目次

  1. 1. 遺産分割協議書の作成を専門家に依頼するメリット
  2. 2. 遺産分割協議書の作成を依頼できる専門家と対応業務の違い
  3. 3. 遺産分割協議書の作成を各専門家に依頼した際にかかる費用相場
    1. 3-1. 弁護士|協議書作成のみなら10万円程度の事務所も 交渉依頼なら着手金+成功報酬
    2. 3-2. 司法書士|協議書作成~5万円+相続登記1件ごとに7万円程度
    3. 3-3. 税理士|遺産総額の0.5~1%程度(協議書作成、相続税申告費用込み)
    4. 3-4. 行政書士|協議書作成~3万円+必要書類の収集5万円程度
  4. 4. 遺産分割協議書の作成費用は誰が負担する?
    1. 4-1. 弁護士に依頼した場合は基本的に自己負担
    2. 4-2. 弁護士以外の場合は相続人同士の話し合いで決める
  5. 5. 遺産分割協議書は自分で作成することもできる
    1. 5-1. 自分で作成した場合の費用は数千円程度
    2. 5-2. 自分で作成する場合の流れ
    3. 5-3. 自分で作成する場合に必要な書類一覧
  6. 6. 遺産分割協議を進める際に起こりやすいトラブルと対処法
  7. 7. 遺産分割協議書に関するよくある質問
  8. 8. まとめ 遺産分割はまず弁護士に相談を

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遺言書がない場合、相続人全員で遺産の分け方を話し合う「遺産分割協議」を行います。誰がどの財産を相続するのか、その合意内容を記したのが「遺産分割協議書」です。

遺産分割協議は口頭だけでも成立するため、遺産分割協議書は必ず作成しなければならないわけではありません。しかし、後々になって「合意していない」「言った、言わない」というもめごとになりかねません。こうしたトラブルを避けるためにも、証拠となる遺産分割協議書をつくる必要があります。

ただし、一般の人が遺産分割協議書を作成すること自体簡単ではありません。内容に不備があれば、協議書が無効とされ、相続手続きが進まない原因になりえます。専門家に作成を依頼することで、そうしたミスを防げるメリットがあります。

また、相続発生の段階から、弁護士などの専門家に依頼すれば、次のようなメリットがあります。

  • 遺産分割に関する適切な法的手続きや法的義務についてアドバイスがもらえる
  • 相続人間のコミュニケーションを円滑にし、紛争を最小限に抑えるための仲介役を任せられる
  • 不動産、金融資産、事業、芸術品など、さまざまな種類の遺産(資産)の評価をしてもらえる
  • 遺言書が不明確な場合や異議がある場合、内容の解釈や、遺言の意図を明らかにするための助言がもらえる
  • 相続トラブルが解決できない場合、必要に応じて法的手続きや訴訟の支援をしてもらえる

相続手続きをスムーズに、ミスなく進めたいのであれば、専門家の力を借りるとよいでしょう。

遺産相続分割協議書の作成を依頼できる専門家と、対応可能な業務の違いを確認しましょう。

【弁護士】
・遺産分割に関連する書類や文書の作成など相続手続きの代理

・内容があいまいな遺言書の意図を明らかにし、相続人間の紛争を最小限に抑えるための助言

・相続人間の交渉の代理、紛争解決のための仲裁や調停。必要に応じて裁判手続きを行い、相続人の権利を保護(※相続人間の紛争解決は弁護士の専権)

【司法書士】
・遺産分割に関連する書類や文書の作成など相続手続きの代理

・土地や不動産など相続財産の移転手続きの代行(※相続登記は司法書士に任せるのが一般的)

【税理士】
・相続税や贈与税など、税金に関するアドバイス(※税務手続きは税理士の専権)

・税金計算のために必要な「相続財産の適正な評価」

【行政書士】
・遺産分割に関連する書類や文書の作成

どの専門家でも「遺産分割協議書の作成」「相続人の調査や戸籍謄本の収集」「相続財産の調査」は依頼できます。司法書士であれば登記関係、税理士であれば税金関係など、それぞれ対応できる範囲に違いがありますが、弁護士に関しては相続の全般的な相談が可能です。

また「各相続人の取り分の交渉を含めた遺産分割協議書の作成業務」は弁護士にしか依頼できません。従って、遺産分割協議書の作成に関しては、まず弁護士に相談するのがおすすめです。

遺産分割協議の着手金の算定基準は、遺産の総額から依頼者の経済的利益(取り分)を基準として計算します。

Adam法律事務所の場合、遺産分割協議書の作成のみであれば、文書作成料となりますので、10万円程度になります。また、遺産分割協議書の作成に留まらず、遺産分割協議での交渉を代理し、合意まで目指す場合、着手金は50万円程度(遺産の額により変動)で、成功報酬は取得できた相続財産の金額に応じで異なりますが14%程度になります。

紛争解決となると、交渉により解決すれば時間的にも費用的にも比較的かかりませんが、調停・裁判となると数年かかるため、費用も高額になります。

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司法書士の場合、遺産分割協議書の作成費用と遺産分割協議書に基づく登記業務があります。遺産分割協議書の作成費用は~5万円と、弁護士に依頼するより若干安い傾向にあります。登記業務は、司法書士に依頼するのが一般的で、土地や不動産1件ごとに7万円程度の費用がかかります。また、司法書士は、遺産分割の紛争業務の代理をすることはできません。

