相続手続きしないとどうなる? 7つのリスクを解説
相続手続きをしないままでいるとどうなるのでしょうか?不動産や預金、株式などの遺産を相続しても、名義変更や登記などの相続手続きを面倒に感じてしまう方は少なくありません。しかし、きちんと手続きを終えておかないと、せっかく相続した権利が失われたり借金を引き継いでしまったり、さらには税金滞納状態になったりしてしまうリスクも発生します。放置せずに早急に手続きを進めましょう。今回は相続手続きをしないで放置した場合のリスクを7つ紹介します。
相続手続きをしないままでいるとどうなるのでしょうか?不動産や預金、株式などの遺産を相続しても、名義変更や登記などの相続手続きを面倒に感じてしまう方は少なくありません。しかし、きちんと手続きを終えておかないと、せっかく相続した権利が失われたり借金を引き継いでしまったり、さらには税金滞納状態になったりしてしまうリスクも発生します。放置せずに早急に手続きを進めましょう。今回は相続手続きをしないで放置した場合のリスクを7つ紹介します。
目次
「相続会議」の弁護士検索サービスで
相続手続きをしないと、以下7種類のリスクが発生する可能性があります。
以下で順番にみていきましょう。
土地や建物、マンションやアパートなどの「不動産」を相続したら、法務局で「相続登記」をしなければなりません。相続登記は2024年4月から義務化されました。
相続登記をせずに放置すると以下のようなリスクが生じるので注意しなければなりません。
相続登記は、不動産登記法が改正され、2024年4月に義務化されました。基本的に「相続してから3年以内」に相続登記しなければなりません。登記しないで放置すると10万円以下の「過料」が科されます。また、義務化以前に相続した不動産についても義務化の対象となります。
不動産を相続しても登記せずに放置して先に第三者に登記されてしまったら、その第三者へ権利を主張できなくなってしまいます。せっかく相続した不動産を失ってしまうリスクが発生します。
相続登記せずに放置している間に所有者が亡くなって2回目の相続が発生すると、不動産が次の世代(相続人の子どもなど)へ引き継がれます。
ところが不動産の所有名義は「祖父(祖母)」の代の人のままなので、客観的に誰が権利者か非常にわかりにくくなって混乱が生じるリスクが発生します。
相続登記しないまま所有者が死亡して次の世代に引き継がれた場合、次の世代の相続人は「祖父母の代」と「親の代」の2世代分の相続登記をしなければなりません。必要書類も膨大になり、大変な手間が発生するので子どもたちに迷惑をかけてしまうでしょう。
老朽化した建物を放置していると、壁や屋根の崩落などによって他人に迷惑をかける可能性があります。そうなったら、所有者として損害賠償しなければなりません。
建物を相続した場合、管理を怠っていると「特定空き家」に指定される可能性があります。特定空き家とは、周囲の景観や環境を著しく悪化させたり危険を発生させたりする可能性のある空き家です。
特定空き家になると固定資産税の減額措置が適用されなくなるため、これまでより高額な税金を払わなければなりません。
以上のように不動産の相続登記をしないで放置するとデメリットが多数発生するので、必ず早めに法務局に申請して相続登記をしましょう。自分で対応するのが難しい場合には司法書士に依頼するようお勧めします。
預金を相続した場合には、金融機関で名義変更をするか解約払い戻しを受ける必要があります。
相続手続きをしないで10年間放置すると「休眠預金等活用法」が適用されて「休眠口座」扱いとなってしまう可能性があるので注意が必要です。休眠口座になると預金が「預金保険機構」へ振り替えられて公益活動に使われてしまう可能性があります。
また休眠口座にならなくても、長期にわたって取引をせずに放置していると、民法上の「時効」が成立し、法的な払い戻し請求権が失われてしまうリスクが発生します。預金債権の時効は基本的に「5年間」なので、5年取引をせずに放置すると払い戻しを受けられなくなる可能性があるのです。
預金を相続したら、早めに金融機関で解約払い戻しなどの相続手続きをしましょう。
なお預金名義を相続人名義に変更した場合、手続き後も何らかの取引をしないと休眠口座や時効の問題が発生するので、放置しないよう注意してください。
被相続人から株式を引き継いだら、株式の相続手続きをしなければなりません。
具体的には株式の名義変更を行い、上場株式の場合には相続人名義の証券口座に株式を移行する必要があります。
もしも株式の相続手続きをしなかったら、会社からの株主総会招集通知などの案内が来ず、配当金も受け取れません。その他の株主権も行使できなくなります。
