目次

  1. 1. ほとんどの相続手続きで必要な戸籍謄本類
    1. 1-1. 被相続人の出生から死亡時までの戸籍類が必要
    2. 1-2. 戸籍謄本類の集め方|最寄りの市区町村窓口で可能に
    3. 1-3. 法務局の法定相続情報証明制度の活用検討を
  2. 2. 不動産の名義変更で必要な書類
    1. 2-1. 遺言書で不動産を名義変更する場合の必要書類と、取得場所
    2. 2-2. 遺産分割協議書で不動産を名義変更する場合の必要書類と、取得場所
    3. 2-3. 法定相続分に従って不動産を名義変更する場合の必要書類と、取得場所
  3. 3. 預金の解約・払い戻し手続きに必要な書類
    1. 3-1. 遺産分割協議書や遺言書がなく預金相続するための必要書類と、取得場所
    2. 3-2. 遺産分割協議書がある場合の預金相続の必要書類と、必要場所
    3. 3-3. 遺言書で預金相続する場合の必要書類と、必要場所
    4. 3-4. 家庭裁判所での調停や審判によって預金相続する際の必要書類と、取得場所
    5. 3-5. 預貯金仮払い制度を利用する場合の必要書類と、取得場所
  4. 4. 相続税申告の必要書類と取得場所
    1. 4-1. 相続税申告で、配偶者の税額軽減の適用を受ける場合の必要書類
    2. 4-2. 小規模宅地等の特例の適用を受ける場合の必要書類
  5. 5. 相続手続きの資料集め 専門家による代行も可能
    1. 5-1. 相続人・相続財産調査は弁護士や司法書士などに相談
    2. 5-2. 遺産分割は弁護士に相談
    3. 5-3. 相続税の申告は税理士に相談
    4. 5-4. 不動産の名義変更は司法書士に相談
  6. 6. まとめ

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戸籍謄本類とは戸籍事項証明書や戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本のことで、相続手続きのほとんどで「被相続人(亡くなった人)の出生から死亡時までの戸籍謄本類」が必要となります。

亡くなった人の出生から死亡までの戸籍謄本類が必要な理由は、相続人を確定させるためです。 子や兄弟姉妹の有無などについては、現在の戸籍だけではわからないため、出生からのすべての戸籍類を集める必要があります。

2024年3月から、戸籍類は最寄りの市区町村の窓口で取得できるようになりました。

これまでは本籍地のある役所でしか取得できなかったため、戸籍類を集めるために大変な手間がかかっていました。しかし、この変更によって、必要となる戸籍の本籍地が各地にあったとしても、一カ所の市区町村の窓口でまとめて申請できるようになったため、負担が軽減されます。

本人の戸籍類だけでなく、配偶者、父母・祖父母、子・孫の戸籍類も請求できます。ただし、兄弟姉妹の戸籍類と、コンピューター化されていない戸籍類は請求できないため注意が必要です。また、郵送や代理人による請求はできません。

多数の相続手続きが必要な場合、法定相続情報証明制度の活用も検討すると良いでしょう。

この制度では、法務局に戸籍類とともに法定相続人に関する情報を一覧図にした「法定相続情報一覧図」を提出し、法務局の証明がある一覧図の写しの交付を受けることができます。この一覧図の写しは、不動産登記や相続税申告、各金融機関での相続手続きなどで戸籍類の代わりに使えるので、より円滑な相続手続きが可能になります。一覧図の写しは無料で複数枚交付してもらえるので、便利です。

関連記事「法定相続情報一覧図」の書き方、ひな形と一緒に解説 自分で手続きする方法も紹介

ここからは、ケースごとに必要となる書類を解説していきます。

まず、不動産の名義変更(相続登記)の必要書類について紹介します。なお、その不動産の所在地を管轄する法務局で申請を行います。詳細は司法書士に相談してみてください。

遺言書があれば、その遺言書に記された内容に基づき、名義変更を進めます。必要書類と、その書類の入手方法は以下の通りです。

必要な書類 取得場所
被相続人の除籍謄本 最寄りの市区町村窓口
被相続人の住民票の除票
または戸籍の附票
最寄りの市区町村窓口
不動産を取得した人の戸籍謄本
および住民票
最寄りの市区町村窓口
固定資産評価証明書 不動産所在地の市税事務所や役所
遺言書
検認済証明書
(公正証書遺言以外で遺言書保管制度を利用していない場合)
被相続人の最後の住所地の家庭裁判所

