目次

  1. 1. 法定相続情報証明制度とは
    1. 1-1. 「法定相続情報一覧図」によって相続人を証明
    2. 1-2. 「戸籍の束」を何度も出し直す負担がなくなる
    3. 1-3. 相続税申告や銀手の手続きが多い人にお勧め
    4. 1-4. 法定相続情報証明制度のデメリット
  2. 2. 法定相続情報証明制度の交付までの期間
    1. 2-1. 一覧図の写し交付まで1週間ほど
    2. 2-2. 一覧図の写しの保存期間は5年間
  3. 3. 法定相続情報証明制度の申し出方法や流れ
    1. 3-1. 必要な資料を集める
    2. 3-2. 法定相続情報一覧図を作成する
    3. 3-3. 申出書に必要事項を記載し、法務局に申し出
    4. 3-4. 法定相続情報一覧図の写しの交付
    5. 3-5. 相続登記など各種の相続手続きで活用
  4. 4. スムーズに法定相続情報証明書を交付してもらう工夫
  5. 5. まとめ

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法定相続情報証明制度は、相続が発生した際に用いられます。相続人を特定できる戸籍謄本等と相続関係の一覧図(法定相続情報一覧図)を法務局に提出することで、登記官の認証文が付された一覧図の写しが交付される制度のことです。申出人は受け取れる一覧図によって、法定相続人が誰なのかを証明できます。

この制度は、2017年5月に全国の法務局で始まりました。相続手続きは、不動産の相続登記、銀行口座の解約、相続税の申告など、各種の機関で行うことになります。

相続にあたっては、原則として被相続人(亡くなった人)の戸籍謄本等を現在のものだけでなく、出生までさかのぼって集め、相続人を確定させる必要があります。

法定相続情報証明制度が始まる前は、こうして手間をかけ集めた戸籍謄本等の束を、相続手続きを取り扱う各種窓口に何度も出し直す必要がありました。法定相続情報証明制度が始まってからは、認証文が付されたA4サイズ1枚の一覧図の写しが戸籍の束にかえられるため、書類の束を何度も出さなくても手続きができるようになりました。

なお、各窓口で提出する戸籍謄本等は一般的には原本還付(提出した書類の原本を返してもらうこと)をすることができるため、取得するのは1通で足ります。

ただし、たくさんの機関で手続きをする際は、管理に注意が必要です。法定相続情報証明制度を利用しない場合、各機関で戸籍謄本等の束を提出し、原本還付を繰り返すことになります。途中で束のうち1枚でも紛失してしまった場合は、戸籍を取り直すことになってしまいます。また、法務局に不動産登記の申請中は原本がしばらく戻ってきません。

法定相続情報証明制度の利用がお勧めなのは、相続税申告が必要になる財産が多い人や、取引銀行が多く手続きの回数が多い人などです。

たとえば、複数の銀行に預金口座がある場合、この制度を利用しなければ、A銀行に戸籍謄本等の束を提出し、手続きをしてもらった後に原本を返却してもらい、B銀行、C銀行でも同様のことをしなければなりません。

一方、法定相続情報一覧図の写しは法務局から必要な枚数を交付してもらえるため、手続きを同時に進めることができます。

また、提出される窓口の側としても、一覧図があれば、戸籍謄本等の束の確認やコピーといった事務作業も減ります。窓口での待ち時間が減るので、相続手続きの時間の短縮につながります。

登記所で、登記官の認証文が付された法定相続情報一覧図の写しを交付してもらうには、申出人が事前に一覧図をつくらなければなりません。家系図のようなもので、作成する手間がかかります。また、後ほど詳しく説明しますが、登記所に申し出をするための準備にも時間がかかります。

こうしたデメリットもありますので、相続手続きをする機関が少ない場合には、この制度を利用するメリットはあまりないように思えます。

【関連記事】法定相続情報証明制度の5つのデメリット 費用や利用をおすすめするケースを紹介

法定相続情報証明制度は、申し出から一覧図の写しが交付されるまで、一般的には1週間ほどかかります。交付期間は法務局によっても、時期によっても異なります。早い場合は、申し出の翌日に交付されることもあります。

申し出から交付までの期間はすでに述べたとおりですが、準備に時間がかかる場合があります。戸籍謄本は戸籍のある自治体でしか取得できないため、被相続人の戸籍がいくつかの自治体に散らばっている場合は、それぞれの役場窓口で手続きをすることになります。

遠方であれば郵送で手続きをする場合もあると思いますが、郵送と返送で数日かかります。また、相続関係が複雑な場合は、取得する戸籍謄本等が多数にのぼることも考えられます。法定相続情報一覧図の作成期間も含め、余裕をもって準備を始めたほうがよいでしょう。

法定相続情報一覧図は、申し出た日の翌年から起算して5年間保存されます。「車の名義変更を忘れていた」といった手続きの漏れは起こりがちです。そんなときでも、申出人からの申し出により、保存期間中は一覧図の写しの再交付を受けることができます。

なお、一覧図の写しは無料で必要な通数を再交付してもらえます。

【関連記事】法定相続情報証明制度の有効期限 証明書の提出先ごとに詳しく解説

法定相続情報証明制度の申し出の方法から、利用するまでの流れを説明します。

まず法務局への申し出にあたっては、必要な書類がたくさんあります。一般的に必要となる書類は以下のとおりです。

  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍等
  • 被相続人の住民票の除票(または戸籍の附票)
  • 相続人全員の現在戸籍等
  • 申出人の住所・氏名を確認できる公的書類(運転免許証など)
  • 法定相続情報一覧図
  • 申し出書

法定相続情報一覧図は申出人が準備しなければなりません。

一覧表は、家系図のような表となっています。被相続人(亡くなった人)と相続人の氏名、生年月日、住所、出生日を記し、被相続人については本籍地と死亡年月日の記載が必要です。

なお法定相続情報一覧図、申し出書の様式および記載例は法務局のサイトで確認できます。

【関連記事】「法定相続情報一覧図」の書き方を、ひな形と一緒に解説 

申し出をする法務局は、以下の地を管轄する法務局(登記所)から選択できます。

・被相続人の死亡時本籍地
・被相続人の最後の住所地
・申出人の住所地
・被相続人名義の不動産の所在地

また、郵送でも申し出ることができます。

登記官の確認後、認証文付きの法定相続情報一覧図の写しが交付されます。また、戸除籍謄本等は返却されます。

不動産の名義変更(相続登記)や、銀行預金の払い戻しなど様々な相続手続きで、一覧図を各窓口に提出すれば、「戸籍の束」の代わりに活用できるようになります。

なお、一般的な金融機関や証券会社においては法定相続情報の一覧図を戸籍謄本等の束にかえられますが、対応していない機関もあるため、事前に問い合わせをするなど注意して下さい。

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法定相続情報証明制度を利用するには、時間も手間もかかります。申し出に不備があると補正を求められることもあります。スムーズに申し出を行いたい場合は、司法書士など専門家への依頼を検討してもよいでしょう。

なお、代理人については、弁護士、司法書士、土地家屋調査士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士、行政書士に依頼することができます。

法定相続情報証明制度を使うべきかわからない人やスムーズに作業を行いたい人は、一度司法書士などの専門家に相談してみてはいかがでしょうか。

(記事は2022年10月1日時点の情報に基づいています)

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