さらに手続きをしないまま5年間放置すると、株式発行会社から「株主所在不明」扱いにされて、株式が「競売」で売却されたり「会社に買い取られたり」する可能性があります。
株式が競売になったり会社に買い取られたりした場合、株主には株式の売却金を受け取る権利があります。しかし名義変更していなければ会社からの連絡が届かないので、いつまでも売却金を請求できないままになるでしょう。
その後5年または10年が経過した時点で株式の売却代金を受け取る権利に時効が成立し、最終的には株式の売却金ももらえないままになります。
このように株式の相続手続きをしないで放置すると、最終的には株式の権利が完全に失われてしまうリスクが発生します。面倒でも早めに証券会社や株式発行会社へ通知して株式の名義変更をしましょう。
全国47都道府県対応
相続の相談が出来る弁護士を探す遺産の価額が相続税の基礎控除を超える場合には、相続税の申告と納付をしなければなりません。申告と納付には両方とも「相続開始後10カ月以内」という期限がもうけられています。期限をすぎると「延滞状態」となり、延滞税や不申告加算税などがかかって税額が大きくなってしまうリスクが発生します。
さらに相続税額が確定した後も支払いをしないで放置していると、財産を差し押さえられて公売(強制売却)されてしまう可能性もあります。
相続税に関してきちんと対応しないと甚大なリスクが生じるので、必ず早めに税理士に相談して期限内に相続税の申告と納税を済ませましょう。
被相続人が借金を遺して死亡した場合にも要注意です。
キャッシングやローン、未払家賃、滞納したスマホ代、滞納税や健康保険料などの「負債」はすべて相続されてしまいます。
負債を相続したくない場合には「相続があったことを知ってから3カ月以内」に家庭裁判所で「相続放棄」または「限定承認」の申述をしなければなりません。
期限内に上記の手続きをしなければ、法定相続分に応じて負債を相続するので、相続人が支払いをしなければならないのです。
負債の調査や相続放棄、限定承認の手続きをしないで放置すると、借金などの負債を相続してしまう高いリスクが発生します。
特定の相続人や受遺者に多くの遺産を遺す不公平な内容の「遺言」があったり、特定の相続人へ高額な生前贈与が行われたりすると、兄弟姉妹以外の相続人は「遺留分侵害額請求」を行って侵害された遺留分を取り戻せます。
遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に認められる最低限の遺産取得割合です。遺言や贈与によって遺留分を侵害された場合、配偶者や子ども、親などの相続人は「遺留分侵害額請求」によって金銭的な清算を求めることができます。
ところが遺留分侵害額請求権には「時効」があるので要注意です。「相続開始と遺留分侵害を知ってから1年以内」に請求しないと権利が失われてしまいます。
また遺留分侵害額請求を行った後、5年以内に実際に支払いを受けないとやはり時効によって権利が消滅します。
遺言書が遺された場合や生前贈与が行われた場合などには、早めに遺留分侵害額請求をするかどうか検討しましょう。遺留分を取り戻したいなら、早めに内容証明郵便などで侵害者宛に請求通知を発送するようお勧めします。
相続手続きをしないで放置すると「相続回復請求権」を行使できなくなるリスクも発生します。
相続回復請求権とは、第三者や共同相続人によって相続権が侵害されたときに侵害者から遺産を取り戻すための権利です。
ところが相続回復請求権には「5年」の時効が適用されるので、早めに対応しないと遺産を失ってしまうおそれがあります。
また共同相続人が「相続分を譲渡」したときに、譲受人から相続分を取り戻す権利を「相続分の取戻権」といいます。ただし相続分の取戻権は1カ月以内に行使しなければなりません。放置すると、譲り受けた第三者が見知らぬ人であっても、共同で遺産分割協議をしなければならないリスクが発生します。
不動産や預貯金、株式、相続税、負債の調査や相続放棄など、相続人になったらさまざまな相続手続きをしなければなりません。期限の定められている手続きも多いので急いで対応にあたりましょう。遺産の価額が少額でもリスクは発生するので、早めに司法書士や税理士、弁護士ら専門家に相談して相続手続きを進めることが大切です。
相続登記は司法書士、相続税関係は税理士、遺産分割協議や遺留分関係のもめごとは弁護士に相談してみてください。
最近では「遺産整理業務」として、一連の相続手続き全般をまとめて支援してくれるサービスを提供している弁護士や司法書士事務所も増えています。面倒な相続手続きを一括して任せたい方は、遺産整理業務を扱っている専門家に相談してみるとよいでしょう。
(記事は2024年5月1日時点の情報に基づいています)
「相続会議」の弁護士検索サービスで