目次

  1. 1. 法定相続情報一覧図とは
    1. 1-1. 法務局が相続関係を証明する「法定相続情報証明制度」
    2. 1-2. 法定相続情報一覧図を活用できる場面
    3. 1-3. 法定相続情報一覧図が必要のない方
  2. 2. 法定相続情報一覧図の書き方
    1. 2-1. 法定相続情報一覧図のひな形
    2. 2-2. 法定相続情報一覧図に記入すべき事項
    3. 2-3. 法定相続情報一覧図を自分で書くポイント
    4. 2-4. 法定相続情報一覧図のテンプレートの取得方法
  3. 3. 法定相続情報一覧図の登記所(法務局)認証の流れ
    1. 3-1. 必要書類一覧
    2. 3-2. 登記所(法務局)への申出方法
    3. 3-3. 法定相続情報一覧図の申出にかかる費用と期間
    4. 3-4. 法定相続情報一覧図の写しの再交付と費用
    5. 3-5. 法定相続情報一覧図の有効期限
  4. 4. まとめ 司法書士など専門家に依頼も可能

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法定相続情報一覧図は家系図のような表で、亡くなった人と相続人との関係が一目でわかるようにまとめたものです。

遺産相続の際には相続人の調査、遺産分割協議、不動産の名義変更(相続登記)や預貯金の払い戻し、株式の名義変更などさまざまな対応が必要です。

その手続きの際に求められるのが、「被相続人の生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍謄本」の提出です。戸籍謄本は本籍地の自治体に請求する必要があり、相続人たちの負担となっています。

相続人たちは、苦労して集めた「戸籍の束」を、手続きのたびに関係機関に提示しなければなりませんでした。基本的に戸籍の束は返してもらえるものの、場合によっては、戸籍の取り直しを迫られることもありました。

その手間を省くために2017年に始まったのが、法務局が相続関係を証明してくれる「法定相続情報証明制度」です。亡くなった人と相続人の関係がわかるA4サイズ1枚の「法定相続情報一覧図」の写しが「戸籍の束」の代わりとして、使用できるようになりました。写しは必要な枚数を交付してもらえるため、複数の関係機関にて同時並行で手続きすることもできます。

もちろん、法務局に相続関係を証明してもらう手続きの中で戸籍謄本を収集する必要があります。しかし、その手間を1回で終わらせることができるようになりました。

法定相続情報一覧図の写しがあれば、以下の手続きができます。

  • 法務局での不動産の名義変更
  • 預貯金の払い戻し、名義変更
  • 株式、投資信託などの名義変更
  • 相続した自動車や船の名義変更
  • 税務署での相続税申告、納税

ただし金融機関や証券会社、株式発行会社などの民間機関の一部では制度に対応しておらず、法定相続情報一覧図が使えない可能性もあるので、個別の確認が必要です。

次のような方々は、この制度を使うメリットはありません。

  • 相続放棄した方
  • 遺産分割協議の結果、遺産をもらわないことになった人
  • 相続欠格者、廃除された相続人
  • 名義変更の必要のない財産(動産など)しかもらわず相続税申告納付が不要な方

【関連記事】法定相続情報証明制度の5つのデメリット 費用や利用をおすすめするケースを紹介

法定相続情報証明制度を利用するには、法定相続情報一覧図を作成する必要があります。作成手順や書き方を説明します。

ひな形をお示ししますので、参考にして下さい。

相続人が、妻と子3人の場合の法定相続情報一覧図のひな形
相続人が妻と子1人の場合の法定相続情報一覧図のひな形

ひな型を参照しながら、一覧図に記入すべき項目を確認しましょう。

・タイトル
冒頭に「被相続人 ○○ 法定相続情報」と記載しましょう。○○のところには亡くなった方の名前を書き入れます。

・被相続人の情報
亡くなった人の氏名、最後の住所、最後の本籍地(任意)、生年月日、死亡年月日を記載します。「(被相続人)」とも併記します。

・相続人の情報
各相続人の氏名、生年月日、被相続人との続柄を記載します。なお、相続人の住所の記載は任意です。ただし記載すると住民票の写しの提出が必要になります。相続放棄した人や相続欠格者、遺産分割協議の結果相続しなくなった人についての情報も記載しなければなりません。これらの人の生年月日や続柄も記載しましょう。

