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1. 相続権とは?
「相続権」とは、被相続人(亡くなった人)の遺産を相続する権利です。民法で定められた順位に従い、配偶者や子などが相続権を有します。
相続権を有する人は「相続人」と呼ばれます。相続人は、全員が遺産分割協議に参加しなければなりません。遺産分割協議では、遺産の具体的な分け方を話し合って決定します。スムーズに相続手続きを進められるように、相続人同士でできる限り互いに協力することが望ましいです。
なお、相続人ではないものの、遺言書によって遺産を譲り受ける人は「受遺者」と呼ばれます。受遺者は遺言書の内容に従って遺産を取得できますが、相続人として相続権を有するわけではありません。
2. 相続権の順位の決定方法
誰が相続権を有するのか(=誰が相続人か)は、民法で定められた順位に従って決まります。配偶者は常に相続人となるほか、次の順位に従い、先順位の人がいない場合に次順位の人が相続人となります。
- 第一順位:子などの直系卑属
- 第二順位:父母などの直系尊属
- 第三順位:兄弟姉妹、甥・姪
法定相続人の範囲と相続順位を図解。配偶者と子は必ず相続人になる
2-1. 配偶者は常に相続人となる|内縁の妻・夫は不可
被相続人の配偶者は、常に相続人となります(民法890条)。
ただし、配偶者として相続権を得るためには、被相続人と法律上婚姻していることが必要です。内縁(事実婚)の妻・夫は相続権を有しません。また、被相続人が亡くなった時点ですでに離婚している元配偶者も、相続権を有しません。
2-2. 第一順位:子などの直系卑属
被相続人の子は、相続人となります(民法887条1項)。子が複数いる場合は、その全員が相続人です。実子のほか、養子も相続権を有します。
被相続人が亡くなった時点で、子が次のいずれかの事由によりすでに相続権を失っているときは、さらにその子(=被相続人の孫)が相続人となります(同条2項)。これを「代襲相続」といいます。
- 相続開始より前の死亡
- 相続欠格(被相続人を殺害しようとしたり、遺言書を偽造したりするなど、重大な不正行為をして当然に相続権を失うこと)
- 推定相続人の廃除(被相続人に対する虐待、重大な侮辱その他の著しい非行をして、被相続人の生前の意思によって相続権を失わせること)
代襲相続人も上記の事由によって相続権を失っているときは、ひ孫以降の直系卑属による再代襲相続も認められています(同条3項)。
2-3. 第二順位:父母などの直系尊属
被相続人に第一順位の子やその代襲相続人がおらず、父母・祖父母などの直系尊属が存命であれば、直系尊属のうち被相続人との間の親等が最も近い者が相続人となります(民法889条1項1号)。
たとえば、被相続人が若くして亡くなり、父母と祖母が存命であるとします。この場合、被相続人の父母が相続人となります(祖母は相続人になりません)。
2-4. 第三順位:兄弟姉妹、甥・姪
被相続人に相続権を有する直系卑属と直系尊属がおらず、兄弟姉妹がいるときは、兄弟姉妹が相続人となります(民法889条1項2号)。兄弟姉妹が複数いる場合は、その全員が相続人です。
被相続人が亡くなった時点で、兄弟姉妹が次のいずれかの事由によりすでに相続権を失っているときは、その子(=被相続人の甥・姪)が代襲相続人となります(同条2項)。
兄弟姉妹には遺留分がなく、推定相続人の廃除の対象にはならないため、「廃除」は代襲相続の原因にはなりません。
なお、甥・姪の子による再代襲相続は認められていません。
3. 相続人の取り分(相続割合)に関するルール
すべての遺産のうち、各相続人がどれだけ取得するかを示した割合を「相続割合」といいます。民法では相続割合の基準となる「法定相続分」が定められていますが、実際の相続割合は遺言書や遺産分割協議によって法定相続分とは異なる割合にすることもできます。
3-1. 民法上の法定相続分|相続人の構成によって決まる
