相続税申告の必要書類一覧! 特例適用や不動産など遺産相続別に解説
相続税を申告する際には様々な必要書類の提出を求められます。特例、不動産などの相続財産の種類、相続人などの状況によって必要書類は異なります。一般的な必要書類の内訳や入手方法を、元国税専門官のライターが解説します。
相続税を申告する際には様々な必要書類の提出を求められます。特例、不動産などの相続財産の種類、相続人などの状況によって必要書類は異なります。一般的な必要書類の内訳や入手方法を、元国税専門官のライターが解説します。
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すべての相続人や受遺者が相続税の申告が必要となるわけではありません。相続税の「課税価格の合計額」(遺産総額のうち課税対象となるもの)が「基礎控除額」を超えた場合に申告が必要となります。
この課税価格は、被相続人のプラスの財産(預貯金や土地など)から、マイナスの財産(債務や葬儀費用など)を引いた金額が基本となります(死亡に伴う生命保険金・退職金、被相続人から生前贈与を受けた財産の一部も課税価格に含まれます)。
一方、基礎控除額は「3000万円+法定相続人の数×600万円」で計算をします。たとえば法定相続人が妻と子2人であれば基礎控除額は4800万円です。
相続税の申告の要否を判断するときは、まずは課税価格の合計額が基礎控除額を超えているのかを調べることが先決です。もし超えていなければ相続税の申告は不要となり、必要書類を集める必要もありません。
ただし、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減(配偶者控除)などを受ける場合は注意が必要です。
【小規模宅地等の特例】
小規模宅地等の特例とは、亡くなった方が自宅として使っていた土地など小規模の宅地に対して、一定の要件を満たせばその評価額を最大8割減額できる制度です。この特例を受ける要件のひとつに相続税申告があるため、課税価格の合計額が基礎控除額を下回ったとしても、相続税の申告は必要になります。
【相続税の配偶者控除】
配偶者控除は、以下のどちらかのケースで相続税が控除される制度です。
たとえば、遺産総額が10億円、配偶者が法定相続分が1/2ですので、5億円を相続した場合、1億6000万円を越えていますが相続税はかかりません。配偶者控除は相続税がかからない場合でも申告が必要となります。
その他にも未成年控除、障害者控除、相次相続控除などがあり、相続税申告が複雑となるケースがあります。明らかに相続税の申告が必要ないと判断できるケースは別として、申告の要否を判断できない場合や、特例を使うにあたり不安がある場合は、相続税の申告書作成に加えて、必要書類の準備についても考える必要があので、税理士に相談することをおすすめします。
相続税の申告が必要となった場合、申告書の作成に移ることになりますが、このときに大切なのが、必要書類をきちんと集めることです。必要書類には「税務署に提出するため」という目的もありますが、「相続税申告の根拠となる情報を集めるため」という目的が本質です。必要書類がなければ申告のための情報が不足し、正しい相続税申告書を作ることができません。国税庁ホームページなどでは必要書類の情報が網羅されていますが、実際に提出する必要書類は各自の申告内容により異なります。ただやみくもに書類を集めるのではなく、申告しようとする内容に合った必要書類を用意するようにしましょう。
なお、2018年4月から、必要書類のほとんどがコピーで提出できるようになりました。必ず原本で提出しなくてはならないのは印鑑証明書のみです。
以下の表は、一般的な申告でも必要と考えられる書類に絞って、まとめたものです。ただし、申告内容によっては下記の表にない必要書類を求められることもあります。また、「小規模宅地等の特例」に関する必要書類のように、遺産分割の内容などにより複数のパターンがあるケースも存在します。いずれにしても不明点があれば早めに税務署や税理士に相談をしておくことをおすすめします。
戸籍関係の書類は、被相続人と相続人の家族関係を確認するためのものです。被相続人が生まれた時から亡くなった時までの情報が必要となるため、結婚や本籍地の変更などがあった場合、戸籍謄本に加えて除籍謄本も用意してください。
【主な必要書類】
被相続人の財産をどのように分けたかが分かる書類を用意してください。遺言書が残されていたら遺言書の写しを、相続人同士で遺産分割協議を行ったなら遺産分割協議書の写しを、相続税申告書に添付します。また、相続放棄をした場合や、相続人に未成年者がいるときなどは追加書類が必要になるので、注意してください。
【主な必要書類】
など