税理士は、遺産分割協議書の作成から相続税の申告までの手続きになります。相続税の代理申請は税理士の専権になりますので、他の専門家には依頼できません。

費用相場は遺産総額の0.5~1%となるため、被相続人(亡くなった人)が残した遺産が1000万円だった場合、税理士への報酬は5~10万円程度になります。なお、紛争案件の場合、弁護士とタッグを組むことになり、遺産分割協議書に基づき不動産の登記をする場合、司法書士に依頼することになります。

行政書士に依頼できるのは、遺産分割協議書の作成のみになります。別途、遺産分割協議書作成にかかる書類(戸籍、登記簿謄本、固定資産税評価証明書等)の取得は依頼可能です。

遺産分割協議書の作成を弁護士に依頼する場合、費用は依頼者の自己負担となります。弁護士は、依頼人の利益が最大化するように業務を行うため、他の相続人に費用負担を求めるのは現実的ではないからです。ただし、他の相続人が費用負担に応じてくれるのであれば話は別です。

相続案件の場合、相続財産の範囲がある程度わかっているため、弁護士費用を自己負担したとしても、赤字になる可能性は低いでしょう。

弁護士以外の専門家に書類作成だけを依頼する場合、費用負担は相続人同士の話し合いで決める必要があります。誰が負担するか、割り勘にするか、遺産から支払うかなど、自由に決めることができます。弁護士や専門家を入れない場合、そもそも費用は発生しません。

遺産分割協議書は自分で作成をすることも可能です。その際の費用や流れについて説明します。

自分で作成する場合、基本的に書類収集のための費用しかかかりません。書籍を参考にする場合、書籍の費用等はかかります。しかし、一般の方が作成する場合、法的な効力のない分割協議書になってしまう可能性があるため注意が必要です。

また、遺産分割協議書を作成するためには、亡くなった人の戸籍、相続人の戸籍を出生から集める必要があり、手間と時間がかかります。

自分で作成する場合の流れは以下になります。

  1. 亡くなった人の戸籍を出生から死亡まで取得し、推定相続人を探す
  2. 推定相続人の戸籍を取得し、相続人を確定させる
  3. 相続関係図を作成し、各相続人の法定相続分を定める
  4. 並行して、亡くなった人の財産と負債を調査する
  5. 必要書類の収集、作成を行う
  6. 遺産分割協議書を作成する

亡くなった人・相続人全員の戸籍謄本、印鑑証明書が必要です。また、遺産の価値を知る必要があるため、通帳や固定資産税の評価証明等も必要です。遺産には借金も含まれるため、借金や借入等の資料も必要になるでしょう。

【関連】自分で作成できる! 遺産分割協議書の書き方 ひな形・文例と一緒に解説 注意点や活用方法も紹介

遺産分割協議特有の問題としては、生前贈与の問題があります。一部の相続人が亡くなった人から生前、財産の贈与を受けていた場合です。これは、他の相続人からすると発見が難しいため、予め通帳の履歴等をよく精査する必要があります。

誰がその不動産を相続するのかということもトラブルになりやすいです。不動産はこの世に一つしか存在しませんし、分割しづらいものなので、誰が相続するのか相続人間で決めておく必要があります。

他には、ある相続人と連絡が取れないということも多いです。相続人が10人を超えるなど人数が多くなると、相続人の調査だけでも数カ月かかります。連絡が取れない相続人も出てくると、遺産分割協議書の作成ができません。この場合、調停等の裁判手続を利用する他ありません。

遺産分割協議がまとまらず長期化すると、他の相続人が亡くなり、その相続人の相続が始まってしまうこともあります。相続が二重に発生することなり、解決にさらに時間と費用と手間がかかることになってしまいます。そうならないためにも、速やかに遺産分割協議をまとめる必要があります。

Q. 公正証書遺産分割協議書の作成費用はいくら?

公正証書の費用は、公正証書に記載する内容により異なります。遺産分割協議書の場合、遺産の金額により、金額も異なります。目安ですが5000万円以下の場合、5万円程度になります。

Q. 遺産分割協議書を作成しないとどうなる?

遺産分割協議書を作成しない場合、銀行の預貯金については法定相続分の2分の1しか引き出すことができません。不動産に関しては、相続登記しかすることができません。証券会社においては、遺産分割協議書を作成しないと名義変更も受け付けてくれないところが多いです。つまり、遺産分割協議書がないと相続人の遺産を取得することができません。

Q. 遺産分割協議書には預貯金などの金額も記入するの?

預貯金額を記載する必要があれば記載しますし、不要な場合もあります。預貯金の場合、利息も発生しますので、金額を記載すると利息分が余ることにもなりますので、注意が必要です。

 多くの場合、相続人の一人が預貯金をすべて取得し、法定相続分相当額を、その他の相続人に支払うという形をとることが多いです。どのような記載が適切か、については状況判断になりますので、相談される専門家の方に聞くことをお勧めします。

遺産分割協議書の作成を専門家に依頼する場合、各専門家によって対応できる業務の内容や範囲が異なります。その中でも弁護士は、相続問題全般の相談に対応できます。ですので、まず弁護士に相談し、悩みや課題が明確になったところで、他の専門家への相談も検討しましょう。

費用に関しては各専門家により異なりますが、弁護士以外に依頼をする場合、費用負担は割り勘にすることも可能です。弁護士に依頼した場合、基本的に自己負担となりますが、得られる遺産の方が金額が多くなるケースが多いため、赤字の心配は少ないでしょう。

相続手続きを確実に進めたい人は、信頼できる専門家を探してみてください。

(記事は2024年5月1日時点の情報に基づいています)

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