「法定相続分」とは、相続割合の目安となる割合です。相続人の構成に応じて決まります。主な相続人構成ごとの法定相続分は、次の図表のとおりです。
相続人構成別の法定相続分の表。配偶者は全体の2分の1、子たちが残りの2分の1を分配する
たとえば配偶者と子が相続人である場合、法定相続分は配偶者が2分の1、子が2分の1です。子が複数いる場合は頭数で均等に割ります。たとえば子が2人なら、配偶者が2分の1、子が1人当たり4分の1となります。
代襲相続が生じたときは、被代襲者(=死亡等によって相続権を失った人)の法定相続分を、代襲相続人の頭数で均等に割ります。たとえば、法定相続分が4分の1である子がすでに亡くなっており、代襲相続によって孫3人が相続人となった場合、孫1人当たりの法定相続分は12分の1です。
3-2. 法定相続分にかかわらず、相続割合は遺言書や遺産分割協議などで自由に決められる
民法上の法定相続分どおりに遺産を分ける必要はなく、実際の相続割合は遺言書や遺産分割協議などによって異なる割合にすることができます。
「遺言書」とは、自分が亡くなった際の遺産の分け方などを指定する書面です。民法で定められた方式に従って作成する必要があります。
遺言者は、遺産の分け方を自由に定めることができます(民法964条)。遺言書がある場合は、原則としてその内容に従って遺産を分けます。ただし例外的に、相続人全員の合意がある場合などには、遺言書とは異なる方法で遺産を分けることも認められます。
「遺産分割協議」とは、遺産の分け方を話し合って決める手続きです。相続人全員の合意をもって遺産分割協議が成立し、その内容に従って遺産を分けます。相続人全員が合意する限り、遺産の分け方は自由です。
遺産分割協議がまとまらないときは、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てます。遺産分割調停では、調停委員会が各当事者から事情や意見を聴き、歩み寄りを促すなどして合意形成をサポートします。
相続人全員の合意が得られたら調停が成立し、その内容に従って遺産を分けます。遺産分割協議と同じく、調停でも当事者の合意によって遺産の分け方を決めることができます。
3-3. 家庭裁判所が遺産分割の方法を決める際には、法定相続分が基準となる
遺産分割調停でも相続人全員の合意が得られないときは、原則として遺産分割審判に移行し、家庭裁判所が審判を行って遺産の分け方を決定します。
家庭裁判所が審判を行う際には、法定相続分を基本としつつ、特別受益や寄与分などを考慮して具体的な相続分を算定し、遺産の分け方を決めます。
ただし、遺産の種類などによっては、各相続人の具体的な相続分どおりにきっちり遺産を分けられるとは限りません。遺産の性質や各相続人の事情などを踏まえて、具体的な分割方法が決められます。
3-4. 偏った内容の遺言書があるときは、遺留分侵害に要注意
前述のとおり、遺言書を作成すれば遺産の分け方を自由に決められます。相続人は原則として、遺言書の内容に従って遺産を取得することになります 。
ただし、兄弟姉妹およびその代襲相続人を除く相続人には、相続などによって取得できる遺産の最低保証額である「遺留分」が認められています(民法1042条)。遺言書によって偏った遺産の分け方を指定すると、一部の相続人が得る財産の額が遺留分を下回ることがあります。この状態を「遺留分侵害」といいます。
遺留分侵害を受けた人は、遺贈や一定の贈与によって財産を取得した人に対して、侵害された遺留分に相当する金銭の支払いを請求できます(遺留分侵害額請求)。
遺留分侵害額請求を図解。法律で保障された最低限の取り分(遺留分)を受け取っていない場合、請求することができる
遺留分侵害額請求が行われると、相続をめぐって深刻なトラブルに発展するおそれがあります。偏った内容の遺言書を作成しようとするときは、遺留分侵害によるリスクに注意しましょう。
4. 法定相続人以外で遺産を受け取る人は?
