目次

  1. 1. 不動産登記の代理人とは
  2. 2. 委任状の書き方
    1. 2-1. 受任者と委任者の氏名・住所
    2. 2-2. 委任する登記申請の内容
    3. 2-3. 登記手続きを委任する不動産の表示
  3. 3. 登記申請の準備に必要な書類
    1. 3-1. 遺言書がある場合
    2. 3-2. 遺言書がない場合
  4. 4. 手続きは司法書士に任せられる

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登記手続きの代理人には、法定代理人と任意代理人の2種類があります。前者は未成年に対する親権者、成年被後見人に対する成年後見人のような人です。後者は本人が自分で任意に選んで登記手続きを委任した人です。難しい言葉でいうと「委任契約に基づく代理人」ということになります。

登記手続きの任意代理人にはどのような人がなれるのでしょうか。代表的には司法書士です。報酬をもらって代理人になることができるのは司法書士と弁護士に限られます。司法書士法や弁護士法という法律で一定の国家資格がないと業として(報酬をもらって)登記手続きの代理人にはなることができないと定められているからです。

では、無報酬であれば誰でも代理人になれるのでしょうか。ここも、反復継続して代理行為を行うことは禁止されます。しかし、1回だけ無報酬で自分の親や親族のために代理人として登記手続きを行うことは可能です。

登記手続きを代理人が行う場合には、代理権限があること証明する書類が必要になります。具体的には「委任状」という書類が必要になります。きちんとした委任状があれば、自分以外の他人の登記手続きを代理人として行うことができます。

では、委任状にはどのような項目を記載すれば良いのでしょうか。登記を管轄の法務局に申請する際に、代理人が行う場合には委任状を添付しなければなりません。誰(委任者)が、誰(受任者)に対して、どの不動産に関して、どのような内容の登記手続きを委任するかが明らかにする必要があります。登記手続きごとに内容は異なりますが、今回は相続登記(相続による名義変更)を例に委任状の記載項目を解説します。

受任者と委任者が誰であるかを明確に分かるようにしなければなりませんので、正確に記載する必要がありますが、住所は例えば「〇〇市〇〇町1-1-1」のようにハイフンを用いて簡略した記載でも差し支えありません。

登記の目的、登記原因、登記申請人を記載します。登記の目的は被相続人が単独で所有している不動産の場合は「所有権移転」、他人と共有で所有している場合は「〇〇持分全部移転」として、〇〇の部分には被相続人の氏名を記載します。

次に登記原因ですが「令和〇年〇月〇日 相続」となり、日付は和暦で被相続人の相続発生日(死亡日)を記載します。最後に登記申請人には「(被相続人〇〇)相続人〇〇」と記載します。「相続人〇〇」にはこの不動産を相続する人の氏名を記載しますので委任者と同じ人になります。

不動産の表示に関しては、法務局で登記簿謄本(登記事項証明書)を取得して、その内容を確認します。登記申請書には、土地は「所在・地番・地目・地積」を、建物は「所在・家屋番号・種類・構造・床面積」を登記簿謄本のとおり正確に記載しなければなりません。

しかし、委任状は、土地の場合は「所在・地番」、建物は「所在・家屋番号」の記載があれば問題ありませんので「〇〇市〇〇町1番2の土地」や「〇〇市〇〇町1番地2 家屋番号1番2の建物」のような簡略した記載でも差し支えありません。もし、被相続人が所有していた不動産の所在が分からずに登記簿謄本が取れない場合は、権利証のほか、都税事務所や市区町村役場から送付される固定資産税の納税通知書に同封される課税明細書を確認しましょう。毎年4~5月頃に送付されてきます。権利証には被相続人が所有している不動産が当然記載されていますし、課税明細書には固定資産税が課税されている不動産の記載があります。

具体的な委任状の見本は以下のとおりです。参考にしてみて下さい。

不動産登記の委任状の見本
不動産登記の委任状の見本

登記手続きの委任を受けたら、いよいよ登記申請の準備に入っていきます。遺言書がある場合は遺言書の内容に従って登記しなければなりません。遺言書が無ければ遺産分割協議で、不動産を相続する人を決めることができます。なお、遺産分割協議で不動産の名義を複数の相続人の共有名義にすることも可能です。しかし、相続登記後すぐに売却して金銭で分配するといったことを想定していなければ、共有名義はできるだけ避けた方が良いでしょう。

例えば、共有者の一人が認知症になってしまったり、死亡して新たな相続が発生したりすると、不動産の管理や売却等の処分に支障をきたすことがあるからです。

それでは、以下に、代理人によって相続登記を申請する場合の委任状以外の具体的な添付書面を列挙します。

1.遺言書
2.検認調書または検認済証明書(遺言書保管制度を利用した場合及び公正証書遺言の場合は不要)
3.被相続人の戸籍(死亡が確認できるもの)及び住民票の除票
4.相続人の戸籍及び住民票

【遺産分割協議がある場合】
1.遺産分割協議書(法定相続人全員の署名に加えて実印の捺印があるもの)
2.被相続人出生から死亡までの連続した戸籍(除籍)
3.相続人全員の戸籍及び印鑑証明書
4.不動産を相続する相続人の住民票

【遺産分割協議がない場合】相続人が一人または法定相続分どおりに相続する場合)
1.被相続人出生から死亡までの連続した戸籍(除籍)
2.相続人全員の戸籍
3.不動産を相続する相続人の住民票

※登記申請の際の印紙代(登録免許税)算出の根拠資料として評価証明書はいずれの場合でも共通して必要

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これまで委任状の内容を中心に解説しましたが、相続登記に添付する書類の収集や登記申請書の作成などやることは多く、時間や手間がかかることは否めません。コストは掛かっても司法書士を代理人にすることを検討してみても良いかと思います。

司法書士と委任契約を締結すれば、相続人調査(戸籍収集)、遺産分割協議書作成そして登記申請まで、相続登記に必要な一連のことはすべて代理でやってもらうことが可能です。他にも戸籍だけ自分で集めて他の部分を司法書士に任せる方法もあります。戸籍がきちんとそろった状態で委任した場合には、司法書士費用が安くなることもあるので、できることは自分でやるということでも良いと思います。

また、こんなに手間がかかるのであれば相続登記を一旦留保するということを考える方もいますが、先日、民法と不動産登記法の改正要綱案が法務大臣に答申され、いよいよ、2023年度には相続登記が義務化される法改正が行われる予定となりました。法改正後は相続登記を相続発生を知ってから3年間放置すると10万円以下の過料が科されることになります。他にも相続登記を放置している場合、相続人の誰かが死亡して新たな相続が発生すると関係当事者が増えて収拾がつかなくなることがあります。また、相続人の1人の財務状況が悪くなって、その相続人の持分を差押えられてしまうと不動産を売却できなくなるなど様々なデメリットがあります。放置していて何も問題がない手続きはないので、なるべく早く済ませることをおすすめします。

(記事は2021年3月1日時点の情報に基づいています)

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