遺産分割協議によって、不動産の名義を相続人に変更することになった場合、遺産分割協議書のほか、以下のような書類が必要となります。

必要な書類 取得場所
被相続人の出生から死亡までの
戸籍・除籍・改製原戸籍謄本
最寄りの市区町村窓口
被相続人の住民票の除票
または戸籍の附票
最寄りの市区町村窓口
相続人全員の戸籍謄本 最寄りの市区町村窓口
不動産を取得する相続人の住民票 最寄りの市区町村窓口
固定資産評価証明書 不動産所在地の市税事務所や役所
遺産分割協議書
相続人全員の印鑑証明書
(遺産分割協議書に押印したもの)
相続人の住所地の役所

民法で定められている各相続人の取得分である「法定相続分」の割合に基づく相続登記とは、相続人全員の共有名義で登記をすることです。必要な書類と入手場所は以下の通りです。

必要な書類 取得場所
被相続人の出生から死亡までの
戸籍・除籍・改製原戸籍謄本
最寄りの市区町村窓口
被相続人の住民票の除票
または戸籍の附票
最寄りの市区町村窓口
相続人全員の戸籍謄本 最寄りの市区町村窓口
相続人全員の住民票 最寄りの市区町村窓口
固定資産評価証明書 不動産所在地の市税事務所や役所

なお、法定相続分に基づく相続をすると、複数人が不動産を共有する状態となります。その不動産を売りたくなっても、共有者全員の賛成が必要となるので、一人でも反対したら売却ができなくなるなど、トラブルの元になることは知っておきましょう。

次に、相続した預金の解約・払い戻しをする場合に、金融機関に提出する必要書類を紹介します。金融機関によって必要な書類が異なることもあるので、事前に問い合わせをして確認しておきましょう。

遺言書も遺産分割協議書もない場合は、複数の相続人が共同で預金を相続することになり、相続人全員の戸籍謄本や印鑑証明の提出が求められます。必要な書類、取得場所は以下の通りです。

必要な書類 取得場所
被相続人の出生から死亡までの
戸籍・除籍・改製原戸籍謄本
最寄りの市区町村窓口
相続人全員の戸籍謄本 最寄りの市区町村窓口
相続人全員の印鑑証明書 相続人の住所地の役所
各金融機関所定の届出書 各金融機関

遺産分割協議書に従って、預金の解約や払い戻しの手続きをする際の必要書類は以下の通りです。

必要な書類 取得場所
被相続人の出生から死亡までの
戸籍・除籍・改製原戸籍謄本
最寄りの市区町村窓口
相続人全員の戸籍謄本 最寄りの市区町村窓口
各金融機関所定の届出書 各金融機関
遺産分割協議書
相続人全員の印鑑証明書
(遺産分割協議書に押印したもの)
相続人の住所地の役所

遺言に基づき、預金相続の手続きをする際には、以下の書類が求められます。遺産分割協議書の場合と違い、相続人全員の戸籍謄本や印鑑証明書は不要です。

必要な書類 取得場所
被相続人の除籍謄本 最寄りの市区町村窓口
預金を取得した人の印鑑証明書 取得した人の住所地の役所
各金融機関所定の届出書 各金融機関
遺言書
検認済証明書
(公正証書遺言以外で遺言書保管制度を利用していない場合)
被相続人の最後の住所地の家庭裁判所

一般的なケースではありませんが、遺産分割協議で合意が得られず、家庭裁判所の調停や審判によって遺産の分割内容が決まった場合、預金相続には以下の資料が必要となります。

必要な書類 取得場所
調停調書謄本または審判謄本
および審判確定証明書
家庭裁判所
預金を取得した人の印鑑証明書 取得した人の住所地の役所
各金融機関所定の届出書 各金融機関

遺産分割前に相続人が預貯金の一部を払戻しできる制度、いわゆる「預貯金の仮払い制度」が2019年7月から始まりました。

遺産分割が成立する前に、葬儀費用や相続人の当面の生活費などの資金が必要な場合に利用されます。他の法定相続人の同意を得る必要はなく、一人の法定相続人が単独で利用できます。この制度を利用して、預金を引き出す際には以下の資料が必要となります。

必要な書類 取得場所
被相続人の出生から死亡までの
戸籍・除籍・改製原戸籍謄本
最寄りの市区町村窓口
相続人の戸籍謄本 最寄りの市区町村窓口
本人確認書類
(通常は印鑑証明書)

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相続税の申告時には、相続税申告書とともに必要書類を、亡くなった人の所在地を管轄する税務署に提出します。必要書類の一覧は、以下の通りです。なお被相続人や相続人の身分関係に関する書類は、相続開始日から10日を経過した日以後に取得したものが求められます。詳細は税理士に相談してみてください。

書類の名称 取得場所
被相続人の住民票の除票 最寄りの市区町村窓口
マイナンバーカードもしくは
マイナンバーカードの通知書
および身分証明書
被相続人の出生から死亡までの
戸籍・除籍・改製原戸籍謄本
最寄りの市区町村窓口
相続人全員の戸籍謄本 最寄りの市区町村窓口
遺言書または遺産分割協議書
相続人全員の印鑑証明書
(遺産分割協議書に押印したもの)

