相続の書類集めを効率的に 相続登記などケースごとに解説
相続手続きを進めるには、さまざまな書類が必要です。金融機関での手続きや相続登記など、それぞれで違い、その量が多くなることも。そこで、効率よく集められるよう、一覧にしました。
相続手続きを進めるには、さまざまな書類が必要です。金融機関での手続きや相続登記など、それぞれで違い、その量が多くなることも。そこで、効率よく集められるよう、一覧にしました。
目次
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まず、相続手続きを始める上で、相続人を確認するために必要な書類を解説していきます。
相続人を確認するための原則的な書類は次のとおりです。
相続人が誰であるかなんて、家族ならわかりきっていることをなぜわざわざ調べなければならないのでしょう。それは、相続関係を証明するのは家族に対してではなく、金融機関や役所などでの相続手続きにおいて客観的に証明しなければならないからです。
日本の戸籍制度では、戸籍に記載されている人をもとに、相続人を知ることができます。親子関係や結婚、養子関係なども全て戸籍に記載されます。
また、レアケースにはなりますが、婚外子(例:愛人との間の子供)でも認知している子供がいる場合なども戸籍に記載されます。わたしも、数多くの相続手続きを行っていますが、200~300件に1件くらいの割合で家族の誰も知らない相続人がいることもあります。このため、きちんと相続人を把握するためには、まずは被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍が必要になります。
出生から死亡までの連続した戸籍と言われても良く分からないですよね。本籍地が移るほか、法律が変わったり、フォーマットが変わったりするような時、戸籍の古い情報は削除され、その時に残っている(生きている)情報のみが移管されます。例えば、結婚して除籍された(戸籍から抜けた)子供がいた場合には、新フォーマットの戸籍にはその子どもは記載されません。そうなると、最新のフォーマットの戸籍を確認するだけだと、被相続人の相続人が誰であるかということがわかりません。このため、古いフォーマットの戸籍でも、確認の必要性が生じます。
被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍を集めた後に、その中で配偶者以外に①直系卑属(子供や孫)、②直系尊属(両親や祖父母)、③兄弟姉妹の順で、相続人を確認します。直系卑属がいなければ、直系尊属が相続人となります。直系尊属がいなければ、兄弟姉妹が相続人となります。なお、配偶者は常に相続人です。
相続人が兄弟姉妹になっているような場合は、被相続人の兄弟姉妹=被相続人の父母の子どもなので、被相続人の父母の出生から死亡までの戸籍も取得しなければならないので注意が必要です。
相続人のうち、死亡している人がいる場合は代襲相続(被相続人より先に相続人が死亡していた場合)や数次相続(被相続人死亡後に相続人が死亡した場合)になるので、新たな相続関係を調査しなければなりません。
代襲相続や数次相続の場合は、死亡した相続人の出生から死亡までの戸籍を集めて、死亡した相続人の相続権を誰が承継しているかを確認する必要があるので戸籍のボリュームがかなり増えてしまいます。ここまでくると、自分自身で集めることも難しくなるので司法書士等の専門家に依頼するのが無難でしょう。
金融機関での預貯金の相続手続きに必要な書類は、各金融機関所定の相続手続きの用紙以外に、遺言書や遺産分割協議の有無によって異なります。戸籍や印鑑証明書に関しては、金融機関の独自のルールで書類の期限が設定されているものがあるので期限切れに注意してください。多くの金融機関は発行日から6か月程度を期限に設定しています。
遺言書、特に遺言執行者を指定している公正証書遺言であれば、用意する書類は非常に少なくて済みます。こういった意味でも遺言書を遺してあげることで相続人の負担をぐっと減らしてあげることができます。
遺言書がない場合は、相続人全員による遺産分割協議を行って預貯金を相続する人を決めるか、遺産分割協議を行わずに法定相続分どおりに相続するかを決めます。遺言書がある場合に比べて必要書類が多くなります。以下では、それぞれのケースで必要な書類をまとめました。
■遺産分割協議書がある場合
■遺産分割協議書がない場合(相続人が一人または法定相続分どおりに相続する場合)
相続税は遺産総額が基礎控除額(3000万円+法定相続人1名につき600万円)を超えると申告が必要になります。基礎控除額以内であれば相続税申告の必要はありません。控除があって納税額がゼロになるとしても控除する前の金額において基礎控除額を超えた場合は申告をしなければなりません。
注意しなければならないのが、生命保険です。民法上は受取人の指定のある場合、被相続人の遺産ではなく、受取人固有の財産と考えられるので相続財産とはならないのですが、相続税の計算にあたっては生命保険金を含めて考えなければなりません。うっかり生命保険金を入れずに計算して、「基礎控除内だから相続税の申告が不要」と判断しように気を付けましょう。
以下に相続税申告書を作成するために一般的に必要な書類を列挙します。ただ、事案によって必要な書類は変わることがあります。以下の書類は一般的なもので、相続の内容によって不要な書類も入っています。他に必要な書類がある場合も考えられます。相続税の申告に関しては、必要書類もさることながら各種控除の適用の有無などで納税額が大きく変わることもあります。このため、税理士への依頼を強くおすすめします。
(1)相続人を確認するために必要な書類
(2)遺産分割を確認するために必要な書類
(3)不動産を確認するために必要な書類
(4)現預金と有価証券を確認するために必要な書類
(5)その他の財産
(6)被相続人の債務及び葬式費用を確認するために必要な書類
(7)死亡保険金と死亡退職金
(8)申告書関係
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相続の相談が出来る司法書士を探す相続登記とは、相続に伴って不動産を被相続人の名義から相続人の名義に変更することです。登記申請書に加えて、添付書類として遺言や遺産分割協議の有無によって必要書類が異なります。相続登記の場合には金融機関の手続きと違って、戸籍や印鑑証明書などの各書類の期限はないのでご安心下さい。
ただし、被相続人の死亡時の住所を証明する住民票の除票は、原則として死亡から5年間しか役所に保管されないので、あまり長い間相続登記を放置してしまうと書類をそろえることが困難となり、手続きが非常に面倒になります。
また、相続登記を放置している間に、相続人が死亡して数次相続が発生してしまうと、関係者が複雑になり手続きを進められなくなる可能性もあるので早めに相続登記を行うようにしましょう。
■遺産分割協議書がある場合
■遺産分割協議書がない場合(相続人が一人または法定相続分どおりに相続する場合)
(記事は2020年7月1日現在の情報に基づきます)
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