目次

  1. 1. 相続登記とは?
  2. 2. 相続登記にかかる費用
    1. 2-1. 添付書類の取得費用
    2. 2-2. 登録免許税とは?
  3. 3. 司法書士に支払う費用
  4. 4. 相続登記費用の具体例
  5. 5. 相続登記は義務になる!
  6. 6. まとめ:まずは司法書士に相談を

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不動産(土地・建物)の所有者が亡くなった場合には、不動産の名義変更が必要になります。不動産の所有者が誰なのかは法務局で管理されている登記簿(登記記録)に記録されていますが、所有者が亡くなったときには法務局が勝手に名義変更をしてくれるわけではありません。所有者がなくなると、その不動産を相続した人は「相続を原因とする所有権移転登記」いわゆる相続登記を申請する必要があります。相続登記は、対象となる不動産の所在地を管轄している法務局に対して、相続によって不動産を取得した人が申請人となって申請します。

相続登記を申請する際には、「登録免許税」という税金を納める必要があり、添付書類である戸籍謄本等の証明書の取得にも費用がかかります。また、司法書士に依頼する場合には報酬の支払いも必要です。今回は相続登記で必要となる費用について詳しく解説します。

相続登記を申請するためには、次の費用が必要になります。

相続登記では、戸籍謄本等の各種証明書を添付書類として提出する必要があります。これらの証明書は市(区)役所で発行してもらえますが、発行手数料がかかります。相続登記で必要となる証明書とその発行手数料は下記のとおりです。

 戸籍謄本(戸籍全部事項証明書) 1通450円
 除籍謄本(除籍全部事項証明書) 1通750円
 改製原戸籍謄本         1通750円
 戸籍の附票の写し        1通300円
 (除)住民票の写し       1通200~300円程度 ※自治体により異なる
 印鑑証明書           1通200~300円程度 ※自治体により異なる
 固定資産評価証明書       1通200~400円程度 ※自治体により異なる

1通あたりの手数料は大きな金額ではありませんが、相続登記において必要な証明書は1通ではありません。戸籍謄本だけでも被相続人(亡くなった人)については出生から死亡までのすべての戸籍謄本(除籍謄本や改製原戸籍謄本も含む)、法定相続人については現在の戸籍謄本が必要になります。必要となる戸籍謄本の通数は相続関係により異なりますが、配偶者および子が法定相続人になるようなシンプルな相続の場合でも5~10通程度になることが多いです。転籍(本籍地を 変更すること)を繰り返している場合や兄弟姉妹が法定相続人になる場合にはさらに通数が増えます。相続人が被相続人より前に死亡しており相続人の子が代わって相続人になる「代襲相続」の場合や、相続登記をしないうちに相続人が死亡して次の相続が発生してしまう「数次相続」の場合では、必要な戸籍が数十通になってしまうこともあります。

また、戸籍謄本は被相続人や相続人の本籍地の市(区)役所でしか取得できないため、本籍地が遠方にある場合には、その役所までの交通費や郵送請求する場合の郵送費も取得費用に含める必要があるでしょう。

登録免許税とは、登記を申請するときに国に納める税金のことです。税額は土地や建物の固定資産税評価額に法律で定められた税率をかけて算出します。相続を原因とする所有権移転登記の税率は1000分の4と定められているので、例えば固定資産税評価額が1000万円の土地であれば4万円の登録免許税を納める必要があります。

ここで注意が必要なのは、登記原因が『遺贈』となる場合です。『遺贈』とは、遺言によって財産を無償で譲ることをいいますが、譲る相手(受遺者)には特に制限がないので、法定相続人以外の人にも財産を承継させることができます。法定相続人以外の人が遺贈によって不動産を取得した場合の税率は1000分の4ではなく、1000分の20となります。先ほどの例にあげたケースだと、1000万円の土地の登録免許税が20万円になるため、法定相続人以外の人が取得者となる場合には税率に注意して下さい。

相続登記に限らず登記申請の際には登録免許税を納めるのが原則ですが、相続登記を促進するために登録免許税の免税措置が定められています。令和7年3月31日までの期限付きですが、次の3つのいずれかに該当する場合には登録免許税が非課税となります。

