目次

  1. 1. 遺言書の種類による手数料など費用の比較
    1. 1-1. 自筆証書遺言
    2. 1-2. 公正証書遺言
  2. 2. 遺言書作成を依頼する専門家による費用の比較
    1. 2-1. 遺言書作成費用の比較
    2. 2-2. 遺言執行者報酬(専門家や銀行に遺言の執行をしてもらう費用)の比較
    3. 2-3. 弁護士・行政書士と銀行・信託銀行の比較
  3. 3. 費用だけではない遺言書作成時の注意点
    1. 3-1. 遺言書が無効になる可能性がある
    2. 3-2. 遺言書で遺留分トラブルが起こるリスクがある
  4. 4. 遺言書作成で相続トラブルを避けるベストな方法
    1. 4-1. 公正証書遺言を作成する
    2. 4-2. 専門家に遺言書を作成・チェックしてもらう
    3. 4-3. 専門家に遺言執行者に就任してもらう
  5. 5. まとめ

「相続会議」の弁護士検索サービス

遺言者が遺言書本文を自分で書いて作成する自筆証書遺言は、基本的にお金はかかりません。ただし、遺言書保管制度(法務局が遺言書の原本を保管してくれる制度)を利用する場合には、1件3900円の手数料がかかります。

【関連】法務局での遺言書保管制度とは メリットやデメリット、申請方法などを解説

公証役場で公証人と証人2名の立ち合いのもとで作成する公正証書遺言は、公証人に支払う手数料がかかります。遺言の対象とする相続財産の価額によって異なりますが、概ね2万~5万円程度です。また、病気などで公証人に出張してもらう場合は、手数料が1.5倍になるほか、交通費や日当(1日2万円、4時間まで1万円)がかかります。詳細は日本公証人連合会のホームページをご確認ください。

【関連】公正証書遺言とは? 作成の手順、費用、メリットを解説

●弁護士や行政書士
弁護士費用は、概ね10万~20万円程度です。遺言の内容が複雑になると20万円を超えることもあります。行政書士費用は、概ね10万円前後です。
弁護士は遺言書がない場合や遺言書の内容が不適切である場合に生ずる紛争案件を取り扱っていますので、これらの案件を担当した経験に基づいてアドバイスを行うことが可能です。そのため、紛争案件を取り扱わない行政書士に比べ、費用が若干高くなることが多いです。相談したい内容や費用などによって、相談先を決めると良いでしょう。

●銀行や信託銀行
銀行や信託銀行は、遺言信託というサービスを提供しています。遺言書作成に加え、遺言書の保管や遺言の執行など、総合的にサポートするサービスです。遺言書作成だけでなく遺言の執行まで含めた費用ですが、最低でも140万~150万円前後かかります。そのため、サービス内容は充実しているものの、弁護士や行政書士に依頼するよりも、費用はかなり高くなることが多いでしょう。

●弁護士や行政書士
弁護士については、旧日本弁護士連合会報酬等基準に従っている法律事務所が多い印象です。同基準によると、例えば、相続財産の総額が300万円を超え3000万円以下の場合は2%+24万円、3000万円を超え3億円以下の場合は1%+54万円とされています。
行政書士についても、同様の報酬基準を採用している事務所が多い印象ですが、固定報酬としている事務所もあります。

●銀行や信託銀行
銀行や信託銀行も相続財産の総額の1~2%前後で報酬を設定しています。ただし、最低報酬額が定められているので(プランによって異なりますが概ね30万~150万円程度)、特に相続財産が3000万円を下回るような場合には、弁護士や行政書士と比較して、費用が高くなるでしょう。

弁護士や行政書士に依頼するか、あるいは銀行や信託銀行に依頼するか、サービス内容が異なるため一概にどちらが良いとは言えませんが、上記のとおり、費用は銀行や信託銀行の方が高くなることが多いです。そのため、費用面を重視するのであれば、弁護士や行政書士に依頼する方がおすすめです。事前にホームページを調べたり相談したりして、サービス内容や費用の比較をしておくと良いでしょう。

せっかく遺言書を作成しても無効となっては意味がありませんし、遺留分を侵害する内容であるなど、内容によってはかえって「争族」を招きかねません。遺言書作成時の注意点を解説します。

自筆証書遺言は、気軽に作成できることがメリットですが、法律で定められた形式に違反しており、無効になってしまう遺言書も少なくありません。

また、遺言書を作成するにあたっては、遺言者に判断能力があることは不可欠です。認知症などが理由で、遺言者に判断能力がない場合には有効な遺言をすることはできません。
これらが原因で遺言が無効にならないように、注意しましょう。

遺留分とは、遺言の内容に関係なく、最低限相続できる権利のことです。例えば、財産をすべて一人の相続人に相続させる遺言があったとしても、その他の相続人は、その相続人に対して、遺留分に相当する金額を請求することが可能です。これを遺留分侵害額請求といいます。

【関連】遺留分とは? 相続で最低限貰える遺産 請求可能相続人の範囲、割合

遺留分が存在することを理解した上で、あえて遺留分を侵害する内容の遺言を書くことも自由です。もっとも、この場合、相続人間で争いが生じやすいので(遺留分を侵害された相続人に不満が生じやすい)、せめてそのような内容にした理由を遺言書の中に記載しておくことが無難でしょう。

弁護士への相続相談お考え方へ

  • 初回
    無料相談
  • 相続が
    得意な弁護士
  • エリアで
    探せる

全国47都道府県対応

遺言作成の相談ができる弁護士を探す

遺言書作成で相続トラブルを避けるためには、以下の方法をとることが望ましいです。

手数料がかかりますが、公証役場で公正証書遺言を作成することが安心です。公証人が関与して作成しますので、遺言が形式不備で無効になることはまず考えられません。また、原本が公証役場に保管されるので、遺言書の紛失や隠匿、改ざん等のおそれもありません。加えて、遺言者が亡くなった後、相続人が遺言検索システムを利用して遺言の有無及び内容を確認することも可能になります。

自筆証書遺言や公正証書遺言などいずれの遺言であっても、事前に弁護士などの専門家に相談することで、的確なアドバイスを受けることができ、法的に有効で、内容的に適切な遺言書をスムーズに作成することができます。例えば、遺言書に形式不備がないかどうかや遺言書の内容が遺留分を侵害しているかどうかなどを確認してもらうことができます。

相続人が多いと、全員で協力して手続きをすることはなかなか大変です。また、不動産ごとに登記申請や引き渡しをしたり、預貯金ごとに各金融機関での払い戻しの手続きや分配をしたりと、専門家ではない人が遺言の執行をするのは複雑で負担が大きいことも少なくありません。そのようなとき、専門家を遺言執行者に指定しておくことで、手続きをスムーズに進めることができます。

【関連】遺言執行者に指定されたら何をする? 手続きの手順や権限を弁護士が解説

せっかく遺言書を作成するのであれば、多少の費用はかかっても、トラブルを防止し、自分の意思を確実に実現できる内容の遺言書を作成することを第一に考えましょう。遺言書の作成を思い立ったら、まずは一度、弁護士などの専門家に相談してみると良いでしょう。

(記事は2022年10月1日時点の情報に基づいています)

「相続会議」の弁護士検索サービス