土地は持っているだけでは価値が目減りしていく

先祖から代々引き継いだ土地を子へと引き継ぐことは以前から普通に行われてきました。子は自分の代で土地を手放すことなく守り続け、また次の世代に引き継ぐことが正しいとされていました。その理由は、土地はただ持っているだけで価値が上がっていく大切な資産だったからです。

ところが近年、土地は所有しているだけでは資産とは言えなくなりました。この数年は商業地を中心に地価も値上がりしましたが、特に住宅地の地価は1990年のピーク以降、30年近く下がり続けてきました。人口減少・少子高齢化が続くわが国では、将来的にも地価は下落することが予測されます。

さらに土地には、毎年、固定資産税・都市計画税といった税金や、維持管理コストがかかります。特に、空き地のように収益を生まない土地をただ保有しているだけでは、お金がかかるだけの「負動産」になってしまいます。

今や、土地は有効活用することにより初めてその資産価値が活かせる時代になったと言えます。空き地についても、有効活用しながら次世代に引き継いでいくことの重要性が増しています。

空き地にしておくメリット・デメリットは?

空き地のままにしておくことも1つの選択肢です。空き地にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

1.空き地のメリット

いざ土地を売却したいという時には、一般的に空き地のほうが建物付きの土地よりも売りやすいと言えます。また現況のまま売却できるので、解体などのコストもかからず、費用が少なくてすみます。

2.空き地のデメリット

一般的に空き地には住宅用地と比べると4倍以上の固定資産税と2倍以上の都市計画税が課せられますが、税金は毎年かかるため、持ち続ける限り高い税金を払い続けなくてはいけません。しかも空き地は収益を生まないため、給料や預貯金などから支払わざるを得ません。

相続税の面では、空き地の相続税評価額は「自用地」として評価され、評価の軽減は受けられません。また、小規模宅地等の特例についても適用外となります。

※小規模宅地等の特例については「相続時節税のポイント『小規模宅地等の特例』評価引き下げで相続人の負担軽減」をお読みください。

空き地の有効活用の種類

空き地の活用方法にはさまざまな種類があります。

・一戸建貸家、アパート、マンションなどの賃貸住宅(以下アパート)
・オフィス、店舗などの非住居系賃貸
・介護系施設(老人ホーム・グループホームなど)
・シルバー向け賃貸住宅(サービス付き高齢者向け住宅、シニア向けマンションなど)
・宿泊施設(民泊、簡易宿所、ホテルなど)
・月極駐車場、コインパーキング
・太陽光発電
・その他

有効活用の種類により、求められる立地・面積・賃貸ニーズなどの条件は異なります。また、初期費用や運営費、収益性にも大きな違いがあります。条件に対して空き地が持っている特性を十分に検討して、もっともマッチした活用方法を選択することが大切です。

アパートを建てるメリットと留意点

アパート建築は最もメジャーな空き地の有効活用方法の1つです。その理由は、他の方法と比べて活用の条件に合う土地が多いこと、手元資金が少額でも融資により建築資金が調達しやすいことなどがあります。

1.アパートを建てるメリット

①家賃収入が得られる
空き地にアパートを建てる最大のメリットは、家賃収入が得られることでしょう。毎月安定的な収入が得られれば、不動産の維持管理費の確保のみならず、資産形成にも役立ちます。アパートの家賃を、副収入や老後の自分年金にできるという点は大きな魅力です。

②土地の固定資産税・都市計画税の軽減
空き地にアパートのような居住用建物を建てると小規模住宅用地の軽減が受けられ、固定資産税の課税標準は1戸当たり200㎡まで評価額の6分の1、都市計画税の課税標準は同じく3分の1となります。

空き地の税金と比べると、土地の固定資産税は約4分の1、都市計画税は約2分の1になり、負担が大きく軽減されます。なお、税金が課税標準と同じ6分の1や3分の1に下がらないのは、もともと空き地であっても税金の負担が7割程度に軽減されているからです。

③相続税対策になる
アパートが建っている土地は「貸家建付地」として相続税評価が軽減されます。一般的な住宅地の場合、貸家建付地の評価は空き地の評価の8割程度に下がるため、空き地を相続するよりも課税価格を圧縮することができます。相続人の負担を軽減しながら土地を次世代に残せることは、心理的にも良い影響があると言えるでしょう。

1つ注意したいのは、貸家建付地の計算に「賃貸割合」が影響することです。満室のアパートであれば、貸家建付地の評価減を最大に受けられますが、入居率が下がるほど評価減が縮小します。そのため相続税対策にとって入居率の高いアパート経営は重要です。

④所得税節税になることも
アパートの所得は不動産所得として申告しますが、不動産所得の大きな経費に減価償却費があります。減価償却費とは、経年にともなう建物などの価値の目減り分を経費として差し引けるというものです。

また青色申告をすると、青色申告特別控除を差し引くことができます。これらの経費により不動産所得が抑えられ、また経費が収入よりも多ければ赤字申告ができます。不動産所得は給与所得や事業所得などと損益通算できるので、不動産所得が赤字の場合、他の所得から赤字分を差し引くことができ、所得税・住民税の節税ができます。ただし、不動産所得が黒字になった場合は他の所得と合算されて、かえって税金が増えてしまうので注意が必要です。

