目次

  1. 1. 相続税の申告をしなくてもよいケースとは
    1. 1-1 .「正味の遺産総額≦基礎控除額」なら申告不要
    2. 1-2. 基礎控除額とは
    3. 1-3. 正味の遺産総額とは
  2. 2. 土地は「相続時の時価」に課税される
    1. 2-1. 相続時の時価は「評価」が必要
    2. 2-2. 土地の評価額とは
  3. 3. 申告しても土地の相続税がかからないケースとは
    1. 3-1. 「申告=相続税がかかる」ではない
    2. 3-2. 申告しても土地の相続税が抑えられる制度
  4. 4. まとめ:相続税で困ったら税理士に相談を

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相続税の申告は、原則として相続が開始した日(亡くなった日)から10ヵ月以内に行わなければなりません。ただし、相続した「正味の遺産総額」が「基礎控除額」の範囲内であれば申告は不要であり、したがって、納める相続税もゼロとなります。

相続税の基礎控除額は、言い換えれば相続税の非課税枠のことです。基礎控除額は以下の算式で計算することができます。

基礎控除額 = 3000万円 +(600万円 × 法定相続人の人数)

つまり法定相続人の人数が2人の場合、基礎控除額は3000万円+(600万円×2人)=4200万円となり、法定相続人数が3人の場合は、同様の算式で4800万円となります。

一般的に私たちが遺産としてイメージする財産には、預貯金や株、土地や建物などがあげられます。しかし税務上は、これら「プラスの財産」のほかに「マイナスの財産」もあります。

代表的な「マイナスの財産」としては、故人が亡くなったときに持っていた借金や債務、未払い金などがあります。これら「マイナスの財産」は相続税の計算において非課税の財産として「プラスの財産」から差し引くことができ、算式であらわすと次のようになります。

「正味の遺産総額」= 「プラスの財産」-「マイナスの財産」

また、「マイナスの財産」には葬式費用や仏壇、仏具の購入代金、国や地方公共団体などに寄付した財産も含まれますので、これらに支出した財産も非課税財産となります。

土地は相続時の時価に対して課税されます。したがって、土地を相続した場合、土地の時価を適切に評価しなければなりません。しかし、専門家でもない一般の人が土地の評価額を自ら算出することは困難がともないます。そこで、相続税法においては、土地の時価の評価方法として「路線価」を使った「路線価方式」、または「固定資産税評価額」を使った「倍率方式」によることとしています。

1.路線価方式
路線価方式では、土地に面した道路ごとに、その土地の1㎡当たりの価格(路線価)が振られています。したがって、その土地の1㎡当たりの価格(路線価)に、地積(土地の面積)を乗じることで土地の評価額を算出します。

たとえば、500㎡の自宅敷地の前面道路の路線価が10万円(路線価表では千円単位で表記され100と記載されています)であった場合、評価額 = 10万円×500㎡=5000万円となります。

実際の土地の評価にあたっては路線価による評価額をベースに、地形や接道状況、用途地域、周辺環境、利用状況などを加味して補正を行う必要があります。なお、路線価図は国税庁のウェブサイトに公表されおり、毎年8月にその年の路線価が発表されています。

財産評価基準書路線価図・評価倍率表

2.倍率方式
路線価が振られている場合は路線価方式を採用しますが、路線価が振られていない地域の場合、「固定資産税評価額」にその地域ごとや用途ごとに決められた倍率を乗じて土地の評価額を算定します。

「固定資産税評価額」は毎年自治体から送られてくる「固定資産税の課税明細書」に記載されており、評価倍率表についても路線価図と同様に国税庁のウェブサイトに公表されています。

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申告不要=相続税0円だが、「申告する=相続税がかかる」とは限りません。正味の遺産総額が基礎控除額の範囲内であれば申告は不要であり、相続税はかからないためです。また、申告をすることで相続税が発生する場合でも、相続税法上で認められたさまざまな特例を使うことで、相続税を大幅に軽減することができ、相続税がゼロということも十分に考えられます。

・小規模宅地等の特例
自宅として使用されている土地であれば、その土地を配偶者や同居の子どもが相続した場合には、評価額を80%下げることができます。これを「小規模宅地の特例」といいます。この特例が適用できるか否かについては細かな要件がありますが、適用できれば相続税額を大きく抑えることができます。

なお、小規模宅地等の特例は適用できる「敷地」に上限があり、それ以上の敷地部分について、減額措置はありません。また、更地や畑、別荘の敷地には適用できません。小規模宅地等の特例は遺産分割協議が終わっていないと適用できないという点にも注意しましょう。

・配偶者の税額軽減の特例
この特例は、相続税においてもっとも大きな特典といえます。大きな財産を残して亡くなった後、配偶者に多額の相続税がかかるようでは、その後の配偶者の生活が立ち行かなくなることを避けるため、このような特例が設けられています。

具体的には以下、どちらか大きいほうの金額までは相続税がかからないという、とても大きな特典となっています。

  1. 正味の遺産総額が1億6000万円までか、
  2. 配偶者の法定相続分相当額(正味の遺産総額の1/2)までか、

正味の遺産総額が300億円でも、配偶者が相続すれば150億円までは「相続税ゼロ」となります。なお、この特例についても遺産分割協議が終わっていないと適用できない点に注意してください。

・未成年者控除
相続人が未成年の場合には、未成年者の税額控除が適用できます。その未成年が18歳になるまでの年数に、10万円を乗じた金額を相続税から控除することができます。そして、その控除しきれない金額がある場合には扶養義務者の相続税額から控除することができます。

・障害者控除
相続により相続財産を取得する相続人が障害者であれば、障害者の税額控除が適用できます。障害の程度により、控除額の上限が異なります。

一般の障害者の場合:その障害者が満85歳になるまでの年数 × 10万円
特別障害者の場合:その障害者が満85歳になるまでの年数 × 20万円

・相次(そうじ)相続控除
たとえば、父親が亡くなり最初の相続が発生してから10年以内に遺産を相続した母親が亡くなり、再度相続が発生した場合には、最初の相続(一次相続)で納めた相続税の一部を、次に発生した相続(二次相続)の相続税から控除できる制度があります。この控除を相次(そうじ)相続控除といいます。配偶者が相続するのであれば、二次相続まで含めて相続対策が必要となる点に注意してください。

相続対策に関する制度は、今回ご紹介した制度のほかにも「生前贈与」や「相続時精算課税」など、さまざまな節税対策があります。しかし、いずれも複雑な内容で、小規模宅地等の特例は条件の判断が難しく、また、二次相続の対策までを考えると、税理士など専門家の知識は必須と考えられるでしょう。相続に困った場合には、税理士に相談することをおすすめします。
(記事は2022年9月1日時点の情報に基づいています)

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