民法で定められた法定相続人以外にも、次に挙げる人は遺産を取得できることがあります。
4-1. 受遺者|遺言書によって指定された人
「受遺者」とは、遺言書によって遺産を譲り受ける人です。「包括受遺者」と「特定受遺者」の2種類があります。
【包括受遺者】
遺言書で定められた割合に従って遺産を譲り受ける人です。包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有するため、遺産分割が必要な場合には、相続人とともに遺産分割協議に参加します。
(例)「Aに遺産の4分の1を遺贈する。」
【特定受遺者】
遺言書によって特定の遺産を譲り受けた人です。遺産分割協議には参加せず、その遺産を譲り受けます。
(例)「Aに不動産Xを遺贈する。」
遺言書が有効である限り、受遺者はその定めに従って遺産を取得する権利を有します。
なお遺言書では、相続人ではない人に対してすべての遺産を取得させることもできます。この場合は、原則として遺産分割協議を行うことなく、その人がすべての遺産を取得します。
4-2. 死因贈与を受けた人
「死因贈与」とは、贈与者が死亡することを条件として効力を生ずる贈与です。たとえば、AとBの間で「Aが死亡したときは、Aが所有する不動産XをBに贈与する」と約束(契約)した場合、この契約は死因贈与に当たります。死因贈与の受贈者(=受け取る側)は、その契約に従って遺産を取得する権利を有します。
なお死因贈与については、その性質に反しない限り、遺贈に関する規定を準用するものとされています(民法554条)。
「遺産の半分を贈与する」といったように、遺産全体に対する割合を決めておく死因贈与(包括死因贈与)も認められています。この場合、遺産を受け取る人は前述の「包括受遺者」と同じように、遺産分割協議に参加する必要があります。
4-3. 特別縁故者|相続人がいない場合に限る
「特別縁故者」とは、次のいずれかに該当する人をいいます。
- 被相続人と生計を同じくしていた者
- 被相続人の療養看護に努めた者
- その他被相続人と特別の縁故があった者
相続人がおらず、かつ相続債権者や受遺者に対する弁済が終わった後で遺産が残っている場合に限り、特別縁故者は家庭裁判所に対して相続財産の分与を請求できます(民法958条の2第1項)。請求期間は、家庭裁判所が定めた相続人としての権利を主張できる期間の満了後3カ月以内です(同条2項)。
なお、特別縁故者に対して分与される相続財産の内容は、被相続人との関係や療養看護の程度などの事情を踏まえて家庭裁判所が決定します。残っている遺産がすべて特別縁故者に与えられるとは限りません。
特別縁故者に対しても与えられなかった相続財産は、国庫に帰属します(民法959条)。
4-4. 特別寄与者|相続人以外の者が介護などを行った場合
相続人でない被相続人の親族が、被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより、被相続人の財産の維持・増加について特別の寄与をしたときは、相続の開始後、相続人に対してその寄与に応じた額の金銭の支払いを請求できます(民法1050条)。
遺産そのものを相続できるわけではありませんが、被相続人の生前にした貢献に見合った金銭を受け取れる可能性があります。
5. 自分の相続権を手放す方法は?
借金などの債務を相続したくない、相続争いに巻き込まれたくないなどの理由で、相続権を手放したいと考える人もいます。相続人としての立場から離れる方法としては、主に「相続放棄」と「相続分の譲渡」の2つが挙げられます。
ただし、両者では法的な効果が大きく異なります。特に、相続分を譲渡しても被相続人の借金などを相続しなくなるわけではない点に注意が必要です。
5-1. 相続放棄
「相続放棄」とは、被相続人の財産や債務を一切相続しないための手続きです。家庭裁判所に相続放棄の申述を行い、受理される必要があります。
相続放棄をすると、その相続に関して初めから相続人にならなかったものとみなされます(民法939条)。預貯金や不動産などのプラスの財産を取得できなくなる一方、被相続人が負っていた借金などの債務も原則として引き継がずに済みます。遺産分割協議への参加も不要となります。
相続放棄ができる期間は原則として、自己のために相続の開始があったことを知った時から3カ月以内です(民法915条1項)。
5-2. 相続分の譲渡
「相続分の譲渡」とは、相続人として有する遺産全体に対する割合的な権利義務を、他の相続人や第三者に譲り渡すことをいいます。遺産分割が完了する前に限って認められると解されています。
相続分を譲渡した側は原則として遺産分割手続きから離脱し、相続分を譲り受けた側は遺産分割協議に参加することになります。
ただし、相続分を譲渡しても、被相続人の債権者との関係で相続債務を免れるわけではありません。借金などの相続債務を免れたい場合は、相続分の譲渡ではなく相続放棄を検討する必要があります。
なお、共同相続人の一人が第三者に相続分を譲渡した場合、他の共同相続人は、その価額と費用を償還して第三者からその相続分を譲り受けることができます(=相続分の取戻権、民法905条1項)。
相続分の取戻権は、1カ月以内に行使しなければなりません(同条2項)。法律上、条文には起算点が明記されていませんが、一般に相続分が第三者へ譲渡された時から1カ月と解されています。
6. 相続権に関連する手続きの期限は?
