目次

  1. 1. 相続税の期限は「10カ月以内」
    1. 1-1. 相続税は原則「現金で一括納付」
    2. 1-2. 相続税の申告と納付までの流れ
  2. 2. 相続税の期限に間に合わない場合のデメリット
    1. 2-1. 相続税を軽減できる控除や特例制度を活用できない
    2. 2-2. 加算税や延滞税などのペナルティが科せられる
    3. 2-3. 所有する財産が差し押さえられる可能性がある
    4. 2-4. ほかの相続人に催促がいく恐れがある
  3. 3. 期限に間に合いそうもないときの対処法
    1. 3-1. 遺産分割ができていない未分割でも期限内にいったん申告する
    2. 3-2. ひとまずクレジットカードで納付する
    3. 3-3. 延納や物納を検討する
  4. 4. 相続税の申告期限についてよくある質問
  5. 5. まとめ 相続税の申告・納付期限に不安があるなら税理士に相談すると安心

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相続税の申告と納税の期限は、相続の発生、つまり被相続人(以下、亡くなった人)の死亡を知った日の翌日から10カ月以内です。たとえば2023年1月6日に死亡した場合には、その年の1月7日から11月6日の間に相続税の申告と納税を終える必要があります。

ただし、10カ月後の申告期限日が「土・日・祝日」だった場合は、税務署が休みのため、休み明けの平日が申告期限となります。

相続税の申告と納税の期限は同じく10カ月以内なので、この期間に申告書の作成とともに、納税資金の準備をしなくてはいけません。

相続税は多額になりがちで、しかも現金一括納付が原則ですから、納税の際に困る可能性があります。たとえば相続財産の大半が不動産で現金が少ないといった場合、不動産を売却するなどして納税資金を確保するか、後述する延納や物納を検討する必要があります。

なお、相続税の基礎控除額が大きいほど、相続税の金額は少なくなる点は理解しておきましょう。基礎控除額は「3000万円+(600万円×法定相続人の数)」で求められ、課税価格の合計額が基礎控除額を超えなければ、相続税の申告や納税は基本的に必要ありません。

相続人の人数ごとの基礎控除額の一覧。法定相続人が多いほど基礎控除額は高くなり、課税価格の合計額が基礎控除額を超えなければ、相続税の申告や納税は原則必要ありません
相続人の人数ごとの相続税の基礎控除額の一覧表。相続人が一人増えるごとに、非課税枠は600万円大きくなります。

相続税の申告と納税を行うにあたって、事前に行うべきことは少なくありません。まずは遺言書の有無や相続人の内訳(相続人は誰なのか)を確認する必要があります。もしも遺言書がなければ、相続人が亡くなった人の財産や債務などを確認し、遺産の分け方について話し合う遺産分割協議に進みます。

こうして遺産分割協議が完了すれば、ようやく相続税の申告や納税を行える状態になります。相続税の申告書に相続財産を記載し、遺産分割協議に基づいて税額を計算します。あとは所轄税務署に相続税の申告書を提出し、納税まで済ませます。これらの手続きすべてを、10カ月の期限内に完結するのが理想です。

遺産を相続するまでの流れ図。被相続人の死亡を知った日の翌日から10カ月以内に、様々な調査や話し合いを行い、相続税の申告・納付を行わなければなりません。
遺産を相続するまでの流れ図。被相続人の死亡を知った日の翌日から10カ月以内に、様々な調査や話し合いを行い、相続税の申告・納付を行わなければなりません。

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相続財産の確認に手間取ったり、遺産分割協議がスムーズに進まなかったりすると、相続税の申告納税の期限に間に合わなくなるおそれがあります。期限に遅れると、以下のようなデメリットがあります。

  • 相続税を軽減できる控除や特例制度を活用できない
  • 加算税や延滞税などのペナルティが科せられる
  • 所有する財産が差し押さえられる可能性がある
  • ほかの相続人に催促がいく恐れがある

