目次

  1. 1. 不動産を相続する手続き
    1. 1-1. 遺言の有無を確認する
    2. 1-2. 相続人を確定する
    3. 1-3. 相続財産がどれくらいあるのか把握する
    4. 1-4. 遺産分割協議を行い、遺産の分け方を話し合う
    5. 1-5. 相続登記を申請する
    6. 1-6. 相続税の申告・納付
  2. 2. 相続した不動産の分け方
    1. 2-1. シンプルな現物分割
    2. 2-1. 不満が出にくい代償分割
    3. 2-3. 不動産をお金に替える換価分割
  3. 3. 不動産を相続するための必要書類
    1. 3-1. 遺言による相続登記の必要書類
    2. 3-2. 遺産分割による相続登記の必要書類
    3. 3-3. 法定相続分による相続登記の必要書類
  4. 4. 不動産の相続手続きは自分でできる?
    1. 4-1. 自分で必要書類をすべてそろえるのはとても大変
    2. 4-2. 遺産分割協議書や登記申請書の作成にも法律の知識が必要
    3. 4-3. 相続人同士が疎遠だったり不仲な場合は最初から専門家に
  5. 5. まとめ 登記の専門家である司法書に相談を

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不動産を相続する場合、次のような流れで進みます。

  1. 遺言の有無を確認する
  2. 相続人を確定する
  3. 相続財産がどれくらいあるのか把握する(財産目録の作成)
  4. 遺産分割協議で遺産の分け方を話し合う(不動産を引き継ぐ人を決める)
  5. 相続登記を法務局に申請する
  6. 相続税の申告・納付(基礎控除額を超える場合)

不動産の所有者が亡くなった場合、遺言書があるかどうかをまず確認します。遺言書がある場合、基本的には遺言書に記載されている通りに相続手続きが進むため、どの手続きよりも先に遺言書を探す必要があります。

遺言書がない場合は、相続人全員で遺産分割協議を行い、遺産の分け方を話し合うことになります。遺産分割協議をした後に遺言書が見つかった場合であっても、遺言書があればその内容が優先されることになります。その後の手続きを無駄にしないためにも、遺言書は早めに見つけておく必要があるでしょう。

遺言書がない場合には、亡くなった人の財産は法律で決められた範囲の親族が相続します。そのため、誰が相続人となるかについて、亡くなった人の親族関係を戸籍謄本をもとに正確に調べる必要があります。もし新たな相続人が後から発覚した場合、一度決まった遺産分割協議をやり直すことになってしまうため、誰が相続人なのかはしっかり調べるようにしましょう。

相続財産がどれくらいあるのかを特定し、財産目録と呼ばれる相続財産のリストを作成しておくと、後の遺産分割協議がスムーズに進みます。預貯金であれば通帳や残高証明書で亡くなったときの残高を確認します。

不動産については、市区町村から届く固定資産税の納税通知書を確認するか、権利証(登記識別情報通知や登記済証)がないか探してみてください。また、市区町村役場に行けば亡くなった人がその市区町村内に所有する不動産を一覧できる「名寄せ」という制度もあります。

また、個人が所有者として登記されている全国の不動産を法務局が一覧でリストアップしてくれる「所有不動産記録証明制度」が2026年2月2日から始まります。

【関連】名寄帳とは? 取得方法と見方、請求するための必要書類一覧

遺言書がない場合には、相続人全員で遺産分割協議を行うことになります。相続人が一人でも欠けた状態でなされた分割協議は無効となりますので、必ず相続人全員で行いましょう。相続財産である不動産を誰が引き継ぐかが決まったら、その内容をまとめた遺産分割協議書を作成し相続人全員が署名し、実印で押印します。

【関連】遺産分割協議とは  話し合いの準備や進め方、まとまらなかった際の対処法

不動産を引き継ぐ人が決まったら、その不動産の名義を相続する人の名義に変更する必要があります。この手続きは相続登記と呼ばれ、不動産の所在地を管轄する法務局に申請します。なお相続登記は令和6(2024)年4月1日から義務化され、これを行わずに放置しておくと過料を科されてしまう可能性があるため、忘れずに行うようにしてください。

不動産を含む遺産の総額が、基礎控除額「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」を超える場合、相続税と呼ばれる税金がかかります。相続税の申告・納付期限は「相続開始を知った日の翌日から10ヵ月以内」です。色々な手続きをしていると、あっという間に期限がきてしまいます。期限内に申告・納付できないと延滞税がかかってしまうこともあるため、できる限り早いうちに支払いを済ませましょう。