・申出人を併記
申出人となる相続人は、氏名の横に「(申出人)」と併記します。

・作成年月日、作成者名
一覧図の作成日、作成者の氏名、住所を記載します。

なお、法定相続人を確認するには、被相続人が生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍謄本類を順番に確かめる必要があります。相続人になる可能性がある人は配偶者、子ども、親、兄弟姉妹です。養子縁組や認知した子ども、前婚の子どもなども相続人になるので見逃さないようにしましょう。

相続人の中にすでに亡くなっている人がいると、代襲相続が発生してその子どもに相続権が移ります。この場合、孫などの代襲相続人については記載しますが、子どもなどの被代襲者の氏名は記載が不要です。また相続廃除を受けた人は記載する必要がありません。

被相続人や相続人が外国籍で戸籍謄本、抄本を添付できない場合、この制度は利用できません。

一覧図を自分で作成する際のポイントは以下の通りです。

・用紙はA4サイズ
法定相続情報一覧図を作成するときの用紙はA4サイズを利用しましょう。

・用紙の下から5センチを空ける
また用紙の下を5センチほど空ける必要があります。ひな型の作成者の情報の下に、余白をつくって下さい。用紙の下5センチ部分は後に法務局が認証文を挿入するために使います。

・押印は不要
印鑑による押印は不要です。署名のみでかまいません。

・手書きでもパソコンでも可能
手書きでもパソコンを使って作成してもかまいません。

・関係者の線でのつなぎ方
関係者の線の結び方に特に厳密な決まりはありませんが、わかりやすくするために配偶者は二重線で結び、親子間は一重線で結ぶと良いでしょう。

・訂正方法
間違った場合には二重線をひいて印鑑を押すなどして修正してもかまいませんが、わかりにくくなるようなら作成し直した方が良いでしょう。

法務局のサイトから、法定相続情報一覧図の様式及び記載例、見本がダウンロードできますので、こちらを活用してみるのもよいでしょう。

作成した法定相続情報一覧図を登記所で認証してもらうまでの流れについて説明します。

以下の書類が必要となります。

  • 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本、改正原戸籍謄本、除籍謄本
  • 被相続人の住民票の除票(除票を取得できない場合には戸籍の附票)
  • 相続人全員分の戸籍謄本または戸籍抄本
  • 申出人の氏名・住所を確認できる公的書類(免許証、マイナンバーカード、住民票の写しなど)
  • 作成した法定相続情報一覧図
  • 必要事項を記入した申出書

親や兄弟姉妹が相続する場合などには別の戸籍謄本類が必要になる可能性があります。また証明書に相続人の住所を記載したい場合、「各相続人の住民票」が必要です。

必要書類を揃えたら、管轄の法務局へ提出しましょう。管轄の法務局は以下から選べるので、最も便利なところを利用できます。

  • 被相続人の死亡時の本籍地
  • 被相続人の最後の住所地
  • 申出人の住所地
  • 被相続人名義の不動産の所在地

なお、持参だけではなく郵送でも申出が可能です。

申出に費用はかかりません。なお、郵送による申出には切手代がかかります。

申出をすると、数日から1週間くらいで法務局が認証印を押した「法定相続情報一覧図」を交付してくれます。不動産の名義変更、預貯金の払い戻しなどそれぞれの手続きで使えるので、予定する枚数を申請しましょう。

証明書が交付されると、申出時に提出した戸籍謄本類は返還されます。

法定相続情報一覧図の再交付も可能です。再交付の申出書と本人確認書類があれば、法務局で必要な枚数を無料で交付してもらえます。

再交付の申出ができるのは当初に申出をした相続人のみで、他の相続人にはできません。ただし他の相続人も、申出人からの委任があれば交付を受けられます。

なお一覧図が登記所に保管されるのは、申し出た日の翌年から記載して、5年間です。5年を過ぎて再交付が必要になった場合は、再度法定相続情報一覧図を作成して必要書類を提出し、法務局に認証してもらう必要があります。

法務局から発行された法定相続情報一覧図の写しに有効期限は基本的にありません。ただし金融機関など、提出先によっては発行日からの有効期限を決められている場合があります。事前に提出先へ確認しましょう。

【関連記事】法定相続情報証明制度の有効期限 証明書の提出先ごとに詳しく解説

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法定相続情報一覧図があれば、戸籍謄本類を取得するのが一度で済み、費用も手間も省くことできます。不動産や預貯金、株式などの名義変更が必要な方、相続税の申告納税をする方などは、ぜひ利用してみて下さい。

法定相続情報一覧図の作成は、弁護士や司法書士、行政書士などの専門家に依頼することもできますので、書き方に迷った際には相談してみるとよいでしょう。

(記事は2022年10月1日時点の情報に基づいています)

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