それぞれについて説明します。

一定の要件を満たす宅地(土地や借地権など)に関して評価額を最大80%下げることができる「小規模宅地等の特例」や、配偶者の生活保障をするという観点などから設けられている「配偶者の税額軽減」という2つの特例は、相続税の税負担を大きく下げてくれます。

しかし、これらの特例を使うには、遺産分割協議を完了させ、期限内に申告することが条件です。もし条件を満たせなければ、特例を使えないので高い相続税を払わなくてはなりません。

なお、遺産が未分割の状態でも、相続税の申告書を仮計算で作成して、申告や納税を行うことは可能です。この点については後ほど詳しく説明します。

相続税の申告期限に遅れると「無申告加算税」、納税期限に遅れると「延滞税」の対象になります。普通は申告ができていなければ納税もできないので、これら2種類の追徴税は同時にかかってきます。

無申告加算税は、納付すべき税額に税率をかけて計算します。50万円までは15%、50万円を超える税額に対しては20%が原則ですが、自主的に期限後申告をした場合は5%に軽減されます。

延滞税については、「納税が遅れた金額」と「遅れた日数」に応じて計算するため、納税が遅れるほど増えていきます。延滞税の税率は年によって異なり、納期限の翌日から2カ月以上遅れると税率が高くなるしくみになっています。

【関連】相続税の追徴課税とは? よくあるケース、税率、納税の負担を減らす方法

相続税の納税が遅れると督促が行われます。督促を受けても未納状態が続くと、所有している財産を差し押さえられ、公売にかけられる可能性があります。公売とは、差し押さえた財産を強制的に入札にかけ、売却代金を滞納税金に充てる処分のことです。

さらに、相続税法には「相続税について、各相続人がお互いに連帯して納付しなければならない」という連帯納付義務があることにも注意しましょう。たとえ自分の相続税を納付したとしても、ほかの相続人が納付を怠ると、連帯納付義務に基づき督促が来る可能性があるのです。

相続税の期限を迎えるまでは、やることはたくさんあるのに、あまり時間的な余裕がありません。間に合わないと、ペナルティも待ち受けています。不安な方は、早めに税理士に相談しましょう。

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相続税の申告や納税は期限内に間に合わせるのが一番です。しかし、相続財産の大半が不動産で納税資金を捻出できないといった事情があれば、期限に間に合わせるのは難しいでしょう。しかし、そのようなときでも絶望する必要はありません。ここからは、期限に間に合いそうにないときに取り得る対策をお伝えします。

遺産分割協議がまとまらず、相続税の期限までに遺産分割が完了しそうになければ、未分割の状態(相続人間で遺産を共有している状態)でもいったん申告書を作成し、期限内に申告と納税を済ませておくことをお勧めします。こうすることで一応は期限内の申告と納税を済ますことができ、無申告加算税や延滞税を避けられます。

未分割で相続税申告を行うと、「小規模宅地等の特例」や「配偶者の税額軽減」が使えないので、納税額は多くなります。ただし、「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しておけば、遺産分割協議が終わったあとに特例を使って相続税の申告をやり直せます。手続きについては、国税庁の「相続税の申告書の提出期限から3年以内に分割する旨の届出手続」を参考にしてみてください。

また、この届出を行ったものの、遺産分割に関する訴訟などにより3年以内に遺産分割が終わらない場合は、「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出することで相続税の申告をやり直せる期間を延長できます。

申告をやり直す際、遺産分割協議の結果によって、未分割の状態で計算した税額よりも増える人と減る人が出てきますが、増える場合は修正申告、減る場合は更正の請求という手続きを行います。これらの手続きは、遺産分割を行った日の翌日から4カ月以内なので、忘れないようにしましょう。

【関連】相続税の修正申告とは? 期限や必要書類、税理士に頼むメリットや報酬の目安

相続税はクレジットカードで納税することができます。クレジットカード納付は、「国税クレジットカードお支払サイト」から24時間いつでも利用でき、自宅からインターネットで手続きができるので便利です。また、カードによってはポイントがつくこともメリットです。