⑤借入金によるレバレッジ効果が期待できる
借入を利用して手元資金以上の投資を行い、大きな収益を得ることを「レバレッジ効果」と言います。アパート経営を始める際に、銀行などから借入ができれば少額の自己資金でアパート建築をすることができるため、レバレッジ効果が期待できます。

例として手元資金300万円で行う2つの運用について比べてみましょう。例えば300万円で利回り10%の投資信託を購入すると、毎年の分配金は30万円です。しかし、手元資金に加えて9,700万円のアパートローンの借入ができれば、事業予算1億円のアパート建築が可能です。仮にアパートの利回りが10%、ローンが金利2%・30年返済、毎年の管理運営費が収入の10%の場合、毎年の手取り額は以下の通りです(手取り額は税引前)。

収入    1億円×10%=   1,000万円
ローン返済           ▲430万円
管理運営費 1,000万円×10%= ▲100万円
差引手取額            470万円

同じ手元資金300万円の投資でも、投資信託のリターンが30万円であるのに対し、アパート経営では年間470万円ものリターンを得ることができます。このようなレバレッジ効果もアパート経営の魅力の1つです。

2.アパートによる有効活用の手順

一般的に、アパート建築による有効活用は以下の手順に従い進めます。

【アパート建築の手順】
①デベロッパー(アパートの建築会社)に相談
  ↓
②賃貸ニーズの調査、空き地の法規調査、現況調査(面積、接道、地盤調査など)
  ↓
③空き地に合わせた建築プランの作成、事業計画の作成・検討、融資の相談(金融機関)
  ↓
④デベロッパーの選択、請負契約、融資申込み
  ↓
⑤融資承認、着工、入居募集開始
  ↓
⑥竣工、融資借入、引き渡し
  ↓
⑦賃貸経営の開始=家賃の受け取り開始・返済開始

①~④の「検討期間」はおおむね2~3カ月、④~⑥の「実施期間」は建物の規模や階数、関係法令などにもよりますが、おおむね半年から1年ほどかかります。つまり、アパートを検討し始めてから経営開始までには、少なくても1年近くの期間を要することになります。

3.アパート経営の留意点

アパート経営には多くのメリットがある反面、デメリットやリスクも押さえておかなければいけません。アパート経営のデメリット・リスクには、空室リスク、賃料下落リスク、滞納リスク、金利上昇リスク、災害・事故リスク、入居トラブル、流動性の低下などがあります。詳細については「相続した実家をアパート・マンションに建て替える メリット・デメリットは」で解説していますのでお読みください。

リスクを回避・軽減するためには、しっかりとした事業計画を立てることが最も重要です。事業計画では、主に以下のようなことをチェックします。

・所有している空き地が将来にわたり賃貸需要が見込める立地かどうか
・市場と建築計画がマッチしているか
・安全な賃貸経営が可能か

特に事業計画では、賃料の下落、金利の上昇、空室増加、修繕費の増加など、将来予測しうるリスクを考慮した上で厳しい収支計画を作成し、賃貸経営をすべきかどうかを判断することが大切です。

貸駐車場にするメリットと留意点

空き地を駐車場として活用するケースもあります。駐車場は比較的手軽に始められる活用方法と言えるでしょう。

1.貸駐車場のメリット

① 初期投資が少額
月極駐車場の場合、工事費はアスファルト舗装・車止め・白線引き程度のため、多くの場合手元資金で始めることができ、借入も不要です。

②転用・売却がしやすい
駐車場には借地権・借家権などの権利がないため退去させやすく、転用や売却がしやすい点もメリットです。将来利活用する予定がある場合は、一時的に駐車場として活用することも可能です。

2. 貸駐車場のデメリット

①立地などにより向き不向きがある
貸駐車場の成功の可否は、立地がすべてと言っても過言ではありません。せっかく空き地を貸駐車場に転用しても、借り手がいなければ経営は成り立ちません。また、駐車場のニーズがあるエリアでも、土地が狭い、地形が悪い、道路が狭く出入りしにくい、などは駐車場経営のマイナス要因となります。

②収益が少ない
アパート経営と比較すると、貸駐車場はローリスクローリターンの経営と言えます。土地の面積や資産価値の割に収入は少なくなりがちです。土地の資産価値を最大限に活かしたい人には物足りない活用方法と言えるでしょう。

③固定資産税対策にはならない
貸駐車場には固定資産税等の軽減はありません。

④小規模宅地等の特例が受けられない場合がある
貸付事業用宅地として小規模宅地等の特例を受けるためには、貸駐車場が事業として認められなければなりません。砂利敷きの青空駐車場では認められないため、アスファルト舗装など特例の条件を満たすための条件を備えておく必要があります。

※駐車場の具体的な活用手法については「相続した実家を駐車場にするメリットデメリットとは 固定資産税など税負担に留意」をお読みください。

まとめ

土地は所有するのではなく活用する時代になったと言えます。空き地も空き地のまま保有し続けるのではなく、活用して初めて資産価値があると言えるのではないでしょうか。空き地活用の重要性は、以前から空き地を所有している人だけではなく、空き地を相続した人にも当てはまります。空き地を相続した場合には、有効活用や売却についても検討してみることをおすすめします。

空き地活用にもメリットとデメリットがあります。特に長期にわたる活用は、事前の計画が重要です。検討の際には不動産に詳しいFP、不動産会社、建築会社などの専門家に相談をしながら、最適な選択をしてください。

(記事は2020年11月1日時点の情報に基づいています)