目次

  1. 1. 贈与税の申告漏れがばれるケース
    1. 1-1. 税務署からの「お尋ね」文書からばれる
    2. 1-2. 相続税の調査過程でばれる
    3. 1-3. 法定調書からばれる
  2. 2. 贈与税の申告漏れがばれた人はどうなる? ペナルティは?
  3. 3. 贈与税申告の時効は原則6年
  4. 4. 生前贈与をするなら、贈与税の負担を抑えるための特例の活用を
  5. 5. 贈与税の申告漏れに関するよくある質問
  6. 6. まとめ 贈与を検討するなら税理士に相談を

個人が年間110万円を超える現金や預貯金などの財産の贈与を受けると「贈与税」がかかり、贈与税申告が必要となります。2人以上から110万円以下の贈与を受けた場合でも、それらの合計金額が110万円を超えると贈与税の課税対象となるので注意が必要です。贈与税の税率は原則的な計算方法では10〜55%となっており、大きな負担となる可能性があります。

しかし、税負担を避けようとして贈与税の申告をまったくしなかったり、実際の受取金額よりも少なく申告したりした場合、税務調査が行われペナルティが科せられる可能性があります。

贈与税の申告漏れがばれるタイミングとしては、不動産や結婚などの大きなお金が動くとき、相続が発生したときなどが挙げられます。ここでは、贈与税の申告漏れがばれる具体的なケースを紹介します。

「現金の手渡しであれば税務署にばれないのでは?」と思われた方もいるかもしれません。たしかに、振込や不動産の名義変更と違って、現金の受け渡しについては税務署も発見しにくいことは確かです。

ところが、事実として贈与税の税務調査は毎年行われています。現金贈与を受けた数年後に、何の前触れもなく税務調査が行われることもあるのです。なぜなら税務署は、課税につながる情報を常に収集しており、「贈与があったのでは?」という仮定が立てば、税務調査を行っているからです。

税務署が贈与を把握するきっかけのひとつが、「お尋ね」と呼ばれる文書です。お尋ねとは、税務署から送られるアンケート用紙のようなもので、回答を記入して期日までに税務署に返送する仕組みになっています。

お尋ねには複数の種類があり、その一つに、不動産を購入した個人に送られるものがあります。税務署が不動産の名義変更の情報などをもとに対象者をピックアップして送付しているものです。

このお尋ねの回答項目の中に、「支払金額の調達方法」があり、物件の購入費をどのように用意したかを詳細に記載するようになっています。自分名義の預貯金から支払ったのか、家族名義の預貯金から支払ったのか、ローンを組んだのか、贈与を受けたのか、といった情報を記載します。

これらの情報を参考にして、税務署は贈与税の申告が必要なのか、必要であれば適切に申告が行われているのかを確認します。そして、贈与税の申告漏れが疑われる場合には、税務調査により本人に話を聞くといった対応をすることになります。

税務署では受贈者の年収や所得を把握していますから、年収・所得と比較して不釣り合いな買い物を繰り返していると、税務署で、当然、誰かから贈与を受けたのではないかという疑念を持ちます。

相続税調査の過程で贈与税の申告漏れが発覚するケースも少なくありません。相続税の調査は、亡くなった被相続人の残した財産を調べるものですが、相続人の財産も合わせて調べられるのが一般的です。被相続人の財産が相続人に流れていた場合、それが相続によるものなのか、贈与によるものなのかを税務職員が確認します。

たとえば、被相続人の生前に銀行から500万円の現金出金があったとしましょう。この場合、税務職員は「相続人への生前贈与」も可能性のひとつとして検証します。税務調査にあたる職員には、被相続人や相続人の預金口座などを調べる権限が与えられるため、銀行などを調査することもあります。

一般的な傾向として、親から子への生前贈与は死亡する直前に行われます。これは、あまりに早い段階から生前贈与をすると、親の生活費不足が懸念されることや、相続税対策が先延ばしにされがちなことが影響していると考えられます。そのため、相続税調査の過程で、相続の数年前に行われた贈与が把握されることは少なくないのです。

法定調書とは、所得税法や相続税法などに提出が定められている書類です。

たとえば、保険金を受け取ったり、一定金額以上の貴金属や時計を売却したりした際に、保険会社や買取店から税務署に法定調書が提出され、個人がどのような所得を得ているかが確認されることになります。

贈与税の関係で注意が必要なのは、「契約者と被保険者と保険金受取人が別々」の契約形態の場合です。これは「贈与税」の対象となります。夫が、妻の万が一に備えて契約し、子どもが保険金を受け取れるように契約した場合があてはまります。この場合、妻が亡くなり、子どもが保険金を受け取ったにもかかわらず、贈与税の申告をしていないと、保険会社から税務署に送られる法定調書によってばれてしまうでしょう。

もし贈与税の申告を適切に行っていなかった場合、どうなるのでしょうか? 

