家の相続は遺言の確認から 相続登記手続きから税金の計算方法を網羅
親が亡くなり家を相続する時、遺言書の確認から始まり、登記申請、税金の申告など、済ませないといけない手続きは山積みです。一つひとつを確実に進めるのは、一苦労です。法律などに詳しくない人に向けて、税理士が手続きの流れをまとめました。
親が亡くなり家を相続する時、遺言書の確認から始まり、登記申請、税金の申告など、済ませないといけない手続きは山積みです。一つひとつを確実に進めるのは、一苦労です。法律などに詳しくない人に向けて、税理士が手続きの流れをまとめました。
目次
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親が亡くなり家を相続するにあたっては、まず誰が相続するかを確認・確定する必要があります。その確認・確定方法は、親が残した遺言書があるかどうかで異なってきます。
親が残した遺言書があり、そこに家を誰が取得するか書かれている場合は、原則その方が取得します。
遺言書の種類は、①公正証書遺言(公証人役場で作成した遺言)と②自筆証書遺言(全文自筆で作成した遺言)に大きく分けられます。
① 公正証書遺言
公正証書遺言は、被相続人(亡くなった人)の自宅にその控えが無くても、作成した公証役場に原本が保管されています。作成した公証役場に直接行けば、謄本を交付してもらえます(1枚250円かかります)。
② 自筆証書遺言
自筆証書遺言は、相続人であっても開封せず、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に提出して検認を受ける必要があります(収入印紙800円+切手代がかかります)。検認手続き完了後には、検認済証明書が添付された遺言書が返却されます。
遺言書がない場合、または遺言書があっても家を誰が取得するか書かれていない場合には、被相続人の全遺産を把握し、相続人全員で遺産分割協議を行い、誰が家を取得するか決める必要があります。遺産分割協議書は相続人らで作成することも可能ですが、家などの不動産を相続により取得するには相続登記の手続きが必要となるので、相続登記の手続きと併せて司法書士に作成依頼する場合が多いでしょう。
遺産に不動産がある場合の遺産分割協議書の記載例です。
誰が家を取得するか確定したら、相続登記を行う必要があります。相続登記は、所定の書類を整えて、土地・建物を管轄する法務局(登記所)に申請します。以下、相続登記申請にあたり必要な書類を紹介します。
法務局HP「不動産登記申請手続 不動産の所有者が亡くなった」にて、記載例と併せて入手可能です。
・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本
戸籍謄本は本籍のあった市区町村役場で取得可能です(1通450円)。
除籍謄本は過去に本籍にあった市区町村役場で取得可能です(1通750円)。
改製原戸籍謄本は過去に本籍にあった市区町村役場で取得可能です(1通750円)。
・被相続人の登記簿上の住所が記載されている、被相続人の住民票除票又は戸籍附票
住民票除票は被相続人の最後の住所地の市区町村役場で取得可能です(1通約300円 ※市区町村ごとに異なる)。
戸籍附票は被相続人の最後の本籍地の市区町村役場で取得可能です(1通約300円 ※市区町村ごとに異なる)。
・相続人全員の現在の戸籍謄本
本籍のある市区町村役場で取得可能です(1通450円)。
・遺言書、又は、遺産分割協議書
遺言書がある場合は、被相続人の戸籍は死亡時のもののみ、相続人の戸籍は遺言により相続する相続人のもののみで可。相続人の印鑑証明書は不要です。それ以外は共通です。
・相続人全員の印鑑証明書(作成後3カ月以内でなくてもよい)
相続人が各自市区町村役場で取得可能です(1通約300円 ※市区町村ごとに異なる)。
・不動産を相続する相続人の住民票の写し
相続人が各自市区町村役場で取得可能です(1通約300円 ※市区町村ごとに異なる)。
・委任状(司法書士が申請する場合)
司法書士に委任する場合は、司法書士報酬が別途かかります。
登録免許税の計算方法は以下を参照してください。添付書類として固定資産評価証明書が必要です。
・固定資産税評価証明書(または固定資産税課税明細書)
不動産が所在する市区町村役場で取得可能です。
登記申請の方法としては、必要書類を整えて法務局に直接持参する方法の他、書留で郵送する方法もあります。いずれの場合でも、その場で書類不備や誤りなどは指摘してもらえません。後日電話で連絡となります。なお、事前に予約して相談は可能です。申請件数や申請内容により一概には言えませんが、相続登記は申請してからおよそ2週間後に完了する場合が多いです。
家の相続に係る税金としては、①相続税と②登録免許税が挙げられます。以下、各税金の概要と計算方法等を紹介します。
相続税は、相続の開始があったことを知った日(通常は被相続人が死亡した日)の翌日から10か月以内に、原則現金で一括して最寄りの金融機関か相続税申告書を提出する所轄税務署で納付します。
相続税の納税額は、相続人が相続税申告書を作成する過程で計算します。税務署が相続税の納税額を計算してくれるわけではありません。相続税申告書も相続の開始があったことを知った日(通常は被相続人が死亡した日)の翌日から10カ月以内に被相続人の死亡時の住所地の所轄税務署に提出します。
ただし、相続税には基礎控除という非課税枠があり、相続税の課税価格の合計額が基礎控除を超えない場合、通常相続税はかかりません。計算式は以下の通りです。
相続税の基礎控除=3000万円+600万円×法定相続人の数
なお、国税庁HP「相続税の申告要否判定コーナー」を使用すれば、相続税申告が必要なのかどうかセルフチェックできるので活用をおすすめします。
仮に相続税がかかりそうな場合、上記期限までに相続税の申告・納税を済ませないと延滞税や無申告加算税といったペナルティが課されます。ですので、早めに相続税がかかるかどうかのセルフチェックを行い、相続税がかかりそうな場合には早めに税理士に相談するのが確実でしょう。
登録免許税は、相続登記の申請書と合わせて収入印紙で納付します。相続による不動産の所有権移転登記の登録免許税の計算式は以下の通りです。
登録免許税額=不動産の固定資産税評価額×0.4%
不動産の固定資産税評価額は、市区町村役場から毎年5月頃送られてくる固定資産課税明細書または市区町村役場で取得可能な固定資産評価証明書に、「価格」または「評価額」として記載されています。
計算例として、土地(固定資産税評価額512万5100円)と建物(固定資産税評価額224万7200円)を同一申請書で申請する場合の、相続による所有権移転登記の登録免許税額は以下の通りです。計算例では次に紹介する免税措置の適用はないものとして計算しています。
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相続の相談が出来る司法書士を探す家を相続する手続きの流れを紹介しましたが、家の相続にあたっては他にも注意しなければならない点があります。
例えば、被相続人の遺産に家以外にめぼしい財産がない場合、家を相続した相続人と他の相続人間で不公平感が生じることが予想されます。こうした場合には、代償分割(特定の相続人が遺産を取得する代わりに他の相続人に金銭を支払う方法)も検討する必要が出てきます。
また、被相続人の遺産に家以外にめぼしい財産がない場合、家を複数の相続人で共有とする場合もあります。ただし、共有不動産は共有者全員の意見が一致しないと売却等ができないリスクがあります。今は相続人間で仲が良くてもこの先ずっと良好な関係が続くとは限りませんので、共有にする場合はこうした将来リスクも考慮したうえで共有にするかどうか最終決定した方がよいでしょう。
不動産の相続登記にあたっては、必要書類が多く煩雑な作業で、登録免許税の計算ミス防止の観点からも司法書士へ相続登記を依頼するのが確実でしょう。
(記事は2021年6月1日時点の情報に基づいています)
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