目次

  1. 1. 相続登記とは? 2024年4月から義務化
  2. 2. 相続登記にかかる費用の相場
  3. 3. 【費用①】相続登記の必要書類の取得費用:数千円~
  4. 4. 【費用②】相続登記の登録免許税
    1. 4-1. 相続の場合は固定資産税評価額の0.4%
    2. 4-2. 相続人以外への遺贈は、登録免許税の税率が高くなる
    3. 4-3. 登録免許税が非課税になることも
  5. 5. 【費用③】司法書士報酬
    1. 5-1. 相場は5万~15万円
    2. 5-2. 相続人の数や不動産の筆数(個数)で報酬加算も
  6. 6. 相続登記費用の具体例
  7. 7. 費用をかけてでも相続登記を司法書士に依頼したほうがよい理由
  8. 8. 相続登記の司法書士報酬を安く抑える方法
  9. 9. 相続登記の費用についてよくある質問
  10. 10. まとめ 不動産の相続登記が必要になったら司法書士に相談を

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相続登記とは、不動産(土地・建物)の所有者が亡くなった場合に、その不動産の登記名義を相続人の名義に変更することをいいます。

不動産の所有者が誰なのかは法務局で管理されている登記簿(登記記録)に記録されていますが、所有者が亡くなったときには法務局が勝手に名義変更をしてくれるわけではありません。

所有者がなくなると、その不動産を相続した人は「相続を原因とする所有権移転登記」いわゆる相続登記を申請する必要があります。相続登記は、対象となる不動産の所在地を管轄している法務局に対して、相続によって不動産を取得した人が申請人となって申請します。

相続登記は2024年4月1日に義務化されました。相続人が不動産を相続したことを知ったときから3年以内に相続登記を申請しなければなりません。正当な理由なく相続登記を怠った場合には10万円以下の過料に処されます。

過料を免れる「正当な理由」は、法務局の登記官が個別事情を確認して判断することになっていますが、例としては「相続人の数が極めて多数で書類の収集や相続人の把握に多くの時間を要する場合」「遺言の有効性について争いがある場合」「相続人が重病である場合」「経済的に困窮している場合」などが挙げられます。

ただし、「正当な理由」が認められるのは限定的なケースなので、不動産を相続した場合には、できるだけ速やかに相続登記の申請を行うようにしましょう。

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相続登記には、主に次のような費用がかかります。

  • 必要書類の取得費用
  • 登録免許税
  • 司法書士報酬

相続登記では、戸籍謄本等の各種証明書を添付書類として法務局に提出する必要があり、その取得に費用がかかります。また、相続登記を申請する際に「登録免許税」という税金を納める必要があります。さらに司法書士に依頼する場合には、報酬の支払いも必要です。

相続登記で必要になる証明書は市(区)役所で発行してもらえますが、発行手数料がかかります。相続登記で必要となる証明書とその発行手数料は下記のとおりです。

必要書類 発行手数料
戸籍謄本(戸籍全部事項証明書) 1通450円
除籍謄本(除籍全部事項証明書) 1通750円
改製原戸籍謄本 1通750円
戸籍の附票の写し 1通300円
(除)住民票の写し 1通200~300円程度
※自治体により異なる
印鑑証明書 1通200~300円程度
※自治体により異なる
固定資産評価証明書 1通200~400円程度
※自治体により異なる

1通あたりの手数料は大きな金額ではありませんが、相続登記において必要な証明書は1通ではありません。

戸籍謄本だけでも被相続人(亡くなった人)の出生から死亡までのすべての戸籍謄本(除籍謄本や改製原戸籍謄本も含む)、法定相続人については現在の戸籍謄本が必要になります。

必要となる戸籍謄本の通数は相続関係により異なりますが、配偶者および子が法定相続人になるようなシンプルな相続の場合でも5~10通程度になることが多いです。亡くなった人が転籍(本籍地を変更すること)を繰り返していた場合や、兄弟姉妹が法定相続人になる場合にはさらに通数が増えます。

相続人が被相続人より前に死亡しており相続人の子が代わって相続人になる「代襲相続」の場合や、相続登記をしないうちに相続人が死亡して次の相続が発生してしまう「数次相続」の場合では、必要な戸籍が数十通になってしまうこともあります。

2024年3月から、本籍地の場所にかかわらず、最寄りの市(区)役所で、戸籍謄本をまとめて取得できるようになりました。必要となる戸籍の本籍地が遠方にあったとしても最寄りの窓口で請求が可能です。請求する本人の戸籍謄本だけでなく、配偶者、父母・祖父母、子・孫についても請求できます。

ただし、兄弟姉妹の戸籍謄本と、コンピューター化されていない戸籍謄本は請求できないため、それぞれ本籍地のある市(区)役所を訪れるか、郵送請求する必要があります。マイナンバーカードを利用してコンビニ交付ができる市町村もありますが、自治体によって対応は異なりますので、詳細は個別に確認しましょう。

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登録免許税とは、登記を申請するときに国に納める税金のことです。税額は土地や建物の固定資産税評価額に法律で定められた税率をかけて算出します。

