相次相続控除とは? 10年以内に相続が続くと税額軽減 申告要件や計算方法をわかりやすく解説
10年以内に相次いで親や祖父母が亡くなると、相次相続控除の適用で相続税を抑えることができます。ただし、適用するには条件があります。計算もやや複雑です。今回は、相次相続控除の条件や計算方法をわかりやすく解説します。
10年以内に相次いで親や祖父母が亡くなると、相次相続控除の適用で相続税を抑えることができます。ただし、適用するには条件があります。計算もやや複雑です。今回は、相次相続控除の条件や計算方法をわかりやすく解説します。
目次
「相続会議」の税理士検索サービスで
相続税法の相次相続(そうじそうぞく)控除とは、10年以内に2回以上相続が生じ、相続税が課された場合に、税負担を一部軽減する制度のことです。ここで言う「相次相続」は、10年という短い期間に一次相続、二次相続などと相続が連続して起こることを意味します。
なぜ相次いで相続が起きると、相続税が軽減されるのでしょうか。それは、短期間に相続が生じると相続税の負担が過度に重くなるからです。通常、相続が発生するのは一世代で1回程度です。また、相続税は他の税金よりも高額になりがちでもあります。10年以内に二度も三度も相続が発生すると、相続人は通常よりも重い税負担を強いられることになるわけです。税負担の公平性を保つため、相次相続控除という制度が設けられています。
相次相続控除は、前回の相続と今回の相続の期間が短いほど、控除額が大きくなるしくみです。また、前回の相続で課された相続税が多いときも、控除額は大きくなります。
相次相続控除は、次の3つの条件をすべて満たしたときに適用できます。
今回亡くなった人から相続や遺贈、相続時精算課税制度の生前贈与で財産を取得した相続人であることが条件です。相続人でない人が遺贈で財産を取得しても、適用できません。また、相続を放棄した人や欠格や廃除で相続権を失った人も対象外です。
1回目の相続が2回目の相続の開始前10年以内に生じていることも条件です。今回の相続が2023年10月16日に開始したのなら、前回の相続は2013年10月16日以降に起きたものであることが求められます。
今回の相続で亡くなった被相続人が前回の相続で相続税が課されていることも必要です。この相続税には、期限後申告や修正申告、更正・決定で課された相続税も含めます。ただし、延滞税や過少申告加算税、無申告加算税、重加算税は含めません。
相次相続控除を適用すると相続税を抑えることができますが、要件の判定や計算は複雑です。不安な方は、税理士に相談してみましょう。
相続人1人あたりの相次相続控除の計算式は、次の通りです。
A×C/(B-A)×D/C×(10-E)/10
※C/(B-A)の割合が100/100を超えるときは100/100とする
A、B、C、D、Eの意味はそれぞれ次の通りです。
A:今回の被相続人が前の相続の際に課せられた相続税額
この相続税額は、相続時精算課税分の贈与税額控除後の金額を言います。被相続人が納税猶予の適用を受けていた場合、免除された相続税額ならびに延滞税、利子税および加算税の額は含まれません。
B:今回の被相続人が前の相続の際に取得した純資産価額
「取得財産の価額+相続時精算課税適用財産の価額-債務および葬式費用の金額」で計算します。
C:今回の相続、遺贈や相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得したすべての人の純資産価額の合計額
D:今回のその相続人の純資産価額
E:前の相続から今回の相続までの期間(1年未満の期間は切り捨てます)
計算式が分かりにくいので、次の具体例で考えましょう。
● 父と長男、次男の3人家族。母は15年前に他界。
● 一時相続…祖父が2019年6月1日に死亡。父が純資産価額で2億円の財産を相続した。課税された相続税は2000万円。
● 二次相続…父が2023年10月1日に死亡。長男が相続した財産は純資産価額で1億5000万円、課された相続税は1500万円。次男が相続した財産は純資産価額で5000万円、課された相続税は500万円。
この場合、二次相続での相次相続控除は、長男・次男で次のようになります。
【長男】
A:2000万円
B:2億円
C:2億円(1億5000万円+5000万円)
D:1億5000万円
E:6年(10年-4年)※1
計算式は次のようになります。
2000万円×(1億5000円+5000万円)/(2億円-2000万円)×1億5000万円/(1億5000円+5000万円)×(10年-4年(※1))/10年
=2000万円×100/100(※2)×1億5000万円/2億円×6年/10年
=900万円 ∴相次相続控除の金額は900万円
※1 4年4カ月→4年(1年未満切り捨て)
※2 100/100を超えるので「100/100」
【次男】
A:2000万円
B:2億円
C:2億円(1億5000万円+5000万円)
D:5000万円
E:6年(10年-4年)※1
計算式は次のようになります。
2000万円×(1億5000円+5000万円)/(2億円-2000万円)×5000万円/(1億5000円+5000万円)×(10年-4年(※1))/10年
=2000万円×100/100(※2)×5000万円/2億円×6年/10年
=300万円 ∴相次相続控除の金額は300万円
相次相続控除を受けるときは、相続税の申告書の第7表(相次相続控除額の計算書)と第8表の8(税額控除額及び納税猶予税額の内訳書)への記入が必要です。以下は、第7表の書式、記載例です。
相次相続控除を受ける際、特に添付書類は求められません。ただ、前回の相続税の申告で提出した書類のうち、次のものは今回の申告でも提出した方が親切です。
相次相続控除は、相続税の申告書に記載します。申告書の提出と相続税の納付の期限は、ともに相続開始の日の翌日から10カ月以内です。被相続人の最後の住所地を管轄する税務署に提出します。
全国47都道府県対応
相続の相談が出来る税理士を探す先ほどの計算式を見ても分かる通り、相次相続控除は前回の相続で被相続人が相続や遺贈、相続時精算課税制度の贈与で財産を取得し、相続税を課されていることが条件となります。今回の被相続人が前回の相続税申告の際、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例の適用を受けて相続税が0円となっていたのなら、今回の相続での相次相続控除の適用はありません。
交通事故などで両親が同時に死亡した場合、基本的に相次相続控除の適用はありません。両親のいずれも、亡くなる前の10年以内に相続人として財産を取得していないなら、相続税も課されないからです。
ただし、過去10年以内の相続で父か母が相続人となっており、冒頭の条件に当てはまるなら相次相続控除の適用を受けられます。
相次相続控除を適用した結果、相続税が0円になるなら申告は不要です。ただし、他に配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例の適用があるなら申告は必要となります。
遺産分割協議が10カ月以内にまとまらず、やむを得ず未分割のまま期限内申告をする場合でも、相次相続控除は可能です。ただし後日、申告をやり直す必要はあります。
3回目の相続でも適用可能です。ただし、今回亡くなった被相続人が前回、前々回の相続で相続人として相続税を納めていることなどが条件となります。
数次相続とは、すでに発生した相続の手続き中に相続人が亡くなり、次の相続が開始することを言います。この場合も相次相続控除の適用の可能性があります。
相次相続控除は、条件の判定や計算が複雑です。大丈夫と思っていても間違えることがあります。一人で申告作業をするより、税理士に相談した方が安心です。
(記事は2023年10月1日時点の情報に基づいています)
「相続会議」の税理士検索サービスで