目次

  1. 1. 遺言書につける財産目録とは
  2. 2. 自筆でない財産目録は署名押印が必要
  3. 3. 財産目録を作成して「争続」を避ける
  4. 4. 財産目録の作り方
  5. 5. まとめ|遺言作成に不安があれば弁護士に相談を

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遺言とは、被相続人(亡くなった人)が、自己の財産の処分方法などについて、最終的な意思を書面にして残したものを指します。遺言にはいくつかの方式がありますが、本記事では一般的に利用される普通方式の遺言を前提に説明します。

普通方式の遺言には、自筆証書遺言、秘密証書遺言、公正証書遺言の3種類があります。自筆証書遺言は、多く利用される方式で、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押すことが必要です。代筆したものや、パソコンで作成した文書を印刷したものは無効です。以前は財産目録も含めて全文を自筆することが要件とされていましたが、2019年1月から目録については、自書が求められなくなりました。

財産目録とは、遺言者の財産を判別できるようにまとめた一覧表です。現預金などの資産だけでなく、借入金などの負債も記入することで、相続財産の内容を明確にできます。なお、遺言を作成する際に、財産目録を作成する義務はありません。遺言書には、「A不動産を長男に相続させる」とか「B不動産を二男に相続させる」といった記載がされます。多数の財産について相続人を指定する場合には、本文に「別紙財産目録1記載の財産を長男に相続させる」などと記載し、財産目録を添付することが簡便です。実務上は、相続の目的となる財産が多数ある場合に財産目録が作成されています。

財産目録の形式については、特段の定めはありません。書式は自由であり、遺言者本人がパソコンで作成することもでき、遺言者以外の人が作成することも認められます。また、書面を改めて作成することも特に求められませんので、土地について登記事項証明書を財産目録として添付することや、預貯金について通帳の写しを添付することも可能です。

財産目録については、「毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあってはその両面)」に署名押印をしなければならないものと定められています。自書によらない記載が用紙の片面のみにあれば、その面または裏面の1か所に署名押印が必要ですが、自書によらない記載が両面にある財産目録については、両面にそれぞれ署名押印をすることが求められます。押印について特別な定めはありませんし、本文で用いる印鑑とは異なる印鑑を使っても問題ありません。自筆でない財産目録は、各頁に署名押印する必要があることを覚えておきましょう。

このように、財産目録は法律上作成する義務はなく、形式も細かく定められていません。
ですが、財産の記載漏れがあったり、負債を記載していなかったりすると、かえってトラブルにつながりやすいと考えられますので、すべての資産と負債を正しく記入することが望ましいでしょう。

財産目録を作成するメリットは複数あります。例えば、相続税申告が必要かどうかの判断に使用できるほか、相続税納付額の検討、相続対象財産の明確化などに役立ちます。また、インターネット上のみで取引を行っているなど、存在を失念しやすい資産についての記録を残すことにも役立ちます。万が一のことがあった場合、相続財産調査を行う手間が少なくなるだけでなく、相続人に遺産の内容を簡潔に知らせることができるため、結果として遺言内容をしっかり検討でき、相続手続きがスムーズに進みます。

仮想通貨売買やインターネットを通じての有価証券売買が一般的になり、郵便物が一切届かない取引が増えています。そのような取引については、通帳が残っている銀行口座などに比べて、遺族が残されたデータから資産の内容を調べることは困難になると思います。正確な財産目録が作成してあれば、遺族が財産の存在に気付くことができるでしょう。

また、財産目録は、遺産分割協議を円滑に進めるためにも重要です。適正な遺産分割をするためには、まずはその遺産が正確に記載されているかどうかが大切です。財産目録がなければ、遺産分割協議の前にどのような財産が残っているか調査することになり、時間も手間もかかります。協議にあたって財産の漏れや誤りがあれば、トラブルにつながる可能性もあります。「争続」を避けるためにも、財産目録を作成することをおすすめします。

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財産目録の書式は、特に定められていません。財産をわかりやすく整理することが目的の一つであるため、財産を特定できるようにし、適切な評価額を記載しましょう。目録は現預金や有価証券などプラスの財産と借入金などマイナスの財産に分けて書くとよいと思います。作成の際は日付を記載し、作成時点の財産であることを明らかにしましょう。代表的な項目としては、以下のものが挙げられます。

・現金・預貯金
財産を特定できるよう、現物や通帳の保管場所、支店や口座番号を記載しましょう。

・有価証券
銘柄、株数、証券口座情報を記載しましょう。

・不動産
不動産番号、地番・家屋番号など、物件を特定できる情報を記載しましょう。登記事項証明書を添付してもよいでしょう。区分所有マンションを所有している場合は、敷地についても所有権などの権利がありますので、漏らさないように注意しましょう。

・借入金
借入金残高と借入先を記載しましょう。金銭消費貸借契約書、返済予定表などがあれば、コピーを添付してもよいでしょう。

ひな形を作成しましたので、参考にしてください。財産目録に誤りがある場合は、相続税申告の要否について判断が変わるなど、問題が発生することもあり得ます。財産の内容に変化があった場合は修正し、正しい内容を保ちましょう。

遺言は細かいルールがあるので、不安がある人は弁護士や司法書士などの専門家に相談しましょう。得意分野が事務所ごとにありますので、相談する際はホームページ等を調べて、相続を多く扱っている専門家を選ぶとよいでしょう。

(記事は2020年12月1日現在の情報に基づきます)

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