贈与はいつ、どうしてばれるのか?

個人が現金や預貯金などの財産の贈与を受けると「贈与税」がかかります。贈与税の計算方法は複数ありますが、原則的な計算方法では10〜55%の税率となっており、大きな負担となる可能性があります。

しかし、税負担を避けようとして贈与税の申告をせずにいると、さらにリスクが生じます。実際に受け取った金額よりも少なく申告した場合や、まったく申告をしなかった場合、税務調査が行われペナルティーが科せられるかもしれません。

ここで、「現金の手渡しであれば税務署にばれないのでは?」と思われた方もいるかもしれません。たしかに、振込や不動産の名義変更と違って、現金の受け渡しについては税務署も発見しにくいことは確かです。

ところが、事実として贈与税の税務調査は毎年行われています。現金贈与を受けた数年後に、何の前触れもなく税務調査が行われることもあるのです。なぜなら税務署は、課税につながる情報を常に収集しており、「贈与があったのでは?」という仮定が立てば税務調査を行っているからです。

税務署が贈与を把握するきっかけのひとつが、「お尋ね」と呼ばれる文書です。お尋ねとは、税務署から送られるアンケート用紙のようなもので、回答を記入して期日までに税務署に返送する仕組みになっています。

お尋ねには複数の種類があり、その一つに、不動産を購入した個人に送られるものがあります。税務署が不動産の名義変更の情報などをもとに対象者をピックアップして送付しているものです。

このお尋ねの回答項目の中に、「支払金額の調達方法」があり、物件の購入費をどのように用意したかを詳細に記載するようになっています。自分名義の預貯金から支払ったのか、家族名義の預貯金から支払ったのか、ローンを組んだのか、贈与を受けたのか、といった情報を記載します。

これらの情報を参考にして、税務署は贈与税の申告が必要なのか、必要であれば適切に申告が行われているのかを確認します。そして、贈与税の申告漏れが疑われる場合には、税務調査により本人に話を聞くといった対応をすることになります。

相続税の調査は、贈与税の調査も兼ねる

さらに、相続税調査の過程で贈与税の申告漏れが発覚するケースも少なくありません。相続税の調査は、亡くなった被相続人の残した財産を調べるものですが、相続人の財産も合わせて調べられるのが一般的です。被相続人の財産が相続人に流れていた場合、それが相続によるものなのか、贈与によるものなのかを税務職員が確認します。

たとえば、被相続人の生前に銀行から500万円の現金出金があったとしましょう。この場合、税務職員は「相続人への生前贈与」も可能性のひとつとして検証します。税務調査にあたる職員には、被相続人や相続人の預金口座などを調べる権限が与えられるため、銀行などを調査することもあります。

一般的な傾向として、親から子への生前贈与は死亡する直前に行われます。これは、あまりに早い段階から生前贈与をすると、親の生活費不足が懸念されることや、相続税対策が先延ばしにされがちなことが影響していると考えられます。そのため、相続税調査の過程で、相続の数年前に行われた贈与が把握されることは少なくないのです。

無申告のペナルティーは? 無申告加算税に加え延滞税も

それでは、もし贈与税の申告を適切に行っていなかった場合、どうなるのでしょうか? 

申告期限までに申告をしていなかった場合、無申告加算税が課される可能性があります。無申告加算税は、原則として、納付すべき税額に対して、50万円までは15%、50万円を超える部分に対して20%の割合で加算されるものです。

申告をしなかったことについて、書類を偽造するなどの不正行為があった場合は、無申告加算税に代えて、さらに税率が高い重加算税が賦課されるおそれもあります。たとえば税務署から送付されたお尋ねに対して、虚偽の回答をして申告を免れようとした場合などは、最高で50%もの割合で重加算税が賦課される可能性もあるのです。

このほか、納税をしていなかったことに対するペナルティも別に設けられています。こちらは延滞税と呼ばれるもので、法定納期限の翌日から、完納するまでの日数に応じて加算されます。贈与税の申告だけでなく、納税も適切に行う必要があるということを覚えておきましょう。

生前贈与には非課税枠がある特例の検討を

このようなペナルティを知ると、「贈与税がこわいから、生前贈与はやめておこう」と思われる方もいるでしょう。しかし、贈与税のルールに則ったうえで、税負担をなくすことは不可能ではありません。

たとえば、両親や祖父母(直系尊属)から住宅取得資金として贈与を受けた場合、特例による非課税枠が設けられています。たとえば令和2年4月に直系尊属から贈与を受けて、その資金で不動産会社から一定の省エネ住宅を購入したのであれば、最高1,500万円までの贈与が非課税となります。

このような特例を利用する際は、条件をしっかり確認した上で、贈与のタイミングを考えることが大切です。上記の特例の場合、住宅取得のタイミングに限って使えるものですから、住宅を購入した3年後に「ローンの支払いにあてたいから」と贈与を受けたとしても、特例を使うことはできません。

また、条件が複雑な特例を使わずとも、贈与税の負担なく生前贈与を行う方法もあります。それは、年間110万円の非課税枠を使うというものです。贈与税の原則的な課税方式である暦年課税の場合、年間110万円未満の贈与であれば申告も納税も必要ありません。

生前贈与を行う場合、贈与税の仕組みを理解し、申告や納税が必要になるのかを確認したうえで行うと安心です。税務署から指摘を受けるリスクを踏まえ、適切に手続きを行うようにしましょう。

(記事は2020年4月1日現在の情報に基づきます)