上記は相続税申告に必要な一般的な書類ですが、各種の制度や特例を利用するために必要な書類もあります。

以下、解説します。

相続税には、配偶者の税金を軽くする制度があります。配偶者が取得する遺産は法定相続分の範囲内であれば相続税はかかりません。それを超える場合でも1億6千万円以下なら相続税はかかりません。

この配偶者の税額経験の適用を受けるためには、先ほど紹介した相続税申告時の一般的な書類だけで十分で、それ以外の資料は不要です。

関係記事相続税の負担を軽くできる「配偶者控除」とは? 「二次相続」も見据えて対策を

小規模宅地等の特例のうち、代表的なものは特定居住用宅地等の特例です。これは亡くなった人が住んでいた宅地については、配偶者か同居していた親族(両者がいない場合には一定の別居の親族)が相続すれば、8割引の評価額になる制度です。ただし、他にも要件がありますので、詳細は下記の関連記事や税理士に確認してみてください。

関連記事「小規模宅地等の特例」で土地の評価額8割減 適用要件には注意が必要

この特例を受ける場合の必要書類は下記の通りです。

●亡くなった人の配偶者が適用を受ける場合
故人の配偶者が自宅を相続する場合、「配偶者の税額軽減」と同じで、特別な資料を用意する必要はありません。

●配偶者以外の同居家族が適用を受ける場合
同居親族(配偶者以外)が適用を受ける場合、住民票の写しなど、自己の居住の用に供していたことを称する書類も必要(特例の適用を受ける人がマイナンバー(個人番号)を有する場合は不要)です。

●同居していない親族が適用を受ける場合
この特例は基本的に配偶者か同居の親族が自宅を相続するときに使えるのですが、両者がいない場合には、別居の親族も対象になり得ます。ただし、相続開始前3年以内に、自分、配偶者、三親等内の親族、または特別の関係がある一定の法人の持ち家に住んでいなかった場合に限られます。その場合、以下の資料が追加で必要となります。

  • 相続開始前3年以内における住所又は居所を明らかにする書類(特例の適用を受ける人がマイナンバー(個人番号)を有する場合には提出不要)
  • 相続開始前3年以内に居住していた家屋が以下の家屋である旨を証する書類(家屋の登記事項証明書や賃貸借契約書など)
    ・自己の所有でない
    ・自己の配偶者の所有でない
    ・三親等内の親族の所有でない
    ・特別の関係がある一定の法人の所有でない
  • 相続開始の時において自己の居住している家屋を相続開始前のいずれの時においても所有していたことがないことを証する書類(相続開始時に居住していた家屋の登記事項証明書など)

なお、「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」のいずれの場合も、遺産分割が成立していない場合には「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しなければなりません。

「申告期限後3年以内の分割見込書」とは?
遺産分割が成立しないまま相続税の申告期限を迎える場合、申告時に「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」などの適用を受けることができません。しかし、「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出した場合、後日遺産分割が成立した際に相続税の申告をし直すことで、上記の適用を受けることができるようになります。「申告期限後3年以内の分割見込書」には、遺産が分割されていない理由や分割の見込みの詳細を記載します。

上記の通り、相続では、遺産分割・不動産の名義変更・預金の払い戻し手続きや相続税の申告など多くの手続きをしなければなりません。仕事が忙しいなどの理由で専門家に手続きを代行してもらいたい場合の相談先を説明します。

戸籍謄本の収集や預金・株式等の相続手続きの代行を依頼したい場合は、弁護士や司法書士などに相談しましょう。

遺産分割協議書の作成や遺産分割協議・調停の代理を依頼したい場合は、法律の専門家である弁護士に相談しましょう。

相続税申告をしたい場合は、税務の専門家である税理士に相談しましょう。相続税の申告は、原則として、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10カ月内に行わなければなりません(相続税法27条)。期限を過ぎてしまうと無申告加算税や延滞税などのペナルティが課されてしまうので早めに相談することが大切です。

不動産を相続し、所有者の名義変更(相続登記)をしたい場合は、登記の専門家である司法書士に相談しましょう。

手続きごとに専門家が異なるものの、相続に特化した専門家に依頼すれば、他の士業を紹介してもらえることが多いでしょう。例えば、弁護士に依頼をした場合、必要に応じて、司法書士や税理士を紹介してもらえます。

相続手続きは手間がかかるため仕事が忙しいなどの理由で後回しにされがちです。専門家に依頼をすれば、さまざまな手続きを任せることができ、手間をかけずに円滑に相続手続きを終わらせることができます。相続手続きに時間を割く余裕がない方や相続手続きを自分で進めることに不安がある方は、一度専門家に相談すると良いでしょう。

(記事は2024年3月1日時点の情報に基づいています)

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