申告期限までに申告をしていなかった場合、無申告加算税が課される可能性があります。無申告加算税は、原則として、納付すべき税額に対して、50万円までは15%、50万円を超える部分に対して20%の割合で加算されるものです。

申告をしなかったことについて、書類を偽造するなどの不正行為があった場合は、無申告加算税に代えて、さらに税率が高い重加算税が賦課されるおそれもあります。たとえば税務署から送付されたお尋ねに対して、虚偽の回答をして申告を免れようとした場合などは、最高で50%もの割合で重加算税が賦課される可能性もあるのです。

このほか、納税をしていなかったことに対するペナルティも別に設けられています。こちらは延滞税と呼ばれるもので、法定納期限の翌日から、完納するまでの日数に応じて加算されます。贈与税の申告だけでなく、納税も適切に行う必要があるということを覚えておきましょう。

贈与税の時効は、法定申告期限の翌日を起算日として原則6年と定められています。ただし、偽りやその他不正の行為によって税額を免れ、または還付を受けていた場合は、除斥(時効)期間が7年に延長されます。

なお、実際のお金の所有者と銀行口座の名義が異なる「名義預金」には、時効が存在しません。子ども名義の口座へ定期的に預金をしているケースは、時効とならないので注意しましょう。

【関連】贈与税の時効は原則6年 申告漏れがわかれば厳しいペナルティ
【関連】名義預金は相続税がかかる? 判断基準からペナルティ、時効、対策方法まで紹介

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このようなペナルティを知ると、「贈与税がこわいから、生前贈与はやめておこう」と思われる方もいるでしょう。しかし、贈与税のルールに則ったうえで、税負担をなくすことは不可能ではありません。

条件もなく、比較的簡単にできるのが、年間110万円の非課税枠を使うというものです。贈与税の原則的な課税方式である暦年課税の場合、年間110万円以下の贈与であれば、申告も納税も必要ありません。

ほかにも、以下の表にまとめたような贈与税がかからない特例があります。

教育資金贈与、結婚・子育て資金の贈与税、住宅取得等資金の贈与税の非課税措置の比較表
教育資金贈与、結婚・子育て資金の贈与税、住宅取得等資金の贈与税の非課税措置の比較表

たとえば、両親や祖父母(直系尊属)から住宅取得資金として贈与を受けた場合、特例による非課税枠が設けられています。たとえば令和5年4月に直系尊属から贈与を受けて、その資金で不動産会社から一定の省エネ住宅を購入したのであれば、最高1000万円までの贈与が非課税となります。

このような特例を利用する際は、条件をしっかり確認した上で、贈与のタイミングを考えることが大切です。上記の特例の場合、住宅取得のタイミングに限って使えるものですから、住宅を購入した3年後に「ローンの支払いにあてたいから」と贈与を受けたとしても、特例を使うことはできません。

【関連】贈与税の節税対策 税金がかからない控除や特例、非課税財産の活用法を税理士が解説

ここでは、贈与税の申告漏れでよくある質問をご紹介します。

Q. 税務署が贈与の疑いを持つのはどんなとき?

税務署では、年収や所得を把握しています。従って、年収の割には大きな買い物をしたと把握したときなどに、誰かから贈与を受けたのではないかと疑います。

Q. 時計や車などのプレゼントも贈与税がかかる?

プレゼントとして受け取った高級時計や車などの財産価値が110万円を超えた場合は、贈与税の課税対象となります。プレゼントとあわせて現金も受け取っている場合は、それぞれの金額ではなく、これらの合計金額が110万円を超えているかで判断されます。

買取店などにプレゼントを売却した際の金額が一定額を超えた場合は、売却先から税務署に法定調書が提出されることで、贈与がばれてしまうケースもあります。現金以外の贈与であっても、贈与税の対象になることを忘れないようにしておきましょう。

Q. 夫婦間の口座移動も贈与税の対象となる?

夫婦間で金銭のやり取りをした場合も贈与税の対象となります。ただし、食費や光熱費などのように生活に欠かせない資金移動であれば贈与税がかかりません。生活資金に贈与税がかかることにならないためにも、どのような理由で資金を移動させていたのか説明できるようにしておきましょう。

Q. 親から手渡しでお金をもらうならばれない?

親から現金を手渡しでもらっていたとしても、税務署は親側の預金口座を調査し、出金があったことを把握できますので、贈与の事実はばれます。現金の手渡しであっても年110万円を超えたら贈与税の申告をしましょう。

関連:生前贈与、現金で手渡していいの? 税務署に指摘されない贈与の方法とは?

生前贈与を行う場合、贈与税の仕組みを理解し、申告や納税が必要になるのかを確認したうえで行うと安心です。税務署から指摘を受けるリスクを踏まえ、適切に手続きを行うようにしましょう。イチから制度を確認する時間がない場合は、相続や贈与に詳しい税理士に専門家に相談してみてください。

(記事は2023年5月1日現在の情報に基づきます)