目次

  1. 1. 相続税の修正申告はどんなときに生じるか
    1. 1-1. 修正申告は「申告のやり直し」の一つ
    2. 1-2. 修正申告が生じるのはこんなとき
  2. 2. 相続税の修正申告の期限と手続き方法
    1. 2-1. 相続税の修正申告の期限
    2. 2-2. 修正申告の手続き方法
    3. 2-3. 相続税の修正申告を自分でやるのは大変!
  3. 3. 修正申告で発生する税金
    1. 3-1. 過少申告加算税
    2. 3-2. 延滞税
  4. 4. 相続税の修正申告を税理士に頼むメリット
    1. 4-1. 正しく申告してくれる
    2. 4-2. 面倒で膨大な作業に時間をかけずに済む
    3. 4-3. アドバイスがもらえる
  5. 5. 相続税の修正申告の税理士報酬は
  6. 6. まとめ|まずは税理士に相談に行こう

相続税の修正申告とはどういうものなのでしょうか。また、どういうときに生じるのでしょうか。最初に確認しましょう。

相続税の修正申告とは、いったん行った申告をやり直すことをいいます。ただし、申告のやり直しは修正申告だけではありません。「更正の請求」というのもあります。両者の違いは次のようになっています。

  • 修正申告…前の申告での納税額が少なすぎたり還付額が多すぎたりしたときの申告のやり直し
  • 更正の請求…前の申告での納税額が多すぎたり還付額が少なすぎたりしたときの申告のやり直し

つまり、当初の相続税の申告額が少ない場合に修正申告が発生し、同時にあらためて納税しなくてはならないわけです。

相続税の修正申告は主に次のようなケースで生じます。

  • いったん申告が終わったあと、新たな相続財産が見つかった
  • 「相続時精算課税制度の対象となる贈与財産」「死亡日以前3年間に相続人が贈与を受けた財産」など、相続税の対象となる贈与を申告し忘れていた
  • 未分割のままいったん確定申告をしたあと、遺産分割協議がまとまったので、あらためて正しい申告をし直した
  • 未分割のままいったん確定申告をしたあと、遺産分割協議がまとまったので、あらためて正しい申告をし直した
    税務調査が入って申告もれを指摘され、修正を指示された

相続税の修正申告はいつまでにどのように行ったら良いのでしょうか。また、どんな税金がかかるのでしょうか。ここで確認してみましょう。

相続税の修正申告の期限はありません。ただし、間違いがあった場合、「10カ月以内」という申告期限から修正申告をして納税した日までの延滞税を支払わなくてはいけないので、早めに修正申告をするようにしましょう。

また相続の開始を知った日の翌日から10カ月(法定申告期限)の翌日から5年の時効が定められており、5年以上経ってから申告内容に誤りが発覚した場合は、時効があるため修正申告をする必要がありません。ただし、意図的に少なく申告をしていたとみなされた場合、時効が7年まで延長されることもあります。

相続税の修正申告は、税務署から修正申告書を入手して、修正前と修正後の課税額などの違いを記入(そのことを証明する書類も添付)して提出する流れとなります。基本的に必要となる書類は以下です。ただ、相続税は配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例などの控除や有価証券などの相続財産によって必要となる申告書類は異なります。

【必要書類】

  • 相続税の修正申告書
  • 相続財産の種類別価額表
  • 本人確認書類
  • その他ケースによって追加書類が必要
相続税の修正申告書 【引用元】国税庁

相続税の修正申告は、一般の人にとってはかなり骨の折れる作業です。なぜかというと、相続税は「相続した財産×税率」で納税額を計算できるわけではないからです。

相続税は相続や遺贈で相続人や受遺者が取得した財産をいったんかき集めて相続税がかかるかどうかを確認します。かかるとわかったあと、課税される遺産総額を算出します。その後、法定相続分で仮の相続分を算出するのです。

こういった複雑なプロセスを経て、ようやくそれぞれの相続人や受遺者の納税額がわかるわけです。相続税の計算式については、下記の記事を参考にしてみてください。

【関連記事】【保存版】7ステップの相続税の計算式 税率は個人が相続した財産額で決まらない

期限内申告だけでなく、修正申告も同じ流れで計算します。つまり、正味の遺産総額から計算し直したうえで、相続税額を算出しないといけないのです。

前回の申告・納税では足りない分の相続税を納めます。修正申告書を提出する日までに納税しなくてはなりません。また、相続税のほか、次のペナルティも支払うことになります。