相続権を有する人は、次に挙げる手続きの期限に注意してください。期限を過ぎると手続きができなくなったり、ペナルティを受けたりするおそれがあるので、自分に関係する手続きとその期限を早めに確認しておくことが大切です。
6-1. 相続放棄|3カ月以内
相続権を手放す「相続放棄」は原則として、自己のために相続の開始があったことを知った時から3カ月以内に家庭裁判所へ申述する必要があります(民法915条1項)。特に被相続人に借金がある場合や、借金の有無が分からない場合には、遺産や債務を速やかに調査して相続放棄の要否を判断しましょう。
ただし実務上は、3カ月の期間が過ぎても相続放棄が認められるケースが少なくありません。相続発生後、時間が経ってから借金の存在が判明した場合などには、諦めずに弁護士へ相談してください。
6-2. 相続税申告|10カ月以内
相続や遺贈などによって取得した財産の課税価格が基礎控除額を超える場合には、原則として相続税の申告が必要です。また、相続税額がゼロになる場合でも、配偶者の税額の軽減や小規模宅地等の特例など、申告を要件とする制度の適用を受ける場合には相続税申告が必要となることがあります。
相続税の申告・納付の期限は、相続の開始を知った日の翌日から起算して10カ月以内です(相続税法27条)。期限内に申告・納付を行わないと、本来の税額に加えて加算税や延滞税を上乗せして追徴課税を受けるおそれがあります。税理士のサポートを受けながら、期限内に相続税申告を行ってください。
6-3. 遺留分侵害額請求|1年以内
遺言書の内容が偏っているなどの理由で、遺留分を下回る財産しか取得できなかった場合には、財産を多く取得した人に対して「遺留分侵害額請求」を行い、金銭の支払いを求めることができます(民法1046条1項)。
遺留分侵害額請求権は、相続の開始および遺留分を侵害する贈与・遺贈があったことを知った時から1年間が経過すると、時効によって消滅します(民法1048条)。また、相続開始から10年が経過した場合も請求できなくなるため注意が必要です。
6-4. 相続回復請求|5年以内
実際には相続権を有しない人が、相続権を主張して遺産を占有している場合には、真の相続人はその者に対して「相続回復請求」を行い、遺産を返還するよう請求できます(民法884条)。
相続回復請求権を行使すべきなのは、たとえば次に挙げるケースなどです。
- 相続欠格や推定相続人の廃除によって相続権を失った者が相続人として遺産を取得・占有している場合
- 被相続人に子がいないと思い込んだ兄弟姉妹が遺産を分割したところ、実は被相続人が生前に認知した子がいた場合
- 養子縁組が無効であるにもかかわらず、養子としての相続権を主張して遺産を占有している場合
相続回復請求権は、相続人またはその法定代理人が相続権を侵害された事実を知った時から5年間が経過すると、時効により消滅します。
相続人ではない人物が遺産を占有し、相続人としての権利を主張してきた場合には、速やかに弁護士へ相談してください。
6-5. 特別受益・寄与分の主張|10年以内
相続人が遺贈や婚姻・養子縁組のため、または生計の資本としての生前贈与などによって特別の利益を得たときは、原則としてその額を「特別受益」として考慮し、具体的な相続分を調整することがあります(民法903条)。
また、事業の手伝いや療養看護などにより、被相続人の財産の維持・増加について特別の寄与をした相続人には「寄与分」が認められます。寄与分を有する人はその旨を主張し、相続分の調整を求めることができます(民法904条の2)。
特別受益と寄与分を主張できるのは、原則として相続開始の時から10年以内に限られています(民法904条の3)。したがって、相続開始から10年を経過した後に行う遺産分割では、特別受益や寄与分を考慮せず、法定相続分または指定相続分を基準として分割することになります。
ただし、相続開始から10年以内に家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てれば、特別受益と寄与分を主張することが認められます。長期間にわたって遺産分割協議がまとまらないときは、弁護士に相談して速やかに遺産分割調停を申し立てましょう。
7. 相続権のある人が行方不明の場合はどうなる?
