相続した土地を国に引き渡せる制度がスタート 審査と負担金も必要な制度を解説
4月は、新しい法制度が始まる季節でもあります。今年は、「相続土地国庫帰属法」が施行されます。どんな内容なのか解説していきましょう。
4月は、新しい法制度が始まる季節でもあります。今年は、「相続土地国庫帰属法」が施行されます。どんな内容なのか解説していきましょう。
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相続って預貯金とかの財産に目がいくけど、受け取って困るものもあるよなぁ。
田舎の山とかだと、売りたくても買い手がいなくて、相続した後が大変そうだ。
不動産の相続は、有益とは思えない場合もありますよね。「遠いふるさとにある土地を相続しても利用する予定がない」「管理に手間暇がかかる」といった声を耳にすることもあります。そういった人に向けて、今年4月27日から「相続土地国庫帰属法」が施行されます。
土地を国に引き渡すことができるんですか?気になる人が多そう。
希望しない人が土地を相続すると、管理不十分のまま放置されてしまうことが多いです。土地が適切に管理されず長い時間が経つと、いずれは所有者が分からなくなって、土地の活用に大きな問題が生じてしまいます。そういった事態を防ぐのを目的にした法律です。対象は、相続または遺贈によって相続人が取得した土地です。
相続した土地をきょうだいで共有した時は、どうするんですか。
共有地の場合は、共有者全員で申請する必要があります。
どんな土地でも、国が引き取ってくれるんですか。
却下されるケースもあります。却下事由は、たとえば、建物がある、担保権や使用収益権が設定されている、所有権の帰属などに争いがある――といった場合です。
たしかに、なんでもかんでもとはいかないな。
不承認になるケースもあります。勾配30度以上、高さ5メートル以上の崖があり、通常の管理に過分な費用・労力がかかる、管理・処分を阻害する有体物がある――などの場合です。却下や不承認の要件はほかにもあるので、相続土地国庫帰属制度を利用する際には気をつけてください。
こういった要件をクリアしたとして、土地を引き渡すには、どんな手続きが必要なんでしょうか。
申請する場所は、その土地を管轄する法務局または地方法務局です。申請書を提出して審査手数料を納付すると、法務局の担当官が却下事由と不承認事由について審査します。書類審査だけでは不十分な場合には、実地調査も行います。
簡単な手続きで終わり、とはいかなさそうですね。
さらに、ただで国に引き渡せるわけではありません。審査が終わって法務大臣が承認した後には、通知を受けた日から30日以内に負担金を納付しないといけません。
引き取ってもらうのに、お金がかかるのかぁ。
宅地や田・畑、森林など土地の種目に応じて、10年分の標準的な管理費用を考慮して算出します。たとえば、宅地と田畑は、それぞれ20万円です。ただ、市街化区域または用途地域に指定されている場合は、面積に応じて計算します。田、畑については、ほかにも例外があるので、注意が必要ですよ。土地を手放すかどうかは、慎重な判断が必要です。まずは、弁護士に相談してみてください。
今回のソーゾク博士=ゆら総合法律事務所・弁護士阿部由羅さん、構成=相続会議編集部
・土地を国に引き渡せる
・条件をクリアして負担金を納付する
・状況次第では却下、不承認に
(記事は朝日新聞土曜別刷り紙面「be」に掲載した内容を基に掲載しています。2023年2月1日時点での情報に基づきます)
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