不動産の所有者である父が亡くなり、母(妻)と長男、長女の三人が相続人である場合を例にして、不動産を相続人で分割する方法を解説します。

「現物分割」とは、不動産を相続人の1人がそのままの形で相続する方法です。例えば、母(妻)が自宅である不動産を相続し、長男が預貯金、長女が有価証券を相続するような方法です。または、150坪の土地を50坪ずつに分筆(1筆の土地に境界線を入れて3筆の土地に分けること)して各々が取得する方法も現物分割といえます。

一見すると分かりやすくシンプルな相続手続きの方法ですが、不動産とその他の財産で価値(評価額)が大きく異なる場合には不公平が生じます。また、土地を分筆して同じ面積で分ける場合でも、土地の形状や陽当たり、接道状況などでその価値は変わります。不動産の現物分割では完全に公平に分割するのは困難で、価値の低い方を相続した相続人からは不満の声が上がる可能性があるでしょう。

「代償分割」とは、相続人の1人が不動産を単独で相続する代わりに、他の相続人に対して代償金を支払う方法です。特定の相続人が、他の相続人の不動産に対する相続分を買い取るようなイメージです。

例えば、相続財産が評価額4,000万円の土地のみである場合に、長男が単独でその土地を相続する代わりに、母と長女がその土地に対して有している相続分(母4分の2、長女4分の1)に相当する3,000万円を代償金として支払います。母や長女が土地を引き継ぐことを望んでおらず、正当な評価額に基づいて代償金が算出されているのであれば不満が出にくい分割方法といえるでしょう。ただし、長男は自己の財産から代償金を捻出する必要があるので長男に十分な資力がないと難しい方法でもあります。

「換価分割」とは、相続財産である不動産を売却して現金化し、それを相続人で分割する方法のことを指します。

例えば、不動産の売却価格が4,000万円だった場合には、母が2,000万円、長男と長女がそれぞれ1,000万円ずつの現金を受け取ることになります。現金ですから平等に分配することは簡単ですが、その不動産に相続人の誰かが住んでいたり、簡単に買い手が見つからないような物件だったりする場合には売却自体が困難ということもあるので注意が必要です。

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不動産を相続したら「相続登記」をする必要があります。相続登記とは、亡くなった人(被相続人)が所有していた不動産の名義を、相続人の名義へ変更することを言います。たとえば亡くなった父親名義の不動産を長男が相続した場合、長男はその不動産の所在地を管轄する法務局に相続登記を申請して、父親名義から自分の名義に変更する必要があります。

それでは、その相続登記で必要となる書類にはどのようなものがあるのでしょうか。

相続登記には大きく分けて「遺言による相続登記」「遺産分割による相続登記」「法定相続分による相続登記」の3つのパターンがあります。それぞれのパターンごとに必要となる書類を詳しく見ていきます。

なお、以下に記載する必要書類は配偶者や子が相続人となる一般的な相続を想定しており、亡くなった方の兄弟や姉妹が相続人になる場合や、子または兄弟や姉妹がすでに死亡していた場合などの代襲相続と呼ばれるケース、立て続けに複数の相続が起こる数次相続と呼ばれるケースなど、特殊な相続の場合には他の書類が必要となることがありますのでご注意ください。

【関連】相続登記の費用の目安 登録免許税や司法書士の報酬を解説

遺言書がある場合には、原則としてその遺言書に記載されたとおりに相続登記を申請します。自筆証書遺言の場合には、相続登記を申請する前に家庭裁判所で検認という手続きが必要になります。検認とは、遺言書の内容を明確にして偽造変造を防止するために家庭裁判所において相続人の立ち会いのもとで遺言書を開封する手続きです。なお、公正証書遺言と法務局における遺言書保管制度を利用した自筆証書遺言の場合には検認手続きは不要となります。

遺言による相続登記は、後述する遺産分割や法定相続分による場合に比べて、必要な戸籍謄本が少なくてすむのが特徴です。遺言による登記の場合には、「遺言の効力が発生したこと(遺言者が死亡したこと)」と「不動産を取得する人が相続人であること」の2点を証明する戸籍謄本を添付すれば足りるとされています。そのため、被相続人については出生から死亡までのすべての戸籍謄本をそろえる必要はなく、相続人についても不動産を取得しない相続人については添付する必要がないのです。