1 相続により土地を取得した人が相続登記をしないで死亡した場合
2 市街化区域外にある法務大臣が指定した土地で評価額が100万円以下の場合
3 表題部所有者のみが登記された評価額100万円以下の土地について相続人名義で
所有権保存登記をする場合

非課税の対象となるのは土地のみで、建物の相続について免税措置はありません。そのうえ限られたケースでしか適用にならないため、この免税措置の適用を受けることができる方は多くないと思われます。もし、上記3つのいずれかに該当する可能性がある場合には下記リンクに詳細が記載してありますので参照して下さい。

法務局HP:相続登記の登録免許税の免税措置について

相続人が自分で相続登記を申請する場合には上記2-1と2-2が主な費用となりますが、司法書士に登記申請を依頼する場合には司法書士に支払う報酬も必要になります。司法書士の報酬は自由化されており、各司法書士が各々自由に規定することができます。それゆえに報酬については依頼する司法書士に直接問い合わせるしかありませんが、一般的な報酬規程の定め方として、基本報酬を定めたうえで相続人の数や不動産の個数などにより報酬が加算されるパターンが多いです。

また、戸籍謄本等の取得や遺産分割協議書の作成を司法書士が行う場合には、別途報酬が発生することもあります。少し古いデータになりますが、平成30年に日本司法書士会連合会が実施した報酬に関するアンケートの結果が公表されています(下記リンク参照)。地域によって相場が異なり、同じ地域でも最低額と最高額に開きがありますが、相続登記の司法書士報酬は5~15万円くらいが目安と言えそうです。

日本司法書士会連合会HP:司法書士の報酬

前述のとおり司法書士の報酬は自由化されていますが、報酬規程表を定める必要があり、それを依頼者に提示し説明する義務もあります。司法書士に依頼する場合には、正式に依頼する前に見積書の作成を依頼するか、少なくとも報酬規程表をもとに説明を受けて納得したうえで依頼することが大切です。

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相続登記費用について、イメージしやすいように次のケースで説明します。

◇ 所有者である朝日一郎が死亡し、その法定相続人は妻・正子、長男・太郎、長女・山田花子の3名(長男・長女はどちらも結婚している)。
◇ 遺産分割協議の結果、土地建物は妻・正子が単独で相続することになった。
◇ 妻・正子は戸籍謄本等の取得や遺産分割協議書の作成も含めて司法書士に依頼した。

妻が単独で不動産を取得した事例のイメージ図
妻が単独で不動産を取得した事例のイメージ図
妻が単独で不動産を取得した事例の相続登記にかかる費用の例
妻が単独で不動産を取得した事例の相続登記にかかる費用の例

※上記はあくまでも費用の一例です。添付書類の取得費用や司法書士報酬は事案により増減します。

2021年4月21日に相続登記を義務化する改正法が国会で成立しました。令和6年(2024年)4月には運用がスタートします。相続登記が義務化されると、相続人が被相続人の財産の中に不動産があることを知った日から3年以内に登記申請を行わなければならず、正当な理由なく相続登記を怠った場合には10万円以下の過料に処されます。

正当な理由の判断基準や過料に処された場合に実際に支払うべき金額などについてはまだ明らかになっていませんが、現状に比べて速やかな相続登記の申請が必要になることは間違いありません。

「自分で相続登記を申請しようとしたが、途中で挫折してしまい何年も経ってしまった」と相談に来られるケースもあります。相続登記を自分で行えば司法書士の報酬が不要になるので、費用を抑えるという意味では大きなメリットがあります。しかし、戸籍謄本等の取得に始まり遺産分割協議書や登記申請書の作成、法務局への申請まですべて自分で行うのは大変な作業です。また、なんとか申請できたとしても訂正のために何度も法務局に足を運ぶことになったり、書類の不備のために申請がやり直しになることもあります。

不動産という大切な財産の名義変更を迅速かつ正確に行うためにも、相続登記は司法書士に依頼することをお薦めします。また司法書士に依頼する際には、手続きの流れや報酬など気になることは何でも質問して、その質問に対して誠実かつ丁寧に答えてくれる司法書士を選ぶとよいでしょう。

(記事は2022年8月1日時点の情報に基づいています)

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