亡くなった人の確定申告期限はいつ? 新型コロナによる期限延長措置は?
死亡した個人に確定申告義務がある場合、死亡後に相続人等が「準確定申告」を行う必要があります。この場合、通常の確定申告とは期限が変わり、手続きも異なります。今回は、準確定申告の手続きや注意点について、元東京国税局国税専門官のライターが解説します。
死亡した個人に確定申告義務がある場合、死亡後に相続人等が「準確定申告」を行う必要があります。この場合、通常の確定申告とは期限が変わり、手続きも異なります。今回は、準確定申告の手続きや注意点について、元東京国税局国税専門官のライターが解説します。
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所得税(復興特別所得税を含む。以下同じ)の基本的なルールでは、確定申告が必要な場合は、毎年1月1日から12月31日までの1年間の所得を計算し、翌年2月16日から3月15日の間に申告・納税をすることになっています。
※ 確定申告が必要となるケースは、国税庁ホームページを参照ください。
しかし、確定申告が必要となる個人が、年の途中で納税者が死亡した場合、「準確定申告」により、所得税の申告と納税を行うことになります。この準確定申告の期限は、相続の開始があったことを知った日(通常は死亡日)から4カ月以内と定められています。相続税の申告は10カ月以内ですから、準確定申告のほうが期限が短いという点に注意してください。
なお、準確定申告は、「2年分提出する場合」と「1年分提出する場合」があります。
たとえば、不動産収入があり、毎年確定申告をしているAさんが令和2年1月30日に亡くなったとしましょう。このとき、Aさんが令和元年分の所得税の確定申告をしていなければ、まず「令和元年分の準確定申告」が必要となります。さらに、令和2年1月1日から1月30日までの間に生じた所得について、「令和2年分の準確定申告」も提出しなくてはなりません。
一方、もしAさんが亡くなる前に令和元年分の確定申告をしていたのであれば、提出すべき準確定申告は令和2年分だけです。準確定申告は、1年分提出する場合も、2年分提出する場合も、相続の開始があったことを知った日から4カ月が期限となっています。
準確定申告の場合、納税者本人は死亡しているため、相続人および包括受遺者(以下「相続人等」)が手続きを行うこととなります。この包括受遺者とは、遺言により「遺産の全部」あるいは「遺産の3分の1」など、一定割合を定めて遺産をもらう人を指します。
準確定申告のための申告書は、通常の確定申告書の様式とほぼ同じであり、計算の流れも変わりません。ただし、相続人等が2人以上いる場合は、各相続人の氏名、住所、続柄、マイナンバーなどを記入した「準確定申告書の付表」を添付する必要があります。
準確定申告書の付表は、1枚の中に相続人等全員が署名押印をする欄があります。また、相続人等全員がマイナンバーカードの写しなど、個人番号や本人情報を示す書面の写しも合わせて提出しなくてはならないので、通常の確定申告よりも手間がかかります。
このように、準確定申告の手続きは、基本的に相続人等全員で行うものですが、相続人等がそれぞれに準確定申告の手続きをすることも可能です。つまり、相続人等が3人いるのであれば、3人がそれぞれ準確定申告をすれば、他の相続人等の署名押印を求めたり、マイナンバーカードの写しなどを取り寄せたりする必要はありません。
たとえば、他の相続人にマイナンバーを知られたくない場合や、全員分の署名押印などを集めることが難しい場合は、このような方法を使うと良いでしょう。ただし、この場合、準確定申告書を提出した相続人等は、他の相続人等に申告した内容(所得や税額など)を通知しなければならないことになっています。
準確定申告書を作成すると、納税額もしくは還付額が決まり、相続人等で分配することになります。このときの分配割合は、遺言や遺産分割協議により相続分が決まっている場合はその相続分により、相続分が決まっていなければ「法定相続分」に応じることとなります。
なお、還付金が生じる場合に限り、指定した「相続人の代表者」がまとめて受け取ることも可能です。この場合、税務署に「委任状」を提出する必要があり、やはり相続人等全員の署名・押印が必要です。
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相続の相談が出来る税理士を探す年の途中で亡くなり、その年分の準確定申告を行う場合、所得控除に関する注意点があります。
まず、「配偶者控除」や「扶養控除」についてです。被相続人が死亡した日の時点で扶養する配偶者や親族がいる場合、各控除を満額適用することができます。死亡日がいつであっても月割計算などを行う必要はありません。
一方、「社会保険料控除」「生命保険料控除」「地震保険料控除」「医療費控除」は、死亡した日までに被相続人が支払った金額を基準として算定されます。したがって、たとえば被相続人が入院していたときの医療費を、被相続人の死亡後に相続人が支払ったような場合、この医療費は準確定申告に含めることはできません。支払ったのは相続人ですから、相続人自身の確定申告で医療費控除を申告することとなります。
新型コロナウイルス感染症の影響により、期限までに申告・納税できないやむを得ない理由がある場合は、申請により期限の個別延長が認められます。申請を行う場合は、期限までに、「災害による申告、納付等の期限延長申請書」を作成・提出してください。
(記事は2022年8月1日時点の情報に基づいています)
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