遺言書が存在せず法定相続人が複数人いる場合には、相続財産(遺産)はいったん相続人全員の共有になります。この共有状態を解消し、具体的に誰がどの財産を取得するのかを決める手続きが「遺産分割協議」です。この遺産分割協議は法定相続人全員で行う必要があり、一人でも欠けた状態で行った場合には無効となります。

遺産分割協議によって不動産の取得者が決まった場合には、遺産分割による相続登記を申請します。この遺産分割による相続登記には遺産分割協議書や法定相続人全員の印鑑証明書も添付しなければなりません。また、法定相続人全員による有効な協議が行われたことを証明するために、被相続人について出生から死亡までのすべての戸籍謄本(除籍謄本や改製原戸籍も含む)、相続人については不動産を取得しない相続人も含めて全員の戸籍謄本が必要となります。

遺言書が存在せず遺産分割協議も行われなかった場合、または協議がまとまらなかった場合には、法定相続人全員の名義で、民法が定めた法定相続分どおりに相続登記を申請することができます。ただし、法定相続分による相続登記を行うと不動産が共有状態になる点に注意が必要です。

共有不動産は管理や処分方法をめぐって共有者間でトラブルが発生したり、共有者にさらなる相続が発生して権利関係が複雑になったりするなどさまざまなリスクがあります。安易に法定相続分による相続登記を行うと将来的に余計な手間を増やすことになりかねませんので、慎重に検討するべきでしょう。

法定相続分による相続登記の必要書類は、遺産分割による場合とほぼ同様ですが、遺産分割協議が行われていません。そのため、遺産分割協議書は当然のこと法定相続人の印鑑証明書も添付する必要はありません。

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不動産の相続手続きを自分で進めたいと考える方も多いと思いますが、可能なのでしょうか。

相続登記に必要な書類をすべてそろえるには手間がかかります。

特に戸籍謄本は、これまで本籍地の市区町村役場で取得する必要があり、本籍地が遠方にある場合にはかなりの時間と労力がかかっていました。しかし、2024年3月から、本籍地に関係なく最寄りの市区町村役場でまとめて取得できるようになったため、負担は大きく軽減されました。

もっとも兄弟姉妹の戸籍謄本やコンピューター化されていない戸籍謄本は従前どおり本籍地のある市区町村役場を訪れるか、郵送請求する必要があります。郵送請求の場合には請求用紙のほか、運転免許証など本人確認資料の写し、定額小為替、切手を貼った返信用封筒も必要となります。「請求用紙の記入ミスで必要なものがとれなかった」「小為替が足りなくて追加で送付することになった」など、戸籍謄本の郵送請求の段階で挫折する人も少なくありません。

戸籍謄本を取得したあとには、遺産分割協議書や登記申請書などの書類を作成しなければなりません。

これらの書類作成には一定の法律知識が必要になりますし、もし誤りや記載不足があると法務局から訂正や差し替えを求められます。

戸籍謄本などの取得に不慣れな人や書類作成が苦手な人は、最初から専門家に依頼するのが得策と言えるかもしれません。

相続人同士が疎遠だったり不仲な場合には遺産分割協議がまとまらず、相続の手続きが進まないことがよくあります。

また、不動産の場合には、そもそも名義が曽父や曽祖父名義のままになっていることもあり、そのような場合には相続人の数も増え、相続人同士が顔も名前も知らないようなこともあります。

相続関係が複雑だったり、最初から紛争になることが予想されるような場合には、無理に自分だけで進めようとせずに専門家に相談してみることをおすすめします。

【関連】相続登記は自分でできる? 必要書類や費用、デメリットや注意点を解説

不動産の相続手続きは複雑で手間のかかる手続きと言えます。

必要書類は多岐にわたり、最寄りの市区町村役場で取得できる書類もありますが、住所地や本籍地でないと取得できない書類もあります。すべて自分でそろえて申請するとなると、それなりの知識と労力が必要となります。また、市区町村役場や法務局は平日の日中しか開庁していないので、仕事などが忙しくて時間的な制約がある人は思うように手続きを進めることができないかもしれません。

2024年4月1日から相続登記が義務化されたため、今後はより速やかに相続登記を行うことが求められます。できるだけ早く正確に相続登記を行いたい、必要書類がなかなか集められない、相続登記をせずに放置している不動産があるなど、相続登記について疑問や不安を抱えている人は、登記の専門家である司法書士へご相談ください。

(記事は2024年6月1日時点の情報に基づいています)

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