相続税の納付期限までに現金を用意できないとき、ひとまずクレジットカード納付の手続きをしておけば期限遅れを防げます。ただし、クレジットカードの引き落とし日に残高不足になると、納付期限にさかのぼって延滞税がかかるので注意が必要です。

クレジットカードの利用限度額にも注意しましょう。クレジットカードごとに設定されている利用限度額を超えると、納税できません。さらに、クレジットカードによる国税の納税は「1回あたり1000万円未満」という制限があり、この金額を超える納税を行うには納付手続きを複数回行う必要があります。

もう一つ気をつけたいのが、クレジットカードには決済手数料がかかるという点です。手数料は納付税額に応じて増え、たとえば500万円を納税するには、4万1800円の手数料がかかります。

クレジットカードのポイント還元で決済手数料を取り戻せる可能性はありますが、ポイントがどれくらいつくかはカードによって異なります。場合によってはまったくポイントがつかないカードもあるので、あらかじめカード会社に確認しておくと安心です。

現金一括払いもクレジットカード納付も難しいなら、延納や物納を考えたほうがいいかもしれません。延納は担保を提供することを条件に相続税を分割払いにする制度で、物納は不動産などの相続財産で相続税を納税する制度です。

これらの制度にはさまざまな条件があり、誰でも利用できるものではありません。また、相続税の申告や納税期限までに手続きが必要なことと、「利子税」という追加の税金が生じることにも注意してください。

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相続税の延納とは 分納できる条件や期間、利子税などのデメリットも解説
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Q. 相続税申告の準備で時間がかかる可能性があるものは?

被相続人が過去に転籍していれば、複数の役所で戸籍を取る必要があり時間がかかります。離婚や再婚をしていた場合は、戸籍が複雑なのでさらに大変です。

次に、相続財産の確認にも時間が必要です。あらかじめ被相続人の財産の一覧がまとまっていなければ、相続人がいちから探さなくてはいけません。後から財産や借金が見つかると遺産分割協議や相続税申告をやり直すことになるので、入念に確認してください。

これらの確認作業が終われば遺産分割協議に進めますが、不動産が多い場合は評価計算の手間が生じます。協議がこじれて感情的な対立になると、弁護士に依頼して解決を図る必要も出てくるでしょう。

相続税の申告期限までに余裕をもって進めるためには、被相続人が生前から遺言書や財産目録などの準備をしておくことが有効です。

Q. 相続税の申告期限は延長できますか?

原則は延長できません。ただし、地震などの自然災害などが原因で申告期限が延長されるケースは過去にあり、最近では新型コロナウイルス感染症の感染拡大にともなう延長措置がありました。また、遺留分侵害額請求があった場合や、相続人である胎児が生まれた場合など、個別的な事情により2カ月間の延長が認められる可能性があります。

このような延長措置を受けたい場合は、もともとの申告期限を過ぎる前に税務署で手続きをしておかなくてはいけません。延長が認められないおそれもあるので、できるだけ早めに相談しておくといいでしょう。

Q. 相続税を支払った後に確定申告は必要ですか?

一定額以上の遺産を取得すると相続税はかかりますが、所得税の確定申告は不要です。相続税と所得税は課税の仕組みが違うためです。ただし、亡くなった人に収入があった場合などは、生前の所得に対する確定申告が必要です。これを、準確定申告と言います。

相続が発生してから相続税の期限を迎えるまでは、あまり時間的な余裕がありません。特に「不動産が多くて納税用の現金が用意できない」「仕事などが忙しく遺産分割協議が進められない」といった問題を抱えている人は、早めに税理士に相談して対策を講じるようにしましょう。

相続会議のサービスには全国の税理士を検索できるものがありますので、そちらの利用もぜひご検討ください。

(記事は2023年9月1日時点の情報に基づいています)

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