遺産分割協議には、相続人全員が参加する必要があります。相続人のうち1人でも行方不明の人がいると、その人を除外して遺産分割協議を成立させることはできません。
行方不明の相続人がいる場合の主な対処法として、「不在者財産管理人の選任」または「失踪宣告」の申立てが挙げられます。
7-1. 対処法1|不在者財産管理人の選任を申し立てる
容易に戻る見込みのない人(=不在者)が財産管理人を置いていない場合には、利害関係人または検察官の請求により、家庭裁判所が「不在者財産管理人」を選任することができます(民法25条)。
不在者財産管理人は、不在者の財産を管理・保存する役割を担います。通常は財産の保存行為や、財産の性質を変えない範囲での利用・改良行為などを行うことができます。
また、不在者財産管理人は家庭裁判所の許可を得れば、本人に代わって遺産分割協議に参加することができます(民法28条)。
相続人側で遺産分割協議書案を作り、それを添付して家庭裁判所に権限外行為許可(財産の保存・管理といった本来の権限を超える行為をするための許可)を申し立てましょう。不在者の権利を保護するため、不在者の遺産の取り分は法定相続分以上としなければなりません。
家庭裁判所の許可が得られれば、不在者財産管理人が本人に代わって遺産分割協議書に調印し、遺産分割を完了させることができます。
7-2. 対処法2|失踪宣告を申し立てる
行方不明の相続人の生死が7年以上明らかでないときは、利害関係人は家庭裁判所に対して「失踪宣告」を申し立てることができます(民法30条)。家庭裁判所によって失踪宣告がなされると、本人は生死が不明となった時から7年間が経過した時点で死亡したものとみなされます(民法31条)。
なお、戦争や船舶の沈没、震災など死亡の原因となる危難に遭遇した人については、その危難が去った後1年間生死が明らかでない場合に失踪宣告を申し立てられる「特別失踪」の制度もあります。
相続人について失踪宣告がなされた場合は、その人が死亡したものとして遺産分割協議を行います。本人は死亡によって相続権を失うため、不在のまま遺産分割協議をすることができます。
ただし、代襲相続が発生する場合や、本人の相続人が相続権を取得する場合は、対象者を遺産分割協議に参加させる必要があります。
8. 相続権のある人が、相続発生後・遺産分割完了前に亡くなったらどうなる?
被相続人が亡くなった後(=相続発生後)で、遺産分割が完了する前に相続人が亡くなったときは、その人の相続人が相続権を取得(相続)します。
たとえば、先に亡くなったAの子であるBが、Aの遺産分割協議が終わらないうちに亡くなったとします。この場合、Bの相続人である配偶者や子などが相続権を取得し、Aの遺産分割協議に参加することになります。
B自身の遺産についても相続手続きを行う必要があります。相続が何代にもわたって重なると、遺産分割協議に参加する人数が増え、相続関係も複雑になりやすいです。
遺産分割を長期間放置すると数次相続(相続の手続きが終わらないうちに、相続人が亡くなって次の相続が連続して発生すること)が発生し、手続きがさらに複雑になる可能性があります。相続人が亡くなるなどして相続関係が複雑になっている場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
9. 素行に問題のある親族の相続権を奪うことはできる?
被相続人に対して悪質な行為をするなど、素行に問題のある親族に遺産を相続させたくないと考えることもあるでしょう。
相続人としてふさわしくない行為をした人については、「相続欠格」や「推定相続人の廃除」によって相続権をはく奪できる場合があります。本人に「相続放棄」をさせる方法もありますが、相続放棄は任意なので強制はできません。
9-1. 相続欠格|重大な不正行為により、当然に相続権を失う
次に挙げる重大な不正行為をした人は「相続欠格」に該当し、法律上当然に相続権を失い、遺留分も認められなくなります(民法891条)。
- 故意に被相続人、または先順位もしくは同順位の相続人を死亡させ、または死亡させようとしたために刑に処せられた者
- 被相続人が殺害されたことを知りながら、告発または告訴をしなかった者(幼い子どもなど善悪の判断がつかない場合や、殺害した犯人が自分の配偶者や親・子どもなどの直系親族であった場合を除く)
- 詐欺または強迫によって、被相続人の遺言やその撤回、取消しまたは変更を妨げた者
- 詐欺または強迫によって、被相続人に遺言やその撤回、取消しまたは変更をさせた者
- 被相続人の遺言書を偽造、変造、破棄または隠匿した者
相続欠格に該当すると、家庭裁判所の審判などを経なくても当然に相続権を失います。
9-2. 推定相続人の廃除|被相続人の請求により相続権を失う
遺留分を有する推定相続人(=相続が開始した場合に相続人となるべき者)が次の行為をしたときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求できます(民法892条)。
- 被相続人に対する虐待
- 被相続人に対する重大な侮辱
- その他の著しい非行
家庭裁判所による廃除の審判が確定すると、その推定相続人は相続権を失い、遺留分も認められなくなります。
なお、推定相続人の廃除は遺言によって行うこともできます。この場合は、相続開始後に遺言執行者が家庭裁判所へ廃除を請求します(民法893条)。
9-3. 相続放棄|任意なので強制はできない
素行に問題のある親族に相続放棄をさせれば、その親族は初めから相続人ではなかったものとみなされます。
ただし、相続放棄をするかどうかは本人が決めるべきことで、他人が強制することはできません。また、相続開始前に相続放棄をすることはできないため、被相続人が生前に「相続を放棄してほしい」と求めても、あらかじめ相続放棄をさせることはできません。
10. 相続手続きはどの専門家に依頼すればいい?