固定資産税評価額とは、固定資産税や都市計画税を算出するための基準となる土地や建物の価格のことで、自治体から毎年郵送されてくる固定資産税の納税通知書を見れば分かります。

相続を原因とする所有権移転登記の税率は1000分の4と定められているので、計算式は以下の通りです。

相続の登録免許税=不動産の固定資産税評価額×税率0.4%(4/1,000)

例えば、固定資産税評価額が1000万円の土地であれば4万円、7500万円の土地であれば30万円の登録免許税を納める必要があります。

ここで注意が必要なのは、登記原因が「遺贈」となる場合です。遺贈とは、遺言によって財産を無償で譲ることをいいますが、譲る相手(受遺者)には特に制限がないので、法定相続人以外の人にも財産を承継させることができます。

法定相続人以外の人が遺贈によって不動産を取得した場合の税率は1000分の4ではなく、1000分の20となります。

法定相続人以外への遺贈の登録免許税=不動産の固定資産税評価額×税率2%(20/1,000)

先ほどの例にあげたケースだと、1000万円の土地の登録免許税が20万円になるため、法定相続人以外の人が取得者となる場合には税率に注意して下さい。

相続登記に限らず登記申請の際には登録免許税を納めるのが原則ですが、相続登記を促進するために登録免許税の免税措置が定められています。2027年3月31日までの期限付きですが、次の3つのいずれかに該当する場合には登録免許税が非課税となります。

  • 相続により土地を取得した人が相続登記をしないで死亡した場合
  • 評価額が100万円以下の土地について相続登記をする場合
  • 表題部所有者のみが登記された評価額100万円以下の土地について相続人名義で所有権保存登記をする場合

非課税の対象となるのは土地のみで、建物の相続について免税措置はありません。もし、上記3つのいずれかに該当する可能性がある場合には、法務局HPの「相続登記の登録免許税の免税措置について」に、詳細が記載してありますので参照して下さい。

相続人が自分で相続登記を申請する場合には、登録免許税と必要書類の取得費用が主な費用となりますが、司法書士に登記申請を依頼する場合には司法書士に支払う報酬も必要になります。

2024年に日本司法書士会連合会が実施した報酬に関するアンケートの結果が公表されています。地域によって相場が異なりますが、相続登記の司法書士報酬は5万円から15万円くらいが目安と言えそうです。

司法書士の報酬は自由化されており、各司法書士が自由に設定することができます。それゆえに報酬については依頼する司法書士に直接問い合わせるしかありません。

一般的な報酬規程の定め方として、基本報酬を定めたうえで相続人の数や不動産の筆数(個数)などにより報酬が加算されるパターンが多いです。筆数とは土地を数える際の登記簿上の単位のことです。

また、戸籍謄本等の取得や遺産分割協議書の作成を司法書士に依頼する場合には、別途報酬が発生することもあります。

前述のとおり司法書士の報酬は自由化されていますが、各事務所ごとに報酬の基準額を定めた「報酬規程表」を定める必要があり、それを依頼者に提示し説明する義務もあります。司法書士に依頼する場合には、正式に依頼する前に見積書の作成を依頼するか、少なくとも報酬規程表をもとに説明を受けて納得したうえで依頼することが大切です。

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相続登記費用について、イメージしやすいように次のケースで説明します。

◇ 所有者である朝日一郎が死亡し、その法定相続人は妻・正子、長男・太郎、長女・山田花子の3名(長男・長女はどちらも結婚している)。
◇ 遺産分割協議の結果、土地建物は妻・正子が単独で相続することになった。
◇ 固定資産税評価額は建物1000万円、土地3000万円
◇ 妻・正子は戸籍謄本等の取得や遺産分割協議書の作成も含めて司法書士に依頼した。

妻が単独で不動産を取得した事例のイメージ図
妻が単独で不動産を取得した事例のイメージ図

添付書類は、除籍謄本や戸籍謄本、固定資産税評価証明書など含めて計10通が必要となり、その取得には計5000円がかかります。登録免許税は16万円、さらに司法書士報酬に11万円かかりますので、計27万5000円が、このケースでの相続登記費用の総額となります。

それぞれの費用の詳細は、下表にまとめましたのでご覧下さい。なお、下表はあくまでも費用の一例です。添付書類の取得費用や司法書士報酬は事案により増減します。

添付書類の取得費用
一郎 除籍謄本×1、改製原戸籍謄本×2、戸籍謄本×1、住民票の除票×1 3,000円
正子 戸籍謄本(一郎と同一戸籍)、住民票×1 300円
太郎 戸籍謄本×1、印鑑証明書×1 750円
花子 戸籍謄本×1、印鑑証明書×1 750円
その他 固定資産税評価証明書 200円
合計 5,000円
登録免許税
(土地3,000万円+建物1,000万円)×1000分の4 160,000円
司法書士報酬
基本報酬7万円+戸籍取得2万円+遺産分割協議書の作成1万円+消費税 110,000円
合計 275,000円