いったん納めた相続税が本来の金額より少なすぎたときにかかるペナルティです。「追加で納めることになった相続税×10%」がかかります。ただし、この追加の贈与税が、「最初に申告した相続税額」「50万円」のうち、より多いほうの金額を超えていたら、「超えた部分の相続税額×15%」も納めなくてはなりません。

なお、これは税務調査で指摘されて修正申告をした場合の話です。調査の通知が来る前に自ら気づき、自主的に修正申告をすれば過少申告加算税はかかりません。

しかし、逆に高い税率のペナルティがかかることもあります。財産を隠したりごまかしたりするような行為があったときです。この場合、過少申告加算税に代えて重加算税がかかります。こちらは35%という高い税率です。

修正申告を行うケースだと、納税も「相続開始があったことを知った日の翌日から10カ月以内」という納期限よりも遅れることになります。このとき、延滞税も納めなくてはなりません。延滞税は法定納期限よりも遅れて納税したときや、期限後申告や修正申告が生じたときにかかるペナルティです。

延滞税の金額は、法定納期限の翌日から実際に納税した日の日数に応じて変動します。「追加の納税額×割合」で納税額を計算するのですが、この割合が、実際に納税した日が修正申告書を提出した日の翌日から2カ月以内か否かで変わるのです。2023年1月1日から12月31日においては、次の割合となっています。

  • 納税した日が修正申告書の提出日の翌日から2カ月以内…年2.4%
  • 納税した日が修正申告書の提出日の翌日から2カ月よりあと…年8.7%

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相続税の修正申告は、一般の人が無理に自分で行うよりも、税理士に依頼したほうが良いでしょう。次のようなメリットがあります。

一番大きいメリットは、適正に申告してもらえることです。相続税は、複雑なプロセスのなかで行います。また、財産の評価額をていねいに計算しないといけません。「難しい相続税を正しく計算する」というのは、一般の人にはハードルの高い作業です。しかし税法のプロである税理士は、正確に計算ができます。

プロセスが複雑な相続税を計算・申告するのは、一般の人には負担が大きすぎます。慣れない作業を、忙しい毎日の合間をぬって行うのはかなり大変です。仕事や家事、育児や介護といった日常に支障が出るかもしれません。

しかし、この大変な作業を税理士に依頼すれば、いつもどおりの生活を行うことができますし、精神的な負担から解放されます。

なお、先ほどお伝えした延滞税は、納税が遅れれば遅れるほど金額が増えていきます。つまり、計算に時間がかかればかかるほど、無駄な支出が増えるのです。一方、税理士に依頼すれば、より早く申告作業が終わるので、ペナルティも最小限で済みます。金銭的な面でもメリットがあるわけです。

修正申告を依頼すると、お願いした税理士から相続後の税金や将来の相続に関するアドバイスを受けられることがあります。「二次相続が心配」「収益物件を相続したけれど、確定申告をどうしたら良いかわからない」といった悩みに答えてくれるかもしれません。

「税理士に依頼したほうがメリットは高い」とわかっても、気になるのが報酬です。いくらかかるのでしょうか。また、金額はどのように変わるのでしょうか。

税理士ごとに異なりますが、「5万円から」というのが相場のようです。ただし、これは基本料金に過ぎません。実際には、相続人の数や財産の数や評価額によって変わります。基本料金だけを見て安易に決めると、あとから高い請求をされてびっくりすることもあるかもしれません。

ちなみに、相続税の申告を行う税理士のなかには、最初の申告の段階から修正申告の可能性も踏まえたうえでの料金を提示する人もいます。このようなケースだと、一見「報酬額が高い」と感じるかもしれません。

ウェブサイト上の値段だけでは、なかなか判断できません。どのようなサービスを受けられるか、内訳はどうなっているのかは、直接確認したほうが良いでしょう。

「報酬がかかるのなら、やっぱり修正申告は自分でやろうかな」と思うかもしれません。しかし、くり返しになりますが、相続税の計算は複雑であるため、一般の人には荷が重すぎます。多少の費用をかけてでも依頼したほうが、精神的にかなり楽になるはずです。

また、今後の相続や税金について相談相手ができることを考えると、費用対効果は決して小さくありません。

ただし、それでも「いくらかかるか」は気になるものです。また、サービス内容や相性が合うかどうかも知りたいところです。まずは見積もりを兼ねて、相続税に強い複数の税理士に相談に行ってみると良いでしょう。

(記事は2023年4月1日時点の情報に基づいています)

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