相続税申告の税理士報酬の相場は? 依頼するメリット、税理士の選び方も解説
相続税申告は納税者である相続人らが自ら行うことも当然可能ですが、税理士に頼むメリットも多くあります。その場合に気になる税理士報酬の目安や相続税申告に強い税理士の見つけ方などについて、税理士がまとめました。
相続税申告は納税者である相続人らが自ら行うことも当然可能ですが、税理士に頼むメリットも多くあります。その場合に気になる税理士報酬の目安や相続税申告に強い税理士の見つけ方などについて、税理士がまとめました。
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相続税申告を税理士に依頼すると、納税者に代わって納税額の計算から申告書の作成、税務署への提出までしてくれます。その際の費用はいくらかかるのでしょうか。税理士報酬の相場を説明します。
かつて税理士会の定める税理士報酬規程というものがありましたが、平成14年4月1日以後は廃止され、税理士報酬は自由化されています。
したがって、税理士事務所ごとに報酬体系も異なり、一概に相場をつかむのが難しい状況ですが、遺産総額に応じた基本報酬(遺産総額の0.5%~1%程度)を設定し、その上で難易度等に応じて加算報酬を設定されているところが多い印象です。
例えば、遺産総額1億円であれば、基本報酬は50万円~100万円程度です。
なお、遺産総額が多いほど報酬が増えるのは、税理士の財産評価等の作業量がそれに伴って増加するためです。
報酬額が、基本報酬よりも高くなるケースがあります。以下が主な事例です。
土地の評価に必要な各種調査(役所調査や現地調査)に手間と時間を要します。特に、土地が複数あり、所在地がバラバラの場合、現地調査や役所調査等に要する旅費交通費等もかさみますので、報酬が加算される可能性があります。
非上場株式の評価は非常に難易度が高く、評価するのに手間と時間を要します。
相続人が多いと相続人間で遺産分割がスムーズにまとまらない場合も多く、申告期限までに遺産分割が完了していない場合には未分割申告となり、税理士側の検討事項も増え、難易度が上がります。
相続税申告の期限は、「被相続人の死亡を知った日の翌日から10カ月以内」です。期限ぎりぎりに税理士に相談する場合、依頼を断られるケースも多いですが、受ける代わりに報酬を上乗せしている税理士事務所もあります。ですので、税理士に依頼するなら早いに越したことはないです。
物納とは、納税する現金が用意ができない場合、不動産など財産的価値があるものを代わりに納める方法です。物納が認められる要件は高く、申請時の必要書類の準備など手間がかかります。
相続税申告を依頼する前の相談については、初回は無料で応じてくれる税理士事務所があります。有料相談の場合、相談料は税理士事務所によって異なりますが、1時間1万円程度のところが多いのではないかと思われます。
最近では、税理士事務所のHP上で相続税申告の報酬体系を公開しているところも多いです。税理士に依頼検討する際にはご自身でも複数の税理士事務所HPの報酬体系を見比べてみることをお勧めします。
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相続の相談が出来る税理士を探す書籍やネットで調べたり、税務署に事前予約のうえ訪問したりして疑問点を解消し、ご自身で相続税申告書を作成してもよいですが、税理士に依頼することで以下のようなメリットもあります。
相続税の申告納税期限(被相続人の死亡日の翌日から10カ月以内)は葬式等の諸手続きでバタバタしているとあっという間にやってきます。仕事もあるし自力で申告書を作る時間的余裕はないという方は税理士に依頼した方がよいでしょう。
不動産等の相続財産について税理士が正しく評価することでご自身が想定していた金額よりも評価額が下がり、申告不要となる場合もあります。
税理士が小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減等の各種特例の適用要件を確認して、適用が受けられれば相続税の税額を下げられます。
遺産分割前であれば、税理士が複数の遺産分割案に応じた税額シミュレーションを行い、相続税額も考慮した遺産分割方法を検討してもらえます。
遺産に不動産がある場合には遺産分割後に相続登記が必要となりますが、税理士の人脈で司法書士を紹介することもできます。また、相続人間で争いがある場合には、税理士の人脈で弁護士を紹介することもできます。
相続税申告後に万一税務調査があっても税理士に立ち会ってもらえます。
税理士登録者数は、80502人(令和5年6月末時点)と非常に多く、一口に税理士といっても、税理士1人の事務所もあれば、何十人もの従業員や税理士を抱える大手税理士法人もあります。また、相続税申告が得意で積極的に受けている相続税専門の事務所もあれば、相続税申告は一切受けていないところもあります。
では、どうやって相続税申告に強い税理士を探すのか。その判断基準も挙げればきりがないですが、税理士報酬以外に以下2点は必ず確認した方が良いでしょう。
税理士事務所の所長税理士のプロフィールで税理士試験の合格科目として相続税法の記載があれば、相続税法の基礎知識がある税理士であると推察されます。
相続税法は税理士試験の必須受験科目ではないので、相続税法に合格していない税理士も多くいます。また、これまでの相続税申告業務の経験の有無等の記載もあれば参考になります。さらに、相続税関連の書籍執筆やセミナー講師等をされているかどうかも記載があれば参考になります。
相続税申告を税理士に依頼する場合、単なる書類のやり取りだけでなく、亡くなられた方の生前の生活状況や通帳のお金の出入り等、税理士から相続人である依頼者に念入りに質問がなされます。
税理士法や契約で税理士は守秘義務がありますが、依頼者の中にはあまり身内のプライベートな話は税理士にしたくないという方も少なからずいます。
しかし、精度の高い相続税申告を行うためには、依頼者から税理士への情報提供(口頭、書面問わず)が必要不可欠です。したがって、情報提供しても大丈夫と信頼できる人柄の税理士かどうか、依頼者自ら直接会って話して確認した方がよいでしょう。
相続税の申告が必要となるのは、財産の価額の合計額が基礎控除(3000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合です。
いきなり税理士に相談してもよいですが、まず自分で国税庁HPの相続税の「申告要否判定コーナー」を利用して相続税の申告が必要なのかどうか、セルフチェックしてみることをお勧めします。税理士に相談する際にもセルフチェックした資料を持参した方がスムーズです。
家族構成とおおよその財産額を入力することで、相続税がいくら程度かかるかを把握できる「相続税計算シミュレーション」もご活用下さい。
上記で紹介した「申告要否判定コーナー」は、あくまでも相続税申告のおおよその要否を判定するものであり、仮に申告不要と判定されたとしても、100%申告不要とは言い切れません。したがって、例えば課税遺産総額がギリギリゼロ以下の場合には、税理士に依頼した方がよいでしょう。自分では正しく入力したつもりでも、何らかの入力漏れの財産があれば課税遺産総額がプラスに転じ、申告要と判定される可能性が高いです。
国税庁の実地調査によれば、申告額が過少であると想定される事案や、申告義務があるにもかかわらず無申告と想定される事案はおよそ1万件(平成30事務年度)もあり、自分では申告不要と思い込んでいても実は申告が必要という場合が多いことがうかがえます。
相続税申告を税理士に依頼するメリットや費用の目安について説明しました。遺産分割協議前であれば、相続に強い税理士に依頼することで、納税額を考慮した遺産の分け方も提案してもらえます。無料相談なども利用して、事務所に実際に足を運び、信頼できる税理士を探してみるとよいでしょう。
(記事は2023年7月1日現在の情報に基づきます)
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