすると、負債を相続しないだけでなく、故人の預貯金や不動産など、プラスの財産も相続できなくなります。それでも相続放棄すべきかどうか、きちんと把握した上で決める必要があります。
父さんが建てた家だけは残したいと思っても難しいのでしょうか。
プラスの財産の範囲内で債務を弁済することを前提に相続する「限定承認」を考えます。ただ、手続きがとても複雑であることから選択する人は少ないです。弁護士などの専門家に手続きやデメリットを確認した上で選択すべきでしょう。
相続放棄をする手続きも大変そうですね。
家庭裁判所へ相続放棄の申述書というものを出します。亡くなった人の除籍謄本、住民票除票のほか、相続放棄したい人の戸籍謄本などが必要です。家裁から照会書が届きますので、回答して戻します。受理通知書が届けば相続放棄の手続きは完了です。
相続放棄したら、父さんが建てたこの家には住めないな。例えば、親が入院中に亡くなったら、医療費の支払いもしてはだめなんでしょうか。
故人の預貯金を引き出して支払うと、相続する意思があるとみなされて相続放棄ができなくなる恐れがあります。太郎さんが自分のお金で支払った場合には、相続放棄はできます。ただし、医療費も本来は故人の財産から支払うべきものなので、支払うかどうかはほかの相続人とも話し合いましょう。また、入院費について保証人になっていた場合には、相続とは関係なく保証人として支払い義務を負っていますので、必ず支払いましょう。
相続放棄をする上で、注意することはありますか。
相続放棄をした人は、相続人ではなかったとみなされます。すると、相続権は次の順位の人に移ります。子どもが相続放棄をした場合、故人の父母が存命だった場合は父母に、父母などの直系尊属全員が亡くなっていれば故人のきょうだいが相続人になります。借り入れがあると、支払い請求がその人たちにいきます。相続放棄する場合には、相続権が移る人に連絡することも検討すべきでしょう。
●負債だけでなく預貯金や不動産を手放せるか
● 次の順位の相続人に相続する権利が移る
(今回のソーゾク博士=川崎相続遺言法律事務所・弁護士勝本広太さん、構成=相続会議編集部)
(記事は朝日新聞土曜別刷り紙面「be」に掲載した内容を基に掲載しています。2022年12月1日時点での情報に基づきます)
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