目次

  1. 1. 財産目録とは? 必要な場面やつくるメリット
    1. 1-1. 財産目録はどんなものか
    2. 1-2. 相続で財産目録を作成する場面
    3. 1-3. 財産目録のメリット
  2. 2. 財産目録の書式、3つのポイント
    1. 2-1. 財産の特定ができるよう詳細情報を記載する
    2. 2-2. 価額はいつの時点で何を基準とした評価額かを明確にする
    3. 2-3. 特記事項にも書いておく
  3. 3. 財産目録の書式をサンプルで見てみよう
    1. 3-1. 簡易的な財産目録の例
    2. 3-2. 詳細な財産目録の例
    3. 3-3. すぐに使えるエクセルのテンプレート、サイトから入手可能
  4. 4. 財産目録の書式に関する注意点
    1. 4-1. 生前につくったなら見直しを
    2. 4-2. 遺産分割の際は評価額に注意
    3. 4-3. 名義預金に要注意
  5. 5. 困ったら専門家に相談を

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最初に財産目録の意義を確認しましょう。

財産目録とは、被相続人の財産の内容がわかるよう一覧にしたものです。現預金や不動産といったプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産についても記載することとなっています。

財産目録には、相続財産の名称だけでなく、種類、数量、所在、価額など特定できるような情報を書き出します。すべての財産を洗い出し、細かく記載することで、相続財産の内容を把握できるのです。

財産目録が相続で使われるのは次のような場面です。

  1. 遺言書の作成
  2. 遺産分割協議の円滑化
  3. 相続税の申告書に添付

財産目録の作成は義務ではありません。遺言書の作成一つにしても「長男〇〇に土地Aを相続させる」「友人△△に有価証券Bを遺贈する」でも問題ないのです。

しかし、遺言書のあるなしに関係なく、財産目録はつくっておいたほうがよいでしょう。相続とは「財産の一切合切を引き継ぐこと」だからです。

遺言書のない財産はすべて、相続人が遺産分割協議でどう分けるかを話し合って決めます。ここで財産の状況全体を相続人それぞれが確認できなければ、話し合いすらできません。「隠している財産があるのではないか?」という疑いや争いが生じる可能性もあります。

また、相続税の申告書でも必要です。正味の遺産総額が「3000万円+600万円×法定相続人の数」という基礎控除額を上回ったら、相続税の申告が必要です。この相続税の申告書には、プラスの財産とマイナスの財産をもれなく記載する必要があります。

つまり、財産目録があれば、遺産分割協議を進めやすくなり、かつ相続人の相続の作業の負担を軽くすることができるのです。

財産目録には、特に決まった書式はありません。ただし、「遺産分割協議をスムーズにする」「相続税の申告の負担を軽くする」といった目的から、次の3つのポイントを押さえておきましょう。

財産目録には被相続人のプラスの財産とマイナスの財産をもれなく記載します。複数の財産があるケースでは、細かく情報を載せないと特定できないおそれがあります。

不動産ならば地番や家屋番号、預貯金なら金融機関名、支店名、口座番号など具体的に示せるものは具体的に書き、特定しやすくしておきましょう。

相続税の申告で必要なのは相続税評価額です。つまり、財産の持ち主の死亡時点での評価額を使います。ただし、作成時点が生前なら、記載するのは生きている間の評価額となるはずです。生前に評価したものなのに、評価時点を明確にしないと、間違えた申告や遺産分割をしてしまうことになりかねません。

財産目録に書かれた財産は、亡くなった人が自由にできる財産とは限りません。不動産ならば、他の人と共有になっていることもあります。また、賃貸アパートやマンションなら、賃借の状況で評価が変わります。そのため、財産に特有の事情も書いておく必要があります。

ここで、財産目録の書式を見てみましょう。

簡易的な財産目録であれば、以下のようなシンプルな書式で十分です。

簡易的な財産目録の例

「自宅や預貯金、車や家庭用財産くらいしか財産がない」「他人と共有している不動産がない」など、財産がそれほど多くなく、また、権利関係が複雑でなければ簡易な財産目録でもかまわないでしょう。ただ、かなり昔に取得した財産だと失念していることがあります。いったん書いたら、漏れがないかどうかを確認した方がよいでしょう。

一方、「財産の種類が多い」「特定が難しい」「借金もある」といった状況であれば、次のような詳細な書式でつくったほうがよいでしょう。

詳細な財産目録の例

1. 不動産 
不動産を書くときは、不動産の種類や用途、所在地、面積や数量、評価額や利用状況や権利の状況を書きます。固定資産税の評価証明書や名寄帳、登記事項証明書などを参考にします。「住所が旧住所のままになっていないか」「登記されている面積は合っているか」「共有なら持分や他の共有者は誰か」などに注意し、登記内容が不正確なら早めに直しましょう。