相続財産のなかに不動産が含まれている場合、評価額の根拠となる書類が必要です。土地は路線価に面積を掛けて計算し、建物は固定資産税評価額を用いるのが原則ですが、賃貸していた場合は計算に影響が出るため賃貸借契約書の写しも必要です。
【主な必要書類】
など
個人事業主に相続が発生した場合、事業用財産も相続税の課税対象となります。パソコンや自動車のような事業のために使っていたものに加え、まだ販売されていない棚卸資産も相続財産として扱われます。相続開始前に作成していた帳簿などを見て、事業用財産の有無を確認してください。
【主な必要書類】
など
相続税の申告にあたっては、単純に被相続人が亡くなった日の預貯金の残高を確認するだけでは足りません。既経過利息(相続開始日時点に口座を解約した場合に支払われる利息)も相続財産に含まれるため、確認が必要です。
また、被相続人名義の預貯金だけでなく、家族名義の口座であっても実質的に被相続人の財産と判断されるものも申告に含めなくてはいけません。この場合、家族名義の口座に関する書類を添付してください。
【主な必要書類】
など
上場株式、国債、社債などを相続した場合、相続開始時点での「残高証明書」が必要になります。また配当金があった場合、「配当金支払通知書」が自宅に届いているはずです。配当金も財産として見なされるため必要な書類となります。非上場株式を保有している場合に関しては、株式会社の過去3年分の決算書、税務申告書など企業価値が判断できる資料が必要となります。
【主な必要書類】
など
被相続人が生命保険や解約による払戻金がある損害保険がある場合は、下記の書類などが必要となります。被相続人が亡くなったことで支払われる保険金については「生命保険支払通知書」、契約者、被保険人、保険受取人がわかる契約書が「保険証書」となります。また火災保険、地震保険など各種損害保険で、解約時に払戻金がある契約はその内容がわかる書類を準備します。
【主な必要書類】
など
お通夜、告別式、戒名料など葬儀に関する費用は相続税から差し引くことができます。葬儀会社、火葬場、納骨費用や参列者の飲食費など領収書がもらえるものは保管しておきましょう。またお布施や心付けなどは記録、メモをしておくことで費用の証明をすることができます。
【主な必要書類】
など
被相続人の借入金やローンは相続税から控除できます。また被相続人が支払うべきだった各種税や公共料金も控除対象となります。
【主な必要書類】
など
その他、自動車やゴルフ、リゾートの会員権、貴金属や骨董品など金銭的な価値を有する遺産に関しても、その評価額が客観的にわかる書類が必要となります。以下はその例となります。
【主な必要書類】
など
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相続の相談が出来る税理士を探す先述した特例の適用を受けた場合に必要となる書類について説明します。
基本的に必要となる書類は以下ですが、宅地の用途や面積によって異なるため非常に複雑です。下記の書類のうち上の4つはすでに解説しているので、「申告期限後3年以内の分割見込書」について解説します。この書類は、相続税の申告期限までに分割されていない財産があった場合、3年以内に遺産分割する見込みであることを申告するために必要となります。
【主な必要書類】
など
基本的に必要となる書類は小規模宅地等の特例と変わりませんが、ケースによって内容は変わります。
【主な必要書類】
など
相続税申告書の添付書類は多岐に渡ります。申告内容によっては、相続人だけですべて揃えるのが難しいという場合もあるでしょう。
必要書類を揃えるためにかかる時間は人それぞれですが、基本的には相続財産の種類の多さに比例するものです。相続財産が普通預金と自宅の不動産だけというのであれば、1ヶ月もあれば必要書類が揃うと考えられますが、金融機関の口座をたくさん保有していたり、海外の不動産を運用していたりする場合は、そうはいきません。相続財産の種類が多い場合、どのような相続財産があるのかを確認するだけでも時間がかかりますが、さらに必要書類を揃える時間も確保しておく必要があります。
相続税の申告には、「相続開始日(一般的に「死亡日」)の翌日から10ヶ月以内」という期限があります。繰り返しになりますが、正しい相続税の申告書を作るには、必要書類が不可欠です。「相続人だけで対応するのは不安」という場合は、早めに対策を考えておかなくてはなりません。税理士に依頼されるのであれば、すべての資料を揃えて税理士に依頼するのではなく、資料収集をする前の段階から相談して代理取得を依頼するなど、効率的な資料収集に努めるようにしましょう。
(記事は2022年12月1日時点の情報に基づいています)
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