目次

  1. 1. 名寄帳とは
    1. 1-1. 被相続人の不動産を一覧で確認できる
    2. 1-2. 納税通知書に未記載の不動産も分かる
  2. 2. 名寄帳の取得方法
    1. 2-1. 名寄帳を請求できる人
    2. 2-2. 名寄帳の請求に必要な書類
  3. 3. 名寄帳の見方のポイント
  4. 4. 名寄帳を確認する際の注意点
    1. 4-1. 現在の所有状況と異なるケースがある
    2. 4-2. 取得した自治体以外の不動産は載っていない
    3. 4-3. 法人名義の不動産は載っていない
  5. 5. まとめ:弁護士や司法書士などに相談を

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名寄帳は、固定資産税を課税するために市区町村が作成している固定資産税課税台帳を所有者ごとにまとめたもののことで、読み方は「なよせちょう」です。

相続が発生すると、相続人や遺産を調査しなければなりません。相続人の調査については戸籍謄本等を取得しますが、遺産の調査方法は多岐に渡ります。被相続人が所有していた不動産を調べるためには、名寄帳を活用すると便利です。

なお名寄帳は、不動産の名義変更の際に、法務局へ提出が必要な書類ではありません。

名寄帳には同一市区町村内の不動産がまとめられているので、特定の人が持っている不動産を一覧で確認することができます。相続が発生し、被相続人(亡くなった人)の不動産を調査するときにも役立ちます。たとえば、被相続人が不動産を複数所有している場合は、相続人が把握しきれていないものもあるため、名寄帳を取得して確認すると良いでしょう。

被相続人が共有持分権者として所有している土地や建物、または私道、農地、山林などで固定資産税が課税されていない不動産は、市区町村から送付される固定資産税の納税通知書に記載されていない場合があります。こういった不動産も、名寄帳に記載されている場合があるので、必要に応じて別途取得するようにしましょう。

名寄帳は、不動産所在地の市区町村役場で閲覧・取得できます。不動産の所有状況を他の相続人に見せたり、相続登記手続きに使用したりする場合は、書面で取得すると良いでしょう。取得には、1通200~300円程度の手数料がかかります。

名寄帳を請求できる人の範囲は、次のとおりです。

  • 固定資産税の納税義務者
  • 納税義務者が死亡している場合はその相続人
  • 利害関係人
  • 代理人

名寄帳の閲覧や請求ができるのは原則、納税者本人のみです。ただし、納税者が亡くなっている場合は、法定相続人に取得する権利があります。

納税義務者本人が取得する場合は、本人確認ができる書類(運転免許証など)があれば問題ありませんが、相続人が請求する場合には、被相続人が死亡していること、および申請者が相続人であることを証明する戸籍謄本などが必要となります。

利害関係人には、借地人や借家人などが該当しますが、その場合には賃貸借契約書などの権利を証明する書類が必要となります。なお、本人や相続人の代理人として請求する場合には、委任状が別途必要となります。

下図は、名寄帳の請求を行う際の必要書類の一覧表ですので、参考にして下さい。

名寄帳の必要書類一覧
名寄帳の必要書類一覧

なお、所有者と同居する親族であっても、居住している市区町村以外で不動産を所有している場合は、住民票など追加で必要となる書類があるので注意しましょう。

名寄帳に掲載されている情報のうち、相続とのかかわりで最低限確認したほうがいいのは、以下の情報です。

  • 不動産の所有者の情報
  • 不動産の情報(種類、所在地、用途、地積、家屋番号、持分割合など)
  • 固定資産税評価額
  • 固定資産税の課税標準額

これらの情報から不動産の所有状況を把握したり、相続税評価額の計算をしたりできます。

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名寄帳は便利である反面、誤った見方をしてしまうと、遺産分割協議や相続税計算をやり直さなければない状況となってしまいます。ここでは、名寄帳を確認する際の注意点を紹介します。

固定資産税の納税義務者は、その年の1月1日付の所有者です。

そのため、1月2日以降に不動産の売買契約を結んだ場合、名寄帳に所有者情報が反映されていない状況になります。たとえば、1月1日時点の所有者Aさんが、翌日にBさんへ不動産を売却して登記したとしても、その年の名寄帳上の所有者はAさんのままとなります。

また、1月2日以降に不動産を取得して亡くなった場合も、新たに取得した不動産が名寄帳に記載されないので注意して下さい。

名寄帳は請求をした市区町村内の所有不動産をまとめた書類なので、他の市区町村に存在する不動産については記載されていません。そのため、複数の市区町村に渡って不動産を所有している場合は、該当する自治体へそれぞれ名寄帳の請求を行うようにしましょう。

被相続人がどこに不動産を所有していたかわからない場合は、弁護士や司法書士などの専門家への依頼も検討しましょう。遺産調査で名寄帳を取得することもありますが、権利書や公図から周辺地域の調査、登記簿謄本を確認することで、名寄帳に記載されていない不動産を発見してくれるケースがあります。

名寄帳に記載される不動産は個人名義のみです。従って、被相続人が経営する会社が所有する法人名義の不動産は記載されません。

名寄帳は、被相続人や自身が所有している不動産を確認するために便利な書類です。遺産分割協議や相続税評価額の計算にも利用できる書類ですが、読み方を間違えるとトラブルに発展してしまう可能性があります。

間違いが許されない局面もありますので、是非一度、弁護士や司法書士などの専門家に相談してみて下さい。相続人間で揉めているようであれば弁護士、不動産の相続手続きなど遺産承継に関する手続きは司法書士、相続税の申告が必要であれば税理士に相談すると良いかと思います。

(記事は2022年12月1日時点の情報に基づいています)

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