2. 預貯金(普通・定期・定額・積立等)・現金
預貯金は、金融機関の名称や本支店名だけでなく、種別や口座番号、金額も記入します。同一の金融機関で複数の口座を持っている可能性もあるからです。残高証明書を金融機関から取得してから書くのが望ましいです。通帳のないインターネットの金融機関も忘れずに記載しましょう。また、現金については保管場所と金額も書きましょう。

3. 株式・投資信託等
株式や投資信託といった有価証券は、有価証券の区分、証券の発行会社、証券会社の名称と本支店名、種別、数量、評価額を書きます。備考欄には、評価した日付や決算日を書いておくとよいでしょう。上場株式や上場投資信託などの価格は、インターネットで調べられます。非上場株式や私募株式投資信託は、発行会社に確認するしかありません。

4. 負債
負債の種類や借入先の氏名・名称、借入総額や債務残高を書きます。毎月の返済額や完済予定日を記しておくと、相続放棄をすべきかどうかの判断をしやすくなります。債務があるかどうかがそもそも心配なら、次のような信用情報センターに問い合わせるとよいでしょう。

全国銀行個人信用情報センター
CIC(割賦販売法・貸金業法指定信用情報機関)
JICC(株式会社日本信用情報機関)

この記事に財産目録のエクセルファイルの書式テンプレートを添付しています。ダウンロードして、ぜひご活用ください。

財産目録テンプレート(簡易版)
財産目録テンプレート(詳細版)

これ以外にも、裁判所のウェブサイトやその他のサイトにも財産目録の書式テンプレートがあります。

【参考】相続財産目録(裁判所)(※裁判所のエクセルダウンロードサイトです)

くり返しになりますが、財産目録は「こういう書式でなくてはならない」といった決まりはありません。それぞれの世帯の事情に合わせて作成しましょう。

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財産目録をつくるときは、次の点に注意しましょう。

財産の持ち主が生前に財産目録をつくったのなら、定期的に見直しをしましょう。定期預金の解約や不動産の名義変更や売却などで財産に異動が生じることがあります。状況に応じて見直しをしないと、相続のときの争いのもとになりかねません。

「財産目録があると相続税の申告の手間が省けたり、遺産分割協議を行いやすくなったりする」というメリットがあります。ただし、注意したいのが評価額です。特に不動産は注意しなくてはなりません。

建物や土地といった不動産は、相続税の申告では、路線価や固定資産税評価額を基準に評価します。この評価額は通常、公示価格の5割から8割程度です。一方、実際の取引価額は、公示価格よりも高かったり低かったりします。つまり、相続税で申告する金額と実際の取引価額に違いが生じるのです。

都市部の物件なら、取引価額は相続税評価額よりも高くなりがちです。逆に地方の物件だと、格安でもなかなか売れないのに相続税評価額は高くなるケースもあります。このような状況で、相続税評価額を書いた財産目録をベースに遺産分割協議を進めると、後日「一見平等だけれど、実は兄が相続した不動産は価値が高かった」などと争う原因になります。

財産目録を相続税の申告と遺産分割協議の両方で使うのならば、相続税評価額の他、実際の取引価額も参考にメモしておくとよいかもしれません。

名義預金とは、口座の名義こそ子や孫であるものの、実質的には親や祖父母が管理している預貯金のことをいいます。よかれと思って親族名義で口座をつくっても、通帳や印鑑を管理しているのが被相続人なら、その預貯金は名義人のものではなく、被相続人のものとなります。相続税の課税対象ともなるので、注意しなくてはなりません。

被相続人本人名義以外の預貯金の口座があるなら、それも財産目録に含め、きちんと遺産分割協議を行いましょう。

【関連記事】税務署が目を付けている名義預金。無用な相続税課税を避ける対策は?

保有している財産が少なければ、財産目録の作成もそれほど大変ではないでしょう。

しかし、「複数の不動産がある」「生前に株式投資を頻繁に行っていた」「あちこちに預貯金口座がある」といった状態だと、一般の人だけで財産目録をつくるのは重荷かもしれません。大変そうだと感じたら、専門家に依頼することをお勧めします。

特に、遺産分割などで相続人同士でもめる恐れがある場合には弁護士、相続する財産が多く相続税の計算も関わってくる場合には税理士、相続登記なども含めて相談したい場合には司法書士、書類の作成のみをお願いしたい場合には行政書士に相談することをお勧めします。

(記事は2022年11月1日時点の情報に基づいています)

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