相続登記を自分で行えば司法書士への報酬が不要となり、費用を抑えられるという大きなメリットがあります。しかし、戸籍謄本等の取得に始まり、遺産分割協議書や登記申請書の作成、法務局への申請まですべて自分で行うのは、専門的な知識を要する大変な作業です。

また、相続登記を期限までに申請できなかった場合には10万円以下の過料が科される可能性があります。手続きに手間取って過料を支払うことになれば、はじめから司法書士に依頼していたほうが結果的に安く済んだという事態にもなりかねません。

司法書士に依頼すれば、戸籍謄本等の取得から登記申請まで、相続登記に必要な全ての手続きを代行してもらうことができ、手続きの負担が軽減されます。さらに、必要書類の不備や申請書の書き間違いなどで申請のやり直しになるリスクがなく、期限に間に合うよう計画的に相続手続きを完了できます。

手続きに不安がある方や登記義務の期限が迫っている方は、はじめから司法書士に依頼したほうが確実かつ安心と言えるでしょう。

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相続登記の司法書士報酬をできるだけ安く抑えたい場合は、以下の対処法が考えられます。

・手続きの一部を自分でおこなう
・複数の事務所を比較して、なるべく費用の安い事務所に依頼する
・分割払いや後払いに対応している事務所を選ぶ

たとえば戸籍謄本等の必要書類の収集は自分で行い、登記申請手続きのみを司法書士に任せれば、報酬を抑えられる可能性があります。司法書士事務所の多くは、初回の相談を無料としているため、相談の際に自分でできそうな手続きを聞いてみるとよいでしょう。

また、報酬について分割払いや後払いに対応している事務所もあります。支払い時期や支払い方法について、依頼前に確認してみてください。

Q. 自分で相続登記すると、費用はいくら?

相続登記を司法書士に依頼した場合の報酬の目安は5万円から15万円です。自分で手続きを行えばその分の費用が浮き、戸籍謄本など必要書類の取得費用と登録免許税のみで済みます。

先ほどの具体例で言うと、合計27万5,000円のうち司法書士報酬が11万円ですので、自分で行った場合には16万5,000円で済むという計算になります。 しかしながら、司法書士報酬が浮くとはいえ、相続登記を自分でするのは大変な労力がかかります。手間をかけず確実に相続登記をしたい人は司法書士への依頼を検討しましょう。

Q. 相続登記の費用は誰が払う?

相続登記の費用を誰が負担するか、法律上の決まりはありません。相続人同士で話し合って決めることになりますが、一般的には不動産を引き継ぐ人が負担することが多いです。

Q. 相続登記の申請人は誰?

相続登記の法務局への申請は、不動産を引き継ぐ相続人が行います。司法書士に依頼した場合には、司法書士が代理人として申請することができます。

Q. 相続登記の費用は30万円が相場との情報を目にしたけど、本当?

相続する不動産の評価額や個数、規模(土地や建物の広さ)によって登記費用が大きく変動するため、一概に30万円が相場とは言いきれません。たとえば、固定資産税評価額が7500万円の土地を相続する場合は、登録免許税だけでも30万円ほどかかります。実際に司法書士に依頼する前に、報酬や登録免許税を含めた総額の見積もりをとることをお勧めします。

Q. 相続登記費用の補助金制度はある?

相続登記の義務化にともない、相続登記に関する補助金制度を創設する自治体がでてきています。たとえば群馬県千代田町では、町内に不動産を有する相続人などを対象に、相続登記の司法書士報酬や登録免許税相当額などを2万円を限度に補助する取り組みを実施しています。

お住まいの地域や相続する不動産の所在地域で補助金制度を行っているか、各自治体のウェブサイトで確認してみてください。

Q. 未登記建物がある場合の相続登記の方法は?

未登記建物とは、法務局に登記記録が存在しない建物のことです。このような建物の相続手続きを進めるには、初めにその建物の所在地や構造、床面積などを登記する「建物表題登記」を申請しなければなりません。この建物表題登記は土地家屋調査士の業務であり、司法書士は行うことができません。そのため、土地家屋調査士への依頼費用が別途発生します。

建物表題登記が完了し、登記記録が作成されたら、次に相続人の名義で所有権保存登記を行います。

「自分で相続登記を申請しようとしたが、途中で挫折してしまい何年も経ってしまった」と筆者のもとにも相談に来られるケースがあります。

相続登記を自分で行えば司法書士の報酬が不要になるので、費用を抑えるという意味では大きなメリットがあります。しかし、戸籍謄本等の取得に始まり遺産分割協議書や登記申請書の作成、法務局への申請まですべて自分で行うのは大変な作業です。また、なんとか申請できたとしても訂正のために何度も法務局に足を運ぶことになったり、書類の不備のために申請がやり直しになることもあります。

不動産という大切な財産の名義変更を迅速かつ正確に行うためにも、相続登記は司法書士に依頼することをおすすめします。また司法書士に依頼する際には、手続きの流れや報酬など気になることは何でも質問して、その質問に対して誠実かつ丁寧に答えてくれる司法書士を選ぶとよいでしょう。

(記事は2025年12月1日時点の情報に基づいています)

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