法定相続情報証明制度の5つのデメリット 費用や利用をおすすめするケースを紹介
便利といわれる「法定相続情報証明制度」ですが、実はデメリットもあります。申出のための書類作成に手間がかかりますし、すべての相続手続きに使えるわけではありません。一方で、名義変更が必要な不動産や預金が複数あるケースでは時間や手間の節約になり、メリットが大きくなります。今回は法定相続情報証明制度の5つのデメリットや、この制度の利用をおすすめするケースについて解説します。
便利といわれる「法定相続情報証明制度」ですが、実はデメリットもあります。申出のための書類作成に手間がかかりますし、すべての相続手続きに使えるわけではありません。一方で、名義変更が必要な不動産や預金が複数あるケースでは時間や手間の節約になり、メリットが大きくなります。今回は法定相続情報証明制度の5つのデメリットや、この制度の利用をおすすめするケースについて解説します。
目次
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「法定相続情報証明制度」とは、登記所で相続関係の証明書を発行してもらえる制度のことです。この制度を活用することで考えられるデメリットは以下の通りです。
登記所で法定相続情報一覧図を発行してもらうには、事前に申出人が「法定相続情報一覧図」を作成しなければなりません。法定相続情報一覧図とは家系図のような表であり、作成方法も決められています。
法定相続情報一覧図を正確に作成しなければならず、その手間がかかる点が、法定相続情報証明制度のひとつ目のデメリットといえるでしょう。
法定相続情報証明制度を利用するには、事前に被相続人(亡くなった人)の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本類を集めなければなりません。その他にも戸籍謄本類が必要になるケースも多く、資料集めに手間がかかるデメリットがあります。
登記所へ法定相続情報証明書の発行を申請しても、すぐに交付されるわけではありません。申出後、受け取るまでに1~2週間かかるのも一定のデメリットといえます。
法定相続情報証明書は、すべての相続手続きに使えるわけではありません。不動産や車の名義変更には使えますが、金融機関や証券会社によっては受け付けてもらえない可能性もあります。
法定相続情報証明書の申出後、一定期間であれば再発行してもらえます。ただし再発行の申出ができるのは「当初の申出人本人のみ」であり、他の相続人などは証明書の再交付をうけられません。
次に、法定相続情報証明制度を利用するとどのようなメリットがあるのかをみてみましょう。
法定相続情報証明制度の利用は無料です。公的機関から便利な証明書を発行してもらえて手数料がかからないのは、一定のメリットといえるでしょう。
法定相続情報証明制度を利用すると、相続登記や車、預貯金などの名義変更などの際に戸籍謄本類などを集め直す必要がありません。多数の手続きを要する事案では相続手続きを楽に進められるメリットがあります。
いったん法定相続情報証明制度の申出をして証明書を発行してもらった場合、その後5年間は再発行を申請できます。一気に名義変更ができず、段階的に相続手続きを進める場合にはメリットが大きくなるでしょう。
法定相続情報証明書の申出ができるのは相続人ですが、相続人自身が申請しにくい事情があれば代理人に委任できます。代理で申出ができるのは、相続人の親族や専門家、法定代理人です。
法定相続情報は管轄の登記所へ申請しなければなりません。その際、実際に足を運ばず郵送でも申出ができるので、時間を節約できるメリットがあります。
法定相続情報証明制度の申出をする際、当事者の「住所」を書くか書かないかを選ぶことができます。住所を書くと「被相続人や相続人の居住地」を証明できますが、書かなければ居住地は明らかになりません。
では「住所を書かない」とどのようなデメリットがあるかを説明します。
法定相続情報証明書に住所の記載がない場合、住所が証明されないため状況によっては「住民票」が必要となります。たとえば不動産の相続登記や遺言書の検認の際、住所つきの法定相続情報証明書があれば住民票は不要ですが、住所の記載がなければ住民票または戸籍附票を集めなければなりません。相続手続きの際に必要書類が増えてしまうのはデメリットです。
不動産の相続登記や遺言書の検認だけではなく、預貯金などの名義変更の際にも、相続人の住所を証明しなければならない可能性があります。
必要書類を少しでも減らして手間なく相続手続きを進めるため、法定相続情報一覧図には住所も記載して法定相続情報証明書の申出を行うのがよいでしょう。
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相続の相談が出来る司法書士を探す以上を踏まえて法定相続情報証明制度の利用をおすすめするのは、以下のようなケースです。
不動産や車、預貯金や株式など「名義変更」が必要な遺産がたくさんあるケースでは、法定相続情報証明制度を利用するようおすすめします。
多数の手続きが必要な場合、法定相続情報証明書があれば個別に相手先へ戸籍謄本類を提出しなくてよいので、同時並行で多数の名義変更を進められます。手間や時間を省けてメリットが大きくなります。
一方、もし法定相続情報証明書がなかったら、手続きごとに戸籍謄本類が必要になります。別の手続きを申請する際にすべての戸籍謄本類を取得し直すか、戸籍謄本類が還付されるまで待たねばならず、多大な時間と手間がかかってしまいます。
具体的に何箇所以上の名義変更が必要なら、法定相続情報証明制度を利用すべきなのでしょうか。
個人の感じ方にもよりますが、例えば不動産がひとつ、預金が2本程度など「相続手続きの数が3箇所以下」の場合は、わざわざ法定相続情報証明制度を利用する必要性は低くなるでしょう。
反対に、名義変更の数が3〜4箇所以上であれば、法定相続情報証明制度の利用を検討してみてください。
法定相続情報証明制度を上手に利用すると、時間と手間の節約になって大きなメリットを得られます。ただ、新しい制度のため世間に十分浸透しているとはいえません。使い方がわからない人や、自分たちのケースで利用すべきかどうか判断しかねる場合は、弁護士や司法書士に相談してみましょう。
(記事は2021年7月1日時点の情報に基づいています。)
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