相続手続きについて相談できる専門家としては、主に弁護士・司法書士・税理士の3つが挙げられます。それぞれ対応できる業務が異なるところ、隣接士業と連携している専門家に依頼すると幅広い相続手続きに対応してもらえるので安心です。
相続において各専門家が対応できる業務の比較表。弁護士は幅広い業務に対応できる
10-1. 弁護士|相続争いやそのおそれがある場合など
弁護士は、相続に関する幅広い法律問題を取り扱う専門家です。特に、相続争いの予防や解決に長けています。相続人同士がすでに揉めている場合や、複雑な事情があってこれから揉めるリスクがある場合などには、弁護士に相談するとよいでしょう。
10-2. 司法書士|不動産の相続登記など
司法書士は、不動産の相続登記を中心に取り扱う専門家です。相続人同士の紛争について代理人として交渉することはできませんが、それ以外の相続に関する業務は取り扱うことができます。相続人同士が争う可能性が低く、かつ不動産を相続する場合には、司法書士に相談してみましょう。
10-3. 税理士|相続税申告など
税理士は、税務を取り扱う専門家です。所得税の準確定申告や相続税申告など、税金に関する手続きを依頼できます。相続財産にかかる税金が心配なら、税理士に相談するとよいでしょう。
10-4. 【おすすめ】隣接士業と連携している専門家に依頼するのが安心
弁護士・司法書士・税理士は対応できる業務が異なるので、相続手続きの中では複数の専門家のサポートを受けるべきケースがよくあります。
そのため、司法書士・税理士と連携している弁護士など、隣接士業と連携している専門家に依頼するのが安心です。遺産分割協議・不動産の相続登記・相続税申告など、幅広い相続手続きについて窓口一つで相談することができます。
11. 相続権についてよくある質問
Q. 相続人の妻に相続権はない?
相続人の妻には、原則として被相続人の遺産を相続する権利はありません。ただし、相続人の妻が被相続人と養子縁組をしているときは、養子として相続権を有します。
Q. 相続人の妻が被相続人の介護をしていても、遺産はもらえない?
相続権のない妻が被相続人の介護をしていても、それだけを理由に遺産をもらうことはできません。ただし、遺言書によって遺産を取得するものとされた場合は、その遺産を譲り受けることができます。また、介護による寄与度に応じて、相続人に対して特別寄与料を請求できる可能性があります。
Q. 養子や非嫡出子にも相続権は認められる?
被相続人の養子は、実子と同じく相続権を有します。
非嫡出子は、認知されている場合に限り相続権を有します。認知は市区町村への届出や遺言によって行うほか、認知の訴えを通じて強制的に認知させることもできます。被相続人の死後でも、死亡の日から3年以内に限り認知の訴えを提起することができます(民法787条)。
Q. 亡くなった親の介護を献身的に行ってきました。他のきょうだいよりも遺産を多くもらえる?
寄与分を主張すれば、介護による寄与度に応じて、通常よりも多くの相続分が認められる可能性があります。
寄与分が認められるかどうかは個別具体的な事情によって異なるため、まずは弁護士に相談して見通しを確認することをおすすめします。
12. まとめ 相続人や相続割合を正しく確認し、必要に応じて専門家へ相談しよう
相続権を有する人や相続割合を決めるルールは民法で定められていますが、その内容はかなり複雑です。また、遺産分割協議の中で相続人が揉めてしまうなど、相続にはさまざまなトラブルのリスクがつきまといます。
スムーズに相続手続きを完了するためには、状況に応じて弁護士・司法書士・税理士といった専門家のサポートを受けましょう。隣接士業と連携した専門家に依頼すれば、幅広い相続手続きについてワンストップで相談できるので安心です。
(記事は2026年10月1日時点の情報に基づいています)
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